(cache)こうなったら「史上最高の紅白」を妄想しよう(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
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こうなったら「史上最高の紅白」を妄想しよう

~今の紅白にはついていけないから 

知らない歌と知らない歌手が多すぎる。そもそも紅白は国民的人気歌手が男女に分かれて、歌で真剣勝負する場だった。本誌はその原点に立ち返り、読者と識者に取材し、「最強メンバー」を選出した。

拓郎がギター片手に登場

「紅組のトップバッターは、'70年代に眩い光を放った、ティーンのアイドル、南沙織さんです!」

紅組司会の森光子が朗々と宣言する。

時を超えて、最強メンバーが集結する史上最高の紅白歌合戦が始まった。

視聴者は冒頭から、南の真っ白いミニのワンピースと小麦色の笑顔にクギづけになる。

曲はもちろん『17才』。彼女の声は、50歳以上の男性の耳に残っている。

「いわゆる『アイドル』が存在していなかった時代、彼女がその第1号だったと言っていいでしょう。フレッシュ感がトップバッターにふさわしい。

『17才』はピュアでありながら、主張がある曲です。『私は今生きている』という部分がまさにそう。これがこの曲の魅力です」(音楽プロデューサー・酒井政利氏)

一方の白組司会を務めるのは、NHKアナウンサーの宮田輝。彼は通算15回も司会を務め、紅白を知り尽くす。自在にアドリブを入れながら、滞りなく進行する話術は、平成のアナは誰もかなわない。宮田の声が響く。

「白組も最初から盛り上がっていきましょう!」

すると、星条旗をイメージした奇抜な衣装を纏った西城秀樹がステージのセンターに駆けてくる。

「白組トップは、西城さんの『ヤングマン』で文句なしでしょう。いならぶ大物も、そして会場も一体となって、あの振り付けを楽しむ。カメラを審査員席に向けると、樹木希林さんも立ち上がって踊っているんです」(音楽評論家・馬飼野元宏氏)

序盤は怒濤の展開で、視聴者は息つく間もない。次に登場するのは、ピンク・レディーだ。彼女たちは2回目の出場となるはずだった'78年の紅白を辞退。

それ以降は、再結成後の'89年まで声はかからない。そのため、ヒット曲を全盛期に紅白で歌っていないのだ。

ファン待望の『UFO』が披露され、日本中がテレビの前でダンスする。

興奮が冷めやらぬ中、吉田拓郎がアコースティックギターを片手にゆっくりと歩いてくる。拓郎は紅白のオファーを断り続け、出たのは'94年の一度きり。そのときは『外は白い雪の夜』を歌ったが、後に本人は、「うんざりした」と明かしている。

それでもフォークを愛する者なら、NHKホールでもう一度、拓郎を見たい。しかし、紅白の醍醐味である選曲が困難を極める。『落陽』、『旅の宿』、『祭りのあと』……どれもしんみりと聴きたい。

「一番紅白で見てみたいのは、『結婚しようよ』でしょうか。あえてポップに歌って、舞台袖から演歌の大物たちが手拍子しながら次々と出てくる。ファンからすると、違和感があると思いますが、これも紅白の楽しみですよ」(前出・馬飼野氏)

元ニッポン放送社長でラジオDJ・ポピュラー音楽研究家の亀渕昭信氏は、あえて幻の曲を拓郎にリクエストする。

「コンサートで何度か披露している、拓郎がカバーする中島みゆきの『ファイト!』が凄く良いんですよ。せっかく拓郎が出るなら、あのステージで、あの重たい歌を、年の瀬に聴くのもいいと思う」

 

では、この拓郎に対抗できる歌手は誰なのか。

キャンディーズを拓郎にぶつけるんですよ。拓郎が作曲して提供したヒット曲『やさしい悪魔』を歌う。バックではそのまま拓郎がギターをひくんです」(前出・馬飼野氏)

この曲で3人は、清楚なイメージを一掃する網タイツとレオタード姿。ファンの歓声が収まらない中、総合司会を務める高橋圭三が軽妙に審査員を紹介する。

元NHKアナの高橋も紅白の司会を9回務めた大ベテラン。審査員について、'76年から20年以上、紅白に関わった元NHKプロデューサーの島田源領氏が言う。

「まず淡谷のり子さん。若いアイドルを引き締めるためです。楽しいだけじゃダメだよって。あとは立川談志さんかな。あの方は昭和歌謡が大好きなんです。

大原麗子さんにもお願いしたい。彼女が審査席に座った様子を客席からみたとき、一番しっくりきたんですよ」

あとは樹木希林、夏目雅子に渥美清、三波伸介、長嶋茂雄を加えれば、審査員も「史上最高」である。

幕間では、三波が『お笑いオンステージ』の人気コーナー「減点パパ」をステージで再現。出演者の似顔絵を即興で描いて、観客を楽しませる。

会場が落ち着いたら、昭和歌謡史を彩ったスターたちの名勝負が始まる。

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