訪日客頼みの百貨店でいいか

社説
2018/12/31付
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百貨店が訪日外国人に依存する構図が鮮明になってきた。地方や郊外で不採算店の閉鎖が相次ぐ一方で、都市部の店舗は訪日客に支えられて健闘している。

全国の百貨店の訪日客による免税売上高のシェアは高まり、全体の約6%に達した。

しかし、観光庁の統計では1~9月の旅行者数は前年同期より伸びたにもかかわらず、1人あたりの買い物代金は落ち込み総額も減った。リピーターが増え、買い物以外に時間やお金を使うようになってきたからだ。

2018年の訪日客は3千万人を超え、政府が掲げる20年に訪日客4千万人という目標に手が届くところまで来た。ただ、その場合も買い物支出は期待通りに伸びるとは限らない。訪日客に頼りすぎず、国内に住む消費者を取り込まなければ、堅調な都市部でも失速する可能性がある。

ネット通販が国境を越え、必ずしも旅先で買い物をする必要はなくなった。外国人に人気だった米老舗百貨店ヘンリ・ベンデルは、来年1月にニューヨーク五番街の旗艦店を含め全店を閉鎖する。

では、どうすればいいか。社内の知恵だけでは多様化した消費者の期待に応えられない。強みを見極め、弱い部分には社外の力を積極的に取り入れるべきだ。もはや広大な売り場を自社で埋め尽くす方法では限界がある。

多くの百貨店は恵まれた立地にある。昔ながらの百貨店の存在意義は薄れても、場所がもつ価値は今なお健在だ。

ネットの世界では個人の中古品売買や配車アプリを使った食の宅配、服のシェアなど新サービスが続々と登場している。百貨店が勢いのある企業と組み、商品の展示やお試し、受け取りの拠点としてスペースを生かす道がある。

その際に単なる場所貸しにとどまらないことが大切だ。長年培ってきた接客や人材育成の経験を生かし、入居した店が実力と個性を発揮できるよう舞台裏から支援する業態への進化を期待したい。

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