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【国際】白人への差別、関心薄い 東欧系支援団体代表 バーバラ・ドロツドビッチさん
東欧系移民の急増により「移民制限」を掲げて欧州連合(EU)離脱の引き金まで引いてしまった英国。そしてポーランドやハンガリーでも強権的な右派政権が誕生し、「反移民」感情は欧州全体を覆う。ロンドンの東欧系移民支援団体「東欧リソースセンター」代表のバーバラ・ドロツドビッチさん(37)に、取り巻く状況を尋ねた。 (ロンドン・阿部伸哉、写真も) -「反移民」感情は多くの国でイスラム系に向いているが、英国は違う。 「EU離脱運動は、移民同士をあえて分断させている。EU市民と、それ以外の移民をだ。『EU市民ばかり優遇されている』という感情をあおり、EU以外の移民から離脱支持を取り付けるためでしょう」 「(東欧系への嫌がらせへの対応で)警察に相談に行ったが、返事は『白人には差別はないでしょう』だった。他の人種問題に比べ世間の関心は薄く、警察も発砲事件でもなければ何もしてくれません」 -憎悪犯罪(ヘイトクライム)の認知件数は増えているが。 「(二〇一六年の)国民投票でEU離脱が決まり、以前からあった私たちへの敵意はお墨付きを得たようなもの。しかし嫌がらせは陰湿なものが多く、ほとんどの人は警察に相談しません。ドアに卵を投げ付けられ『消えうせろ、ポーランド野郎』と言われても、警察官が来るのは三週間後。それに警察を呼んだことが近所に知れたら、どんな仕返しをされるか分かりません」 -自身はどんな体験を。 「十年前にポーランドから来たが、サンドイッチ店で信じられない低賃金で雇われた。英国に来るポーランド人は母国ではほとんど中産階級ですが、ここではみな低所得労働からです」 -帰国を考えたことは。 「もちろん。私もポーランドにある持ち家のローン返済のため送金しているが、離脱を巡る混乱で英ポンドが急落、送金負担が重くなりひどい目に遭っている。『合意なき離脱』なら英経済は(リーマン・ショックが引き金となった)金融危機以上の落ち込みが予想されている。雇用削減のしわ寄せは真っ先に東欧系の労働者に来る。職場では『辞職』に追い込むよう嫌がらせがもっと強まるでしょう」 -「反移民」は東欧にも広がっている。 「実は英国に住む東欧系でも、EU離脱を支持する人が驚くほど多い。東欧系は英社会で根無し草の『経済移民』として認知され、反移民感情につながったのかもしれない。インド系のように『英社会の一員』という立場を築けるかどうか、われわれも今、試されているのかもしれない」
<EUの東方拡大> 1991年の旧ソ連崩壊により、社会主義体制だった東欧圏が市場経済に移行。2004年にポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロベニアの8カ国が、07年にはルーマニア、ブルガリアもEUに加盟した。しかし期待したほどの経済発展が進まない国もあり、ポーランドやハンガリー、チェコではイスラム系に対する「反移民」などの右傾化が目立っている。
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