外国人の身になり受け入れ体制の整備を

社説
2018/12/27付
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政府が外国人労働者を受け入れる新制度の運用方針や生活支援策を決めた。新しい在留資格「特定技能」の創設は来年4月に迫っているが、総じて踏み込み不足の内容だ。円滑に外国人を呼び込めるよう、制度設計や支援策の詰めを急がなければならない。

5年間の受け入れ見込み数は介護、建設など対象の14業種合わせて約34万人で、原則としてこれを上限にするとした。人手不足が解消されれば受け入れを停止する。日本人の雇用への悪影響を防ぐには、これは妥当な措置だろう。

だが、何を根拠に人手不足の解消を判定するかは曖昧さが残る。日本人の賃金が伸び悩まないようにするには外国人の受け入れ数を柔軟に調整する必要がある。具体的な方法を明確にすべきだ。

同時に求められるのは、外国人が来日後に自らの技能を高め、賃金を上げていける環境の整備である。日常の仕事を通じて技能を高めるほかに、公的な職業訓練を受けやすくしたい。

低賃金で外国人を雇い、安い労働力への依存を強める企業が増える懸念もある。日本の生産性を低迷させないためにも、外国人の技能の向上を支援すべきだ。

大切なのは外国人の身になった受け入れ体制づくりだ。韓国や台湾も外国人労働者の就労を拡大している。人材獲得競争が激化していることへの認識が要る。

外国人の生活を支援する総合対策は126項目に及ぶが、不十分な点が少なくない。たとえば、地域の日本語教育を担う人材や、外国人患者と病院の仲立ちをする医療通訳者をどのように養成していくかは不明確だ。専門職として育てる施策が求められる。

生活全般の相談に、様々な言語で一元的に応じる窓口を全国約100カ所に設置するとしている。問題は外国人の困りごとに対して効果的な助言ができるかだ。

すでに多数の日系人が住むなど外国人の受け入れで先行する地域が培った経験やノウハウを、自治体が共有する仕組みをつくりたい。日本人と外国人の融和を促す活動などは参考になるはずだ。

1990年に日系人の在留許可条件を緩和後も、政府は生活支援を事実上、自治体任せにしてきた。今後は自治体との連携を深め、外国人の支援策を充実させるべきだ。それが大都市への外国人の過度な集中を防ぎ、地方の人手不足を和らげることにつながる。

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