俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
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ツアー「ええ...」
スルメ「ええ...」


第十一話 頭がおかしい魔王様

俺はスルメさんの話を聞いてすぐさま『世界』を守る計画を一部変更した。

 

法国のような前から存在している精鋭を利用するのではなく、

 

『魔王国民』全体の底上げを重点に置くことにした。

 

 

いざという時、蹂躙されないために。

 

 

かつての八欲王時代では、無力な現地人が蹂躙されたという。

 

下手に力がない方が良いかも知れないが、無力からの絶望ほど恐ろしい物はない。

 

何より一人でも生き残り『誰か』に伝えることができれば、最終的に勝利できる。

 

情報さえあれば、ナザリックに敗北はない。必ず仇を取って見せる。

 

 

…少し熱くなった。スルメさんのことが俺の中で想像以上に大きいようだ。

 

 

そのためにも、レイナースとフールーダから強化計画ため色々聞く必要がある。

 

どのように強くなったか、育成してきたか、この世界の『強者』の意見は重要だ。

 

 

ユグドラシルとは違うのだから。

 

勉強すると魔法が使えるようになる帝国魔法学院というのが存在する時点で全然違う。

 

パワーレベリングの概念はあるようだが。スルメさんとツアーが言っていた。

 

 

現段階よりレイナースやフールーダには想定以上に働いてもらう必要がある。

 

 

レイナースが使う武技等の技術を教える。現地人に即したマニュアル化は必須だ。

 

彼女が『経験』を明け渡すことに、惜しむ気持ちがないのは忠誠心から察している。

 

だが、褒美を何か与えるべきだろう。自分の『財産』を渡せと言うのだから。

 

彼女は、無償の行為で裏切られる経験を重ねていたはずだ。かつての俺と同じように。

 

だから、形で示した方が安心できるはずだ。

 

 

フールーダにはリング・オブ・サステナンスを既に渡してある。

 

渡したら指輪にキスして気持ち悪かった。だが、あれ以上褒美は良くない。

 

現段階では無視だ。著しい成果があるまではそのままだ。

 

…決して逃げているわけではない。

 

 

 

レイナースには疲れないように『時飛ばしの腕輪』を渡しておこう。

 

ラナーも寄越せと言っていたくらいだし、

 

きっとこの世界の女性が気に入るデザインなのだろう。

 

 

何か、こう何か致命的にズレている気がする。

 

だが、ハムスターを怖がるのだからその辺の感覚は微妙に当てにならないことがある。

 

 

あと、正直フールーダのあの光景を思い出したくない。

 

 

最終日二日前まとめ買いしたせいで、かなり個数あるし、贈り物に最適なんだよな、腕輪。

 

効果もエンリの様子から確かだ。毎日元気だ。…やや羨ましい。

 

 

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参考意見として、パンドラズ・アクターにスルメさんの言う宗教的熱狂という物が、

 

現段階の『魔王国』の住民が如何ほどのものなのか聞いてみることにした。

 

 

俺と入れ替わりでカルネ村や支配した他の村の人々と接することが多かったからだ。

 

 

『漆黒の英雄』モモンとしてだ。

 

 

パンドラズ・アクターには『魔王』を恐れないよう、

 

安心させるために村々を巡回させていた。

 

 

ラナーのお陰でほぼ大丈夫だが、念には念を入れて聞き取り等を行わせていた。

 

 

そのため、『冒険者モモン』としての活動は控えるようになっていた。

 

恐らく『英雄』としてしかもう関われない。元々そうだが意味合いが違う。

 

できれば、モックナックやイグヴァルジ達と酒でも飲み交わしたかった。

 

もう無理だが。

 

 

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「ええ…。言わなければなりませんか?」

 

パンドラズ・アクターは最近このように言い淀むことが多くなった。

 

 

…迷惑ばかりかけているせいだろうか。

 

 

とはいえ、今回は重大事項だ。

 

「すまない。言ってくれ」

 

思わず謝ってしまう。本当に迷惑かけているし。

 

 

「失礼しました!

 

 …カルネ村の住民は『覚悟完了』状態かと。

 

 理由さえ明らかならば皆死ぬ覚悟の狂信者です。

 

 モモンガ様の想定されている理由を告げれば、

 

 恐怖するでしょうが、『破滅の竜王』にすら挑みかかると思われます。

 

 上位二重の影(グレータードッペルゲンガー)の私が保証します。

 

 本当に頭がおかしいレベルです。信仰というものは、宗教というのは本当に恐ろしいと実感しました。

 

 他の村は、流石にそこまでではありませんが十分異常です」

 

聞かなければ良かった。

 

だが、うん。『破滅の竜王』にすら挑みかかるのは頼もしい。

 

いや、本当…

 

 

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話は変わるが、ユグドラシルでは、

 

城以上の本拠地を手に入れたギルドの特典が二つ存在する。

 

 

一つはNPC作成権。

 

これは外装、AI、武装もいじることができ、種族やクラスをプレイヤーと同じように設定できる。

 

ナザリック地下大墳墓を運営する上で必要不可欠な人材であり、俺の、俺達の宝だ。

 

 

もう一つはPOPモンスター。

 

本拠地を守るNPCで三十レベルまでのモンスターが自動的にわき出る。

 

殺されてもギルドに出費があるわけでもないし、一定時間でまた復活する。

 

POPモンスターにはそれぞれ既定の維持費がかかり、アンデッドならゼロだ。

 

スケルトン程度であれば、維持費がかからない。大量召喚可能だ。

 

 

では、転移した『世界』ではどうなのか?

 

まず、物理的に不可能な量を召喚できる。

 

ナザリック外に出せばいくらでも可能だ。

 

俺はどこまで可能なのかと気になった。

 

...本当にアホなことを思いついたのだ。

 

 

カルネ村地下には、ナザリックでPOPするスケルトン達を大量に待機させている。

 

 

この世界でも維持費がかからないのかの実験のために、

 

限界はないか調査するためだけに。

 

 

…一応、村に何かあった時、最悪の奥の手、

 

時間稼ぎとしての戦力としての意味もあった。

 

 

だが、村に無断で地下に大量のPOPモンスターを待機させていた。

 

 

いや、正確には、

 

カルネ村のエンリにも元村長にも最初に言っている『実験のための畑等の利用許可』と。

 

詐欺師紛いだがちゃんと実験のための利用許可を取っていた。

 

 

ナザリック支配化の元廃村。村の地下にも同様の空間を用意していた。

 

 

実験結果、本当にスケルトン程度なら維持費がかからないことがわかった。

 

我ながら本当にアホなことをした。

 

 

しかし、今回はこれらが訓練として使えるのだ。実戦練習として。

 

こっそり各村で地下から出したとバレない様にすれば、簡単に訓練相手が用意できる。

 

いや、パンドラズ・アクターの話からすると地下のことを教えてもおそらく大丈夫だろう。

 

 

当時の俺は本当に頭がおかしかった。いや、今もかもしれない。

 






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