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『ようこそ実力至上主義の教室へ8』 とらのあな購入特典 4Pリーフレット 衣笠彰梧先生書き下ろし SS 「心の疲労」 一之瀬帆波 視点

ようこそ実力至上主義の教室へ8』 P104参照。

8巻に水筒さんって出てきたっけ?

ルート隣人も連載終了したらしいですね。

 

『心の疲労』

「疲れたぁ」
麻子ちゃんたちと別れ、私は食堂の広いテーブルに上 半身を倒した。 昼間に蓄積した疲労がぶわーっと抜けていくような感覚。
このまま寝てしまえたら幸せだろうなあ。なんて目を 閉じて考える。 ダメダメ、こんなところで寝たら他の人の迷惑になっちゃう。

だけど重たい瞼。懸命に開くと、視界に綾小路くんが映った。意外に近い距離。
むっくりと上半身を起こして話しかける。

「綾小路くーん、やほー」
「盛り上がってたな」

どうやら麻子ちゃんたちのお喋りが聞こえてたみたい。

「女子はお喋りすることが、パワーの源だったりしたり しなかったりするかも」


まだ充電不足なのか、体力が持たず私はテーブルを枕代わりにした。
綾小路くんがポカンとした顔をしていたので、断りを 入れる。

 

「あ、こうしてちゃダメかな?」

 

相手と話すのに、流石に失礼すぎる態度だったかも……。


「疲れたときはそうやっているのが普通だ」


驚きはしたみたいだけど、快諾してくれた。

 

「ごめんねー。ちょっと不快にさせちゃって」

「よっぽど大変なグループになったんだな」

「今のグループになるまでが大変だった、と言うべきかな。女子は好き嫌いがハッキリしてるって言うか、あの子とは嫌って面と向かって言う子も少なくないから。

その点男子はそういう個人的な感情はちょっと濁しがちな 人が多いんじゃないかな」


ま、細かなところで揉めたことはこっちの耳にも入っ てるんだけど。

綾小路くんから色々聞けるなら、情報は拾っておきたい。

「龍園は露骨に嫌われてたけどな」

「笑っちゃダメだけど、それはさすがに仕方がないよ ね。だけど龍園君もつらかったんじゃない?  誰からも煙たがられるって体力使うはずだし」

もっと皆と仲良くできるように接しておけばよかったのに。


「今から改心しても、なかなか上手くはいかないんじゃ ないかな。

「気負いすぎずにな」

私のことを気遣ってか、綾小路くんは早々に席を立った。
情報は引き出せそうにないけど、仕方ないね。

私としても一人になって、ゆっくりしたかった気持ち はあるし。

「大丈夫大丈夫。私元気だけが取り柄だからさ。またね 綾小路くん」

それにどの道、私はこういう試験では真面目に取り組むしか出来ない。
クラスメイト以外と組む、という特別試験はどうにも やりにくいんだよね……。
守るべきものが広がると手が追いつかなくなるって言 うか。
普段敵である子が、味方になる。

ってことは、今敵である子もいつか味方になるかも知 れない。

そんなことになったら、私はいずれパンクしちゃう なあ。

綾小路くんの背中が遠ざかっていくのを見ていて、ふと思った。

「……Cクラスに上がったんだよね。堀北さんの活躍ばかり耳にするけど……」

いつも、絶妙な立ち位置にいる綾小路くん。

彼の影響力がどれほどのものなのか、まだ完全には不明。
でも私が大量のポイントを保有していることを知っていたのは、限られた人たち。 

Bクラスの生徒の誰かが漏らしたか、あるいは……綾小路くんか。
近いうち確かめなきゃならない。

彼がもし、堀北さん以上の存在なんだとしたら、それは守るべきBクラスにとっては、脅威の存在になるかも知れない、ということ を。