パイオニアの株価データ(昭和50~51年)


「おー、昭和50~51年のパイオニアの4本値、欲しかったんだよー」 という人に向けたページです。

おわかりの方もいると思います。
立花義正 『あなたも株のプロになれる』(同友館)に、当時のパイオニアの売買譜があるんですよね。

以下は、この本を読んだことのある人が対象です。

慣れた人は売買譜だけでわかるのでしょうけれど、チャートとつき合わせて見たいという人もいるはずです。
ってゆうか、要するに私が見たかったのですが …。

もっとも、この本の主題は 「玉の操作の仕方」 だと思います。チャートで売買ポイントを見るのは見当違いで、売買譜で 「玉の動き方」 を見るのが正しいのでしょうけれど。
古いデータの入手法がわからなかったので、たまに図書館に行ったとき、新聞の縮刷版からノートに少しずつ写していったんです(1ヶ月分を写すのに15分くらいかかる)
もちろん、写し間違いとかあるかも知れません。正確さは保証しませんです。

データは、昭和49年7月始め~昭和51年末まで。コンマ区切りのテキスト・ファイルです。
ダウンロードしたい方は、次からどうぞ。解凍すればテキスト・ファイルです。
パイオニアの株価データ(6.77K)
数値データだけですけれど、あとはご自身で好きにやって下さい。

とは言っても、数値データでは扱えない方もいるかと思います。
その場合は、直接チャートを表示する簡単なソフトを作ってみましたので、こちらのページからどうぞ。


データの説明です。

日付、4本値、出来高の順で、出来高は1000株単位。
たとえば、

500121,775,775,760,763,192,
とあるのは、

 昭和50年1月21日、始値 775円、高値 775円、安値 760円、終値 763円、出来高 192000株

という意味です。


データを見ればわかりますが、当時は 1000円を超えると呼値が 10円刻みになったようです。

出来高について補足しておきます。パイオニアは、当初 1000株単位でしたが、51年9月21日から 100株単位に変更しています。ところが、新聞に載っている出来高は、単位1000株のままで表示されていて、端数もないんです。つまり、切り捨てか四捨五入で、出来高を 1000株単位に丸めているようです。
したがって、上のデータも、51年9月21日以降の出来高は、1000株単位に丸めたものです。

それから、『あなたも株のプロになれる』 の売買譜にも終値と一部の始値が記されていますが、上のデータとは、16ヶ所で食い違っています。これは、本の誤植と思われます。
誤植の箇所を知りたい人は、ここをクリックしてください。


権利落ちについて書いておきます。
この期間に、株式分割 (当時の言葉では “無償増資”) が3回あります。

・ 昭和49年9月26日権利落ち …… 1株 → 1.1株の分割

・ 昭和50年9月26日権利落ち …… 1株 → 1.1株の分割

・ 昭和51年9月27日権利落ち …… 1株 → 1.25株の分割

あと、上の3つと同じ日に配当を落としています。49、50年は15円配、51年は24円配です。ただし、権利落ち時点での日本経済新聞による予想配当は、3回とも15円だったようです。
なお、当時のパイオニアは9月が本決算で、3月に配当はありませんでした。


昭和50~51年は、こんな年でした。

昭和50年
エリザベス女王が来日してますね。ヒット曲は、「なごり雪」、「木綿のハンカチーフ」 など。
「フランダースの犬」、「ぴったしカンカン」 が放送されたのも、この年です。
大卒初任給の平均は 9万1272円。詳しくはこちらのサイトへ

昭和51年
ロッキード事件ですね。ヤマト運輸が宅配便を開始。日本ビクターがVHS方式の家庭用VTRを出しています。「徹子の部屋」 がスタート。ヒット曲は、キャンディーズの 「春一番」 など。
バイキング1号が、初の火星表面の写真を撮影しています。詳しくはこちらのサイトへ


そして、当時の東証1部には約 920銘柄が上場していて、1日の出来高は通常2億株くらい。
昭和50~51年の2年間から日経平均の4本値を作ると、

始値 3777円40銭(50年大発会)
高値 4990円85銭(51年大納会)
安値 3627円04銭(50年1月10日)
終値 4990円85銭(51年大納会)
となります(日々の終値から作ったもの)。
3割超の上げですし、高値で終えていますから、堅調といえるでしょう。

下の2つの図は、昭和50年~51年における、月末の値を使って作ったグラフ。
いずれも昭和50年1月末を100として描いています。個別株は分割修正済みです。

まず、左側の図。日経平均の上げが3割に達していないようで、変に思うかも知れませんが、これは昭和50年1月末の日経平均が、3957円53銭だったため。ここから計ると2年で 26%しか上げていません。

日本経済新聞に掲載されている業種別株価指数での、電機株指数が青色で描いてあります。これは2年でほぼ2倍になっています。当時は全28業種。電機は、昭和50年には年間値上がり率第1位、昭和51年は第6位です。個別の例としてシャープの株価も示しました。2倍以上になっていますね。

それにしても、パイオニア。すごいです。4.5倍。買って持ってりゃ大儲け。


右側の図。他の代表的な電機株として、ソニー、松下、NECのグラフです。NECはいまいちですが、ソニー、松下はほぼ2倍。2年で2倍になれば、普通は文句なしですが、パイオニアと比べるとねぇ…。

ソニーは昭和50年の前半に急伸していますね。この年に家庭用VTRのベータマックスを出していますが、関係あるのかな?


次の文は、鶴田幸男 知って得する株の心理学』(実業之日本社)からの引用です(187~188ページ)
このころのパイオニアのイメージがわかりますね。

昭和40年台後半、折からのステレオブームで業界が潤っていたときの話。この時、高級ステレオのトップを走り、高収益を上げていたのがパイオニア。同社の資本金は当時24億円。これに対し家電の最大手松下は500億円。多くの博士を擁していることで知られていた日立は1200億円であった。にもかかわらず、大手メーカーは、小型企業のパイオニアになぜ品質でかなわないのか。
(ここで数行省略しますが、ある大手マスコミの電機担当の記者は、当時、次のように話してくれたそうです)
「パイオニアの技術者は、優等生的な日立や東芝などの技術者とは違う。芯から音響が好きだ。朝から晩まで頭の中は音響で満ちている。優等生ではないから、たとえば、英語は苦手かも知れない。しかし、音響に関しては、誰にも負けない自負がある。それは最先端の製品が証明している。このような技術者を受け入れて研究させる会社は、一所集中で強い。小型であるけれども、注目できる会社のひとつといえる」 と。


ところで、この売買譜によると2年でいくら利益が出ているのでしょうか?

当時の手数料・税金がわからないのですが、仮に手数料を約定代金の 1.15%として計算すると 3047万1312円の利益、手数料なしで計算すると 4467万1000円のような気がします。

手数料は端数切り捨て。そして、杓子定規に計算しています。たとえば、昭和50年10月31日に、「6000株買い持ち、6000株売り持ち」 のポジションを手仕舞っています。これを、市場で 「6000株の売り」 と 「6000株の買い」 を行って手仕舞ったとみなしました。実際は現渡しで済むはずです。
「ような気がします」 というのは、ここのサイトの計算と100万円ほど違っているんです。
私の計算では、手数料なしとした場合、売値の合計は 639,720,000円、買値の合計は 595,049,000円になるのですが…。例の16ヶ所の誤植についても考慮してみたのですが、やはり計算が合わないです。あちらのサイトが間違っていると思うのですけれど、自信はありません。


利益の推移をグラフにしたのが次の図です。
黒線は、分割修正をしたパイオニアの株価。赤線は手数料なしとした場合の利益推移。青線は、手数料 1.15%の場合です。縦線は3ヶ月おきに入れています。



さすがに上手いもので、大きなドローダウンはないですね。
赤っぽい色をつけた期間に注目して下さい。この3つの期間で利益が急増しています。手数料ありの場合では、この3つの期間を除くと、あとはほとんど儲かってないくらいです。

3つとも、短期間の直線的な株価上昇を、大きな枚数でペロリと取っているわけですね。
いつもこんな具合に、「たいていはトントンで売買しているけれど、ときたま短期間にドカーンと儲ける」 というパターンだったのでしょうか。

上手い人は、このパターンなのかも知れませんね。上げ下げを理論的に予測して取るというより、偶発的に株が大きく動いた時に、「エヘヘ、ちょうどこの方向にポジション持ってるんですよ」 てなかんじでね。偶然を必然的に取る、みたいな。


で、この売買譜と同じことをするのに資金はいくら必要でしょうか?

たとえば、「10000株買い持ち、3000株売り持ち」 という場合、これは単に 「7000株買い持ち」 と同じですよね。そこで、「ツナギ」 は入れないで、常に純粋な 「買い」 か 「売り」 でポジションを持つとしましょう。
さらに、「買い」 は現物とし、「売り」 もレバレッジをかけないとします(つまり、約定代金100万円の空売りには、100万円の資金が必要とみなす)

そう考えると、5000万円以上の資金がいるみたいです。

最も資金を必要とするのは、昭和50年6月13日です。3月に空売りが失敗して、百数十万の損失を出したあと買い転換し、6月13日には4万株の買い持ちになっています。この時点で、手数料なしでは 5217万円、手数料 1.15%では 5507万円が必要です(いずれも1万円未満は切り上げました)
ここさえ凌げば、その後は利益が出ているため、資金繰りには余裕があるみたいです。


しかし、5000万円あるなら、パイオニアに全部投入して、2年持ってればねぇ。 4.5倍で 2億2500万円!
「上昇トレンドがはっきり崩れるまでは売らない」 って決めていれば、少なくとも昭和51年9月くらいまでは持続になったような…。

… ネコキンってやつですね、これは。

[注釈]ネコキンとは、猫のキンタマ。前から見えないが後ろから丸見えということで、後講釈のことをこう言うらしいです。


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