骸骨道中膝栗毛   作:おt
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デミ「(聖王国に)行ってくる」


18#カッツェ平野のダンジョン攻略ー前編ー

「ここが、カッツェ平野ねぇ…」

 

テンションが明らかに下がったであろうモモンガの声が発せられる。

 

数刻前、帝国冒険者組合で依頼をうけたモモンガはテンションが上がっていた。

謎の遺跡の探索は勿論のことだが聞くとこによると、カッツェ平野は一年中霧が立ち込めたアンデッド多発地帯ということらしい。

 

(つまり、この世界の観光名所ということだな!)

 

アンデッドの数減らしを行っている帝国騎士や冒険者からすると、カッツェ平野嘗めるのも大概にしろ!と言える感想だが、本人は至って本気である。

 

なんせ、モモンガはアンデッドの王――オーバーロードである。

この世界の住人からしたら地獄の地でも、感覚としては、実家に帰るようなもんだよな?とふざける余裕すらある。

 

(もしかしたら、この世界固有のアンデッドや私が想像もできないような強さや能力を持ったアンデッドがいるかもしれない…ああ、楽しみだ!)

 

普段なら警戒が勝つ、モモンガだが…今回ばかりは非常に楽しみにしていたのだ。

しかし…

 

(霧が濃すぎてなんも見えねぇ!)

 

(向かってくるアンデッドはスケルトンやゾンビの下級アンデッドばっかでつまらねぇ!)   

 

(そもそも、アンデッド感知が四方で反応して落ち着かない…)

 

結果、モモンガのテンションは爆下がり。

それに反比例して、コキュートスやナーベラルがアンデッドの露払いでテンションが上がっている。

 

「ナーベ!ソチラノゾンビ4体に魔法ヲハナテ!一体モ御身に近ヅケルナ!」

 

 

「承知しました!喰らえダニども!電撃球!」

 

それにしてもこの守護者達、ノリノリである。

 

コキュートスなどは、この世界にきて見たことないような笑顔とともにスケルトンを粉々に、ゾンビを腐った死体からただの肉塊に変形させている。

 

(いいじゃないか…部下のストレス発散にもなるクエスト。報酬もあるし、一石二鳥じゃないか。でも、なんだろ…釈然としない)

 

そもそも、モモンガ達の目的は遺跡の調査である。観光やアンデッド殲滅では、決してないのだ。

 

決して、自分と周りの温度差が気にくわない訳ではなく、純粋に目的を果たしにいかなければならないのである。

 

「二人とも。そこまで神経質に敵を殲滅する必要はなかろう。どうせ、こやつらには私に傷をつけることすらできないのだからな」

 

「はっ!我々を気遣ってのお言葉。ありがとうございます!ですが、この様な下等な存在が御身に近づくことが許しがたく…」

 

取り敢えずモモンガとしては、早く遺跡調査をしたいので要らない気遣いである。 

 

だが、直接言えばションボリさせてしまうだろう。

 

(リアルの取引先と同じくらい気を遣っているような…)

 

ナザリックがそのまま転移すれば、ここまでNPCが繊細になることもなかっただろう。

 

堅固にして不落の城であるナザリックに志をともにした同士、それらの心強い要素が一つとしてないのは、NPCが心細さを感じるのは仕方のないことだろう。

 

ただ、モモンガはそんなことは知らない。

 

つい最近まで、ゲームの置物でしかなかったのだ。NPCの心情など計れるはずがない。

結果として、モモンガにとってNPCは多くの地雷をもった繊細な存在として認識されているのだ。

 

「お前たちの供回りとしての行動には非常に満足している。しかし、この遺跡の情報は他国にもわたっている。早く行動するに越したことはないだろう」

 

モモンガの一旦は褒めてから要件を伝える浅いテクによりNPCの表情にも納得の色が浮かぶ。

 

しかし、明らかにそれだけではないことも表情から読み取れる。

 

(うう…そんな名残惜しそうな顔をしないでくれよ。何か悪いことしてるみたいじゃん…)

 

「とりあえず…露払いはほどほどで頼む」

 

「はい!」 「ハイ!」

 

しっぽがあれば振っているであろう二人の返事を確認し、モモンガはその遺跡の方角に歩き出す。

 

黙々と進むと、意外に早く目的地についた。

 

「これが…」

 

まごうことなき、遺跡だ。

 

鈴木悟が小学校の時に教科書に載っていた古代ヨーロッパの神殿。ローマだったか?ギリシャだったか?をイメージさせられる概観である。

 

このあたりの地層を使用し建設されたのか、墳墓を構成する壁のそこかしこにいままで歩いた地面と同じ特徴を見つけることが出来る。

 

ここまで立派に作られている遺跡なのになぜ、土を固めたような粗い素材をつかっているのだろうか?

 

これだけの技術があれば表面のコーティングも行う技術力はあっても不思議ではない。

 

入口に乱雑に配置された墓石も不自然である。

 

これらの材料もこの地の土であることは読み取れる。

 

しかし、墓石くらい石で作成するのがスタンダードだし形状で考えれば石を加工するほうが手間もかからないように思える。

 

そしてなにより疑問なのは…

 

「ナザリックの地表部に余りにも似すぎている…」

 

モモンガもコキュートスもナーベラルも絶句した。

 

これが、ナザリックであれば三人とも声を上げて喜んだだろう。

 

しかし、材料も違えば所々で形状に粗が見られる。

そして、なにより本物のナザリックだとしたら大きさが本物の半分ほどしかないのはおかしい。

 

「マッ!!マサカ…至高の御方ガナザリック模倣シ、オ創リニナラレタノデハ!?」

 

コキュートスの言葉にハッとする。

この遺跡を作成したのはナザリックを知っている人物。

選択肢は限られてくるのだ。

 

「まっまさか、武人建御雷さんとか弐式炎雷さん!!彼らなら遊びで作るのもありえるよな!!」

 

モモンガが朗らかに言う。自分の言うことを自分で信じたいそんな声色だ。

 

「彼らなら、ナザリックの形状を再現できても不自然じゃないもんな!彼らに会えるかも!もしかして別の人かもしれないな!」

 

早く、中に進もうと促すモモンガに珍しくナーベラルがストップをかける。

 

「お待ちください。確かにナザリックに似てはいますが、これはナザリックではありません。モモンガ様が前に出ることはできるだけ避けて、私達を盾にお使いしながら前に進んでください!!」

 

ナーベラルの忠告は尤もである。

 

普段であれば警戒に関しての注意は、モモンガが言う側に回っていただろう。

 

しかし、仲間というモモンガーー鈴木悟が最も求めているものを目の前に静止されたという事実が彼を不愉快にさせる。

 

「ナーベラルゥ!俺の楽しい気分に水を差す気かぁ!」

 

モモンガの怒号にナーベラルが怯え、顔から血の気が引く。

コキュートスもモモンガの突然の激怒に固まってしまう。

 

今の鈴木悟にとってユグドラシルの仲間が最も大切なものである。

 

目の前にその仲間がいるかもしれないのにそれを止めるナーベラルへ怒りが沸々とそして、止まることなく溢れる。

 

「目の前に俺の最も大切な仲間がいるのに!一秒でも速く彼等の元に行くべきだろぉ!!それを…あ…」

 

アンデッドの精神沈静化を終えたモモンガの目の前には、完全に怯えきったナーベラルとコキュートスが僅かに身を震わしている状況である。

 

(やってしまった…普通に考えればナーベラルの意見は何も間違ってないじゃないか…最悪だ)

 

今のモモンガは、部下に理不尽に怒るパワハラ上司以外の何者でもない。

 

(普段から気を付けていたのに、仲間の話になったとたん冷静じやいられなくなってしまった…)

 

このままでは、ダンジョン探索どころではない。

どう、言い訳をするかを必死に考えるモモンガ。

 

(いや…違うな。そうじゃない。)

 

「二人とも…」

 

モモンガが喋り始めるとコキュートスとナーベラルの体がビクッと反応する

 

(二人を完全に怯えさせてしまったな…失態だな…)

 

「さっきは理不尽に怒ってしまって済まなかった!!!」

 

ナーベラルとコキュートスがキョトンとしたままモモンガを見る。

 

モモンガは誠心誠意、謝ることにした。

 

今回の件は明かにモモンガが悪い。これを誤魔化し、謝罪しないのは支配者らしい態度なのかもしれない。

 

しかし、支配者云々以前に人間(アンデッド)失格であるーーそう鈴木悟は思った。

 

「かつての仲間のことで頭に血が上っていたみたいだ。ナーベラルの言うことに間違いはなかった…許してほしい」

 

「い…いえ!!モモンガ様のお気持ちを汲み取れなかった

私の失態です!!ですので、御顔をあげてください!」

 

自分達にむけ頭を深々と下げるモモンガにナーベラルが動揺しきった声で懇願する。

 

「いや、お前に失態はなかった。もし、次も同じような過ちを犯したときにもう一度、私を諫めてほしい。正当な態度をとったお前への叱責…本当にすまなかった。」

 

ナーベラルがブルリと足先からつむじまで体を震わす。彼女らNPCにとっての幸福は1番に至高の41人の役に立つこと。次点で構ってくれることである。

 

モモンガの声色からナーベラルを本当に頼ってくれていることが伝わり、それが言い知れぬ快感になってナーベラルを襲う。

 

現在、忍者とキノコ狩りに興じている真祖ならあっちの方が大変になるだろうし、ナザリックの守護者統括殿であれば、そのままモモンガを押し倒しているだろう。では、ナーベラルなら?

 

「はい!このナーベラル・ガンマ。モモンガ様の期待を裏切らぬ働きをすることを誓います!!」

 

キリリ顔で喜びを噛みしめる。

随分謙虚な方法で喜びを噛みしめて終了するというモモンガの胃に優しい設定である。

 

素で自分とモモンガの本名を大声で言ってしまうのはご愛嬌だろう…

 

「よし!!気を取り直して…ダンジョンへ突入だ!!なにか注意する点が思いつくものは手を上げて述べてくれ」

 

雰囲気が良くなったと確信したモモンガはダンジョンへ突入する準備を開始する。

先程のナーベラルが述べたとおり、準備をしないのは本当に危険なのだ。

 

「ナーベラルガコノナカデ、一番HPト守備力ガ低イノデソコヲ考慮スベキダト考エマス」

 

「うむ、その通りだな。さらに私達には探知系のスキルを持っているものがいない。

そこをどうカバーするかだが…コキュートスは殺気により生物の有無はある程度把握できるんだったな?」

 

「ハイ。シカシ、今回ノダンジョンハ場所柄アンデッドガ主体トナッテイルカト…アンデッドハ覇気ガ感ジニクイノデス…」

 

「そうなると…私が前方。ナーベラルが中陣、コキュートス後方という布陣が最適だろうな」

 

「それでは!!御方が危険に晒される可能性があります!!せめて後方に!!」

 

「ナーベラル…ダンジョンに入る以上、危険は必ず付きまとう。後方だから安全というわけでも前方だから危険ということでもない…ただ、このなかで耐久性とアンデッド感知の能力を持つ私が前方を務めるのが最適なのだ」

 

「しかし…」

 

(相変わらずNPCは過保護だなー。二人よりダンジョン攻略に慣れてる俺が前方なのは最適なんだけどな)

 

「ナーベラル…モモンガ様ノ仰ッテイルコトハ正シイ…臣下トシテハ不甲斐ナイガ、今我等ニデキルコトヲ全ウスベキダ」

 

(おっ!コキュートスはいいこと言うな!!コキュートスは武士然としているけど意外に柔軟な性格なのかもしれないな!)

 

「納得したか?では出発

「モモンガ様!!」

 

ナーベラルでもコキュートスでもない第三者の声がモモンガという本当の名を呼びかける。

声の発生元に三人が振り返ると…

 

「アウラ…?」

 

「やっぱり、モモンガ様だ!!モぉ、モモンガしぁま…グス。会いたかったです!!」

 

顔を涙でぐしゃぐしゃにしたダークエルフがモモンガに走り寄ってくる。

 

モモンガはまず、身構える。

モモンガは動くアウラとは初対面である。今更、NPCが動くことに驚きはないが警戒をしなくてはならない。

 

しかし、その警戒も一瞬で溶けてしまう。

モモンガは思い出したのだ。一人でいるさみしさを。

 

アウラの言動から察するに、アウラはこの世界で一人で行動していたのだろう。

 

アウラは階層守護者内ではさほど強くないが、この世界ではまさしく動く災害ともいえる強さだ。生活するのに苦労はないだろう。

 

しかし、見知らぬ土地に一人で放り出されたアウラはまだ子供だ。心細かったに違いない。

 

(俺の存在なんかで安心できるなら、アウラが安心できるように迎えてやらないとな!)

 

アウラが数える暇もない速さでモモンガの胸の位置に飛びつく。

 

モモンガはアウラの勢いに押されながらもしっかりとアウラを優しくキャッチする。

 

「会いたかったです!!会いたくて…グス。でも、見つからなくて…でも、良かった!あえでよがったぁ!!」

 

(迷子を見つけた時のお父さんってこんな気持ちなのかな…完全に想像でしかないけどこんな気持ちなんだろうなぁ…)

 

モモンガはアウラが泣き止むまで胸を貸し、落ち着かせた。その様子を見ているナーベラルとコキュートスももらい泣きで号泣していたのは言うまでもない。

 

 

「すいません…お召し物を涙で汚してしまいました…」

 

10分ほど泣き、落ち着いたアウラが申し訳なさそうにモモンガに言う。

 

「いいさ。お前達の為ならいくらでも服を汚そう。それよりアウラ落ち着いたか?」

 

「はい…お恥ずかしい姿をお見せしてしまいました。」

 

「アウラ…!!ヨク一人デ頑張ッタナ!!ソレデコソ、栄エアルナザリックノ階層守護者ダ!!」

 

「アウラ様…合流できたのはとても喜ばしいことです。ダンジョンに入っていたら行き違いになっていたかもしれません…」

 

ナーベラルとコキュートスが涙を流しながらアウラに言う。

 

「ダンジョン…あっ!!モモンガ様!!大変なんです!マーレが!!」

 

 

「それではアウラ…マーレがどう大変なのかを順を追って説明してくれるか?」

 

「はい…私はこの場所から少し離れた山に気づいたら倒れていました。多分、1か月くらい前だと思います。」

 

「それで、近くを探索して騎獣になりそうなモンスターを探してたんですが…なんかどれも大した強さじゃなかったので、物分かりが良いドラゴン一匹以外はほとんど殺しちゃいました。」

 

「そのドラゴンはどこにいるんだ?」

 

「あーあいつは、一応あっちのほうに置いてきてます。よびますか?」

 

「まあ、ドラゴンは別に置いておこう。話の本筋ではないのだろう?」

 

「はい!そうですね!置いときます!…えーと、騎獣を手に入れたので色々、探索のエリアを広げてたんですけど…この平野でマーレが倒れているのを見つけたんですよ!!」

 

「「「!!!」」」

 

「それで…マーレは無事だったのか?」

 

「一応、外傷は見当たらなかったです…それで、声を掛けようとしたんですけど、いきなりマーレが叫びだしたと思ったら、地面を魔法で動かしてこの目の前のダンジョンを自分を中心に囲い込むように造ったんです」

 

「つまり、アウラはマーレに喋りかけることは結果的にできなかったということか?」

 

「…はい。あっという間にダンジョンの外装が出来上がっていって…一度、ダンジョンに入ってみたんですけどマーレが色々、罠を張ってるみたいで…。危険と判断して撤退して今に至ります」

 

(マーレは守護者の序列でいうと№2…さらに広範囲攻撃なら相当な強さだ…アウラ単体では攻略が難しいのも頷ける)

 

「つまり、マーレはアウラに攻撃を仕掛けてきたという事か?」

 

「はい。多分、マーレは地下の一番深い場所にいると思います。そこから魔法を使って侵入者を撃退しようとしているのかもしれません…ダンジョンには落とし穴などの罠もありました。」

 

(うーむ…理由は分からないがマーレは見境なく攻撃をしているみたいだな。確か、帝国の冒険者も何人か犠牲になっているみたいだし)

 

「というか、アウラの話を聞く限りこの世界に転移したのは俺たちだけではないみたいだな…アウラ、マーレ以外に他のNPCもいるのかもしれん」

 

「ワガ友デミウルゴスヤ盟友ノ恐怖公モイルカモシレナイナ…会イタイモノダ」

 

「姉さんや妹達もいるのかしら…会いたい…」

 

「そうだね!!ユリやペストーニャとまたお茶したいなぁ」

 

(ふふっ)

 

モモンガの中からあたたかい気持ちがあふれ出してくる。

 

彼らが挙げたキャラは、様々な関係がある。

 

種族的に仲がいいのだろうと推測されるもの。

肩書的に仲がいいと推測できるもの。

そして、創造主であるアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの仲を反映したもの。

 

(ぶくぶく茶釜さん、餡ころもっちもっちさん、やまいこさんは仲が良かったからな…)

 

モモンガのなかの楽しかった記憶が次々と蘇ってくる。

それは、降り積もる雪の様に溜まりモモンガの心を満たそうとするが

 

「クソがぁ…抑制されたか」

 

アンデッドの特性によりその感情も綺麗さっぱり消え去ってしまう。

 

(本当にこの体には振り回されているな…メリットも大きいんだけどな)

 

モモンガにNPCの視線が刺さっていることにここで気が付く。どうやら、モモンガが不機嫌になっていると思ったのかその表情は少し硬い。

 

「…ごほん。よし!!アウラが加わったことにより感知の面でも戦力が整ったな!これよりダンジョン攻略+マーレの救出を開始する!」

 

出来る限り明るい声になるように努めて声を出す。

機嫌がよさそうなモモンガにNPC達も表情から硬さが抜ける。

 

「もしかして…モモン殿ですか?」

 

しかし、またしてもモモンガ達の出発は妨げられる。

 

声を掛けてきたのは金髪の品の良さそうな男。年のころは20代後半から30代前半と思われる。後ろには仰々しい恰好をした神官らしき団体を連れている。

 

「そうですが…どちら様ですか?」

 

「これは失礼。初めまして。私はスレイン法国のクアイエッセ・ハゼイア・ クインティアと申します。モモン殿の噂は良く聞いています。」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで皆さんはここに何をしに来られたので?」

 

「はい。私達は本国からこの遺跡の調査を行うように言われておりまして…モモン殿の一行は三人と聞いていましたが…そのエルフのお子さんは?」

 

モモンガのない心臓がドキッと跳ねる。

 

(まずい!アウラにはなにも説明していない!ここはおれが喋り倒して誤魔化すしかない!)

 

「えーとですね…私達が兄の魔法実験でこの大陸に飛ばされたことはご存じで?」

 

「ええ、そう聞いています。」

 

「この子はどうやら、別の場所に飛ばされてたようで今さっき再会したんですよ」

 

「そうだったのですか!ところで、モモン殿とその子はどういった関係で?」

 

(そんな突っ込んで聞く!?そんなの考えてないよ…)

 

「この子は私の子です」

 

空気を読んでいたアウラもモモンガの突拍子もない発言に驚きのアクションが出てしまう。

 

しかし、何度かこういう状況を経験したコキュートスが自然にクアイエッセとアウラの間に入りアウラの動揺を隠しきる。

 

コキュートスは数々の経験により、着実に出来る男としてのレベルを上げていたのだった。

 

「えっ!?モモン殿は?ダークエルフなのですか!?」

 

「いえ、違いますよ!私は人間です。この子は義理の子供です。前妻の連れ子なんです。」

 

自分の嘘の大きな穴に気づき訂正するモモンガ…しかし、嘘を塗り固めるとさらにその嘘を塗り固めるのに嘘をつかなければならないのは世の常である。

 

「なるほど前妻がいらっしゃるんですね。本妻は今どちらに?そちらのナーベ殿ですか?」

 

「ナーベは妻ではないですが、関係としては恋人同士にあたりますね。」

 

アウラがまたもや飛び出す爆弾発言に反応を隠し切れない。

 

しかし、コキュートスの働きによりその動揺が相手側に伝わることはない。

彼は出来る男(ry

 

「なるほど、モモン殿達もどうやらこちらの遺跡に用がある様子…どうですか?一緒に探索いたしませんか?私達も救国の英雄であるモモン殿とご一緒できるのは心強い」

 

「…そうですね。そうしましょうか。ちょっと、仲間と隊列の組みなおしなどを相談したいので少し待っていただけますか?」

 

モモンガがクアイエッセから離れたところで、陽光聖典隊長ニグン・グリッド・ルーインがクアイエッセに耳打ちする。

 

「遺跡の調査だけでなく、モモン殿とも接触できたのは幸運でしたな」

 

「そうですね。できれば今回で法国に好印象を抱かせることが出来ればいいのですが…」

 

「ところで、モモン殿の印象はどう見られますか?」

 

「そうですね…神の雰囲気というものがあるのかはわかりませんが、特別なものは感じませんね。まあ、私は占星千里と違ってそういったことに秀でていないので勘にしかなりませんが」

 

「そうですね。私も同意見です。…しかし、ダークエルフか。汚らしいエルフ共を思い出して胸糞が悪いですな」

 

「…弁えているとはおもいますが、間違ってもモモン殿の耳に入らないように。絶対に悪印象は抱かせないように厳しく隊員たちにも言い聞かせてください」

 

「承知しました!クインティア様!!」

 

「…ところで、今回は漆黒聖典と陽光聖典は共同戦線中なんですからそう畏まらないでください。立場上はあなたが上でしょうに」

 

「私たち隊の上位ともいえる存在にそれは…なんとも厳しい要求ですな」

 

ニグンは苦笑いとともにそういった。

 

 

「も、モモンガ様ってナーベラルと恋人なんですかぁ!?」

 

「アウラ!声が大きいぞ!アイテムを使っているとは言え、これは低位アイテムだ聞こえないとも限らん」

 

「し、失礼しました。」

 

「それと、私とナーベラルが恋人なのはあくまでも設定だ。だからあまり気にするな…それよりもお前をいきなり義理の子供と紹介して悪かったな。」

 

「心臓とまるかと思いましたよ~。でも全然、嫌じゃないです!!」

 

「ふふ、そうか。それは良かった。設定通りパパと呼んでもいいんだぞ?」

 

モモンガがおどける様に言う。

 

「えっ!?良いんですか!?…でも流石に不敬なんじゃ…」

 

(不敬!?別にそんなの気にしないで!肩の力抜いて!)

 

「別に良い。他ならぬ私が許可を出してるんだからな」

 

「本当ですか!!うーん。流石にパパは失礼なのでお父様でどうでしょう!?」

 

(あれ?意外と恥ずかしいな!冷静に考えたらぶくぶく茶釜さんの娘にお父様って呼ばせるって!!黒に近い灰色なのでは!?)

 

「アウラ…やはりモモンガで

 

「スバラシイ!!」

 

(あれ?)

 

「モモンガ様ヲ父トスルナラサシズメ私ハアウラノ教育係!!アウラ!私ノコトハ爺トヨンデクレ!!爺ハ幼少カラアウラ…姫ノ世話係トイウ設定デ頼ム!」

 

(コキュートスがまた、訳の分からない方向にぶっ飛んじゃったよ!!)

 

「え~姫は恥ずかしいな。アウラ様ならいいよ!」

 

(一応、okするんだ…)

 

「えーアウラ!一応、気づいているとは思うが姿が変わってしまってるコキュートス以外は皆、簡単な偽名を名乗っている。お前も何か偽名を名乗ってもらうぞ」

 

「そうなんですね!!でしたら、ミドルネームからとってベラなんてどーでしょう!?」

 

「いい名前だと思います。アウラ様」

 

「ナーベラルゥー!!いや、ナーベ!今の私はベラ!!分かった!?」

 

そうでしたね。と静かに笑うナーベラル。そういえば姿が変わってたねと今更、突っ込まれるコキュートスを尻目にモモンガは考える。

 

(マーレを救出するときに法国の連中が邪魔だ…最下層に行くまでに奴らを振り切る方法を考えないとな…)

 

 

 




長くなりそうなのでここらで少し切ります。…キリは少し悪いですが…仕方ないね(諦め)

多分、中編と後編に続きます。

ー補足ー
アウラは6階層に最終日モモンガ達が散歩にきたときに連れたコキュートス(外装変更済)を見てるので衝撃はあまりないです。

ーその頃の真祖と忍者ー

シャル「あそこからお湯がでているでありんすえ」

ニシキ「まじか?まさか…ペロ、これは硫黄の味だ!つまり…温泉!!」

シャル「温泉でありんすか?ナザリックのに比べて少し匂うでありんすね」

ニシキ「天然ものはそんなものさ!うひょー!温泉なんて奮発した旅行ぶりだ!」

シャル「御方も入られてありんすし、わらわも入るでありんす」

ニシキ(なんで、シャルティアのアイテムボックスには、早着替え用のカーテンがあるんだろ?)

ー聖王国サイドー

ケラルト「公務、溜まってるので本当に集中してくださいねー」

カルカ「今、必死にやってますー!!」

ケラルト「モモン様に会ってからカルカ様が少しアホの子になってるような…」

カルカ「ねえ…ケラルト。最近、モモン様にも会えなかったしちょっと疲れてるの。溜まってる公務もあと二日で終わるから、その後は南部に旅行に行ってもいい?」

ケラルト「旅行ですか!?うーん。確かに最近色々と大変でしたからね…いいですよ。日程を調整します。」

カルカ「やったー!ケラルト大好き!」

ケラルト「えーと…旅行予定日の辺りは私は神殿関係の仕事が山積みですね…私は行けなさそうなのでお姉さまと一応、聖騎士を何人か護衛で連れていってぐたさいね」

カルカ「はーい!」

カルカ(計画通り!!)

カルカ(その日にケラルトが忙しいのは把握ずみ!!後はレメディオスがうまくやれば…くふふふふ!)


レメ「フランコ!!お前、外交も詳しかったな!任務の話があるので後で会議室にきてくれ!…あとは…」



ネイア「えっ!?聖王女の護衛ですか?」

miikoさん誤字報告ありがとうございます。







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