シャルティアが精神支配されたので星に願ったら、うぇぶ版シャルティアになったでござる   作:須達龍也
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一週間、日刊継続しました。

流石に、そろそろキツイ…


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「確か、帝国の辺境侯…とか言うのに、アインズ様がおなりになりました」

 

 

 

「辺境…侯? あまり聞いたことのない役職だな」

 アインズはあまり耳慣れない役職に、興味がひかれた。

「ええっと、確か、皇帝の下にはつくけど、地位としては同じくらいだぞって、役職だったと覚えておりんす」

「新しく作ったわけか」

 アインズはそんなもんかなーレベルの想いだったが、その前の部分にひっかかる者もいた。

 

「そもそもが、皇帝の下につく必要があるのかね?」

 

「えー、それを妾に言われても…」

 デミウルゴスの問いに対して、シャルティアは困ったように眉をひそめた。

 アインズやデミウルゴスといった頭のいい方々が決めたことで、シャルティアとしてはそういうものなのかと思っただけだったのだから。

 

「アインズ様が誰かの下につくのなんて、不快ではないの?」

 

「それはもちろん、不快に決まっていんす!」

 不快かそうでないかと聞かれれば、もちろん不快であった。至高なる御方が誰かの下になるなんて、イヤに決まっていた。

 

「ふーむ、なぜ帝国の下についたのか、世界征服を望んでおられたはずなのに…」

 

 デミウルゴスのそれは、質問というよりも、独り言、それも自らの考えをまとめる為にもらした程度のものだった。

 ただ、アインズは一人衝撃を受けていた。

 

(世界征服ってなんだ? 誰が望んだんだ? 俺? 俺はそんなこと…)

 

 一人、あたふたと沈静化を繰り返していた。

 

「表からは無理…そう判断なされたのかしら?」

 

 アルベドのそれも、デミウルゴスの言葉に答えたというよりは、自分の考えをまとめる為の独り言に近いものだった。

 

「ああ、なるほど」

 

 それでもデミウルゴスには、答えを導き出すヒントになったようだった。

「シャルティア、確かそちらではナーベラルだけが冒険者になったんでしたね」

「ええ、そうでありんす」

「その冒険者としての名声は、大したことなかったのではないかね?」

「あまり話題になっておりんせんでしたから、そうではないのかぇ」

 帝国の傘下になることと、ナーベラルの名声との関係性がシャルティアにはよくわからなかったが、質問にはそう答えた。

 

「ああ、なるほど。そういうこと」

 

 アルベドが理解したと頷いた。

「ええー、どういうことでありんすか?」

「さすがはアインズ様、あの頃から既にこのことを」

「あちらのアインズ様はおかわいそうですわね。私が居ればフォローをして差し上げられたのですが」

 シャルティアを置いてけぼりにして、アルベドとデミウルゴスが納得と共に、アインズへの敬意を深める。もちろん、アインズも置いてけぼりメンバーである。

「アインズ様、教えてくださいませ」

 シャルティアが、理解の一番前にいるであろうアインズに助けを求める。…だが残念、理解レースではアインズはシャルティアの横を走っている。

 

「ふふ、シャルティアには難しかったか。あー、デミウルゴス、教えてあげなさい」

 

 アインズお得意の丸投げだった。

 これが良くないとわかってはいるのだが、やめられない。

 特にこの状況は一番丸投げしやすかったのだ。自分以外にわかっていないシャルティアがおり、それを理由にデミウルゴスかアルベドに振る。理想的な丸投げシチュエーションだったのだから。

 

「わかりました、アインズ様。…もっとも私もたった今気付いたばかりなのですが。アインズ様の深遠なる知謀に、非才なる自身を恥じるばかりです」

 

 デミウルゴスからの手放しの評価に、アインズの何かがガリガリと削られるようだった。丸投げ…できるだけ控えようと、守れるかわからない努力目標をアインズは掲げるのだった。

「おそらくですが、そちらのアインズ様は、恐怖で支配することを憂いたのでしょうね」

「んー?」

 シャルティアが理解できないことを、わかりやすく表現する。アインズは理解できないことを、必死で隠す。

「我々ナザリックの面々は人外ばかり、弱肉強食を理解している亜人ならともかく、人間は、愚かにも反発するでしょう。

 無論、愚かな反発など叩き潰してしまえばいい。そう、何度でも。…ただ、その先には恐怖による支配以外はありえない。

 おそらく融和的な支配を望んでおられるであろうアインズ様には、その道は選択したくなかったのではないかと愚考いたします」

「はー、なるほど、だから帝国の下に」

 シャルティアも理解した。アインズも理解した。

「ですが、こちらのアインズ様はその為の布石を既に打たれておいでだ」

「え、そうなのでありんすか?」

 

「ふっ」

 

 シャルティアのキラキラとした尊敬のまなざしに対し、アインズは当然だと笑う。先ほど掲げたばかりの目標を、あっさりと破る。

「今、アインズ様は英雄を作られている最中です。それも、ほぼ完成しつつある。

 我々の支配に反発する愚かな連中も、そこに英雄が居れば反発はおさまる。その英雄を通じて、堅実に、着実に、支配を深めて行けばいい。さすれば理想的に融和的な支配ができるでしょう」

 再び流れるさすアイの空気、アインズの心境は、もうどうにでもなーれ状態だった。

「そういえば、今回のシャルティア…いえ、ホニョペニョコでしたか、その件で冒険者組合から依頼を受けておられるのでしたね」

「ああ、そうだな。戦闘の跡なんかを作っておかないとまずいな」

「その件でしたら、既にマーレに命じておりますので、ご安心ください」

「さすがはアルベドだな」

「いいえ、そのようなことは」

 

「きー! 妾も、妾も頑張るでありんす、あ、り、ん、す!!」

 

(頑張れ、負けるな、シャルティア!)

 

 智者に囲まれ焦るシャルティアに、表向きは表せないが心の奥底で応援するアインズだった。

 

「そ、そう! その後、その後の話をするでありんす!」

 

 

 

「いえ、そこからはあまり参考になりそうにないので、もう結構ですよ」




シャルティアとの戦闘の有無が前半部分の大きな違いだとすれば
アインズ様の帝国辺境侯になるか、独立した魔道王になるかは、決定的な違いですね。

その差異を作るのは、漆黒の英雄モモン様の存在…さすがです! アインズ様!!




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