中国は来年の経済政策を巡る中央経済工作会議で減税規模の拡大と積極財政で内需を刺激する方針を打ち出した。華為技術(ファーウェイ)問題が象徴する米中の争いは解決の見通しが立たない。景気の減速感は強く、政策面から下支えする方向性は評価したい。
ただ、内外で強まる懸念を払拭するには力不足だ。問題点の一つは、活力の源だった民営企業が置かれた特殊な環境にある。中国が12月に開いた一連の会議では、経済を含む全てで共産党の指導を強化する方針が繰り返された。
今年は中国経済が自由化へ踏み出す端緒になった「改革開放」から40年。記念演説で習近平国家主席は、共産党が政治、軍、民間、教育など一切を指導する原則の強化を最も重要な方針に掲げた。
かつて鄧小平氏が改革開放と共に進めた共産党と政府の分離、政府と企業の分離は、習体制下で逆行している。それは中国内の経済体制と、海外の自由主義経済体制の違いを際立たせ、米中摩擦も激化させた。経済減速という副作用は、融資難に苦しむ中小の民営企業を直撃している。
一方、共産党の強い指導下にある大企業群は政策的支援を受けて技術を持つ海外企業を次々、買収している。中国企業は自由主義体制下の枠組みを存分に利用できる。出資比率を制限する合弁会社の設立も強要されない。ならば中国側も自国内で外資にほぼ同じ機会を与えるべきだ。
技術移転を促す仕組みでもある外資出資比率の制限は、改革開放の初期なら容認できた。だが、世界貿易機関(WTO)加盟により世界2位の経済大国になった以上、相応の責任を果たす必要がある。ハイテク企業育成戦略「中国製造2025」に貢献する外資のみ受け入れる選別も米国が問題視しており、今後は通用しにくい。
自動車販売など消費の伸びは縮小し、経済をけん引する力を欠く。日本の中国向け工作機械受注は11月、前年同月に比べ67%減った。今後も6%超の経済安定成長を確保するのは容易ではない。
米中の技術覇権争いに不安を抱く企業家の投資意欲は冷え込んでいる。中国が対米交渉を利用して大胆な市場開放、自由化に動けば、萎縮する心を奮い立たせる一助になる。農村からの出稼ぎ労働者の雇用確保にもつながる。再び安定成長に道を開く自らの利益のために思い切った決断を望みたい。
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