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コミケでの中核派参加問題、「韓国人・中国人お断り」張り紙問題

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コミケとしてはどうしたらいいのか

 ここで論考を終わってもいいんだけど、コミケとしてはどうすべきなのだろうか。つまり「中核派の参加禁止」を自主的なルールにしていいのかどうかということだ。もちろん、コミケ運営がコミケをどう考えるか・どうしたいのかということ次第なので、ぼくが口を出すことではないが、あえて考えてみる。

 「反社会的な団体のメンバーは参加できない」というような規約を考えてみよう。

 その場合「反社会的」を定義するのはなかなか厄介ではないか。「暴力団」の定義は暴対法にあるし、「組織的犯罪集団」の定義は例えば国際組織犯罪防止条約にある。しかし、前者には中核派は入らないし、後者は共謀罪問題で話題になったように定義が曖昧である。

 もちろん、「中核派、革マル派などの極左暴力集団のメンバーは参加できない」というルールを設けることも可能だ。自主的団体なのだから。

 しかし、その場合、一体コミケはなぜわざわざ「中核派、革マル派」を排除しているのかわからなくなる。コミケとは何を目指す団体なのだろうか、という問いが浮かび上がってくる。

 例えばコミケが「日本の伝統的な文化交流」を目ざす団体ならそういう「極左排除」の自主ルールはわかりやすいのだが、まさかコミケがそんな団体だとはいうまい。

 中核派は、団体として犯行声明を出したことがある。そういう角度から絞り込むこともできるだろう。「団体として犯罪行為を行った団体のメンバーは参加できない」のような規約だ。

 しかし、例えば企業が企業ぐるみで犯罪をすることもある。そういう企業の従業員はコミケに参加できないのだろうか。

 また、たとえその辺りが中核派に絞り込めるような定義を行ったとしても、なぜそんな「中核派排除」の規約を作るのか、というコミケの理念は説明できない。

 社会運動団体とコミケでは、この自主的ルールは違うだろう。ぼくは学生時代、中核派に殴られたり、蹴られたり、監禁されたりしたことがある。そうした暴力そのものを団体の中で振るうような場合は、もちろん「暴力を振るう人、ふるった人は参加できない」みたいにして規約で定めて排除すればいいんだけど、それは別に「中核派だから」排除するということでなくてもいいはずである。

 「中核派に運動をめちゃくちゃにされた」という経験を持つ団体であれば、「中核派出禁」みたいなことをやってもいいとは思う。「運動をめちゃくちゃにされた」というのは、例えば「学費値上げ反対の運動団体」のはずなのに、中核派メンバーが会議のたびにずっと「スターリン主義批判」つまり共産党批判ばかりしていて、そのための議論で何時間もかかってしまい、誰も寄り付かなくなってしまうような場合だ。

 だから、社会運動団体では、中核派や革マル派をターゲットにして排除をする規約を設けることはありえるように思われる。逆に、共産党や自民党を排除する規約を設けることもあるだろう。*3

 コミケの場合、中核派ということで参加を排除することは難しいように思われる。

 ぼくは「できるだけ表現の自由を最大限尊重する形で。良い・悪いは言論や表現の自由によって決着をつける」という角度で団体のデザインをすべきではないかと考える。

 綺麗事でない言い方をすれば、「差別的」「人権侵害的」表現であっても、できるだけ許容し、なんでも表現できる場所としての存在意義を確保するということだ。

 もちろん、行政の使用許可が得られないのでは困るので、妥協点は必要だし、おおむね法律の範囲内とするわけだが、あくまで表現の自由を最大にすることを眼目におく。だから、個人への名誉毀損・侮辱、女性蔑視、障害者差別・民族差別、暴力団賛美などもギリギリまで許容するし、その限界を求めていくことになる。その自由の拡大を求めて社会・政治運動をすることもあるだろう。

 このようにコミケをデザインするなら、中核派メンバーの参加は認められるべきだということになる。

 もちろん、コミケの運営はコミケの自由なので、ぼくが口を出すことではない。今のは「もしぼくがコミケの運営の独裁者になって運営のあり方をデザインするとしたら」というほどのものでしかない。


*1:本当にそんな張り紙があったのかという基本問題があるのだが、ここではもしそうした張り紙があったとしたら、という仮定の問題として考えてみる。

*2:「障害者お断り」「韓国人・中国人お断り」を掲げる団体は「違法」なので使用を禁止できる理由にはなりそうだが、法律だけでは罰則や義務的な措置がないので微妙だ。条例などで具体的に定めれば使用させないことはできるだろう。

*3:もちろん、ぼくはそれを批判するけどね。

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