世界最凶の個性『らしい』(憑)   作:ワカガシラ
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2話

 

 

 

 薄暗いBARの中、顔面に手のマスクをつけている異端児とBARのバーテンダーがいる。

 そして異端児、死柄木弔はモニター越しにある人物と対面していた。

 

 

『死柄木弔、彼は手放しては行けないよ。間違いなく君に成長を齎してくれるだろう』

 

 「あんなオッサンさっさと殺した方がいいって」

 

 モニターに写っているのはノーフェイスとでも言うのか顔がない。

 ガリガリと首の大動脈付近を爪を立てて掻きむしっている。

 

 「ゼハハハ!!つれねぇこと言うなよ死柄木。仲良くやろうじゃねぇか!!」

 「馴れ馴れしいんだのクソジジィ。塵にするぞ!」

 

 

『黒ひげも死柄木弔の事をよろしく頼むよ』

 「任せておけオールフォーワン。俺の為にも死柄木は必要だ」

『成程、ところでそろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?君の目的とやらを』

 

 「そいつは野暮ってもんだぜオールフォーワン。お互い不干渉ってのが組む条件じゃなかったのかよ。この調子じゃ同盟も長く持ちそうにないなゼハハハハハハハハ!!!!!!」

 

 「この──!!!」

 

 笑っている黒ひげに耐えきれずに死柄木弔が五本指を立てる。

 辺りにいた黒霧も動揺するが、それは杞憂に他ならない。

 

 「なんだ?どうしたの死柄木、俺様に触りたくなったのか??俺に男色は無いぜ!ゼハハハハハハハハ!!!」

 「は!?なんで効かねぇんだよ!おい!黒霧!!」

 

 動揺する死柄木弔。

 それもそのはず、自分が五本指で触れたものは何もかも塵として来たのにそれが目の前の男には通用しない。

 

 その事実だけが死柄木弔の脳裏に酷く焼き付いた。

 絶対だった自分の個性が、何の変哲もない小悪党のようなオッサンに効かない。

 そしてその事実が許せなかった。

 

 

 「私にも何が何だか」

 

 黒霧も顔は見えないが動揺している。

 死柄木弔の個性が効かないとしたら、もしや自分も……と。

 

『あまり虐めてくれるなよ、黒ひげ』

 「なーに、俺は何もしてねぇぜ。俺はただ黒霧のチェリーパイを食ってるだけだ。おい!次もってこい」

 

 「は、はい。ただいま」

 

 黒霧は皿拭きをしていたが、オーブンの方へと慌てて駆け出し。先程から作っていたチェリーパイを持ってきた。

 その数およそ10枚。

 

 サクサクと食べながら雄叫びを上げるかのように笑い、酒を飲む。

 

 

 「このチェリーパイは格別にうまい」

 

 「おい!オッサン!」

 「なんだよ死柄木?まだオッサンに用でもあるのか?小便でも漏らしたなら愛しの先生にでも替えてもらえよゼハハハハハハハハ!!!」

 

 

『そこまでにして貰おう黒ひげ』

 

 怒り狂いそうな死柄木弔をよそに、オールフォーワンは黒ひげを制止する。さもなければ内部抗争が始まってしまうと分かっていたからだ。

 そしてオールフォーワンは知っている、黒ひげという人物の危険性を。

 それこそ死柄木弔のように小さい頃から洗脳(教育)していれば、自分の後継者になれる器である位には。そして驚異になった今、手元に置く方が監視しやすく死柄木弔に良い影響を与えてくれると思ったのだが……。

 どうやら、その目論見は半分成功して半分失敗したようだ。

 

 

 「ガキを虐めるのも可哀想になったからな!そろそろ俺もお暇させて貰うぜ!!じゃあなオールフォーワン、仕事が入り次第また呼んでくれや。お互いの目的のために、俺は武力を提供する。そしてお前(オールフォーワン)は情報を提供する。いかにも悪党じゃねぇか!!ゼハハハハハハハハ!!!!」

 

『ああ、恐らく君の目的も我々の目的と当るずとも遠からずだろう。なんせ君の必要な情報はオールマイト(・・・・・・)なんだから』

 「ゼハハハハハハハハ!!腹の探り合いは寄せオールフォーワン。その言い方だと、またいい情報でも掴んだな?」

 

『まぁね』

 「仕事のできる人間はモテるぜ色男。それで?掴んだ情報はどんなもんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──雄英高校での課外授業の事さ………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 「私思ったことなんでも言っちゃうの、緑谷ちゃん」

 「あ、はい蛙吹さん」

 

 場所は変わってバスの中。

 緑谷出久はあの人生を変える分岐点から、ただひたすらに個性持ちと戦えるようになるために訓練を重ねた。

 憧れだった人の提案を断り、自分が無個性であることにこだわった。

 その結果が少し昔まで流行っていた都市伝説を実現することだった。

 誰も信じなかった都市伝説を、自分が証明して見せたのだ。その年代のシニア世代からは賞賛されたが、緑谷達若者世代からすれば訳の分からない力だった。

 

 「緑谷ちゃんって本当に無個性なの?切島ちゃんの個性と似てるように見えるんだけど」

 「ううん、僕の力は個性なんて大層なものじゃないよ。あらゆる生物が生まれた時から持ってるものを引き出しただけだよ」

 

 「それなら私にも教えて欲しいわ」

 「え?」

 

 

 蛙吹の一言に戸惑う緑谷。

 自分が模索した唯一無二の武器を教えてとは、つまり僕の存在意義が無くなる。

 

 「ごめん、流石にそれは…」

 「私も悪かったわ、無茶なお願いして」

 

 

 

 

 

 

 「まぁ!でも派手で強ぇつったら爆豪か轟だよな」

 

 「爆豪ちゃんは切れてばかりだから人気でなさそう」

 「んだと!コラだすわ!!!」

 

 楽しい談笑。

 その数分後に本来ヒーローが戦っているものを目の当たりにすることになる。

 ただ一人、ただ一人だけこの中から本物の英雄が誕生するのはまだ先の話。

 

 

 

 「もう着くぞ、いい加減にしとけよ……」

 

 担任の相澤の言葉でワイワイしていたクラスメイト達は一気に真剣な眼差しに変わった。

 何か決意を決めたものに、何かを誓ったもの、そして──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 「──以上、ご清聴ありがとうございました」

 

 

 13号先生による個性がもたらす危険性に着いての持論を語り終えた。

 個性でそうなら、なら僕は、無個性はどうなるんだろう。

 恐らく1人だけ、恐らく僕だけはそう考えた。

 別に珍しいことじゃない、個性を特別視する人達のことは。刃物や拳銃と同じだ、使う人によって目的が変わると言いたいんだろう。

 だけどここの人達は必ず個性が、とまず個性の話をする。それを僕は差別として捉えてしまう。

 

 これは僕がおかしいんだろうか……。

 

 

 

 「──!!!」

 

 緑谷は探知系の個性がない今、この集団で一番探知能力が高い。

 それは気配を読み取る力であり、個性では無い。野生の獣のように本能で気配を探知したのだ。

 

 遅れてプロヒーローであるA組の担任のイレイザーヘッドが気配に気付いた。

 

 「──一かたまりになって動くな!!13号!生徒を守れ!!!」

 

 

 

 

 

 「なんだありゃ、入試ん時見たくもう始まってるパターンか?」

 「動くな!!あれは──」

 

 

 

 

 

 

 

 「──(ヴィラン)だ!!!」

 

 

 

 

 真っ黒な煙の中から出てきたのは、途方もない悪意の塊。

 何度か見た事がある、だが自分が対面することになるなんて初めてだ。

 

 

 「13号にイレイザーヘッド、先日頂いたカリキュラムにはオールマイトがここにいるはずなのですが」

 

 「こんな大衆引き連れて来たのに、オールマイト…平和の象徴がいないなんて………ガキを殺せば出てくるかな?」

 

 

 そして僕は目を疑った。

 初めて見た時は確かに働いているようには見えなかったし、まともじゃないと思っていた。

 でも、僕を救ってくれた人が……。

 

 

 僕が道を進むことを肯定してくれた唯一の人が──。

 

 

 まさか(そっち)側に居るなんて。

 

 

 

 「ゼハハハハハハハハ!!!オールマイトがいないって?まぁいい、プロ二人に卵か、肩慣らしには丁度いい!!!楽しんで行こうじゃねぇか!!!!!」




ちょっとした謎なんですけど、低評価つけている人の名前だけ表示されてないんですけど……。バクですかね?




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