辺野古新基地建設を巡り、沖縄をサポートする新しい動きが生まれている。

 新基地建設の埋め立て工事を2月24日の県民投票まで停止するようトランプ米大統領に求めるウェブサイト上の署名である。昨年12月に始まり、あっという間に目標の10万筆を超えた。

 請願を呼び掛けたのはハワイ在住で中城村当間にルーツを持つ県系4世のロブ・カジワラさん(32)。「世界中のウチナーンチュが一丸となって立ち上がる時だ。辺野古・大浦湾を破壊する新基地建設は県民の意向に反している。首相の考えが間違いであることを示さなければならない」

 カジワラさんは動画投稿サイト「ユーチューブ」でこう訴え、署名を呼び掛ける。国籍に関係なく10万筆を超えると、ホワイトハウスは何らかの対応を検討しなければならない。昨年末には17万筆を突破した。署名最終日の今月7日にホワイトハウス前で直訴集会を開く。

 国内世論の変化もみられる。昨年12月14日の土砂投入を受けて実施した世論調査は共同通信、朝日新聞、毎日新聞とも「反対」が半数を超え、「賛成」を大きく上回った。新基地を支持する読売新聞も「反対」が「賛成」を10ポイント以上引き離した。産経新聞の「県民の民意と、国政選挙での民意のどちらが優先されるべきか」との問いに「県民の民意」が6割近くを占めた。

 安倍晋三首相の強行一辺倒のやり方が支持されているわけではないのである。

 「寄り添うと言いつつ県民踏みにじる理不尽強いる国家とはなに」(伊佐節子)

 「タイムス歌壇12月」に掲載された短歌だ。故翁長雄志前知事以降、沖縄との対話を排除し、強行路線をひた走る安倍首相の姿勢に、この国の民主主義が危機に陥っているとの思いである。

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 沖縄の本土復帰に際し、国会は1971年11月、沖縄米軍基地縮小に関する決議案を可決。あれから47年が過ぎた。決議は実現していない。

 北部の軍事要塞(ようさい)化、先島では自衛隊の増強が同時に進行しているからなおさらだ。

 95年に米兵による暴行事件、米軍用地強制使用問題が起き、当時の大田昌秀知事が代理署名を拒否した。

 沖縄の負担軽減のために設置した日米特別行動委員会(SACO)は96年、11施設の返還で合意したが、ほとんどが県内移設条件が付いた。

 普天間飛行場の返還もその一つで、当初は既存の米軍基地内にヘリポートを新設することが条件だったが、新基地は長さ1800メートルの滑走路2本に加え、軍港機能を持つ。似ても似つかない計画に変貌しているのだ。負担軽減に逆行するのは明らかだ。

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 辺野古・大浦湾は生物多様性に富む。生活に豊かな恵みを与え、感謝や祈りをささげる場でもある。その海を褐色の土砂が汚していく。

 多くの県民にとって文字通り自分の身体が切り刻まれるような痛みを伴うものだ。

 仲井真弘多元知事が公約を翻し、埋め立て承認した際に留意事項として設置した環境監視等委員会がある。環境保全が目的だが新基地建設を前提にした政府寄りの姿勢ばかりが目立つ。

 ジュゴン2頭の行方が分からなくなっている。

 沖縄県側から選出され副委員長を務め、辞任した故東清二琉球大名誉教授(享年85)は昨年8月の県民大会で「ジュゴンの食草である海藻の分布と密度、何頭いるのかなどの調査を依頼したが、何も調べない」「何を言っても響かない」とメッセージで批判した。これが委員会の内情だ。

 埋め立て海域にはマヨネーズ状といわれる軟弱地盤の存在が明らかになっている。

 県は運用開始まで13年、事業費は2兆5500億円かかると試算している。

 政府は工期に何年かかるのか、事業費はいくらか、全く明らかにしていない。自衛隊の共同使用を想定しているのか、これらの疑問に一切答えない。「辺野古が唯一」と呪文のように唱え、一方的に工事を強行している。

 新基地建設を急ぐ理由はない。工事を止めた上で、国会で新基地に絞った集中審議することを求めたい。