TPP11発効 米国不在による混乱も 製粉業界、マークアップ不均衡を懸念

TPP11がいよいよ30日に発効する。さらに日欧EPAも2月発効の見通しで、食品産業はこれまで以上にグローバル競争が激化する。

製粉業界にとって今年は大きな転換点で、国際貿易協定の発効による今後の国内産業への影響が懸念されている。主要食糧の小麦は国家貿易が維持されたが、二次加工品のビスケットやパスタは段階的に関税が引き下げられ、発効後6年目から11年目までに撤廃。小麦粉調製品も現行16%―28%の関税が無税となる国別枠が設けられ、輸入量の拡大が予想されている。

こうした中で、製粉業界にとって最大のポイントは、「原料と製品の国境措置の整合性確保」に尽きる。製品関税引き下げに伴い、原料麦のマークアップも9年目までに45%削減(年5%削減)となるが、TPP11から米国が離脱したため、わが国の輸入量の半数を占める米国産小麦はマークアップ引き下げの対象外。マークアップ引き下げとなる豪州、カナダ産との不均衡が生じ、国内市場の混乱も予想される。

日本の小麦輸入量は約500万tで、米国産が約250万t。消費量の9割を輸入でまかない、その半数は米国産が占めている。麦は品種ごとに用途が異なるため、米国産を他国産に置き換えるのは難しい。

例えば、菓子用の薄力粉は主に米国産のウエスタンホワイトが使われており、年間輸入量は約70万t。品質面、量的にもカナダや豪州産で置き換えるのは不可能で、米国産のマークアップが下がらず、ビスケット製品等の関税が段階的に下がっていけば、国内製造メーカーは不利な状況に置かれることになる。

同様にパスタ製品も、原料デュラムの実質的マークアップの撤廃が不可欠。特にEUからは原料麦の輸入がわずかで、欧州産のビスケットやパスタはブランド力を持つ銘柄も多いだけに、政府の「総合的なTPP等関連政策大綱」に盛り込まれた施策の早期実行が求められている。

TPP11、日欧EPAともに正式発効日が初年度で、日本では4月1日から2年度目。TPP11では年末に1回目の引き下げ、4月には2回目の引き下げとなる。米国産小麦のマークアップに関しては、年明けからスタートする米国との貿易物品協定(TAG)交渉で協議されるが、豪州・カナダとのマークアップ不均衡は市場の混乱を招く懸念もあり、早期の問題解決が望まれる。