漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
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「リイジー。彼らはもうすぐ目覚める。彼らの側にいてやってほしい。その間、私たちは誘拐犯の行方を捜す」
「分かった」
リイジーはモモンの指示に従って部屋の中央に立った。
モモンとナーベは別の部屋に入る。そこでナーベが口を開いた。
「モモンさん。お願いがあるのですが・・」
「どうした?」
「物体発見<ロケートオブジェクト>、千里眼<クレヤボヤンス>、水晶の画面<クリスタルモニター>の巻物<スクロール>を取り出して頂けませんか?」
モモンは何故かとは聞かなかった。代わりにスクロールを取り出しながら違うことを尋ねた。ナーベがそれを受け取った。
「何故プレートを所持していない?」
よく見るとナーベの首に下げられていた冒険者のプレートが無かったのだ。エ・ランテルに戻った時にはあったはずだ。
「実は戦闘中に禿げ頭の魔法詠唱者の男を背後から剣で突き刺したんです。その時にポケットの中に入れました」
「成程な・・」
ナーベがスクロールを宙に飛ばす。
「物体発見<ロケートオブジェクト>」
スクロールが燃え散る。スクロールを使用した証だ。
「・・・墓地で間違いありませんね。」
「やはりか。では次は俺にも見えるように頼む。」
「はい。千里眼<クレヤボヤンス>・・水晶の画面<クリスタルモニター>」
モモンとナーベの間の空間に映像が浮かび上がる。
そこにいたのは頭部に謎のアイテムを装備して両目から血を流したンフィーレア。それとその周囲を取り囲むようにしているスケルトンやアンデッドたちだった。
「不味いな。かなり数が多い。もし墓地から溢れ出したら街に被害が及ぶ。早く行かなくては」
「現状では情報が少ないです。そんな中動くのは・・」
「確かにそうだな。放っておいても何も無いかもしれない。だが今ここでその者たちを止めねば街の人々に被害が出る。そうならない為に手を貸してくれ。ナーベ!」
ナーベは目を閉じる。
(あぁ・・そうかモモンさんはこういう優しい人だったわね)
「勿論です」
(ンフィーレアの無事は少なくとも知ることが出来た。攻め込む準備は出来た。後は彼らの身が心配だ・・)
「彼らが起きたぞ!」
突然ドアが開いてリイジーが入ってきた。
「モモンさん!」
リイジーに続いて『漆黒の剣』がぞろぞろと入っていく。声の主はぺテルだ。
「みんな無事だったか」
「えぇ。リイジーさんから話は聞きました。モモンさんがポーションを渡してくれたおかげでこの通り・・っ!」
ぺテルが胸を抑える。恐らく回復した直後で身体が慣れていないのだろう。
「大丈夫か?」
「えぇ・・すみません。」
「回復した後ですまないが君たちに頼みたいことがある。引き受けてくれるか?」
「何でもします。仰って下さい」
モモンはぺテルの後ろにいる他の三人に目を向ける。全員が頷いていた。
「みんな今から話すことをよく聞いてくれ」
そこでモモンは一呼吸置くと状況の説明を始めた。