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 「ほんまかいな?」。大阪に暮らす少なからぬ人が驚き、あきれながら、そうつぶやいたのではないか。

 「そうかいな」と納得するわけにはいかない問題である。

 大阪維新の会の代表と政調会長をそれぞれ務める松井一郎大阪府知事吉村洋文大阪市長が、任期満了を待たずにそろって辞職し、来春の統一地方選に合わせて「ダブル選」を実施する可能性を示唆している。

 発端は、大阪都構想を問う住民投票の日程を巡り、公明党との協議が決裂したことだ。

 大阪市を廃止し、東京23区と同様の特別区に再編する都構想は、維新結党以来の看板政策だ。橋下徹氏大阪市長だった2015年に住民投票で否決されたが、その後の松井、吉村両氏のダブル当選を経て、再び導入を目指している。

 まずは区割りなど具体案を府と市の議会で可決する必要があるが、両議会で第1党の維新も単独では過半数に及ばない。第2党の自民党は構想に反対で、住民投票に理解を示す第3党の公明との連携がカギとなる。

 だが、維新が来年夏の参院選時の実施を主張する一方、公明は参院選後を譲らない。両党が昨春、住民投票を巡る合意書を交わしていたことを松井氏が暴露する事態へとこじれるなかで、ダブル選が急浮上した。

 松井氏と吉村氏は構想推進へ改めて信を問いたいと主張するが、統一地方選では府と市の議会選が予定されており、そこで民意は示される。両氏が首長選に踏み切り、再選された場合の任期は、いまと同じ来年11~12月まで。短期間に選挙が相次ぐことになれば、行政の停滞は避けられない。

 それなのに、なぜダブル選なのか。自らも選挙を戦うことで府議・市議選にのぞむ同僚を後押ししたい――。そんな党利党略ではないのか。

 都構想の具体案を練る場は、府・市の議会代表と行政トップが集う法定協議会だ。その議論に先んじて、維新と公明は住民投票の実施に関して「密約」をかわしていた。ここでも住民不在はあらわである。

 都構想への関心が盛り上がらないなか、松井氏は大阪万博の誘致成功を「府市一体」の成果だと強調し、構想への追い風にする構えだ。しかし、維新が目指す府と市の「二重行政」解消に都構想が不可欠なのか、説明は不十分なままだ。

 自治体のトップがその進退と選挙を政党間の駆け引きに使うかのような言動は許されない。首長の座は政争の具ではない。

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