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【芸能・社会】

松本白鸚、一條大蔵長成に挑む 正月の初春大歌舞伎

2018年12月29日 紙面から

「一條大蔵譚」の一條大蔵長成にふんした松本白鸚

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 親子孫の三代同時襲名で今年1年間、歌舞伎界をにぎわせた二代目松本白鸚(76)が、来年正月の東京・歌舞伎座の初春大歌舞伎(1月2~26日)で47年ぶりに「一條大蔵譚」で一條大蔵長成を演じる。意外性に富んだ狂言の選択に、新白鸚の気概が潜む。元号が代わる新時代を迎える2019年、襲名披露の地方巡業や三谷幸喜の新作歌舞伎、日本初演から50年という記念イヤーのミュージカル「ラ・マンチャの男」とますます充実の年になりそうだ。

 長成は、染五郎時代の30歳の時、帝国劇場で初演した。父の幸四郎(初代白鸚)とともに東宝に所属していた当時だ。母方の祖父で名優とうたわれた初代中村吉右衛門の当たり役で、播磨屋の芸を熟知していた叔父の中村勘三郎(十七代目)から教わった。

 「まねるが学ぶなんだなぁとつくづく思ったものです。細かいことは忘れましたが、遮二無二やっていて、教えてもらったら、それに応えないといけない、必死にやっていた記憶があります。あっという間に終わっちゃった」

 平清盛の命で源頼朝の愛妾だった常盤御前を妻に迎え、作り阿呆となりながら、源氏再興の思いを秘める長成。ユーモラスとリアルが行き交う芸の妙味が、みどころだ。当代の吉右衛門が大事に何度も務めているほか、今年2月には長男の十代目松本幸四郎が襲名披露で演じた。

 今回の演目は、ごく自然に浮上したという。「今までやった役を、もう一度白鸚として勉強し直すというかな、もういっぺんやりたいなとは思っておりましてね、たまたま正月にふさわしいと言うことで」とのこと。還暦を迎えた直後、「加賀鳶」「魚屋宗五郎」「文七元結」など立て続けに世話物の初役に挑んだ“変化”をほうふつとさせる。

 「また、変わらなきゃと思います。幸四郎、染五郎時代が終わったんですから、それを超えていかなきゃいけない。新しいものに意欲を燃やすという気持ちは、お客さまがお分かりになりますから。それを信じていますし」と心境を明かした。

 さらに、初代吉右衛門は決してノドが強かったわけではなく、努力、工夫を重ねて絶妙なセリフ回しを身につけたことをあげ、「播磨屋の芸、六代目(尾上)菊五郎へのあこがれがあるんです。60、70になっても人間、やっぱりあこがれるものを失っちゃいけないなと思って。自分だけのあこがれでいいんです。この気持ちは、とってもうれしくなるんです。実際(の舞台)は知りませんけども、あこがれがあるから、自分でやって、それをまたお客さまが喜んでいただけると、それで自分はうれしいと思う。あこがれる気持ちを持ち続けた方が、人生がみずみずしくなる」。

 艱難(かんなん)辛苦を経て身に付いた人生観に自然に導かれた新白鸚の心意気。除夜の鐘を聞きながら、無事襲名と新年のスタートに期する思いを両親の墓前で報告したいという。 (本庄雅之)

◆襲名披露来年3月31日 地方巡業スタート

 襲名披露は来年3月31日の埼玉県狭山市民会館から地方巡業が始まる。新染五郎は学業のため、白鸚、幸四郎の二人で「口上」「菅原伝授手習鑑」「奴道成寺」を上演する。また、6月には歌舞伎座で三谷幸喜の新作に出演する。漫画家みなもと太郎の代表作「風雲児たち」を歌舞伎化する話題作で、幸四郎のほか片岡愛之助、市川猿之助が出演。さらに10月には、ミュージカル「ラ・マンチャの男」の帝国劇場公演が控える。米ブロードウェーへ単身乗り込み、外国人キャストの中に入って日本人俳優として初めて主演した作品。日本初演から50年の節目の記念公演になる。

 

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