平成の次へ 新たなジャパン・モデルの構築を

社説
2019/1/4付
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平成の日本経済は、バブルの絶頂と転落に始まり、その後始末と少子・高齢化、人口減少という新たな試練に翻弄された。戦後復興と高度成長期を主導した「昭和モデル」は色あせたのに、その次を描くことはできなかった。平成の次の時代こそ新たな日本の成長モデルを構築する時である。

産業の新陳代謝進めよ

スイスのビジネススクールIMDが国別の世界競争力ランキングの発表を始めた1989年(平成元年)、総合で首位に輝いたのは日本だった。「メード・イン・ジャパン」の家電や車が世界を席巻し、年功序列・終身雇用、生産現場のカイゼン運動など日本的経営が称賛された時代である。

ところが、金融危機が本格化した90年代後半から順位は大きく下がり、2018年は25位にとどまった。この30年で日本企業の存在感は低下し、今でも世界をリードする産業は自動車や一部の電子部品などごくわずかとなった。

最大の問題は、デジタル革命で既存の産業地図が大きく塗り替わるなかで、産業の新陳代謝が進まなかったことだ。米国では株式時価総額の上位10社に、アマゾン・ドット・コムやフェイスブックなど日本の元号で平成生まれの企業が3社あるが、日本はゼロだ。

平成時代に、バブルの負の遺産を処理し、経営改革を進め、最高益をあげるまで回復した日本企業も多い。ただ、平成の次の時代に世界で戦っていくには、日本発のグローバル新興企業や起業家をもっと生み出したい。

そのために必要なことは2つだ。ひとつ目は、リスクマネーの供給だ。官民ファンド改革を期待された産業革新投資機構のつまずきは残念だが、余剰資金の豊富な大企業の役割も大きい。

最近は、KDDIのような大企業が相次いで社内にベンチャーキャピタルをつくっている。大企業が新技術やビジネスの芽に投資すれば、次世代を担う企業の誕生を後押しできる。新興企業が台頭すれば、それが刺激になり、既存の大企業も活性化するだろう。

もうひとつは硬直した規制の見直しだ。例えば米国の多くの州では自家用車で乗客を送迎するライドシェアが日常の足として定着しているが、日本ではタクシー業界の反対で今も原則は禁止だ。

運転に不安な高齢者が多く、公共交通も行き届かない日本の過疎地でこそライドシェアは威力を発揮するはずだ。政府はあらゆる課題をデジタル化で解決するという「ソサエティー5.0」を掲げるが、それにはビジネスの障害を取り除き、新規参入を容易にすることが重要だ。

国内産業の活性化には一段の開放政策が必要だ。日産自動車のゴーン元会長の逮捕は衝撃的だったが、これで外国資本や外国人経営者の活用が停滞するのは望ましくない。内外の技術や人材を柔軟に活用できるようにする労働市場の改革も不可欠だ。

製造業をはじめ日本の産業の伝統的な強みをいかしながらも、デジタル革命など世界の新潮流にあった改革を断行し、新たなビジネスモデルをつくるべきだ。

高齢化をチャンスに

平成の次は、日本の少子・高齢化、人口減少が急速に進む時代だ。40年には団塊ジュニア世代も65歳以上になり、高齢者は3人に1人になる。急増する社会保障費をどう賄い財政を持続可能なものにするかが日本経済の大きな試練であることは間違いない。

この試練を大きなチャンスととらえることもできる。まだまだ元気な65歳以上を一律で支えるべき高齢者ととらえるのはやめようという考え方も増えている。

高齢者が人工知能(AI)やロボットなど先端技術の力も借りながら、長く働き続けられるようにしたい。高齢者の生活様式や嗜好にあわせた新サービスや製品などシルバー市場も拡大の余地は大きい。医療・介護ビジネスの発展も期待できる。

少子・高齢化は日本だけの問題ではない。欧米先進国に加え、今は若いアジアの多くの国々でも今後、高齢化が急速に進むだろう。

日本は「活力のある高齢化社会」という新たなモデルを世界に胸を張って示せるようにすべきだ。

平成の次の時代には大きな試練が待ち受ける。恐れずにそれを乗り越えることで日本はもっと強く魅力ある国になれる。

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