海外輸入がメインの国内バニラビーンズ市場に参入しようと、沖縄県内3事業者が連携し、来年4月にも「県産バニラ」の商品化に向けた団体を立ち上げる。沖縄の気候に合った栽培手法や発酵・乾燥の加工技術を確立させ、県産としての香りや質を統一するのが目的。国内で商品化の事例は数少ない。団体発足を目指して読谷村座喜味のハウスで試験的に栽培・加工に取り組む「蘭ファーム・ナガハマ」(同村長浜)の長浜真俊代表は「生産者など仲間をより増やし、新たな沖縄の農産物として普及させていきたい」と意気込む。

たわわに実ったバニラを手に取る長浜真俊さん=読谷村座喜味

 バニラは主にアフリカ・マダガスカル島など熱帯地域で栽培・加工され、国内に流通。販売価格は1キロ7万円前後だが、近年は自然災害を背景に高騰、世界的にもアイスクリームの価格などに影響が出ている。国内は1月に菓子「白い恋人」などを販売する石屋製菓(北海道)が自社商品に使うバニラの栽培・加工に乗り出したほか、福岡県久留米市でも商品化が始まっている。

 県内ではバニラを栽培し久留米市などに出荷する農家はいるが、栽培から加工までを担い「県産」として商品化している事業所はないという。

 長浜代表は3年前から栽培に着手。収穫期は12~2月ごろで昨年は約30本、今年は約1万本を収穫できる見込みとなった。最も難しいのは商品価値を左右する「キュアリング」と呼ばれる発酵・乾燥処理の加工技術で、天日や熱処理で8割の水分を飛ばすため約3カ月を要する。団体発足後は収穫できたバニラを使い、甘く上質な香りを引き出す技術の開発に生かす考えだ。

 商品化はもう1~3年掛かる見通し。長浜代表は「沖縄の気候はバニラの栽培に合っている。保存も利き在庫調整もしやすいためビジネスチャンスがある」と話す。「バニラといえば甘い菓子などのイメージだが、リキュールにしたり、保湿オイルに混ぜたりと多様な活用ができる。若者が農業の面白さに目を向けるきっかけにしたい」と期待した。(中部報道部・篠原知恵)