次の時代が今の延長線上にあるように、前の時代からのつづきで今がある。平成を論じるときは、昭和を語らなければならない。平成

社説
2019/1/3付
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次の時代が今の延長線上にあるように、前の時代からのつづきで今がある。平成を論じるときは、昭和を語らなければならない。平成の日本政治は昭和の反省のうえに成り立っているからだ。

そこから出てきたのが平成の改革だった。小選挙区の導入を柱とする政治改革と、省庁再編に伴う内閣主導の二大変革のことだ。

選挙制度のゆがみ正せ

振りかえってみれば、政治のありようにとどまらず国のかたちをも変えた。憲法秩序を改める「憲法改革」が実質的に進行したのが平成という時代だった。

平成の次を考えるとき、問題点や限界が見えてきた平成改革の改修が課題になってくるのは論をまたない。

昭和と平成の間に断層線を走らせたものは何か。政治とカネの不祥事にみられるように、おりのようにたまった自民党の長期単独政権による腐敗への批判だった。

有権者の怒りに火をつけたのは1988年に明るみに出たリクルート事件、92年に発覚した佐川急便事件だ。政治改革を求める世論が一気に高まった。

非自民連立の細川護熙内閣の誕生が政治的なひとつの結果だった。94年1月に政治改革法が成立、小選挙区比例代表並立制・政治資金規制の強化・政党助成金制度がスタートした。

中でも中選挙区から小選挙区への変更が派閥の力をそぎ、党執行部の影響力を強め自民党を変質させた。

もうひとつの改革の柱である省庁再編に伴う内閣主導は、政府・与党二元体制を改め、党主導で進んでいた政策決定プロセスを変えるねらいがあった。2001年からはじまった。

そうした平成の制度改革を巧みに使ったのが小泉純一郎内閣であり、政権交代を実現した民主党だった。そして民主党政権は制度の運用に失敗、3年3カ月で政権の座から離れ、6年をこえる安倍長期政権になっているのが今の政治の姿だ。

そこにはさまざまな問題点が出てきている。それを見直す平成改革の改良こそが差し迫ったポスト平成の政治テーマである。

選挙制度でいえば、小選挙区の見直し論が出て久しい。

選挙のたびに大量の新人議員が誕生。「魔の〇回生」などとやゆされる、疑問符がつく選良たちをうむ制度への問いかけである。少なくとも小選挙区で落選して惜敗率で比例復活の重複立候補制は早くやめた方がいい。

自民党の派閥が壊れた結果、あらわれているのは政治指導者の養成をする組織がなくなったことだ。有力なリーダーをどう育てていくかが課題だ。

政策決定で党の力をそぎ、利権の温床とされていた族議員がばっこするのを防いだのには意味があったが、こんどは議員のパワーが落ちすぎて党によるチェックが働かなくなっているとの見方もある。皮肉なことに党の復権が必要になっている。

内閣主導の改革のねらいは間違っていない。ただ結果として「強すぎる官邸」ができてしまった。「官邸官僚」によって各省が思考停止におちいっているとの指摘は見逃せない。

「強すぎる官邸」を抑止

霞が関の力を結集していくためには、幹部人事の選考で第三者によるチェック機関の設置なども考えていいのかもしれない。

「弱すぎる野党」の問題も深刻だ。野党がバラバラで「安倍一強」を許し、政治に緊張感を欠いている理由のひとつだ。

平成の30年の結末がこれでは政権交代可能な二大政党制という政治改革は夢のまた夢である。小異を捨てて大同につくことを考えるべきときだ。

ほとんど進んでいないのが国会改革である。衆院と参院の選挙制度は似通っており、両院の機能分担も掛け声倒れ。放置していては政治への失望が募るばかりだ。

平成の30年を総括すると、小選挙区と省庁再編の制度改革の10年、つづいて小泉改革と民主党政権の誕生という制度運用の10年、そして民主党政権と安倍政権という制度運用の失敗・問題点の露呈の10年だった。

次の時代はどうあるべきだろうか。まずは制度改修で平成改革のバージョンアップに取り組むということだろう。

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