クロイツと勇者候補選抜御前試合 その二十 ~瘴気で正気を失い勝機を得る。何を言ってるんだお前は~
私は暗い空間の中にポツンと一人でたたずんでいた。ここは? 悲しみ? 嫉妬? 怒り? なに、この感情はこの暗い空間は考えられるだけの憎悪が渦巻いている。
「はあ、本当にあなたはバカねクロリア」
その言葉と共に黒い闇は一つに集約すると、そこにはシルフィーネが立っていた。そのシルフィーネの右手に先程の黒い闇が渦巻いている。
「シルフィーネ?」
私は少し怒り顔の彼女に訪ねる。
「あなたね、魔物の部位を食べるとか頭おかしいの?」
「いやいやあれは仕方ないでしょ。どんなものでも食事として出されたら普通食べるじゃない」
「その食事に対する飽く無き探求心に感心するわね」
シルフィーネは私の言葉に呆れて首を振る。
「で、その禍々しい渦はなんなの?」
「これは瘴気よ、あなたも感じたでしょ、ドス黒いモノを」
シルフィーネの説明では魔物を食べた者は体力が徐々に無くなりしに至ると言う。生命力を瘴気が吸ってしまうのだと言う。そしてこの瘴気こそが魔物の
「それ、排出できるの?」
「できないわね、ただ私の神気で押さえつけておけるけど、あなたを助けるときに、この瘴気の正体が分かったのよ」そう言うとシルフィーネはその瘴気を二つに分解した。一つは光輝く光の球、もう一つは黒くひたすら黒く、まるでそこになにも無いような円ができた。
「それは?」
「神気よ、二つともね」
「それが神気なの?」
「神気よ、私の持つ神気とは別種のね」
そう言うとシルフィーネの身体からフワフワと黒い球が浮き出る。それはシルフィーネの持つ神気でアディリアスの神気なのだと言う。それは邪悪なものでなく、とても暖かいものだった。何も無い黒い神気の方とはまるで別物だ。そして光る方の神気はウルティアで、もう一つの闇の方は何者の神気なのか分からないと言う。
「つまり三人の神がいるってこと?」
「そういうことね。ただ、神話には神はアディリアスとウルティアしかいない。三人目がいないのよ」
「私たちの知る神話が嘘と言うこと?」
「そうなるわね、それとこの黒い何もない神気は私たちが知ってる神気よ」
私はその言葉に首をかしげる。そもそも神気など私には感じることができないのだから。
「知ってるって、あなたは神を見たことあるの?」
「違うわよ、デスの名を冠する者達がこの黒い無の神気と同じ神気をその身に持ってたわ」
「どう言うこと?」
「分からない、ただウルティアが封印されてるから瘴気が発生すると言うことになっていたけど、二つの神気があると言うことは、もう一人の神が封印されている可能性があるわね」
「二人の神が封印されてるの!?」
「わからない、ただこの瘴気の憎悪は異常よ、分離することでその憎悪は消えると言うことは、お互いに憎んでいるのか、又はどちらか一方を憎んでいるのか……」
「で、その神気どうするの?」
「そうね、分離してる分には全く問題ないのだけど。この無の神気は正直どうしたら良いのか」
その時、無の円は突如消え、光の球は私の中へと吸い込まれた。
「「え?」」
なにこれ、私の中に神気が入ってしまった。特に危険な感じはしないけど。それよりも、あの無の神気はどこに?
どこを見回しても無の神気が存在しないし気配も感じられない。
『……今、私の中にそれが入ってきたのだけど』
その声はクロイツのものだった。消えた無の神気はクロイツの身体の中に入りクロイツの中にある神気と一つになったのだと言う。
「これ瘴気が発生するんじゃない?」
二つの神気が合わさると瘴気が発生する、私たちは焦りシルフィーネは私とクロイツの身を心配した。私の身に変化がないのを確認するとシルフィーネはすぐさま
「だめ、分離できない!」
焦るシルフィーネとは対照的にクロイツは冷静に『なにか、大丈夫な気がする。なにか暖かいモノを感じるわ』と言う。
その言葉にシルフィーネは安心したようでなぜこんなことが起こったのかを考察する。私たちの魂はシルフィーネの中にある神気を分離して作ったもので、それはアディリアスと同じなのだと言う。つまり、無の神気はアディリアスに引かれたのだ。では、なぜ私ではなくクロイツだったのか? 精神的強さの差だろうか? 私よりもクロイツの方がアディリアスに近いとでも言うのだろうか?
ちなみに私の光の神気も外すことができなかった。
「どうしようか?」
「うーん、あなた達の神気が膨れ上がって神気量が増えてるのが感じられるわ。正直、害が無いならこのままでも良いかもしれない」
「膨れ上がってる?」
「そう、私の神気はあなた達の一万倍あるのだけど、今は五千倍の差になってるわ。つまりあなた達の神気は2倍になってる」
シルフィーネに比べると、目くそ鼻くそレベルだけど二倍に膨れ上がってるのか。
「確かになにか力を感じるわ」
「そんなわけ無いでしょ、あなたは神気感じないんだから。それに神じゃないんだから神気は
勘違いでした恥ずかしい。
「あれ、でもあなたデス・ハンドとの戦いで神気解放してなかった?」
「そうね、勇者の剣は模造
クロイツを助けるためにはクロイツの精神を上回らなければいけない、模造品を本物以上の者に変えた精神力か。……ちょっと先が見えないわね。
「今思うと私たち神気を持つ六色の勇者が殺されてたのは勇者を狙ったと言うよりも、アディリアスの神気を持つものを殺してたのかもしれないわね」
「なんのために?」
シルフィーネはアリエルの真似をして手を顎に当てて考える。うん可愛くないわね、私系の顔がこのあざといポーズしても全然かわいくないですわ、むしろイラつく。
「神気を集めてるのかも」
「なんでそんなことを」
「誰かがアディリアスを復活させようとしているのかもしれないわね」
神の復活、理由は? 復活させるにはそれなりの理由があるはずだ。今うまくいってる世界を気に入らないからこそ新しい神が必要になるのだろう。
ならばアディリアス復活は世界の破壊? アディリアスは破壊神だと伝わっている。でも私のその考えにシルフィーネは異を唱える。
先程の三つの神気をさわったシルフィーネには分かったと言うのだ光が作り、闇が育み、無が破壊するのだと。
「じゃあ、あのデス達が破壊神の使徒ってことじゃない?」
「そうなるわね、不干渉の約束は失敗かもしれないわね」
確かに、もし世界の破壊を目的としてるやつらなら不干渉なんて言ってられないわね。もちろんそんなことが目的なら不干渉は反故するけどね。世界の破壊なんてアリエルたちに危害が及ぶ行為だわ。
「ねえ、シルフィーネ。この瘴気取り入れたら私達ってさらにパワーアップしない?」
「今は神気が一対一だから平静を保っていられるけどバランスが崩れたらどうなるかわからないわよ」
「でも、三つの神気を持てば何かあったとき力になると思うんだけど」
「あなた自身が消えたとしても力を望むの?」
神気は神その物の力で当然それを内に入れると言うのは神と同化する行為と一緒だと言う。そうなれば意識を神のステージまで引き上げなければいけない。あげなければ精神は狂い、人でいられなくなるとシルフィーネは言う。
「私が狂うより、守りたいものが守れないことの方が辛いわ。だから私は新しい力欲しい。誰にも負けない力が」
『私も手に入るものならどんな力でも欲しいガリウスを守るために』
私達の決意にシルフィーネはコクリとうなずく。
「……二人の気持ちは分かったわ。ならクロリア魔物の肉を食べなさい。私が瘴気を分離してあなたたちに送るわ」
あ、そうか瘴気を取り入れるのに肉を食べなきゃいけないのか。ちょっと魔物の肉を食べるのは抵抗あるわよね
「分かったわ、よろしく頼むわねシルフィーネ」
「よし、そうと決まれば今から修行よ」
「え?」
「この間言ったでしょ、寝てるときは修行するって」
「いや、……今からですか?」
「当然です」
そして地獄の
外伝『聖剣のネクロマンサー』を始めました。
アディリアスとウルティアの話になります。こちらで『おさじょ』の神話の本当の姿が分かります。なぜ静とシンヤがアディリアスにこだわるのか、デス・ヘッドやウルティアとの関わりも分かるようになります。
◆◇4巻&コミック1巻 11月15日より好評発売中です◇◆ 通り魔から幼馴染の妹をかばうために刺され死んでしまった主人公、椎名和也はカイン・フォン・シルフォード//
※漫画版もあります! コミック アース・スター( http://comic-earthstar.jp/detail/sokushicheat/ )さんで連載中!//
【2017/9/30 モンスター文庫様より書籍化しました。また、デンシバーズ様にてコミカライズ連載が決定しました!】 突然異世界の神からの半ば強制的な依頼で俺//
勇者の加護を持つ少女と魔王が戦うファンタジー世界。その世界で、初期レベルだけが高い『導き手』の加護を持つレッドは、妹である勇者の初期パーティーとして戦ってきた//
12月1日、2巻発売 1巻も発売中です 職を失った貧乏貴族の三男、ノルは途方にくれていた。冒険者になるべきかと悩んでいたところ、ノルに幸運が訪れる。 誰一人と//
記憶を無くした主人公が召喚術を駆使し、成り上がっていく異世界転生物語。主人公は名前をケルヴィンと変えて転生し、コツコツとレベルを上げ、スキルを会得し配下を増や//
【書籍一巻発売中です!】 月刊コンプエースにてコミカライズ連載中! 平凡なモブを演じる少年。だが真の実力は――最強。 そんな『陰の実力者』に憧れた少年//
飯島竜人は異世界に転生し、リュート=マクレーンとなった。 転生先の肉体の最適職業は村人で、家も普通の農家で普通に貧乏だった。 ゴブリンやらドラゴンやらが闊歩する//
【アース・スターノベルさんより書籍版発売中】 女神から祝福を受けて〝職業〟を与えられたアレル。 しかしそれは《無職》という何のスキルも習得できない最低の職業だっ//
※ヤングエースアップ様にてコミカライズがスタート。無料で掲載されています ――世界そのものを回復《ヒール》してやり直す。 回復術士は一人では戦えない。そんな常識//
駆け出し冒険者の頃に片足を失い、故郷のド田舎に引っ込んで、薬草を集めたり魔獣や野獣を退治したり、畑仕事を手伝ったり、冒険者だか便利屋だか分からないような生活を//
魔王を倒し、世界を救えと勇者として召喚され、必死に救った主人公、宇景海人。 彼は魔王を倒し、世界を救ったが、仲間と信じていたモノたちにことごとく裏切られ、剣に貫//
おっさん冒険者ケインは、いつもの薬草採取の途中で幸運にも、超レアアイテム『蘇生の実』を手に入れる。 一度は売って金に変えようと思ったケインだったが、仲間の命//
◆カドカワBOOKSより、書籍版15巻+EX巻、コミカライズ版7+EX巻発売中! アニメBDは6巻まで発売中。 【【【アニメ版の感想は活動報告の方にお願いします//
\コミカライズ開始!/マンガUP!様より11月1日から。※書籍版1、2巻発売中※ 【8章スタート!】ちらりとでも読みにきてー(´・ω・`)ノシ 至高の恩恵(//
歴代最高と呼ばれる体力を持つタンクのルード。だが、人よりもダメージを食らってしまう最低のスキルを持っていると勇者に決めつけられ、パーティーを追放されてしまう。仕//
唐突に現れた神様を名乗る幼女に告げられた一言。 「功刀 蓮弥さん、貴方はお亡くなりになりました!。」 これは、どうも前の人生はきっちり大往生したらしい主人公が、//
柊誠一は、不細工・気持ち悪い・汚い・臭い・デブといった、罵倒する言葉が次々と浮かんでくるほどの容姿の持ち主だった。そんな誠一が何時も通りに学校で虐められ、何とか//
平凡な若手商社員である一宮信吾二十五歳は、明日も仕事だと思いながらベッドに入る。だが、目が覚めるとそこは自宅マンションの寝室ではなくて……。僻地に領地を持つ貧乏//
とある世界に魔法戦闘を極め、『賢者』とまで呼ばれた者がいた。 彼は最強の戦術を求め、世界に存在するあらゆる魔法、戦術を研究し尽くした。 そうして導き出された//
2018/8/19タイトルを元に戻しました。 「暗黒騎士物語 ~勇者を倒すために魔王に召喚されました~」 →「暗黒騎士物語」 ※マグネットとノベルバでも投稿して//
空気モブとして生きてきた高校生――三森灯河。 修学旅行中に灯河はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 召喚した女神によると最高ランクのS級や//
宿屋の倅であり、将来自分も宿屋になるのだと夢見ているロックは二つの不幸に見舞われる。 一つは好きだった幼馴染と大事な義妹が勇者に惚れて村から出て行ってしまった//
突然路上で通り魔に刺されて死んでしまった、37歳のナイスガイ。意識が戻って自分の身体を確かめたら、スライムになっていた! え?…え?何でスライムなんだよ!!!な//
放課後の学校に残っていた人がまとめて異世界に転移することになった。 呼び出されたのは王宮で、魔王を倒してほしいと言われる。転移の際に1人1つギフトを貰い勇者//
クラスごと異世界に召喚され、他のクラスメイトがチートなスペックと“天職”を有する中、一人平凡を地で行く主人公南雲ハジメ。彼の“天職”は“錬成師”、言い換えればた//
4/28 Mノベルス様から書籍化されました。コミカライズも決定! 中年冒険者ユーヤは努力家だが才能がなく、報われない日々を送っていた。 ある日、彼は社畜だった前//
※タイトルが変更になります。 「とんでもスキルが本当にとんでもない威力を発揮した件について」→「とんでもスキルで異世界放浪メシ」 異世界召喚に巻き込まれた俺、向//
俺、一之丞は就職100連敗、さらに記録更新中の無職だった。 面接に向かう途中、トラック事故に巻き込まれ、あえなく死亡。 そして、女神から常人よりも400倍//
ゲームだと思っていたら異世界に飛び込んでしまった男の物語。迷宮のあるゲーム的な世界でチートな設定を使ってがんばります。そこは、身分差があり、奴隷もいる社会。とな//
●KADOKAWA/エンターブレイン様より書籍化されました。 【一巻 2017/10/30 発売中!】 【二巻 2018/03/05 発売中!】 【三巻 //