★乳癌ステージ4 抗がん剤治療の引き際 押川勝太郎腫瘍内科医・緩和医 | HER2タイプ乳癌ステージ3C 経過観察中シングルマザー

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HER2タイプ乳癌のこと、治療のことなどを書き残しておこうと思います。温かい目で見守っていただければ、幸いです。アメンバー申請、コメント、メッセージ、リブログについては、「はじめに(私のスタンス)」テーマ内の記事をご一読下さい。

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ご訪問ありがとうございます。

大晦日に重要記事をまとめた記事
    しました

の中でも、


などをご紹介した、

私のブログの主題の1つ
私は最重要だと思うこと、

医療の限界と癌との共存、

 ※1年続くネットイジメの根源。
    初期治療の諸々を私の場合、
    孤独に闘った結果として得た、
    大事な「心」だから、
    仕事でもなく、お金儲けでもなく、
    ただ一乳癌罹患者として、
    ブログに綴り、主として同病の方々
    向けに発信し続けてきました。
    だからこそ、ネットイジメに耐え、
    結果的に1年の期間と膨大な費用を費やし
    ても(ここまで酷いとは想定外でしたが)
    ブログを守り、
     発信し続けてきた「心」です。


についての、
押川先生のお考えをご紹介します。

押川先生が新たに始められた、
peing質問箱で、

乳癌ステージ4、積極的治療の抗がん剤が
なくなった方のお身内の方の質問への
押川先生の回答です。

※転載許可をいただいております。
  (色は私のブログの定義でポイントに付けています)

元は、
をご参照下さい。

この記事や、「医療の限界と共存」という
癌治療の現実に関するご意見やご質問は
押川先生のpeing質問箱に
お願いいたします。

私が「心ある」医師と感じ、啓蒙活動も
素晴らしい活動だと感じて利用させて
いただいている、
  (すみません、まだ、お会いしたことは
   ありませんが)
癌治療医
  (腫瘍内科医、緩和医、消化器内科医)
の押川先生がご回答下さると思います。


=====

回答#16 

質問者から別ルートで
「40歳代女性で乳がんステージIVで
  抗がん剤治療終了を主治医から告げられた」
「抗がん剤終了して
   副作用が減って少し元気が出てきた
という情報を得ています。

 当方がいつも言っている
「抗がん剤はがん治療の一部でしかない、
無効となったときに強行すると
かえって苦しんで、寿命が短くなる」
ということも、

頭ではわかっていても、
なかなか受け止められない人は
少なくないことでしょう。 

ここでは、少し視点を変えて考えてみます。

 仮にまだ有効な抗がん剤が残っていて、
もう一回腫瘍縮小が得られ、
余命が伸びたとしましょう。 
しかし、またいずれ無効となり
同様な悩みが生じます。

 人間の寿命は限りがあるので、
この問題は避けようがないのですが、
とりあえず今は猶予してほしい
というのが普通の感情でしょう。

正直言って全人類の
普遍的、哲学的な悩みですから、
誰も回答を持っていないし、
個人的な心の持ちようで対処している
(あるいはできなかった)人がほとんど
と思われます。 

行動経済学という学問に
プロスペクト理論というものがあり、
人々は
参照点からの差から価値を感じている
とされています。
参照点は通常、
現在の状況を基準に考えます。

そして、同じ量でも、
得ることより失うことの方が
大きく感じるものです。 

人間は、既にあるものは、あって当然
と考えて価値を見出しにくいものです。
逆にそれを失うと非常に苦痛を感じます。

その代表例が
「普通の暮らし」のありがたさでしょう。

 相談者の、
今の身内との幸せな生活を失うことを
恐れていることそのもののことです。

 こういった損失状況では、
リスクを伴う不確実な事でも
いちかばちかでやってみたがるもの
行動経済学では判明しています。

これが、がん終末期に
無謀な治療に突き進みがちな患者心理
とされています。 

これに対処するためには
「参照点」を移動すること
が重要となります。 

相談者のお身内は乳がんステージIVで
がんと共存できる期待が大きかった
のでしょう。

確かに抗がん剤治療は発展している
のですが、

集団としての乳がん患者さんに恩恵がある
のは事実ですが、
個々の例では
腫瘍のタチの悪さや危険な転移、合併症で
早期に亡くなる人たちも少なくありません。

さらに、抗がん剤の直接的な副作用と、
体力低下などに伴う間接的な副作用

もっと生き延びられるはずだった患者さん
を予想外に早く失う経験は、
熟練したがん治療医なら
だれもが経験しています。 

この、抗がん剤の引き際の判断は
非常に難しく、
気の優しい治療医ほど
厳しいことが言えず、
苦痛を伴う治療を引き延ばして、
逆に患者さんが最後まで苦しみ、
寿命を短くしてしまう可能性も
指摘されているぐらいです。 

今の状況を
リフレーミング(視点を変えること)すると、

致死的な副作用や危険な転移で
急変することが避けられただけでも、
今まで運が良かったと
言えるかもしれません。

ステージIVの乳がんは
ちょっと昔だったら、
すぐ人生の終わりだったかもしれない、

抗がん剤治療でおまけながら
有意義な人生延長時間が得られ、

また無効となった後の無謀な治療で、
人生の最後まで抗がん剤の副作用に
さいなまれる不幸を避けられた
ということでもあります。 

抗がん剤治療後の余命は、
個人差が大きく予測は6割外れる
ことがわかっています。

そして余命告知受けたとしても、
それはそこまで生きられるという保証
というわけでもありません。

終末期近くでは、
血栓症やがん関連疾患で
急変の確率が高まるからです。 

将来のことが不安ということは、
逆に言うと、まだ考える余裕がある、
つまり、現時点では
抜き差しならない症状で苦しんではいない
ことの裏返しでもあります。

となると、将来の不安を案じるより、
今日一日は奥さんと一緒に過ごせることを
存分に楽しむことこそ
優先度が高いのではないでしょうか?

一日一日が小さい人生です。 

抗がん剤などの積極的治療こそが
延命につながると思っている人が多い
のですが、

症状緩和できないと、
動けない、食べられない
→筋力低下
→自分の世界がベッドだけになる
→精神状態の悪化
→不安が痛みを悪化させる
→最初に戻る、
という悪循環を断ち切るという意味で、

緩和ケア自体にも
QOL改善と
その結果としての延命効果
があるわけで、

そこに全力を挙げるべきでしょう。

 「不幸になるから緩和ケア」
になるのではなく、
「不幸にさせない」ために
緩和ケアを活用するわけです。 

そして、この緩和ケアの概念がなかった
時代と比べて、
個人の努力で多少工夫できるチャンスが
あるだけでも、
はるかにラッキーではないかと
個人的には考えています。 

それは、
いまだに適切な緩和ケアに巡り会えなくて、
悲惨な終末期を過ごすがん患者さんを
たくさん見聞きするからです。

当方の啓発活動もその解決法の一環
としておこなっています。



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