漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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リイジーの依頼

「ンフィーレアが攫われただと!?」

 

モモンは動揺のあまり呼び捨てで名前を呼んでいた。

 

「はい。短い金髪で刺突武器を使う女と禿げ頭で赤いローブを着込んだ魔法詠唱者の男のニ人組です。」

 

「・・・くそ!」

 

モモンは拳を作る。

 

「あっ!リイジー殿!待つでござる!」

 

ハムスケの声がする。その方向をモモンとナーベは顔を向けた。

 

そこには急ぎ足で部屋に入ってきたリイジーがいた。

 

「リイジー!」

 

「ンフィーレアはどこじゃ!?」

 

「・・攫われた。」

 

「なっ!?」

 

そう言ってリイジーは『漆黒の剣』を見て驚愕する。リイジーの身体から冷や汗が出る。今のリイジーにとってそれは氷柱で身体を貫かれたような感触であった。

 

「もしやンフィーレアは・・」

 

最悪の事を想定したのであろう。

 

(俺の考えが間違っていなければンフィーレアは無事だが・・・今のリイジーにそのことを伝えても何の確証も無い希望を見せるだけだ。もし万が一、俺の考えが間違っていたら・・その時のリイジーは希望を見ていた分絶望してしまうだろう。今は何も言わないのが賢明だな。)

 

「・・・」

 

モモンは『漆黒の剣』を見る。そこで気付く。

 

僅かにだが口元が動いていたのだ。

 

「!まだ息がある!」

 

モモンは再び懐から赤いポーションを四本取り出す。

 

「それは!?『神の血』!まさかお主らが・・」

 

リイジーが何か言っていたがモモンはそれらを無視して彼らに飲ませていく。

 

「!っ・・」

 

やがて『漆黒の剣』のメンバーたちの傷ついた身体が元に戻っていく。特に酷かったのはニニャであった。顔は酸で溶けており、胸には刺突武器が刺さった穴がはっきりとあった。

 

「間に合え!」

 

やがてニニャの顔はケロイド状から元の顔に戻っていく。

 

「・・・っ」

 

ニニャの瞼が微かに動いた。

 

「良かった・・・」

 

(今度こそ・・助けられた。)

 

モモンはぺテル、ルクルット、ダインの顔に目を向ける。

 

他の三人も僅かにだが表情が動いていた。

 

(彼らも大丈夫みたいだな。)

 

その時の一連の行動を見てリイジーは驚愕していた。

 

(『神の血』をあんな容易に飲ませるだと・・・)

 

だがリイジーの胸中には驚愕以外の感情があった。

 

(間違いない。この者たちならンフィーレアを救い出せる。)

 

リイジーは覚悟を決めてモモンに言葉を投げる。その言葉には重みがあった。自分の持つ全てと引き換えに孫を救い出せるならと・・そう覚悟を決めた。

 

「汝らを雇いたい。ンフィーレアを救い出してくれ!」

 

モモンたちはそれを聞き、あることを条件に依頼を果たすことになる。

 

そしてこの事件の後、モモンは『漆黒の英雄』と呼ばれることになる。

 

 





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