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音葉「音を失くした世界で」
- 監督「はいお疲れちゃん、もう帰っていいよ」
音葉「はい、わかりました」
音葉(はぁ…今日も裏方か)
音葉「毎日毎日自分の旋律を奏でることもできないで音響の仕事ばっかり…」
音葉「私何をしているのかしら、こんな生活に意味なんて…」
プップー!!!!
音葉(え?目の前にトラック?今信号は赤だったはずじゃ…)
ドゴオオオオオオオオオオオオオオン!!
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- 音葉「…あら?ここはいったいどこかしら?私はトラックにひかれたんじゃ…」
音葉「見渡す限り一面の野原ね。きれいな花…都会じゃこんな景色忘れていたわ…」
音葉「…もしかしてここは天国なのかしら?さっきのトラックに私は轢かれて…」
音葉「でも、何か変ね。いったい何が…」
???「おねーさん、こんなところでどうしたの?」
音葉(人がいるのね、よかっ…)クルッ
???「どうかしたの?そんなにアタシの顔をまじまじと見て」
音葉(…莉嘉ちゃん?なんでこんなところにいるのかしら…)
???「も、もしかして喋れないの!?頭とか打ってない!?」
音葉「だ、大丈夫よ、喋れるわ。えーっと…莉嘉ちゃん?ここはいったいどこかしら?ドラマか何かの撮影?」
リカ「あれ?なんでおねーさんアタシの名前知ってるの?“どらま”って何?」
音葉(…やっぱり私は天国にいるのかしら。最近じゃ天国も人員不足で地上のアイドルをコピーしているのね…)
- 音葉「えっと…ごめんなさい莉嘉ちゃん“日本”って言ってわかるかしら?」
リカ「にっぽん?ごめん聞いたことがないや」
音葉「…346プロダクションって知ってる?」
リカ「知らなーい」
音葉(…ここが私のいたところではないことは確かね…もしかして“異世界”ってやつかしら?)
音葉「えっとね莉嘉ちゃん、この近くに人は住んでいるのかしら?」
リカ「…近くにアタシとお姉ちゃんの家があるけど…」
音葉「そうなの、もしよかったらそこに連れて行ってもらえないかしら?」
リカ「…うん、やっぱり今日も“無かった”みたいだしいいよ」
- コンコン
音葉「お邪魔します」
リカ「お姉ちゃん…帰ったよ。やっぱり今日もダメだった…」
ミカ「ゴホッゴホッ、そうなんだ…ありがとねリカ、毎日毎日あの野原に行ってくれて」
音葉(美嘉ちゃんベッドに寝てる、体がよくないのかしら…)
ミカ「ゴホッゴホッ、そういえばそちらにいる人は?」
リカ「野原にいた人だよ、なんかにっぽんて所から来たらしいんだ」
ミカ「そうなんだ…」
リカ「ごめん、ちょっとこっちに来てもらえるかな?」
音葉「ええ、わかったわ」
- あく
- リカ「お姉ちゃんホントはカリスマギャルって言われるぐらいすごいんだけど、最近はもうあまり外に出ることもできないんだ…」
音葉「そうなの…そういえば莉嘉ちゃん、さっきからずっと気になっていることがあるんだけどいいかしら?」
リカ「うん、何?」
音葉「さっきの野原、頬を風が撫でる感触はあったのに…」
音葉「何で風が吹く音も、草がこすれ合う音も聞こえなかったのかしら?」
リカ「…ある日を境に世界中から音が消えてしまったんだ。アタシ達の声とかはちゃんと聞こえるみたいなんだけど、風の音も、虫の鳴き声も、みんなみんな無くなっちゃったんだ」
リカ「ここは花がいっぱい咲いて、柔らかな風が吹いて、前は子供たちがみんな原っぱで走り回ってたんだけど音が無くなってからみんな外に出なくなったんだ」
音葉「なるほど…音がしなかったのはそういうことなのね」
リカ「お姉ちゃんもそれから少しずつ元気がなくなって、風邪をひいたら治りにくくなっちゃって…」グスッ
- ミカ「ゴホゴホゴホッ!」
リカ「お、お姉ちゃん!大丈夫!?」
ミカ「リカ…今からお姉ちゃんが言うことをよく聞いて。もしあたしがいなくなったらお友達のところに行くんだよ…ずっとこの家で独りぼっちになるのはよくないから…」
リカ「いやだよ!お姉ちゃんと離れたくなんかない!そんなこと言わないでよ!」
ミカ「ああ…なんて静かなんだろう…子供たちの声も、風の音も聞こえない…いつからここはこんなにさびしくなったのかな…最後に一度だけでいいからあの頃に…」
リカ「おねえちゃああああああん!!やだあああああああああ!!」
音葉「…ごめんなさい、私にはこれぐらいしかできないわ」スゥー
(風の吹く音葉)
リカ「えっ?今風の音が…」
- (鳥の鳴く音葉)(虫の鳴く音葉)(草の揺れる音葉)(木々の葉がこすれる音葉)
リカ「音が…聞こえる…!」
チチチチッ、ピヨピヨ、サァー…ソヨソヨ…
音葉「あら?もう私は音を出してないはずなのに…」
リカ「お姉ちゃん!音が戻ったよ!」
ミカ「本当だ…!昔の、昔の原っぱだ!」
リカ「これでみんな戻ってくるよ!またみんなと一緒に野原で遊べるよ!」
ミカ「ふひひ☆そうと決まったらもう寝てらんないよー☆」
リカ「やったあ!ちょっと気持ち悪いけど元気だったころのお姉ちゃんだ!」
- ミカ「本当にありがとうございます、音を取り戻してくださって」
音葉「いえ…私はそんな大それたことしていないわ。自分でもよくわかっていないんだもの」
リカ「ねえねえっ!もしかしてお姉さんがオトハ様なのかなっ!」
音葉「え?確かに音葉は私の名前だけど…」
リカ「すごーい!オトハ様って本当にいたんだ!」
音葉「ごめんなさい、いったいなんのことかしら?」
ミカ「こらこらリカ。すいません、オトハ様というのは、世界中から音が無くなってしまった時にやってきてまるで言葉を伝えるように音の葉を伝える女神…。そういうおとぎ話がこの世界に伝わっているんです」
リカ「ねえねえオトハ様、これからほかの国の音も取り戻してくれないかな?」
音葉「えっ?」
- ミカ「アタシからもお願いします。いま世界中は音が無くなったことで大混乱の渦の中にあります。中にはアタシみたいに絶望して生きる気力を失ってしまった人もいるでしょう。そんな人たちをほっとけないです」
リカ「お願い!オトハ様!」
音葉「…わかったわ、こんな私に何ができるかわからないけど、できる限りのことはやってみるわ」
リカ「やったー!そうと決まれば冒険の準備だね!」
ミカ「もうリカったら、そうしたら旅のお供としてアタシ達がついていきます。オトハ様はこのあたりの地理に多分詳しくないでしょうから」
音葉「ええ、お願いするわ」
音葉(結局ここはいったいどこなのかしら。私が出す音で世界の音を取り戻せるみたいだけど)
音葉(…皮肉なものね、元の世界では便利屋程度にしか使われなかった私の声が、こっちの世界では救済の技法となっている)
音葉(とにかく旅に出ましょう、そのうち元の世界に帰れる方法がわかるかもしれないわ)
- みたいな転生もの考えたんですけどはたして需要ありますかね・・・?(クソザコメンタル)
- あくしろよ
- 見てるよ
- オナシャス!
- 大神みたいでおもしろいと思った(小並感)
- すいませんまだ続きは書いてないです…
構想自体はある程度あるのでちょこちょこ書く感じでいいっすかね?
- 大神かな?と思ったら出てた
続けてくれるなら楽しみにしてます
- 遠い音楽っぽい
- 何故か窓辺にてを思い浮かべた
- カオル「わーい!風が吹く音がするー!」
チエ「音が戻ったからお母さんが外に遊びに行ってもいいって言ってくれました!」
ニナ「草がくすぐったいですよー!」
ミカ「ふひひ☆音が戻ったおかげで子供たちも戻ってきたね☆」
リカ「もーお姉ちゃんったら!その喋り方は止めてって言ったじゃん!」
カオル「おねえさんが音を戻してくれたのー?」
チエ「おとぎ話の中のオトハ様に会えるなんて…あ、握手してもらってもいいですか!?」
ニナ「オトハ様はやっぱりすごいですよー!」
音葉「その…様はつけなくていいわ」
音葉(薫ちゃん、千枝ちゃん、仁奈ちゃん…会ったことはあるはずなのに私のことを知らないみたいだわ。似ているけどやっぱり違うのね)
- リカ「アタシ達これからオトハ様と一緒に世界中の音を取り戻す旅に出るんだー!」
チエ「わあすごい!本当におとぎ話と一緒なんですね!」
ニナ「がんばってくだせー!応援しているです!」
カオル「帰ってきたらいーっぱいお話聞かせてね!」
音葉「ありがとう。私に何ができるのかまだよくわかってないけど…頑張るわ」
ミカ「それじゃあ皆、行ってきまーす!」
みんな「いってらっしゃーい!」
- 音葉「美嘉ちゃん、これからどこに行くのかしら?」
ミカ「そうですね…ここから一番近いのは“常夏の国”でしょうか。毎日太陽がサンサンと輝いてとっても活気がある国なんです」
リカ「でもちょっと暑すぎるよね~住むだけならこの“春風の国”が一番だよ~」
ミカ「音が無くなる前は夜に花火なんかも打ち上げていたんですよ。それを見るためにいろんなところから人が集まってきて、昼も夜もにぎやかな国でした」
音葉「“でした”ってことは…」
リカ「うん…一度だけ行ってみたんだけどやっぱりみんな元気が無くなっちゃったんだ…」
音葉「なるほどね…じゃあまずはそこに行きましょうか」
- もう始まってる!
- 音葉「そういえばみんな知っているみたいだけど、オトハ様のお話っていったいどういうものなのかしら?」
ミカ「たくさんあるおとぎ話の一つです。悪い魔王が世界中から音を奪ってしまって、人々が音の無い世界に悲しんでいるとどこからともなく現れて、世界中に音を伝えて周ったというお話です」
リカ「それで最後は魔王もやっつけてめでたしめでたしってお話なんだよ!」
音葉「よくあるお話ね。たしか乃々ちゃんが似たような絵本を描いていたわ…」
ミカ「あはは、確かに絵本のようなお話ですね」
リカ「オトハ様が出す音は“音の葉”って言って、まるで言葉を伝えるかのように世界中に広まったんだ!」
音葉「ありがとう、よくわかったわ」
ミカ「お役にたてたならうれしいです。そろそろ日が傾いてきましたし今日はここで野宿しますか」
リカ「わーい!キャンプだキャンプだ!」
- リィリィリィリィ…
サアアーーーー…
リカ「みんなとキャンプしたときのことを思い出すね…こんなふうに風が吹いて、虫たちの鳴き声が聞こえて…そんなに前のことじゃないのに、もうずっと昔のことみたいだ…」
ミカ「うん…音が無い夜はとても寂しかったからね…」
音葉「いい旋律ね…虫たちの歌い声と風がハーモニーを奏でているわ…」
ミカ「本当。他の国に住んでいる人たちはまだ寂しい思いをしているのかな…」
音葉「…早く音を取り戻さないとね」
リカ「うん!そうだね!」
ミカ「明日も早いしそろそろ寝ましょうか」
リカ「ねえオトハ様、オトハ様っていったいどんなところからやってきたの?」
ミカ「こらリカ、もう寝ないとだめでしょ」
リカ「ぶーぶー、お姉ちゃんだって気になるでしょー?」
ミカ「そりゃあ…気にならないと言ったら嘘になるけど」
音葉「ふふっ、いいわ話してあげる」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
リカ「へー、オトハ様って“アイドル”ってお仕事をしてたんですね」
音葉「ええ、でも…」
ミカ「どうかしましたか?」
音葉「…アイドル事務所に所属はしていたけど、私は自分のハーモニーを奏でることもできず、いつも裏方で音を出す仕事ばかりをさせられていたわ」
リカ「ひどーい!オトハ様にそんなことさせるだなんて!」
音葉「ありがとう莉嘉ちゃん、私の代わりに怒ってくれて。でもその経験がこの世界の音を取り戻すためのカギになっているのだからよかったのかもね…」
ミカ「オトハさんの歌声もいつか聞いてみたいなあ…」
音葉「いつか私が自分だけの歌を見つけた時に聞かせてあげるわ、もう寝ましょう」
音葉(本当、私の技術がこんな形で役に立つだなんて…)
- チュンチュン
リカ「うーん、気持ちのいい朝だ~」
ミカ「鳥たちもうれしそうね、自分たちの鳴き声がやっと出るようになったんだから」
音葉「じゃあ行きましょうか」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
音葉「…さっきまで聞こえていた風の音がしなくなった、ということは…」
ミカ「はい、そろそろ近づいてきたみたいですね」
リカ「“常夏の国”、みんな大丈夫かな…」
“常夏の国”
音葉「本当に暑いわね…日が降り注ぐ音さえ聞こえそうだわ…」
リカ「でも風の音も虫の声も鳥の声も聞こえない、不気味だね…」
ミカ「オトハさん、お願いします」
音葉「ええ」スゥー
(風の吹く音葉)(セミの鳴く音葉)(鳥の鳴く音葉)(木々の葉の揺れる音葉)
「なんだ?」「音が聞こえる…?ばかな…」「もしかして音が戻ってきたの?」
リカ「すごいよオトハさま!音が戻ってきた!」
音葉「どうかしら…?」
- シィイーーーーーーーーーーーーーン
「あれ?やっぱり聞こえなくなったぞ」「空耳だったのかしら?」「うえーん!まだ静かなままなんだー!」
ミカ「そんな…なんで!?」
???「あの~ちょっといいですか?」
音葉「は、はい。なんですか?」
???「もしかしてさっきのはあなたがやったのかな?」
音葉「は、はい」
???「えーっ!ってことはあなたがオトハ様!?」
ミカ「ちょ、ちょっと!騒ぎになるから少し静かなところに行きましょう!」
- ミカ「まったく…あやうく大騒ぎになるところだったじゃないの。ウミ、アカネ」
ウミ「あははっ、ごめんごめん。うちのアカネが騒がしかったようで」
アカネ「こんなの黙ってられませんよー!オトハ様がやってきたんですから!」
リカ「二人とも久しぶりっ!元気にしてた?」
音葉(確か海ちゃんと茜ちゃんだったかしら、やっぱり似ているわね…)
ウミ「とにかく、詳しく話を聞かせてくれる?本当にオトハ様が来てくださったんなら私も期待しちゃうってもんよ」
ミカ「わかった、えーっとどこから話せばいいか…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- アカネ「そしたら“春風の国”には音が戻ったんですか!」
リカ「うん!みんなオトハ様のおかげなんだ!」
ウミ「でもなんでさっきはダメだったのかな?一瞬だけ音が聞こえたのに」
アカネ「それはもうきっと気合が十分じゃなかったんですよ!もっとボンバー!って感じでいきましょう!」
ミカ「ボンバーってわけわかんないよ…とりあえずもうちょっと国をまわってみるか」
ウミ「あ、そうだ。オトハ様ちょっといいですか?」
音葉「ええ、何かしら?」
ウミ「オトハ様が音を出すことでこの国に音が戻ってくるんですよね?」
音葉「ええ、私もまだよくわかっていないのだけれど」
ウミ「そしたらちょっとお願いなんですけど…」
ウミ「この国の昼の音だけ取り戻して夜の音は無いまま、ってのはできないですか?」
- 音葉「え?」
アカネ「いいですね!そしたら夜はぐっすり眠れて昼は目いっぱい遊べますよ!」
リカ「ちょ、ちょっと!二人とも何言ってるの!?」
ウミ「だって夜は虫がブンブン飛ぶ音とかカエルがゲコゲコ鳴く声がうるさいじゃん。音が無くなって困ってるけど正直そこだけは助かってるんだよね」
アカネ「この国の半分ぐらいの人は、夜が好きな人たちが昼の音を奪ったんじゃないかなんて噂していますしね!」
ミカ「ちょっと!そんな噂本気で信じてるの!?」
ウミ「あはは、さすがにそんな噂は眉唾もんだよ。でも音が無くなったから、夜寝やすくなったなんて言っている人は結構いるね」
アカネ「何はともあれがんばって音を取り戻してください!ボンバーッ!」
音葉「……」
- “宿屋”
リカ「信じらんない!音がなくなって困ってるのはみんな同じはずなのに!」
ミカ「リカ抑えて抑えて…オトハさん、どうします?」
音葉「…少し休んで、日が落ちてからもう一度話を聞きに行きましょう」
音葉「美嘉ちゃん、この街には昼が好きな人と夜が好きな人がいるのよね?だれか夜が好きな知り合いはいないかしら?」
ミカ「う~ん、夜が好きってわけじゃないかもしれないけど、あの本屋にならいるかな~」
音葉「わかったわ。夜になったらそこに行きましょう」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- “本屋”
リカ「ここです。フミカー!アリスー!お邪魔するよー!」
アリス「大きな声出さないでください。ただでさえ静かなんだからびっくりするじゃないですか」
フミカ「あの…どうされましたか?見かけない方と一緒にいますが…」
音葉(文香ちゃんとありすちゃん、やっぱり私のことはわからないみたいね…)
リカ「聞いて驚かないでね!なんとこの人はオトハ様なんだよ!」
フミカ「ええっ!本当ですか!?」
アリス「フミカさん何信じているんですか。オトハ様なんていませんよ、ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」
リカ「むー、信じてないね。オトハ様やっちゃって!」
音葉「ええ」スゥー
(鈴虫の鳴く音葉)(風の吹く音葉)(草の揺れる音葉)
アリス「うそ…まさか本当に…」
音葉「さて…今度はどうかしら?」
- シィイーーーーーーーーーーーーン
アリス「な、なんだ。何か変な道具を使って音を出していたんですね。そんなんじゃフミカさんはともかく私は騙せませんよ」
音葉(やっぱり音は戻らない、か…)
フミカ「いえ、私は信じます。私たちの祈りが通じてオトハ様がやってきてくださったんです」
アリス「フミカさん!?」
ミカ「しかしやっぱり音が戻らないね。いったい何が足りないんだろう?」
アリス「きっと鳴らした音が少ないんですよ。論破です」
リカ「アリスちゃんさっき私は騙されないとか言ってなかったー?」
アリス「わ、私はフミカさんが信じるならちょっとだけ信じてあげてもいいかなーって思っただけです」
- 音葉「音が少ないか…確かにそうかもね」
アリス「ほら、私が言った通りじゃないですか。この国の夜はもっと素敵な音がたくさんあるんですからもっと鳴らしてくださいよ」
音葉「ごめんなさいね…一度宿屋に戻ってから調べるとするわ」
アリス「あ、ちょっと待ってください。あなたがもし本当のオトハ様だったと仮定するならばお願いしたいことがあるんですけど」
ミカ「相変わらずアンタはへそ曲がりだねー。もっと素直になったら?フミカに聞かせてもらったオトハ様がやってきてうれしいって」
アリス「そ、そんなことはありません!それよりいいですか!」
音葉「ええ、なんとなくわかるんだけど聞かせてもらえないかしら?」
アリス「それなら話は早いです。お願いしたいことというのはですね…」
アリス「この国の夜の音だけ取り戻して昼の音は無いまま、ってのはできないですか?」
- リカ「ちょっとアリスちゃん!あなたもそんなこと言うの!」
アリス「あなたも?ということは大方アカネさんが言ったんでしょ、昼だけ戻してくれーって」
音葉「ええ、そうね」
アリス「でも取り戻すのは夜だけにしてください。昼はセミがミンミンうるさいじゃないですか。夜に虫の静かな鳴き声を聞きながら本を読むのが毎日の楽しみだったのに…」
フミカ「本屋に来る人たちの噂では、昼が好きな人たちが夜の音を奪ったんじゃないかって言われてるんですよ」
ミカ「まさか…あんたたちとあろうものがそんな噂信じてるわけないでしょうね?」
アリス「まさか。でもこの町の半分ぐらいの人は音が無くなったから昼が静かになっていい、だなんて言ってますよ」
フミカ「とにかく…頑張ってくださいね。私たちは祈ることしかできませんが…」
音葉「ええ…お話を聞かせてもらってありがとう」
- “宿屋”
リカ「…みんな、仲が悪くなっちゃったのかな。もう昔みたいに仲良くはできないのかな」
ミカ「そんなことないよ、音が無くなったから気が立っているだけだって」
音葉「とりあえずなぜ音が戻らなくなったのかはなんとなくわかったわね」
リカ「え!?いったいどういうこと!?」
音葉「その前にちょっと聞きたいんだけど…“春風の国”のみんなは音が戻ってきてほしいって心の底から思っていたのよね?」
ミカ「そりゃあそうですよ!そうに決まってるじゃないですか!」
音葉「そうね、だから私の“音の葉”で音が戻ってきた。でもこの国の人達は多分そう思っていないわ」
ミカ「え?」
音葉「話を聞いてみると…昼の音は戻ってきてほしいけど夜の音は無くていい、夜の音は戻ってきてほしいけど昼の音は無くていい。本当に音が戻ってきてほしいと思っている人はそんなにいないわ」
- リカ「じゃあ、みんなの気持ちがバラバラだから音が戻ってこないの?」
音葉「たぶんそういうことね」
ミカ「なるほど…じゃあいったいどうします?」
音葉「どうにかしてみんなの気持ちを一つにするしかないわね、でもここに来たばかりの私にその方法が思いつくかしら…」
リカ「やっぱり無理なのかな…」
ミカ「大丈夫、みんな音が戻ってきてほしいって思ってるよ」
音葉「今日はもう寝ましょう」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- ワーワー、ガヤガヤ
リカ「うん~?うるさいな~全く」
ミカ「あっ、リカやっと起きたの!大変だよ!」
リカ「え?何々どうしたの?」
音葉「宿屋の前で人が集まって言い争いをしているわ…今にも取っ組み合いになりそうよ」
リカ「ええー!大変じゃん!」
音葉「待って、誰か出てきたわ。あれは…海ちゃんと茜ちゃん、それに文香ちゃんとありすちゃんだわ!」
ウミ「あんたたちが音を奪ったんでしょ!せっかく昨日オトハ様が音の葉を伝えてくれたのに!」
アリス「何を言っているんですか!そっちこそオトハ様の音の葉を奪ったんじゃないんですか!」
アカネ「ウミさん落ち着いてください!」
フミカ「アリスちゃん…落ち着いて…」オロオロ
ミカ「ちょ、ちょっと二人とも!この騒ぎはいったいどうしたの!?」
- ウミ「どうしたもこうしたもないよ!こいつら、ウチ達がオトハ様の音の葉を奪ったって言いがかりをつけたんだ!」
アリス「言いがかりをつけたのはそっちじゃないですか!私たちは早く音が戻ってきてほしいって思ってるのに!」
「そうだそうだ!」「家に閉じこもってばかりのやつらが何を言う!」「昼のにぎやかな音を返せ!」
「何言ってるんだ!」「昼の連中は騒がしい奴しかいないのか!」「夜の美しい音を返せ!」
リカ「うう…みんなこんなにケンカしたことなんてなかったのに…」
アリス「子供だからってバカにしないでください!」バシッ
ウミ「いたっ!」
フミカ「あ、アリスちゃん!本で人を叩くだなんて…!」
アリス「あっ、あの、その…」
- 「よくもウミちゃんに手を出したな!」「許せねえ!」「こうなったら殴り合いだ!」
ミカ「ま、まずいよ!けが人が出ちゃう!」
リカ「みんな止めてー!」
音葉「皆さん…落ち着いてください」
「誰だ?」「知ってるか?」「いや知らない」「なんだあいつ?」
アカネ「お、オトハ様…」
「オトハ様だって!?」「まさか昨日音が一瞬だけ戻ったのも!?」「やった!ついに音が戻ってくるんだ!」
音葉「皆さん…本当に音が戻ってきてほしいと思っているんですか?」
ウミ「あ、当たり前だよ!にぎやかだったころに戻ってほしいさ!」
アリス「あ、当たり前です!雅な雰囲気だったころに戻ってほしいです!」
音葉「そのどちらもこの国の良さじゃないんですか?どうして片方だけに戻ってきてほしいと思い、もう片方はいらないと思うんですか?」
ウミ・アリス「そ、それは…」
音葉「茜ちゃん、ありすちゃん。音が戻らないのは気合が足りないから、音が少ないから、そういったわね」
音葉「きっとそうだったのね。本当の音の良さを伝えようとする気持ちが、私には足りていなかったのかもしれないわ」スゥー
(川のせせらぎの音葉)(ヒグラシの鳴く音葉)(屋台がにぎわう音葉)(花火が弾ける音葉)
- ウミ「あっ…」
(いやあー!今日は気持ちよかったですね!)
(ほんと、あんまり暑かったからどうしようかと思ったけど川が冷たくてよかったね)
(ぷかぷか浮くだけってのも楽しいものですね!あ、ヒグラシが鳴いていますよ!)
(ほんとだね…この鳴き声を聞くとなんだか落ち着いてくるね…)
アリス「……」
(フミカさん!今日はお祭りですよ!)
(ま、まって…アリスちゃんとてもはしゃいでますね…)
(いいじゃないですか!今日は年に一度の花火大会なんですから!屋台もいっぱいありますよ!)
(くすっ、いつもこの時期はお昼からそわそわしていますからね…)
音葉「昼も夜もそれぞれいい音があります。しばらくの間音が無くなったからと言って、相手の良さまで忘れてはいけないでしょう…」
「そうだ…」「俺たちは昼も夜も楽しんでいたじゃないか…」「なんで忘れていたんだろう…」
音葉「…いまならみんなの思いが一つになっているわね」スゥー
(風の吹く音葉)(セミの鳴く音葉)(鳥の鳴く音葉)(木々の葉の揺れる音葉)(鈴虫の鳴く音葉)(風の吹く音葉)(草の揺れる音葉)
…ザァアアアア、ミーンミーンミーン、ザワ…ザワ…
アカネ「お、音が…!」
フミカ「音が戻りました…!」
- 「やったー!」「この国に音が戻ったんだ!」「これで昔の活気が戻る!」「やっと夜に鳴く虫の声が聴けるのね!」
音葉「よかった…今度は戻ったみたいね…」
リカ「す…すごい!オトハ様すごいよ!みんなあんなに怒っていたのを仲直りさせちゃったんだから!」
ミカ「さすがです、オトハさん!」
音葉「私は手助けをしただけよ。みんなが音の大切さを思い出したから音が戻ってきただけでしょう」
アリス「…ウミさんごめんなさい。その、本で叩いたりなんかして…」
ウミ「あ、あやまらないでよ。ウチも悪かったよ、あんなに声を荒げて…」
アカネ「二人とも!仲直りの証に握手をしましょう!」
フミカ「ほらアリスちゃん、手を出して」
アリス「あっ…」
ギュッ
ウミ「へへ、ちょっと恥ずかしいね」
アリス「は、はい」
アカネ「これで一件落着ですね!」
- いいゾ~コレ
- おお~ええやん
- 子供向けアニメみたいなほのぼの感ですき
- ウミ「オトハ様、本当にありがとうございました。あのままだったら私たちはきっと取り返しのつかないことになっていました」
音葉「気にしないで。音が戻ってきたのならよかったわ」
アカネ「そうだ!今日はちょうど花火大会の日なんですよ!みんなで見て回りませんか!?」
リカ「え!?今日がその日だったの!?」
ミカ「でも祭りの準備なんてできてるの?」
ウミ「それは大丈夫。ウチたちはいつ音が戻ってきてもいいように祭りの準備だけは欠かさずにしていたんだ」
フミカ「よかったですねアリスちゃん。楽しみにしていた花火大会が開催されて」
アリス「わ、私はそんな、花火大会を楽しみにしてなんか…」
リカ「もーアリスちゃんったら!ほんとはうれしいくせに!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- 良い話でとても好き
でも(○○する音葉)がたくさん並んでるのを見るとどうしても笑っちゃう
- ガヤガヤ、ガヤガヤ
音葉「本当に賑やかね…こんな大きな規模のお祭りは初めて…」
ミカ「そりゃ世界中のどこを探してもこの国ほどのお祭りをやっているところはありませんよ」
リカ「あっ!きたよー!」
ウミ「みんなお待たせっ!」
アカネ「やっぱりお祭りは最高ですね!ボンバーッ!」
フミカ「アリスちゃん、そんなに急がなくても屋台は逃げませんよ」
アリス「で、でもいっぱい人がいるし…」
ウミ「あははっ!これぐらいじゃ食べ物もゲームの景品も無くなんないよ!」
音葉「それじゃあ行きましょう…」
- 「おっ、オトハ様じゃないですか!よかったらこれ喰ってください!」
「オトハ様!一つ射的でもどうですか?」
「オトハ様!私たちの演奏を聴いて行ってください!」
音葉「い、いっぱい貰いすぎて動きにくいわ…」
リカ「オトハ様本当に人気者だね!」
ウミ「あっ、そろそろ花火が始まるよ!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ヒュ~~~~~~~ン、ドォオオオオン
音葉「綺麗ね…それに音も心地いいわ。私の技術もまだまだね」
ミカ「そんなことないですよ!オトハさんの花火の音もすごかったです!」
リカ「あ~あ、花火も終わっちゃって祭りも終わりか~なんだかさみしいな~」
フミカ「…実はこんなものを持ってきたんです」スッ
アカネ「なんですかこれ?」
フミカ「手持ち式の花火です。豪快な音や光はありませんが、これも風情があっていいものですよ」
ウミ「いいね!最後はそれで締めようか!」
パチパチパチッ、リーンリーンリーン
ウミ「…いいもんだね、夜の音ってのも」
アリス「そ、そうでしょう。でも、にぎやかな音も…私は好きですよ」
フミカ「くすっ、よかったですねアリスちゃん…」
音葉「懐かしいわね…子供の頃によくやっていたわ」
リカ「ああ~落ちちゃいそう~お姉ちゃん助けて!」
ミカ「ちょっと、アタシの花火とくっつけたらアタシのが落ちるじゃない」
アカネ「あっ、落ちちゃいました…」ポトッ
ウミ「そろそろおしまいだね、火の元の確認だけして帰ろうか」
- ウミ「そういえばオトハ様はこれからどうされるんですか?」
音葉「今私は世界中の音を取り戻す旅をしているの、明日また次の国に行くでしょうね」
アカネ「…決めました!オトハ様!私もお供していいですか!?」
アリス「ええっ!そんなずるいです!」
フミカ「もしかして…アリスちゃんも行きたいのかしら?」
アリス「ええっ、いや、その…」
アカネ「たぶんリカちゃんとミカさんはこの国の向こう側に行ったことはないでしょう!私なら次の国まで案内できますよ!」
アリス「そ、そんなの私にだってできます!」
ミカ「う~ん、確かにアタシ達はこの先の国に行ったことはないからな~オトハさん、どうします?」
音葉「…決して楽しい事ばかりじゃないと思うわ、もしかしたら今回みたいに危険なことが起こるかもしれない。それでもいい?」
アカネ「そんなのとっくに覚悟はできてますよ!」
アリス「私だってできてます!」
音葉「そう…それならこちらからお願いするわ、私たちと一緒に来てくれないかしら?」
アカネ・アリス「はいっ!」
- リカ「なんだか楽しくなってきたね!二人も一緒に旅するだなんて!」
ミカ「もう、これは世界中の音を取り戻すための旅だっていうのに…でも確かに楽しいよね」
アカネ「よーっし!そうと決まれば早く家に帰って旅の準備をしますよー!」ダダダダダッ
アリス「ああっ!待ってください!」タッタッタッ
ウミ「オトハ様、二人をよろしくお願いしますね」
音葉「ええ、もちろんよ」
フミカ「そしたら私たちも帰りますか…」
音葉(本当の音の良さを伝えようとする気持ちが、私には足りていなかったのかもしれない…か。確かにそうね)
音葉(私は…元の世界で音の良さを伝えようとしていたのかしら?ただ指示通りに音を出して、その指示に疑問を持つこともなくなって…)
音葉(私は…私は元の世界でいったい何を…)
リカ「オトハ様―!どうしたのー!」
音葉「あっ…ごめんなさい、今行くわ」
- 今回のお話は以上です。あと2~3話ぐらいと考えています
前回ストーリーが大神みたいと言われたのでさっそくsyamuさんの実況動画を見て勉強しようと思ったら削除されてて見つかりませんでした
- そんなんで勉強しなくていいから(良心)
- なんでそんなもん勉強する必要あるんですか(正論)
- すごいですねこれ(賞賛)
- “常夏の国・街中”
アリス「それではフミカさん行ってきます」
フミカ「いってらっしゃいアリスちゃん、オトハ様のお力になるんですよ」
ウミ「アカネ、帰ったらお土産よろしく」
アカネ「はい!楽しみに待っててください!」
ミカ「なんとも対称的な2人がお供に加わったね…」
リカ「いーじゃん!みんな一緒ならきっと楽しいよ!」
音葉「お世話になりました。食べ物だけじゃなく色々なものをくださって…」
フミカ「気にしないでください。お供も増えましたから今までのテントじゃきっと狭いでしょう」
ウミ「それにこのあたりは夜になると虫がいっぱい出るからね、ちゃんと虫の対策をしたテントじゃないと」
アリス「それよりもいいんですか?お金もこんなに貰っちゃって」
ウミ「あんたこれから“秋興の国”に行くんでしょ?なのにお金もなしじゃもったいないよ」
アカネ「ウミさん…ありがとうございます!」
音葉「それでは行ってきます。皆さんもお元気で」
リカ「じゃーねー!」
- “国外”
アリス「…本当に音が戻ったんですね。国外に出てもちゃんと風の音や虫の鳴き声が聞こえる…」
アカネ「凄いですねオトハ様!オトハ様はどうして音の葉を出せるんですか!?」
音葉「う~~ん……練習と経験、かしら?」
ミカ「ねえ二人とも、アタシとリカはこの先にある国に行ったことがないんだけどこれから行く国ってどんなところ?」
アリス「はい、“秋興の国”というのはおそらくこの世界の中でどの場所よりも栄えている国なんです」
アカネ「食べ物がとてもおいしいんです!」
アリス「“秋興の国”は年中穏やかな気候で農作がとても盛んなんです、食べることには困らない国ですね。生活に余裕があるのでその分芸術やスポーツが発展した国でもあります」
アカネ「“常夏の国”の花火職人さんも元は“秋興の国”の出身ですしね!」
音葉「芸術が盛んということは…」
アリス「はい、音楽も盛んです。簡単なものから難しいものまで、子供から老人まで音楽は嗜んでいます」
ミカ「たしか“春風の国”にも楽団が来てたね。一回しか聞いたことないけどすごい楽しそうだったよ」
アカネ「たぶん音が無くなって一番困っているのは“秋興の国”の人達じゃないでしょうか…」
- 音葉「そう…音楽が大好きなのに音を楽しむことができなくなっただなんて…早く何とかしてあげないとね」
リカ「そうだね!早くいこうよ!」
アカネ「燃えてきましたよー!天気もいいですし走りますか!」
アリス「ちょ、待ってください!日が照っているのに走ったりなんかしたら脱水症状を起こしますよ!」
ミカ「うん…正直このうだるような暑さはアタシ達にはきついね。オトハさん大丈夫ですか?」
音葉「…道産子には少し辛いものがあるわ。まだ緑があるだけ東京よりもマシだけど…」
アリス「どさんこ?とーきょー?本で見たこともない言葉ですね」
リカ「オトハ様はこことは違う世界から来たからね!何でもその世界では鉄の箱がたくさん道を走ったり、空を飛んだりするんだって!」
アリス「なんですかそのおとぎ話は、そんなの北にいる軍や魔法使いでも作れませんよ」
音葉「私に絵の才能もあれば描いて見せてあげれるのに…残念ね」
アリス「ともかく日中はゆっくりと歩きましょう。このあたりは夕方が長いからそれから本格的に進めばいいですよ」
- もう始まってる!
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
リカ「さすがに暗くなってきたね、今日はここで野宿する?」
アリス「待ってください、ここは森に近いので虫がいっぱいやってくるかもしれません。もう少し歩きましょう」
音葉「ありすちゃんは物知りね、助かるわ」
アリス「そ、それほどでもないです///」
ミカ「出発の直前までフミカに色んなことを聞いて手記にまとめてたからねー、よかったじゃん」
アリス「ミ、ミカさん!それは言わなくてもいいです!」
アカネ「そういえばアリスちゃんはなんで一緒について来ようと思ったんですか?」
ミカ「そうだね、アリスは外に出るよりは家の中で本を読むのが好きな子だったしね」
アリス「……聞いてもバカにしません?」
リカ「そんなことしないよ!教えて教えて!」
アリス「そうですね、ちょうどこのあたりでキャンプをしますか。寝る前にお話しします」
- ミカ「寝る準備できたよ、それじゃあ聞かせてくれる?」
アリス「はい…。私は、本を書きたいんです」
リカ「本?」
アリス「フミカさんはいつも本を読んでばかりであまり外に出ないんです。そのかわりに色々な冒険譚や旅の手記を読んで国の外のことにも詳しいんですけど」
アカネ「それがどうして本を書くこととつながるんです?」
アリス「フミカさんと本を読むのは好きですけど、私はフミカさんと一緒にいろんなところに行って、実際に自分の目で見てみたいんです。だからその本を読んだらフミカさんが思わず外に出たくなるような、そんな本を私は書きたいんです」
ミカ「…アリスはアリスなりにいろいろ考えているんだね」
アリス「なっ!子ども扱いしないでください!」
音葉「何も美嘉ちゃんはありすちゃんを子ども扱いしているわけじゃないわ。明確な目標を持って旅に出るだなんて、子供大人関係なくすごい事よ」
リカ「うん!あたしも手伝うね!今度あたしたちの国にもおいでよ!」
アリス「オトハ様…リカさん…」
- アカネ「すごいですね!私なんてただ居てもたってもいられなかったからついてきただけですよ!」
ミカ「アンタはもう少し考えて行動しなさいよ…とはいってもアタシも似たようなものだけどね」
リカ「そうだね!アタシ達の国に音が戻った時、ほかの国の音も取り戻さなきゃってついてきたんだよね!」
アリス「…少しうらやましいです。自分の気持ちに素直になって、すぐに行動を起こせるのが」
音葉「すぐに行動するのもいいことだけど、しっかりと考えて自分の気持ちを確かにするのも同じくらいいい事よ。ありすちゃんにはありすちゃんの良さがあるわ」
アリス「オトハ様…ありがとうございます」
ミカ「さて、そしたらもう寝ようか。明日も歩くんだからしっかりと体力はつけておかないと」
アカネ「そうですね!おやすみなさい!」
リカ「寝る気あるのかな…」
(それじゃあ今日も音響よろしくね)
(いやー音葉ちゃんがいると楽で助かるよ)
(アイドルもう辞めちゃってもいいんじゃない?どうせ歌なんか歌わせてもらえないでしょ)
音葉(自分の気持ち、か。私はなんでアイドルになったんだっけ…?)
音葉(みんな何かしら夢や目標を持っているわ。私の目標って何?音を取り戻して、元の世界に帰ったとして…それから私はどうするの?)
音葉(…明日も早いわ。もう寝ましょう…)
- “国外・早朝”
アカネ「ボンバーッ!今日もいい朝ですね!」
アリス「んんっ…寝ているんですから静かにしてくださいよう…」
アカネ「何を言っているんですか!朝は涼しいんですからいっぱい歩かないと損ですよ!」
ミカ「確かに早朝は比較的マシだね」
リカ「ふぁあ…でも眠いよう…」
アカネ「しょうがないですね!それなら私が担ぎましょうか!」
ミカ「そうだね。ほらリカ、お姉ちゃんにおぶさりな」
リカ「うう~ん、お姉ちゃん大好き~」
音葉「茜ちゃんはテントも運んでもらっているし、ありすちゃんも担ぐのは大変でしょう。ありすちゃんは私が担ぐわ」ヒョイッ
アリス「い、いえ!そんな恐れ多い事は!」
音葉「気にしないで。子ども扱いされてたくない気持ちは分かっているつもりだけど、甘えられるときは甘えたほうがいいわ」
アリス「…ありがとうございます」
- ミカ「あとどれぐらいかな~」ザッザッ
アカネ「そんなに遠くはないと思いますよ。来たのはだいぶ昔ですけど」ガシャンガシャン
音葉「茜ちゃん、テント重くないかしら?」スタスタ
アカネ「これぐらいなら平気です!鍛えてますから!」ガシャンガシャン
ミカ「もうアカネったら。二人は寝ているんだから静かにしてよ…ん?」ザッ…
アカネ「どうかしました?」ガシャ…
音葉「…私たちが歩く音も、テントがきしむ音も聞こえなくなったわね」
ミカ「と言うことはあそこに見えるのが…」
アカネ「着きましたね、あれが“秋興の国”です」
- アリス「着いたようですね。ですが国に入る前に一ついいですか?」
音葉「はい?何かしら?」
アリス「フミカさんが言っていたんですけど、この国ではオトハ様がオトハ様であることは隠した方がいいとのことです」
リカ「え、なんで?」
アリス「私も詳しいことはわからないんですが…とりあえず国の人に話を聞いてからでもいいでしょう」
音葉「わかったわ。そしたらこの国では私のことはウメキって呼んで、もちろん様は無しよ」
ミカ「わかりました、ウメキさん」
アカネ「いい匂いがしますね!早く入りましょう!」
リカ「アカネちゃんはほんと食べるのが好きだね…」
- “秋興の国”
わいわい、ガヤガヤ
音葉「あれ?今までの国と違って街に活気があるわね」
アリス「この国の楽しみは音楽だけじゃなく、絵や本、食べ物などいろいろありますからね」
アカネ「おじさん!この焼きトウモロコシをください!」
おじさん「毎度!ほらもっていきな!」
ミカ「さっそく買い物してるし…花火大会ほどじゃないにせよこんなに店があるだなんて。道理でお金をいっぱいくれたわけだ」
リカ「なーんだ、意外と音が無くなったことを一番気にしていない国だったりして」
音葉「町の人に話を聞いてみましょう」
「音が無くなったことについてどう思うって?そりゃ困ってるさ!音楽はもちろん食べ物が焼ける音もしないんだから」
「そうね…そのことについてなら長老が詳しいと思うわ。なんでも音を取り戻そうとしているらしいから」
「長老なら何かわかると思うよ。ほんのちょっとだけど楽器の音が戻ってきているしね」
音葉「話を聞いたところ…少しだけだけど自分たちで音を取り戻せているみたいね」
アカネ「すごいですね。オトハ様のお力を借りることなく自力で取り戻すだなんて」
ミカ「長老の住んでいる家がわかりました。ウメキさん、そこに行ってみます?」
音葉「そうね、長老の話を聞きましょう」
- “長老の家”
アリス「ここですね、ごめんください」
お婆さん「おや?この家に来客とは珍しい」
???「どうしました?」
アリス「私たち世界中を旅していて、少々この国のお話を聞きたいんですが…」
お婆さん「ああいいよ、こんな年寄りの話が役に立つんならね、ナナさんもいいだろ?」
ナナ「はい、ナナも外の人のお話を聞いてみたいですしね」
音葉「ありがとうございます。それでは…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- 同年代かな
- お婆さん「なるほどね。この国がどうやって音を取り戻したのか、か」
音葉「はい。いったい何をしたのでしょうか?」
ナナ「それはもう音楽団の皆さんのおかげですね。音が無くなっても色々な方法で音楽を奏でようとしてくれたので、今じゃ数種類の楽器だけなら音が鳴りますよ」
リカ「へえーすごいね!」
お婆さん「これもオトハ様が私たちの頑張りを見てくださったからだ。ありがたやありがたや」
ナナ「また収穫物をお供えに行かないといけませんね!」
ミカ(ねえアリス、この国の人達オトハ様にかなりいい印象を持っているみたいだけど?)ヒソヒソ
アリス(し、知りませんよ!フミカさんが間違っているとでもいうんですか!?)ヒソヒソ
お婆さん「おや?お二方どうされたかな?」
ミカ「い、いえなんでもないです!」
- お婆さん「そうかい?それはそうと明日から音楽祭があるんだ。せっかく来たんだから見ていくといい」
音葉「ありがとうございます。貴重なお話を聞かせていただきました」
お婆さん「さてと…それじゃオババはそろそろ自分の家に帰るとするかな。じゃあ長老、あとはよろしく頼むよ」
音葉「え?」
ミカ「え?」
リカ「え?」
アリス「え?」
アカネ「え?」
ナナ「な、何を言っているんですか!ナナはピチピチの17歳ですよ!長老なんかじゃありません!」
お婆さん「ああ、これは外から来た人には内緒だったね。すまんね年を取ると忘れっぽくなって」
ナナ「わー!わー!ほ、ほら長老!私はもう自分の家に帰りますから!」
お婆さん「何言ってんだい、ここがアンタの家だろう。それじゃあね」
シィイーーーーーーーーーーーーン
- 音葉「えっと…長老さん?」
ナナ「な、なんのことですか?ナナは長老さんじゃありませんよ?」
ミカ「えっと、さっきのお婆さんよりも年上?」
ナナ「そ、そんなわけないじゃないですか。まったく長老ったら物忘れに拍車がかかっちゃって」
アリス「えっと、今思い出したんですけど“秋興の国”はウサギの耳を模した飾りをつけている長老が国を治めていると本で読んだことが」
ナナ「あ、ああー!暑いですね!頭に何か乗っているかと思ったら昨日みんなでお酒を飲んだ時にシノさんがイタズラでもしたんですかね!」スッ
リカ「え?お酒?17歳なのに?」
ナナ「あっ…」
アカネ「よく見たら長老さんじゃないですか!去年のスポーツ大会で優勝したアカネです!あのとき優勝メダルを首にかけてくれましたよね!」
ナナ「あの…その…」
- ナナ「はい…ナナがこの国の長老です…」
音葉(菜々ちゃんまさか本当にウサミン星人…?)
リカ「あの、長老さん。よかったらオトハ様について少しお話があるんだけど…」
ナナ「はい…でも長老って呼ばないでください。ナナって呼んでください…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ナナ「へえ!“春風の国”と“常夏の国”には音が戻ったんですね!」
リカ「うん!これもオトハ様のおかげだよ!」
ナナ「いいですね~これなら“秋興の国”に音が戻ってくるのも時間の問題ですね!」
ミカ(ねえ、やっぱりオトハ様のこと打ち明けてもいいんじゃない?)
アリス(ううーん、確かに大丈夫そうですね…)
ミカ「あのナナさん、実はそのことについてもう少しお話があるんです」
ナナ「なんでしょうか?」
アリス「実は…ここにいる方がオトハ様なんです」
音葉「どうも…」
- ナナ「あははー面白い冗談ですね。それあんまりほかの人には言わない方がいいですよ」
アカネ「それが本当なんですよ!オトハ様が私たちの国に音を取り戻してくれたんです!」
ナナ「…そろそろやめておいた方がいいんじゃないですか?いくら私でも怒りますよ」
ミカ「本当なんです、オトハ様お願いします」
音葉「わかったわ。この国らしい音というと…」スゥー
(ススキの揺れる音葉)(紅葉の落ちる音葉)(コオロギの鳴く音葉)
ナナ「こ…これは…!き、きっと何か道具を使ったんでしょう!それなら栗のはぜる音!雨の降る音!笛の音も出してみてくださいよ!」
音葉「なるほど、こちらが事前に音を準備したわけでないことを証明するわけですね」スゥー
(栗のはぜる音葉)(雨の降る音葉)(笛の音葉)
音葉「…うーん、音は戻ってこないみたいね」
ナナ「まさか…本当にオトハ様ですか…?」
アリス「だからさっきから言っているじゃないですか。本物のオトハ様だって」
ナナ「こ、これはとんだご無礼をいたしましたっ!」
音葉「ど、土下座なんてしないでください。私は気にしていませんから…」
- ナナ「なるほど、それであなたたちは世界中の音を取り戻す旅をしているのですね」
音葉「はい、でも駄目だっただなんて…みんな音が戻って欲しいと思っていないのかしら…」
ナナ「…そのことなんですが、この国ではオトハ様を神格視しているところがあるのです」
リカ「???じゃあなんで音が戻ってこないの?みんなオトハ様を信じているはずなのに」
ナナ「何と言いますか…この国の人にとってオトハ様は偉大な女神のお1人なんです。なので信じてはいますが、オトハ様がそう簡単に来てくださるとは思っていないのです」
音葉「それはこういうことかしら?“オトハ様は確かに存在するが我自分たちの前に姿を見せたりなんかしない”この国の人達はそう思っていると」
ナナ「はい、その通りです。なのでもしオトハ様の名前を名乗ったりなんかしたら、その場で暴動が起きてもおかしくありません」
アリス「…フミカさんが言っていたのはこのことだったんですね」
ナナ「さっきの“音の葉”で音が戻ってこなかったのは、音は自分で取り戻すものだとこの国の人々が考えているからですね。オトハ様が来てくださってすぐ音を戻してくださるだなんてそんな恐れ多いこと、ほとんどの人は考えていないのです」
ミカ「うーん、さっきみたいに“音の葉”を披露すれば信じてもらえないかな?」
ナナ「難しいと思います。私みたいに何か道具を使ったんだろうと思ってしまえば、人々は疑念を強くするだけかもしれません」
リカ「えー!変じゃんそれ!オトハ様を信じてるのに信じないって!」
- 音葉「まいったわね…つまり私がオトハであると信じてもらう必要があるんですよね?」
アカネ「ナナさんが言ってくれれば皆さん信じるのでは?」
ナナ「…実はナナが長老であることは大半の人が知りません。アカネちゃんみたいに直接何かを渡すときでもなければほかの人にお仕事を手伝ってもらっていますから…その、いかにも長老らしい人に」
アリス「ダメダメじゃないですか!」
ナナ「うう…すいません」
ミカ「じゃあどうすればいいのかな。オトハ様を信じてもらうには、そりゃあ“音の葉”を伝えてもらうのが一番なんだろうけど…」
アカネ「一か八か人々をみんな集めて“音の葉”を披露しませんか?半分ぐらい信じてくれたら成功するかもしれませんよ」
リカ「そんな危ないことできるわけないじゃん!失敗したらどうするの!」
ナナ「ああ!その手がありましたか!」
ミカ「えっ?どゆこと?」
- ナナ「明日からの5日間、オトハ様に感謝のお気持ちを奏でる音楽祭があるんですよ!5日間のうちで演奏部門、歌部門、総合部門があって、そこで優勝をした人は“音の葉の巫女”という称号を貰えるんです!」
アリス「ま、まさか…」
ナナ「はい!そのお祭りでオトハ様がぶっちぎりで優勝をし、その上で“音の葉”を披露してくだされば皆さん信じてくれるかもしれません!」
アカネ「おお!認められるためには勝てということですね!燃えてきました!」
アリス「ちょっと待ってください!“秋興の国”の方々は演奏のプロじゃないですか!しかもオトハ様はこの世界にこられたばかりでこの世界の音楽を知りません!それなのに演奏勝負で勝てだなんて…」
音葉「いえ…やるわ」
アリス「オトハ様!?」
音葉「大丈夫よありすちゃん、私はこれでも楽器の演奏もできるの」
ナナ「決まりですね!それでは今日は演奏所に案内いたしますのでお好きなだけ練習をしてください!宿も最高のものを用意します!」
音葉(この国で音を取り戻すことは私のプライドもかかっているわ…半端な気持ちで音楽に携わっているわけではないことを見せてあげる…!)
- 今日はここまでです
いまさらですがこれ読んでる人いますかね・・・?(クソザコメンタル)
- 大丈夫だって、安心しろよ
- いいゾ~これ
- そんなこと心配してる暇があるならもっと書くんだよ
- 楽しみにしてるゾ
- 読んでくれてる人がいてウレシイ…ウレシイ…
頑張りナス!
- 楽器の演奏といえば…!
続きがたのしみ
- 今ちょっと書いてるんですが3話目だけで文字量が1話と2話の合計を軽く超えてるゾ…(困惑)
何でこんなことになってるのか私には理解に苦しむね(ペチペチ)
- ヘイ構わん♂
- 何が問題ですか?(レ)
- “翌日・音楽祭会場”
ナナ「えー、今年もこの季節がやってまいりました。オトハ様への感謝をささげる音楽祭です」
「誰あの子?」「いつもは長老があいさつしているのに」「でもかわいいじゃん」
ナナ「えー、世界から音が無くなってからですね、えー、この国では少しずつ音を取り戻すことができましてね、えー、それも音楽団の皆さんの、えー、努力の賜物によるものと思っています」
ミカ「えーって言いすぎでしょ…」
アリス「久々にみんなの前に立つから緊張しているんでしょうか…」
ナナ「えー、今年はですね、えー、なんと外の国からも参加者がやってまいりました。えー、これが大会に新しい風をですね、えー、よんでくれるとうれしいと思います」
ナナ「えー、それではですね、今年も始めたいと思います。えー、音の鳴る楽器も限られたものしかありませんが、えー、皆さんオトハ様への感謝の気持ちを込めてですね、えー、音楽を楽しみましょう。えー、これで私からのあいさつを終了とさせていただきます」
シィイーーーーーーーーーーーン
ナナ「うう…手を叩いてはくれているのに拍手の音が出ないというのはつらいですね…皆さん!今年もがんばりましょう!そして私たちの音を取り戻しましょう!」
オー!!
- ナナ「ふう、緊張しました…」
音葉「お疲れ様、菜々さん。最後の言葉はどういう意味があるんですか?」
ナナ「ああ、あれはですね毎回音楽祭を重ねるごとに少しずつ楽器の音が戻ってくるんですよ。私たちの頑張りをオトハ様が見てくださったのだと思っています」
音葉「しかし…参加する人はまばらですね…」
ナナ「さっきも言った通り音が鳴る楽器はまだまだ少ないんですよ。音があったころは会場いっぱいに参加者がいたんですが…」
リカ「なんだか楽しそうだねー」
ナナ「優勝者に称号が与えられるとはいえ、実際は上手いも下手もなしにどんな人でも参加しますからね。あくまでオトハ様への感謝がメインですから」
音葉「でも今回私は勝たないといけないわ…この国に音を取り戻すためにも、私のプライドの為にも…!」
ミカ「オト…ウメキさんいつになく燃えていますね…」
ナナ「1日目は楽器の演奏です。勝った印象が強くなるように順番は最後にしてありますので」
音葉「ええ、行ってくるわ」
- ♪~~~♪~~~~♪~~~~
音葉(いい旋律だけど、いかんせんみんな技術がそこまでないわ。自分の楽器が使えないから参加しない人もいるのでしょうね)
音葉(とりあえずはラッキーかしら…これならたぶん勝てそうね)
???「アンタが外から来たって人かい?かなり自信ありげだけどそう簡単に勝てるかな?」
???「今年の“音の葉の巫女”は私たちが頂くよ!」
音葉「あなたたちは…」
ナツキ「挨拶がおくれたね。アタシはナツキっていうんだ。このリーナと一緒にコンビを組んでる」
リーナ「ナツキの演奏の腕と私の“ろっく”な魂があればだれにも負けないよ!」
ナツキ「何言ってんだよ、リーナはもうちょっと練習したらどうだい?」
リーナ「い、いいじゃん!音楽で一番大事なのは音に込めるハートだよ!」
音葉「こんにちは、私はウメキと言います」
音葉(夏樹ちゃんと李衣菜ちゃんはこの世界でも仲良しなのね)
- リーナ「お姉さんの楽器はそのバイオリン?ちゃんと音なる?」
ナツキ「こら、言い方ってもんがあるだろ。でも本当に大丈夫かい?ほかの国で使える楽器もここでは使えないことがあるからね」
音葉「大丈夫よ、ほら」♪~
ナツキ「なかなかいい音じゃないか。柔らかで落ち着くよ」
リーナ「ふっふっふ、これじゃ演奏する前から勝負は決まったようなもんだね!」
音葉「むっ、どういうことかしら?」
ナツキ「ごめん、気を悪くしないでくれ。ただアンタの楽器は今日の部門には不向きってことなんだ」
音葉「不向き?」
ナツキ「ああ。世界中から音が無くなっただろ?この国ではいくつかの楽器は音が鳴るとはいえ、今まで主流だった曲調を出せる楽器はまだほとんど戻っていないんだ」
リーナ「今この国の演奏で流行っているのはバリバリにテンションが上がるような“ろっく”なんだ!…とはいっても早く他の楽器の音も戻ってほしいけどね」
ナツキ「バイオリンの音楽はゆったりとしたものが多いだろ?だから不向きってわけなんだ」
- 司会「次はナツキ、リーナコンビの演奏です」
ナツキ「おっと、もう順番が来たみたいだ」
リーナ「ええーもう!まだ練習が終わってないのに!」
ナツキ「参加者が少ないんだから仕方ないだろ、ほらさっさと行くぞ!」
リーナ「ああ、待ってよ~!」
音葉「ありがとう二人とも、演奏がんばってね」
ナツキ「ははっ!アンタもがんばりなよ!」
音葉(さて、会場を少し見てみましょうか…)
- リーナ「イエーイ!みんなノってるかーい!」
ナツキ「今日はアタシ達の演奏を思う存分楽しんでくれよな!」
ワアアアアアアアアアアアアア!
音葉(なるほど、確かに一番盛り上がっているわね)
音葉(ゆったりとした曲を演奏する人もいたけれど、それよりもずっと盛り上がってるわ)
音葉(確かにバイオリンはあまり向いていないかもしれない、けど…)
リーナ「センキュー!」
ナツキ「みんなありがとよ!」
ワアアアアアアアアアアアアア!
司会「では最後の演奏は外の国から来たウメキさんに行ってもらいます」
- アカネ「ふもふもふも!ふももっ!」
ミカ「飲み込んでから喋りなさいよ…まあなんとなく言いたいことはわかるけど」
リカ「凄い盛り上がりだったね!思わず飛び跳ねちゃったよ!」
アリス「音楽はともかく周りの人がうるさくてかないません…やっぱり私はゆったりとした音楽が好きです」
ミカ「でもこれはマズイね、観客の反応がいいのはアップテンポな音楽ばかりだ。バイオリンの音色がよくてもどこまでいけるか…」
リカ「あっ来たよ!オト…ウメキさんだ!」
「あれが外から来たやつか」「綺麗な人だ…」「持ってる楽器はバイオリン?流行を知らないのね~」
アリス「むう…オトハ様の良さをわからないなんて愚かな人たちです」
ミカ「こら、外でその名前を言っちゃ駄目って言ったでしょ」
アカネ「始まるようですね!」
司会「えーと、楽器はバイオリンですか…では!いったいどんな曲を披露してくれるのでしょうか!?期待の来訪者、ウメキさんです!」
音葉「…始めます。David Garrett で”Smooth Criminal”」 https://www.youtube.com/watch?v=GSFPQDEkc-k
- ナツキ「これは…!」
リーナ「か、カッコイイ…!」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
「すげえ!バイオリンであんな曲もできるのか!」「なんて力強い音なのかしら!」「演奏している姿もいいなあ…」
アカネ「すごいですよ!私がバイオリンの曲を聞いても眠くなりません!」
ミカ「ホント…ウメキさんすごい…」
リカ「お客さんの心を一瞬でつかんだよ!」
音葉「ふう…ありがとうございました」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
司会「これで本日の全演奏が終了しました!観客の皆さんは投票用紙に一番よかったと思う人の名前を書いてください!」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
司会「結果が出ました!1日目に最も投票数が多かった方は…」
アリス「お願い…!」
司会「ウメキさんです!来訪者でありながらたった一度の演奏で皆さんの心を奪っていきました!まさに“華麗な怪盗”!盛大な歓声をお願いします!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
音葉「皆さん、ありがとうございます」
ナツキ「あーあ、負けちゃったか」
リーナ「あの…その…」
音葉「あら?夏樹ちゃんと李衣菜ちゃん。どうしたの?」
リーナ「…あの!私ウメキさんのファンになっちゃいました!握手してもらってもいいですか!?」
音葉「ええもちろん、あなたたちの音楽もとても素敵だったわ」
リーナ「あ、ありがとうございます!よーし、私も家に帰ったらバイオリンの練習するぞー!」
ナツキ「まったく。リーナはまず一つの楽器を極めることから始めなよ。そんなんだからニワカとか言われるんだよ」
リーナ「うぐっ。い、いいの!さっきも言ったけど一番大事なのはハートだから!」
- “宿屋”
ミカ「ウメキさん!お疲れ様でした!」
音葉「久々にバイオリンの演奏をしたわ…直前で曲を変えることになったけど、成功してよかった…」
アリス「え!直前で変えてあれですか!?少しも音が乱れていませんでしたよ!」
リカ「またいつか演奏してよ!あれなら眠くならずに聞けるし!」
ナナ「ウメキさんお疲れ様でした!本当に優勝するなんてすごいです!」
音葉「観客が想像していた音楽とのギャップもありましたから。それにもっと上手い人達が出ていればどうなったかはわかりません」
ナナ「明日は歌部門です、今日はもう休まれますか?」
音葉「いえ、ちょっと練習場を覗いてきます。音楽の傾向がわからないと勝てないかもしれないので…。菜々さんも来てくれませんか?優勝候補の方がいれば教えていただきたいです」
ナナ「わかりました。では行きましょう」
- “練習場”
音葉「歌部門はどのような曲が流行なのですか?」
ナナ「歌部門は演奏部門とは逆で、おとなしめのが流行っていますね。流行っているというよりは、二人とても上手い方がいて…」
???「やあ、ナナさんじゃないか」
???「今日はあいさつお疲れ様です」
ナナ「あっ、アイさんにカエデさん。ちょうどお二人の話をしていたところなんですよ」
音葉(あいさんと楓さん…確かにこの二人なら納得ね)
アイ「おや?君はたしかウメキさんじゃないか。明日に向けて敵情偵察かい?」
音葉「そうなりますね、やるからには全力で挑みたいですから」
カエデ「ふふっ、ウメキさんはこの国に来たばかりなのですから少しぐらいいいじゃないですか」
アイ「本気で言っているわけじゃないさ。それに練習を見に来るということは私たちを警戒しているということだ。あれほどの方にマークされるだなんて光栄なことじゃないか」
- ナナ「アイさん、サックスの方はまだ…?」
アイ「残念だがまだ音が戻らないよ、どうやら今年もアレに頼ることになりそうだ」
音葉「アレ?」
カエデ「アレというのはですね…」
アイ「おっとカエデさんその辺にしてくれ。ここで全部言ってしまえば楽しみがなくなるじゃないか。ナナさんも頼むよ」
カエデ「それもそうですね。ではお先に失礼します」
ナナ「明日は頑張ってくださいね」
- “宿屋”
音葉「…二日目は手ごわそうね」
ナナ「それよりウメキさん、歌はウメキさんが歌うとして、楽器の方はどうするんですか?」
リカ「え?みんなアカペラで歌うんじゃないの?」
ナナ「いえいえ、確かにアカペラで歌う方もいますが基本的には演奏付きですよ」
アリス「困りましたね…誰か楽器ができる人はいますか?」
アカネ「タンバリンとカスタネットならできますよ!」
ミカ「それは演奏とは言えないんじゃ…」
音葉「大丈夫、私に考えがあるわ。美嘉ちゃん、明日は一緒に来てくれる?」
ミカ「ええっ!そんなこと言われても私楽器なんてできませんよ!」
音葉「いいの。ただ立ってくれれば」
ミカ「???」
- “翌日”
司会「それでは音楽祭二日目の始まりです!本日は歌部門となっております!」
ワアアアアアアアアアアアアア!
音葉「凄い人数ね…昨日よりもずっと多いわ」
ナナ「歌部門はアカペラやボイスパーカッションで出る人もいますからね」
アカネ「ぷはあ!出店にも人がいっぱいいました!」
アリス「また食べ物を買ってきたんですか…お金殆どアカネさんが使ってるじゃないですか」
音葉「それじゃあ行ってくるわ、美嘉ちゃんよろしくね」
ミカ「は、はい!」
- ~~~~~~~~♪
音葉「今日は静かな曲が多いわね。お客さんも静かに聞き惚れているわ」
アイ「それでいて観客の層は実は昨日とそんなに変わりが無いんだ。おもしろいだろう?」
カエデ「ふふっ、みんな本当に音楽が好きなのよ」
音葉「あいさん、楓さん」
アイ「おや?隣にいるのはだれかな?」
ミカ「アタシは今日ウメキさんのお手伝いに来ました、ミカと言います」
カエデ「ギターですか。今日はどんな歌を歌ってくれるのかしら?」
音葉「今日は正攻法で行きます。そうでないとお二方には勝てないと思うので」
アイ「最高の褒め言葉だね。そろそろ時間だな、行こうカエデさん」
カエデ「がんばってくださいね」
- ミカ「あの2人…かなり余裕そうでしたね」
音葉「それだけの実力を持っているということでしょう。せっかくだし見てみましょう」
司会「それではアイさんとカエデさんのペアです!よろしくお願いします」
アイ「みんなよろしく」
キャーーーーーーーーー!
ミカ「アイさん女の人からすごい人気ですね…」
アイ「残念ながら今回もサックスは間に合わなかったようだ。だからこれで失礼させてもらうよ」
ミカ「あれは……縦笛?」
カエデ「それではアイさん、演奏の方お願いします」
アイ「ああ、カエデさんは好きなように歌ってくれ」
♪~~~~~~~♪~~~~~~~♪
おお………
- カエデ「~~~~♪…ありがとうございました」
いいぞーーー!最高でしたーーー!
アカネ「むにゃむにゃ…」
アリス「何寝てるんですか、次はウメキさんとミカさんの歌ですよ」
司会「それでは次が最後となります!昨日彗星のように現れたかと思えば優勝した期待の新星!ウメキさんと演奏者のミカさんです!」
リカ「お姉ちゃん大丈夫かな…楽器の演奏なんて学校でやったきりなのに」
ナナ「それ以前の問題ですよ。なんでウメキさんはあんなものを頼んだのかなあ…」
アリス「え?何か頼まれたんですか?」
ナナ「いやですね、昨日ウメキさんから…」
音葉「始めます。zabadak で“遠い音楽”」https://www.youtube.com/watch?v=04BUoX6_8zk
ナナ「“音の出ない”ギターが無いかと聞かれたんですよ」
- ミカ「…」ポロン…ポロン…(ギターの音葉)
音葉「そっと耳を澄まして 遠い遠い音楽 君の小さな胸に届くはず」
ナナ「あれ?あれは確かに音が鳴らないはずなのに…」
アリス「わかりました!ウメキさんが“音の葉”でギターの音を出しているんです!」
アカネ「ええっ!じゃあウメキさんは歌とギターの音を両方同時に出しているんですか!?」
リカ「凄い・・そんなこともできるんだ…」
音葉「雨音 草の息遣い 風のギター 季節のメドレー 聞こえない ダイナモにかき消され 人はなぜ 歌を忘れたの」
音葉「バイオスフェア 君の命こそが バイオスフェア 素晴らしい楽器だから バイオスフェア 歌を奏でて バイオスフェア 鳥たちをまねて」
音葉「バイオスフェア リズムを受け止めて バイオスフェア 50億のコーラス」
ワアアアアアアアアアアアアア!!!
- アカネ「いい歌ですね…心にしみてきました」
アリス「音を取り戻す旅に臨む、そんなオトハ様らしい歌でした…」
司会「ありがとうございました!それでは昨日と同様に投票用紙に一番よかったと思う人の名前を書いてください!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
司会「結果が出ました!2日目に最も投票数が多かったのは…」
ナナ「ゴクリ…」
司会「ウメキさんとミカさんです!素晴らしい演奏と歌でした!なんと二日連続で投票数が一位!みなさん盛大な歓声をお願いします!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
アイ「…負けたか、さすがだよ」
音葉「いえ…演奏者のあなたが万全の状態なら、勝ったのはきっとそちらです。今回勝てたのは運ですよ」
カエデ「ありがとうございました。私たちもまだまだですね」
アイ「握手をいいかな、お互いの健闘をたたえて。ミカさんも頼むよ」
ミカ「はっはい!ありがとうございました!」
司会「それでは歌部門は終了となります!今日の夜は前年度総合部門の優勝グループのエキシビションがあります!みなさん是非いらしてください!」
- “宿屋”
リカ「ウメキさんもお姉ちゃんもお疲れ様―!すっごいよかったよ!」
ミカ「あはは…アタシは弾いてるふりをしてただけなんだけどね」
アリス「ウメキさんお疲れ様でした」
音葉「ありがとうみんな。残すところあと一つね…明日は何時に行けばいいんですか?」
ナナ「いえ、明日は練習日になります。総合部門への最終調整ですね。総合部門は明後日です」
音葉「わかりました。最後の音楽を決めておかないとね…」
アカネ「あ、ウメキさん。さっき誰かやってきて伝言を頼まれました」
音葉「伝言?」
アカネ「はい。“今日のエキシビションの前に練習場に来てほしい”とのことです」
音葉「誰かしら…ちょっと行ってくるわ」
- “練習場”
アイ「やあ来たか、悪いねこんなところに呼び出して」
音葉「あいさんあなたでしたか。何か御用ですか?」
アイ「その前に…今日の歌と演奏、どちらも素晴らしいものでした、オトハ様」
音葉「…!!」
アイ「否定されないということはやはりオトハ様なのですね。まさか私が生きているうちに会えるとは思いもしませんでした」
音葉「…なぜ私がオトハだと…」
アイ「今日のギターの演奏、あれはミカさんが奏でたものではない。私の目はごまかせません。ですがあれほどの歌を歌える人が何か道具を使ってインチキをするはずがない。ならば答えは一つ」
音葉「…私が“音の葉”を出すことのできる人物、つまりオトハであるということ…」
アイ「安心してください、このことは言いふらすつもりはありません」
音葉「助かります…」
- アイ「大変ぶしつけなのですがオトハ様にお願いしたいことがあります。このサックスの音が出るようにしていただきたいのです」
音葉「わかりました…」スゥー
(サックスを奏でる音葉)
アイ「どれ…どうかな?」
~~~~~~~~~♪
アイ「直った…まさか本当に直るだなんて…ありがとうございます。これで明後日は万全の状態で挑めそうです」
音葉「総合部門にも出るのですか?」
アイ「はい。総合部門はどんな人、どんな音楽でも参加できますからおそらく演奏部門や歌部門の人達も全員出ますよ」
音葉「あなたの本当の演奏が見れるわけですね…」
アイ「楽しみにしてください。サックスを直してくださったお礼に全力で挑まさせていただきます」
- “宿屋”
ナナ「あっウメキさんどうでした?アイさん何か言っていました?」
音葉「…菜々さん、総合部門の前年度優勝グループについてお聞きかせください」
ナナ「はい?えーっとですね、フルートのユカリさん、ギターのナツキさん、サックスのアイさん、ボーカルのカエデさんの4人組です。とはいってもアイさんのサックスは音が鳴らないので縦笛で代用していましたが」
音葉「もうサックスの音は戻りました。その件で呼ばれたんです」
ナナ「え!?本当ですか!これは今年はすごいことになりますね…」
音葉「優勝しているのは演奏する音楽が流行のものだからですか?」
ナナ「いえ、純粋に実力です。4人で奏でるハーモニーはまさに変幻自在でどんな観客であろうと魅了します。これ以上は実際に見る方がわかりやすいかと…」
音葉「なるほど…ありがとうございます」
- “夜・エキシビション会場”
司会「今日のエキシビションですがうれしいお知らせがあります!なんとアイさんのサックスに音が戻りました!ついにあの4人が帰ってきたのです!それではお願いします!」
アイ「始める前に…私のサックスが音を取り戻せたのもオトハ様のおかげだ。私の全力を持ってその礼にこたえたいと思う」
ユカリ「久しぶりですね、4人で音を合わせるのも」
ナツキ「リーナには悪いが…やっぱりこの面子でやると心が奮えるね…!」
カエデ「それでは行きましょう」
――――――――――――――――♪♪♪
ワアアアアアアアアアア!!!!キャアアアアアアアアアアアア!!!!
音葉「こ、このハーモニーは…」
ミカ「…アタシは今までこんな音楽を聞いたことが無い…」
アカネ「……すごい……」
カエデ「ありがとうございました…」
ワアアアアアアアアアア!!!!キャアアアアアアアアアアアア!!!!
司会「これはすごいことになってきました!ついに万全となった伝説の4人組と期待の新星ウメキさんが総合部門でぶつかり合います!間違いなく歴代最高の音楽祭となるでしょう!明後日が今から楽しみです!」
- アイ「どうでしたか?私たちの音楽は」
音葉「…うまく表現する言葉が見つかりません。いえ、あふれる感情に言葉が追い付かないといった方がいいでしょうか…」
アイ「光栄です」
音葉「一つ聞いてもいいですか?あの4人なら演奏部門も歌部門も優勝できるはず。なのになぜ別々に組んで出場したのですか?」
アイ「私たちは全部門で優勝してしまったため、それ以降4人では総合部門にしか出れなくなったのです。奇しくもオトハ様と一緒ですね。」
音葉「……」
アイ「明後日の本番、楽しみにしています。お互い最高の音楽ができるといいですね」
ミカ「ウメキさん…」
音葉「ごめんなさい…今は1人にしてください…」
リカ「ウメキさん…先に帰ってるね。待ってるからきっと帰ってきてね」
- “深夜・練習場”
音葉「…ダメ、この音でも駄目だわ」
音葉「あのハーモニーに勝つためにはもっと洗練された音でないといけない…」
音葉「でも今の私にはその音が思いつかない。どうすればいいの…?」
音葉「…笑わせるわ。何が絶対音感よ、何が“音が見える”よ…何が“オトハ様”よ。私はちっぽけなただの人間だわ…」
音葉「でも…だからこそ…」
音葉「勝ちたい…!あのハーモニーに勝てるような音を私は奏でたい…!」
音葉「もう一度…いえ何度でも、私の最高の音を探してみせる…!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- “翌朝・宿屋”
リカ「…結局ウメキさん帰ってこなかったね」
アカネ「大丈夫でしょうか…」
ミカ「たぶん練習場かな、ちょっと見てくるね」
アリス「私も行きます!」
“練習場”
~~~♪
ミカ「楽器の音が聞こえる、誰か演奏しているのかな?」
アリス「失礼します…」
音葉「あら美嘉ちゃん…?もう朝になったのかしら…」
ミカ「ウメキさん!もしかして一晩中楽器を弾いていたんですか!?」
音葉「よく覚えていないわ…早く音を見つけないと…」
アリス「ウメキさん少し休んでください!一睡もしないで演奏し続けるなんて無茶です!」
音葉「駄目よ…私が勝たないときっと音が戻ってこないわ…勝たないと…勝たないと私は…」
ミカ「…オトハさんすみません!」バシッ!
音葉「きゃっ!」
アリス「み、ミカさん!オトハ様に手をあげるだなんて…」
- ミカ「オトハさん!どうして自分一人で解決しようとするんですか!」
音葉「だって…私が頑張らないと世界に音が…」
ミカ「…アタシはオトハさんが音を取り戻してくださってとてもうれしかったです。おかげで生きる活力を思い出したのです」
ミカ「まだ音が無い国はきっと私と同じように心細いんじゃないかって、そう思ったらいてもたってもいられなくなって、オトハさんにお供しようと思ったんです」
音葉「美嘉ちゃん…」
ミカ「だからオトハさん、どうかアタシたちを頼ってください。アタシたちにも手助けをさせてください。力になれないのは、オトハさんだけにすべてを任せるのは、とても辛いです…」
アリス「ミカさん…」
- 音葉(…私はなんて傲慢だったのかしら、自分だけで問題を解決しようだなんて…)
音葉(ハーモニーは1人だけで奏でるものじゃない。信頼する人達とともに奏でるもの…)
音葉「…ありがとう美嘉ちゃん。目が覚めたわ」
ミカ「オトハさんすみません。思いっきり叩いたりなんかして…」
音葉「いいの、私のことを想ってなんとか止めようとしてくれたのでしょう。私にはあなたたちがいる。どんな苦難もともに乗り越える仲間がいる」
音葉「やっと見えたわ。あの4人のハーモニーにも匹敵するものが。…そのために、私に力を貸してくれないかしら?」
アリス「もちろんです!どんなことでも仰ってください!」
音葉「とりあえず宿に帰りましょう…きっとみんなを心配させてしまったわね」
- “宿屋”
リカ「あ!帰ってきたよ!」
アカネ「ウメキさん大丈夫ですか!?」
音葉「ええ、もう大丈夫。明日に向けてあなたたちにも頼みたいことがあるんだけれどいいかしら?」
アカネ「もちろんですよ!全力で挑みます!」
リカ「うん!アタシもがんばるよ!」
音葉「ありがとう。それから菜々さんいいですか?」
ナナ「はい、なんでしょうか?」
音葉「至急用意してほしいものがあります。この国にならおそらくいらっしゃると思うので…」
ナナ「……はい、確かにいますが何に使うんです?演奏や歌には直接関係ないと思いますが…」
音葉「大事なものなのです。よろしくお願いします」
ナナ「わかりました!さすがに今日中は難しいと思いますが間に合わせてみせます!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- 今日はここまでです
次で3話目が終了する予定です
- 読んでるよ
面白い
- おっつおっつ☆
- ああ^~いいっすねぇ^~
- 乙
熱い展開
- “翌日・大会会場”
司会「ついにこの日がやってまいりました!音楽祭総合部門の始まりです!今日の目玉はなんといっても前年度優勝グループとウメキさんの音楽です!いったいどんな音を奏でてくれるのでしょうか!」
アイ「やあウメキさん、調子はどうかな?」
音葉「大丈夫です、もう迷いはありません」
ナツキ「…いい目をしてるね、初日よりもずっといい」
ユカリ「うらやましいです。私以外の3人はもう面識があるだなんて」
カエデ「あら、それならユカリちゃんも出ていればよかったのに」
ユカリ「いえ…私はやはりこの4人で音を奏でたいですから」
アイ「私たちは最後の2組みたいだね。そこが事実上の決定戦だろう。楽しみにしているよ」
音葉「ええ…お互い全力で行きましょう」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
リカ「ふああ…すっかり暗くなっちゃったね」
ミカ「今日はたくさん参加者がいたからね。短い曲や長い曲、激しい曲やゆったりとした曲、なんでもあったし」
アカネ「そろそろアイさんたちの演奏が始まりますよ!私たちも準備しましょう!」
アリス「えっとああやって、こうやって…よし、大丈夫です」
司会「それでは今日のメーンイベント!アイさんたちの演奏です!」
アイ「それじゃあ行こうか、最高の音楽祭にしてみせるよ」
カエデ「ええ…行きましょう…!」
――――――――――――――――♪♪♪
ワアアアアアアアアアア!!!!キャアアアアアアアアアアアア!!!!
- 「相変わらずすごいなあの4人は」「ウメキさんもすごいけどさすがにありゃ敵わないよ」「今年の“音の葉の巫女”もあの4人で決まりかな」
ユカリ「~~♪ みなさんありがとうございます」
ワアアアアアアアアアアアアア!!!!!
司会「素晴らしい演奏をありがとうございました!」
アイ「みんなお疲れ様、最高のセッションだったよ」
ユカリ「アイさん昨日までサックスの練習すらできなかったはずなのに…相変わらずすごいですね」
カエデ「さあ、ウメキさんはいったいどんな音楽を聞かせてくれるのかしら?」
司会「それではもう一つのメーンイベント!この日最後の演目をウメキさん達にお願いしたいと思います!」
ナツキ「うん?“達”ってどういうことだ?」
カエデ「ナナさんといたあの4人かしら?」
アイ「いや、彼女らはおそらく楽器が使えないと思うが…」
- 音葉「さあ、みんな行きましょう」
アリス「うう…ちょっと恥ずかしいです…」
アカネ「恥ずかしいと思うから恥ずかしくなるんですよ!もっと堂々と行きましょう!」
ミカ「アカネはいつでも全く緊張しないね。ほんと大物なんだか」
リカ「アタシはすっごい楽しみだよー!こんなの初めてだから!」
「何かしらあの恰好?」「まるで踊り子みたいだな」「誰も楽器を持っていないぞ?」
ナナ「仕立て屋さんに頼んで衣装を作ってほしいだなんて…なんで歌うのに衣装が必要なんでしょうか?」
アイ「どういうことだ?まさかアカペラで私たちに挑もうというのか?」
音葉「それでは行きます。“とどけ!アイドル”」https://www.youtube.com/watch?v=4Ktvj49h10o
(イントロの流れる音葉)
- 「夢を乗せて 時空超えて とどけ!アイドル」
「キミのココロに 鮮やかな 一瞬(とき)を刻むよ」
ナツキ「な…なんだこりゃあ!?誰も楽器を持っていないはずなのに音楽が聞こえるぞ!?」
ユカリ「しかも全く聞いたことのない音色です!いったいどんな楽器でこんな音が…!」
「Fly 地図はないけど 行きたい場所がある」
「Let me try 涙の日も ピントあわせるよ」
カエデ「これは合唱でしょうか?いえ、踊りながらだなんてわざわざそんなことを…」
アイ「…演奏も、歌も、踊りも、衣装すらも、すべて一つにして表現しようというのか?」
「誰もが立てるわけじゃないステージは」
「宝箱みたいで 奇跡もスリルも笑顔も 溢れだす煌めき」
「夢を乗せて 時空超えて とどけ!アイドル」
「向かい風 駆け抜けて 今日も歌うよ」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
「すげえ!こんなの見た事が無いぜ!」「あの衣装カワイイ!私も着てみたい!」「それよりみんな楽しそうだ、なんていい笑顔なんだ」
「七色の魔法(マジック)は Song for you」
「笑顔に染めてく I’ll be your アイドル」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ナツキ「リーナがいつも言っていた、音楽に大事なのはハートだって。これはまさにそれだ、観客のハートを鷲掴みにしている」
アイ「…してやられたよウメキさん。あなたの切り札は“音の葉”なんかじゃなく最高の仲間だったんだね」
司会「いったいどのようにして楽器もなしに演奏をしたのでしょうか!?とにかくこれですべての演奏が終了しました!これが最後の投票です!みなさんよく考えて名前を書いてください!」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
司会「投票結果が出たようです!それでは発表したいと思います!」
音葉「全力は尽くしたわ…これが私の、いえ私たちの最高のハーモニーよ」
司会「総合部門の優勝者は…………」
アイ「…」
司会「ウメキさんのグループです!歌と演奏と踊りの融合!全く新しい音楽の形を見せてくれました!みなさん盛大な歓声をお願いします!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
ユカリ「…悔しいですね、私たち4人が勝てなかっただなんて…」
ナツキ「でも悔しいだなんて気持ち、久々に感じたよ」
カエデ「それだけ私たちも全力で挑んだということです。むしろ喜びましょう、さらに目指す目標ができたのだと」
司会「なんとウメキさんは音楽祭3つすべての部門で優勝されました!文句なしに彼女が“音の葉の巫女”です!それでは長老によるメダルの授与があります!!」
ナナ「ウメキさん!おめでとうございます!」
「え?あの子が長老?」「これマジ?肩書きに比べて体が若すぎるだろ…」「うそだよ」
ナナ「うう…みんなの前にあまり出なかったツケが…それよりみなさん!重大な発表があります!」
- ナナ「なんとここにいるウメキさんはオトハ様なのです!我々の思いが通じていらっしゃってくれました!」
「なんだって!」「オトハ様だなんてそんな…!」「いや、オトハ様だとしたらさっきの演奏も説明がつく!」
ナナ「そうです!さっき楽器が無いにもかかわらず演奏ができたのも“音の葉”によるものです!オトハ様お願いします!」
音葉「ええ…任せてください…!!」
(ギターの音葉)(チェロの音葉)(バイオリンの音葉)(コントラバスの音葉)(太鼓の音葉)(アコーディオンの音葉)(ハープの音葉)(サックスの音葉)(フルートの音葉)(クラリネットの音葉)(ホイッスルの音葉)(ピアノの音葉)(トランペットの音葉)
ユカリ「これは…!今までならなかった楽器の音まで!!」
ヒュウーーー、ザッザッ、パチッパチッ、ヒラヒラ
ミカ「聞こえる…!音が戻ってきたよ!」
リカ「やったあ!みんな信じてくれたんだ!」
「音が戻ったぞ!」「聞いて!私の楽器にも音色が戻ったわ!」「何か匂うと思ったら肉を焼いていたのか!うまそうな音だ!」
- ナツキ「こりゃ驚きだ…オトハ様への感謝の祭りにオトハ様自らが出場するとはね…」
リーナ「わ、私オトハ様と握手したんだ…!!」
ナナ「オトハ様はご自身の存在を証明するためにあえて音楽祭に参加し、そして見事すべての部門で優勝されました!感謝と賞賛をこめて拍手をお願いします!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
音葉「私だけの力ではありません。私とともに参加してくれた仲間たち、私を高めてくれた演奏相手の皆さんがいたからこそ音が戻ってきたのです」
ユカリ「私たちの演奏も音を取り戻す手助けになったんでしょうか?」
アイ「ああそうさ、きっとそうだよ」
ナナ「それでは総合部門も終了しまして音楽祭も残すところあと1日となりました!今日は早く帰ってゆっくり休んでください!最後にもう一度盛大な拍手をお願いします!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
- “宿屋”
ナナ「オトハ様!本当にありがとうございました!」
音葉「さっきも言ったけれど私だけの力じゃないわ。みんながいてくれたからこその結果でしょう」
ミカ「オトハさん、私たちはお役にたてました?」
音葉「もちろんよ。大事なことを思い出させてくれてありがとう」
アカネ「全部門で優勝するなんてめでたいですね!今日はお祝いをしましょう!」
アリス「アカネさんずっと出店の食べ物を食べてたじゃないですか、まだ食べるんですか?」
ナナ「いえ、今日は早くお休みして最終日に備えたほうがいいと思いますよ?」
リカ「そういえば最終日は何があるの?もう全部終わったんじゃないの?」
ナナ「最終日はいわゆる後夜祭です。みんな好きに歌や演奏をおこなうんです。食べ物や飲み物は全部タダで、一番盛り上がるんですよ!」
リカ「なにそれ!すっごい楽しそう!」
アカネ「ご飯がタダで食べれるなんて楽しみですね!」
- ミカ「そしたら今日はもう寝ちゃう?」
音葉「ごめんなさい、私は少し行くところがあるの」
リカ「えー、そうなの?」
音葉「大丈夫よ莉嘉ちゃん、今日はちゃんと帰ってくるわ。それじゃあ行ってくるわ」
アリス「いってらっしゃい、オトハ様」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
~~~~~~~♪
音葉「こんばんわ、やっぱり練習場にいたんですね」
アイ「おや?オトハ様ではありませんか」
音葉「様づけじゃなくてみんなの前での話し方でいいですよ」
アイ「そうかい、じゃあそうさせてもらうよ」
- 音葉「実は少し楽器に触りに来たんです」
アイ「そうか私もなんだ。みんなには悪いが、私は明日の方が本番だと思っているからね」
音葉「どういうことですか?」
アイ「この音楽祭はオトハ様への感謝の気持ちを伝えるものだ。ならば大会や勝ち負けなんて気にせず、自由に演奏し、大いに楽しむのが一番感謝の気持ちが伝わるさ」
音葉「あいさんは本当に音楽がお好きなんですね」
アイ「君もそうなんだろう?こんな夜中に一人でやってくるんだからな」
アイ「とはいえ、明日は一日中食べて飲んで歌って奏でてのお祭りだ。あまり長居しては明日の体力が持たなくなるよ。私はもう帰るがあまり遅くまで頑張らないようにね」
音葉「…あいさんありがとうございます。あなたたちのような強敵がいたからこそ、私は成長することができました」
アイ「気にすることないさ、こういうのはお互いに切磋琢磨するものだろう?」スタスタ…
音葉「…さて、私も少し練習してから帰るとしましょう」
~~~~~~~~♪
- “翌日”
ナナ「えー、今日は音楽祭の最後の日です。えー、今年はですねついにすべての楽器に音が戻ってきました。えー、それだけでなく虫の鳴き声や木々のざわめきも聞こえるようになってですね、えー、大変めでたいと思います」
ミカ「ナナさん相変わらず挨拶が下手だね…」
リカ「もー!せっかくのお祭りなんだから早く始めてよー!」
ナナ「うぐっ、わかりました。それでは細かい話話にして今日は一日楽しみましょう!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!
アカネ「ついに始まりましたね!まずはどこを回りましょうか!」
アリス「ああっアカネさん!走ったら迷子になりますよ!」
音葉「ふふっ、茜ちゃんはいつも元気いっぱいね」
- ナツキ「やあオトハ様、楽しんでるかい?」
音葉「ええとっても。“常夏の国”の花火大会も大きな規模だったけど、この国もそれに負けていないわ」
リーナ「なんたって“秋興の国”ですからね!食べ物は美味しいし音楽は楽しいしでいいことばかりですよ!」
ナツキ「アタシたちはこれからステージがあるんですよ。よかったら見てってください」
リーナ「あっあの!オトハ様ももう一度演奏してくれるとうれしいです!」
音葉「ステージには好きに上がれるのかしら?」
ナツキ「ええ、今日は誰でもウエルカムですよ。好きな時に好きなだけ来てください」
音葉「ありがとう、少ししてから行くわ」
- ミカ「この国の食べ物は何でもおいしいね、一日しかないのがもったいないよ」
リカ「お姉ちゃん!今度はあれ食べよっ!」
アリス「あの…イチゴはありますか?」
おじさん「イチゴかい?もちろんあるさ!イチゴを使ったデザートもたくさんあるぞ!」
アリス「では、イチゴパスタをお願いします」
おじさん「えっなにそれは」
アカネ「あっ!オトハ様おかえりなさい!5日間で店のものを食べ続けておいしかったものをリストアップして持ってきましたよ!」
音葉「す、すごい量ね…それよりみんないいかしら?」
ミカ「なんですかオトハさん?」
音葉「少ししたらもう一度あの衣装を着てステージに立たない?」
リカ「やるやる!アタシもう一度あの衣装着たーい!」
ミカ「いいですね!あれすっごく楽しかったですよ!」
- “ステージ”
司会「次はオトハ様がもう一度総合部門で披露してくれた演奏をしてくれるそうです!」
「演奏?踊りでしょ?」「いや、歌じゃないか?」「なんだっていいよ!もう一度あれが見れるんならさ!」
アリス「オトハ様、なんだかうれしそうですね」
音葉「えっ、そうかしら?」
アカネ「はい、とてもいい笑顔ですよ」
音葉「そうね…私はやっぱりアイドルってことなのかしら。それじゃあ皆行きましょう…!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
カエデ「とても楽しそうですね…私たちもあの衣装を作ってもらいます?」
ユカリ「ち、ちょっと恥ずかしいです…」
アイ「私たちも負けてられないな。これが終わったらいこうか」
音葉「ありがとうございました…!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
音葉(…歓声を貰えるということはこんなにもうれしい事だったのね。これがアイドル…)
音葉(ともに歩む仲間、切磋琢磨する相手、そしてステージから湧き上がる歓声、どれも元の世界で私にはなかったもの)
音葉(この世界に来てよかった、心からそう思うわ)
- 3話目はこれで終了です 結局1話2話の合計文字数のさらに2倍近くになってたゾ…
次は多分こんな長くならないと思います
おまけ:http://i.imgur.com/tzhLAa4.png
どうやったらデレステMVを録画できるんですかね…(悲哀)
- 乙
- ええぞ!ええぞ!音楽のチョイスもナイスでした
- オツシャス!センセンシャル!
- “朝・宿屋”
チュンチュン
ナナ「うう~~ん、もう朝ですかあ~?アイテテテ、頭が…」
カエデ(裸)「スゥー、スゥー」
アイ(裸)「…………」
音葉(裸)「…私まだ19ですよお…むにゃむにゃ」
ナナ(裸)「えっ、なんですかこれ」
コンコン
ミカ「オトハさんもう起きて…キャアアアアアアアア!!」
アリス「ミカさんどうしたんで…キャアアアアアアアアア!!」
ナナ(裸)「うえええええ!すいません!すいません!」
- ミカ「で…なんでみんな裸だったんですか?」
アイ「たしか昨日は祭りが終わった後にカエデさんが私たちを誘ってバーに行って…駄目だ、これ以上思い出せない」
音葉「あいさんはバーに行ってすぐ酔いつぶれちゃったんですよ。それでバーが閉店した後に楓さんが二次会をしようって言って宿屋にやってきて…まだ未成年だというのに楓さんが私にお酒を飲ませて…それからは私も覚えていません」
ミカ「もう!大人なんですからきちんとしてくださいよ!」
カエデ「ごめんなさい…お酒を飲んでいたつもりがお酒に飲まれていたみたいね」
ナナ(カエデさんもアイさんも私も酔ったら脱ぐタイプじゃないのになぜ…いや、これ以上考えるのはよしましょう)
アリス(皆さんの裸見ちゃった…大人の人ってすごいんだ…///)
- ナナ「ごほん。気を取り直して、オトハ様はこれからどちらに向かわれるんですか?」
音葉「そうですね…いままでに音を取り戻したのは“春風の国”“常夏の国”そして“秋興の国”です。あとはどんな国があるんですか?」
アイ「…よりによってというか、当然というか、あの国が残っているのか」
アリス「…やはり、あそこもまだ音が戻っていないのですね」
アカネ「アリスちゃん知っているんですか?」
アリス「ここからずっと北に向かった先にある国、“厳冬の国”です」
リカ「何かまずい事でもあるの?」
ナナ「あの国はですね、国が二つに分かれてずっと内紛が起きているんですよ」
ミカ「内紛?」
- アイ「あの国は高い軍事力・科学力をもつ軍と、摩訶不思議な魔術を使う魔法使いが数十年も昔から争っている国なんだ」
カエデ「一度だけ近くに行ったことがあるんですが、遠くからも銃撃や爆発の音が聞こえてきました」
ナナ「しかも今は音が無いときましたからね。非常に危険な旅となるでしょう」
アイ「私たちもめったに訪れないため国の情勢もわからない。正直に言って命の危険すらある」
リカ「そ…そんなところに行かなきゃならないの?」
カエデ「…子供たちはこの国で待っている方がいいでしょう」
アカネ「そんな!オトハ様だけを危険な目に合わせるわけにはいきません!」
音葉「…いえ、みんなはこの国で待っていてちょうだい。みんなが危険な目に合う方が私はつらいわ」
ミカ「そんなのはアタシ達も一緒です!お供させてください!」
アイ「みんな落ち着くんだ。別に今すぐ行く必要もない、どうするべきかはしっかりと考えるべきだ」
- ナナ「まず、子供たちは行かない方がいいでしょう。いざというときに身を守れませんから」
アイ「だがオトハさんだけで行くというのも論外だ。オトハさんを死なせるわけにはいかないし、何よりこの世界のことをよく知らない。一人で行っても音を取り戻すことができる確率は低いだろう」
音葉「…そうですね、少し認識が甘かったようです」
アイ「まず私は同行しよう。ナナさんを除けばこの中で私が一番あの国に詳しいだろう」
ナナ「私がいければいいんでしょうけど私はこの国を離れるわけにはいきませんしね、お願いします」
アイ「あと、私の知人に腕に覚えのある人がいる。今この国にいるかはわからないが連絡を取ってみよう」
カエデ「寒さが厳しい土地ですから防寒対策もしないといけませんね。それに道中の移動手段も確保しないといけません」
ナナ「そうですね…出発できるようになるまで1週間ほどかかるかと思います」
音葉「わかりました。みんなもそれでいい?」
アリス「…はい。悔しいですけど、私はまだ子供ですから」
リカ「ごめんなさいオトハ様。一緒に行きたいけどその、怖くってしょうがないんだ…」
アカネ「辛いですね…危険だからこそお力になりたいというのに、私たちでは足手まといだなんて」
ミカ「……」
ナナ「決まりですね。それでは準備は私たちの方でやっておくのでみなさんは1週間ゆっくりとされてください」
- “1週間後”
ナナ「オトハ様、馬車の準備ができました」
音葉「はい、ありがとうございます」
ナナ「…あの子たちも馬車の前で待ってますよ、挨拶をしてあげてください」
音葉「…はい」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
リカ「あっ、オトハ様!」
音葉「みんな、行ってくるわ」
アカネ「…頑張ってください、私たちはここで無事をお祈りする事しかできません」
音葉「それで十分よ。帰ってくる場所があれば、ただそれだけで」
アリス「ぐすっ…本当にお気を付けください。オトハ様が死んじゃったりしたら私…」
音葉「大丈夫よありすちゃん。必ず帰ってくるわ」
- アイ「紹介するよ。今回の旅に同行してくれるマナミさんとサナエさんだ」
マナミ「よろしく、君がオトハ君だね」
サナエ「あーあ、しばらくお酒はお預けかなー」
音葉(真奈美さんと早苗さん、二人がいれば心強いわね)
アイ「それじゃあ行こうか。あんまり立ち止まっていては出発するのが辛くなるからね」
リカ「待って!まだお姉ちゃんが来てないの!」
カエデ「あら、そういえばそうね。というより最近はずっと見かけなかったわね…」
マナミ「もしかしてミカ君のことか?ならばそろそろのはずだ」
アイ「そろそろ?」
ダッダッダッ…
ミカ「ごめんなさい!準備に手間取っちゃいました!」
音葉「美嘉ちゃん、その荷物は?」
ミカ「オトハさん!アタシもつれてってください!足手まといにはなりません!」
リカ「お姉ちゃん!?」
- アイ「マナミさん、これはどういうことだ?」
マナミ「彼女が今回の旅にどうしても同行したいと言ってね、私とサナエさんで鍛えてやったんだ」
サナエ「ミカちゃんなかなか根性があったわよ。初日は特訓後全然動けなかったけど今じゃだいぶ余裕が出てきたわ。一緒に連れてってもいいんじゃない?」
アイ「まいったな…オトハさんどうする?」
音葉「…美嘉ちゃん、今回の旅は今までのものよりもずっと危険なものになるわ。その覚悟はあるかしら?」
ミカ「もちろんです!やっぱりアタシはじっと待つだけなんてできません!」
音葉「…そこまで言われて止めるだなんて私にはできないわ」
ミカ「あ、ありがとうございます!」
マナミ「まあ心配しなくていいさ。いざというときのために私たちがいるんだからね」
サナエ「ただし、ちゃんと教えたようにやばいと思ったらすぐ逃げるのよ。自分の安全が第一だからね」
ミカ「はいっ!」
- ミカ「ごめんねみんな、言ったら多分止められると思って…」
リカ「当たり前じゃん!御姉ちゃんがそんな危険なとこに行くなんて!」
アカネ「ミカさん、必ず無事に帰ってきてくださいね。ミカさんは私たちの大切なお仲間なんですから」
アリス「もう、私たちはちゃんと我慢しているというのに…お願いしますミカさん。私たちの分もオトハ様の手助けをしてください」
ミカ「うん!帰ってきたらお土産話をしてあげるよ!だから…期待して待っててね!」
アイ「それじゃあ今度こそ出発だ。“厳冬の国”に行くよ」
音葉「そうですね。これが最後の国…」
- “国外・馬車内”
アイ「さて、それでは道中に“厳冬の国”について話すとするか」
音葉「はい。たしか国が二つに分かれて争っているんですよね?」
アイ「その通り。現在はリン司令官が率いる軍と魔道士ランコが率いる魔法使いが国の東西に分かれて争っている。どちらも“厳冬の国”出身だ」
サナエ「でもおかしくない?軍ってのは国お抱えの戦闘力でしょ。それがなんで同じ国の魔法使いと戦っているわけ?クーデターでもあったの?」
マナミ「原因は正直言ってわからない。わかるのは両陣営が長い間にわたり闘争を続けているということだけだ」
ミカ「ほかの国と戦争するわけでもなく、同じ国の人同士が争うだなんて…」
アイ「オトハさん、一応言っておくがこの国の内紛は世界中から音が無くなる前からずっと続いている。今回私たちの目的は音を取り戻すことであって彼らの内紛を止めるわけではないということを理解してくれ」
音葉「…はい、わかりました」
マナミ「まだ“厳冬の国”までは遠い。今日はこの辺で休むとしよう」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
サナエ「寒いわね~。寒いと思ったら雪が降ってるじゃない」
マナミ「そろそろ近づいてきたってことだろう」
ミカ「それにしても遠いね。もう“秋興の国”を出て何日か経つんじゃない?」
アイ「“厳冬の国”は他の国からかなり遠い場所にあるからね。だからこそ準備が必要だったわけだ」
音葉「雪なんて懐かしいわね…故郷を思い出すわ…」
ミカ「そういえばオトハさんの故郷も寒いところなんですよね」
音葉「ええ、雪が降る季節はたくさん積もって、家から出られないくらいなのよ」
サナエ「へーすごいわね。そんなところに住んで大変じゃない?」
音葉「いいところもたくさんあるんですよ。雪をあつめてみんなで雪像をつくるお祭りなんかもあります」
マナミ「一度見てみたいものだな。あの国が雪で作るものなんて簡易塹壕ぐらいだろうからね」
- リンとランコ…
あっ(察し)
- 雪降ってるじゃな~い!寒いと思ったわ~
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
アイ「…静かだね、馬車が走る音がしなくなった」
ミカ「ついに来たんだね…“厳冬の国”に」
マナミ「こんなにも静かだが中では激しい戦いが繰り広げられていることだろう」
サナエ「もう一度確認しておくけどこの国は本当に危険よ?覚悟はできてる?」
音葉「ええ、行きましょう」
- “城門”
番兵「この国に入りたいだなんて…あんたたち傭兵か何かか?」
マナミ「単なる旅人さ。旅人が国に入っちゃいけないのか?」
番兵「そんなことはないがよ…入国してもかまわんが死んでも文句は言うなよ。あと金が欲しいならどちらかの陣営に肩入れするといいぞ。たまにそういうの目的で来るやつがいる」
サナエ「あら、こんなか弱い乙女を目の前にしてそんな話をするなんて失礼じゃない?」
番兵「へいへい、ああそうだ忘れるところだった。この国では夜になったら外には出るな」
アイ「やはり危険だからかい?」
番兵「危険というかなんというか…とりあえず外にでなけりゃいいんだ、覚えておけよ。この先をまっすぐ進んでから東に行くと軍側、西に行くと魔法使い側だ」
音葉「ありがとうございます」
- “国内・中間地帯”
アイ「さて、とりあえず入国自体はすんなりできたね」
サナエ「さてさて、それじゃあ道行く人に事情聴取といきますか」
音葉「そうですね。音が無くなったことについても聞かないと…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
「そりゃ不安だね。すぐ近くで銃撃や爆発があってもまったく音がしないんだろ?不安がるなってのは無茶な話だよ」
「攻撃はもちろんだけど吹雪の音とかそれで窓が割れても聞こえないのよ。満足に夜寝ることもできないわ」
「正直音があろうがなかろうがどっちでもいいさ。そんなことよりさっさとこの戦いが終わってほしいね」
サナエ「案外さくっと聞けたわね。中間地帯っていうんだからちょっと身構えていたんだけど」
マナミ「サナエさん、ここは中間地帯であって戦場の最前線じゃないよ。前線から避難してきた民が集まっているんだろう」
アイ「しかし泊まれるところが見つからないのは困ったな」
ミカ「どうします?野宿なんかしたら翌朝には凍え死んでるかも…」
???「あの…ちょっとよろしいですか?」
- アイ「なんですか?」
???「あなた方泊まるところがなくて困っているんですよね?そうしたら私のところに来ませんか?」
マナミ「申し出はありがたいが我々は5人もいるんだ。こんな大所帯で邪魔にならないかな?」
???「大丈夫です。来てください」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ミカ「これはまた…大きな教会だね」
サナエ「なるほどねーこれならあたし達も全員泊まれるか」
???「教会のお仕事を手伝ってくださるならしばらく滞在されても構いませんが、どうでしょうか?」
マナミ「ありがとう。誠心誠意をこめて仕事をさせてもらうよ」
???「ああすいません、まだ自己紹介をしていませんでしたね」
クラリス「私の名前はクラリス。この教会でシスターをしています」
音葉(クラリスさん、こっちでもシスターのお仕事をされているのね)
- 子供「ねークラリスさん、この人たち誰?」
クラリス「今日からこの教会のお仕事を手伝ってくれるお方ですよ、皆さんきちんと挨拶してください」
子供「お姉さんたち外の国から来たの!?いっぱいお話聞かせて!」
子供「わーい!そしたらお祝いで今日はご飯を豪華にしないとね!」
ミカ「ふひひ★子供たちはやっぱりかわいいね★」
サナエ「おーいミカちゃん、もしこんな小さな子供たちに手を出そうとしたら…シメるぞ♪」
ミカ「ハッ!や、やだなーサナエさんったら。アタシがそんなことするわけないじゃん♪」
マナミ「ミカ君、特訓の時はかなりマジメそうだったのに意外な一面だな」
子供「おねえさん、このオルゴール音が鳴らなくなっちゃったの。これ直せない?」
アイ「…残念だが私には無理だ、すまない」
クラリス「そしたらこちらの部屋でお休みになってください。5人も入ると狭くなるかもしれませんが、すみません」
音葉「いえ、雨風がしのげるだけありがたいです。お心遣い感謝します」
- “翌朝・教会”
クラリス「さあ皆さん起きてください。今日は週に一度の聖歌の日ですよ」
子供「えー、めんどうくさいなー」
子供「オルガンの音も鳴らないから楽しくないし…」
クラリス「主への感謝の気持ちを忘れてはなりませんよ。この世から音が無くなってもまだ私たちの声は残っているんですから」
音葉「クラリスさん。聖歌の楽譜はありますか?」
クラリス「え?ありますけどどうするんですか?」
音葉「…うん、これならいけそうね」スゥー
(パイプオルガンを奏でる音葉)
子供「なにこれー!?」
子供「オルガンの音が聞こえるよー!」
クラリス「こ、これはいったい…!?」
ミカ「ほらほらクラリスさん、せっかくオルガンの演奏があるんだから聖歌を歌わなきゃ」
クラリス「そうですね…。みなさん、心を込めて歌いましょう」
- クラリス「ありがとうございました。しかしいったいどうやって…?」
アイ「この方は何を隠そうオトハ様なんだ」
クラリス「お、オトハ様なのですか!?確かにオトハ様ならパイプオルガンの音を取り戻すことなんて造作もないこと…」
音葉「それが完全に音が戻ってくるというわけではないんです。この国の人達の音を思う気持ちが一つにならないとすべての音は戻ってきません」
クラリス「そうなのですね…この国にこられたということは他の国はもう?」
サナエ「ええ、音を取り戻したみたいよ。全部このオトハちゃんのおかげ」
音葉「私はきっかけにすぎません。まずはこの国の人達がどう思っているのかを知らなければ」
クラリス「…申し訳ありませんがこの国に音が戻ってくる可能性はほとんどないと思います」
ミカ「なんで…って決まってるよね」
クラリス「はい。音以前にこの国は争いが絶えません。とても全員の気持ちを一つにするなんて無理でしょう」
- クラリス「今現在東西に分かれて戦っている軍と魔法使いそれぞれの長…リンちゃんとランコちゃんは元はこの教会出身です」
ミカ「え!?そうなの!?」
クラリス「二人はとても仲が良くいつも一緒に遊んでいたのですが…いつしかリンちゃんは軍人に、蘭子ちゃんは魔法使いになりました」
マナミ「…ひどい話だな。内紛が無ければいつまでも仲良くいられたというのに」
クラリス「かつての友すら敵となる…そんな極限の状況では決して人々は手を取り合わないでしょう」
クラリス「悪いことは言いません。この国に音を取り戻すのはあきらめたほうがいいと思います…」
音葉「…いえ、そういうわけにはいきません」
クラリス「どうしてですか?初めて来たばかりの国のために何でそこまで…」
- アイ「…昨日あった子供は自分のオルゴールが鳴らなくなってとても悲しそうな顔をしていたよ」
マナミ「今日も聖歌を歌うというのにパイプオルガンが鳴らなくてさびしそうだったじゃないか」
クラリス「あっ…」
ミカ「初めて来たばかりの国とか関係ないよ。音が無くなって不安な気持ちは誰だって一緒なんだからさ」
サナエ「それにこの国に来ると決めた時点で危険なんて承知の上よ!いまさらビビったりなんかしないわ!」
クラリス「…みなさんに、お願いをしてもよろしいのでしょうか?」
音葉「もちろんです。私たちはその為に来たのですから」
クラリス「お願いします、この国の音を取り戻してください。子供たちが、町行く人々が不安がって教会に来るのです。もうあんな顔を見たくはないから…」
- マナミ「よし、それじゃあ今一度方針を固めるとするか」
ミカ「やっぱり東と西の陣営にも話を聞かないとね。いっそ傭兵として雇われてみる?」
サナエ「でもどっちかに行ったらもう一方の陣営はおろかここにすら戻ってこれないかもよ?」
アイ「大丈夫だ。これがある」
音葉「これは…機械と水晶?」
アイ「ナナさんからもらったんだ。まだこの国で内紛が無かった時代に両方を渡って手に入れた“通信機”らしい。旧式だがちゃんと使えるそうだ」
ミカ「内紛が無かった時代って…内紛は数十年も昔からあるんでしょ?」
サナエ「あのウサ耳一体いくつなのよ…」
アイ「ナナさんもいつのことかは教えてくれなかった。言ったら歳がばれるとでも思っているんだろうか…」
マナミ「ともかくこれで連絡を取ることはできるな。ならば我々を軍側に行くものと魔法使い側に行くものに分けよう。オトハ君はそれぞれの通信機の片割れを持ってここに残ってくれ」
音葉「ごめんなさい…皆さんだけ危険な目に合わせて」
ミカ「気にしないでくださいよ。お手伝いができることの方がうれしいんです」
- サナエ「じゃああたしとミカちゃんで軍側に行くからアイちゃんとマナミちゃんで魔法使い側に行ってくれない?」
マナミ「サナエさんは警官だしその方がやりやすいだろう。ミカ君をしっかりと頼んだよ」
サナエ「そっちこそ、アイちゃんをしっかりと守りなさいよ」
ミカ「いってきますオトハさん。必ず手がかりを見つけ出してみせます」
アイ「それではしばしの別れだね。みんな戻ってきたときはサナエさんが馬車に隠し持ってきたお酒で一杯やろうか」
サナエ「あーら、お酒が苦手なアイちゃんらしくもない。てかお酒ばれてたのね」
アイ「私だってたまにはそんな気分になることもあるさ」
音葉「みなさん、お気をつけて」
クラリス「毎日子供たちと一緒に祈りを捧げます。どうか御無事で」
- 今日はここまでです
結局今回も長くなりそうと思った(小並感)
- オツシャス!
読み応えがあっていいゾ~これ
- オツシャス!
- 音葉さん東郷さん木場さんのパーティとかイケメンすぎておまんここわれる
- “東側”
ミカ「ふう…ふう…ま、まだつかないんですか?」
サナエ「はあ…はあ…さ、さすがのあたしもこの豪雪地帯を歩くのはきついかな…」
ミカ「見渡す限り真っ白な世界ですね…音もしないし本当に不気味…」
サナエ「急がないと日が沈んじゃうわよ。夜は外に出るなって番兵のおじさんに釘刺されたのに」
ミカ「いったい夜になったら何が起きるんだろう…急がないと!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- もう始まってる!
- サナエ「おっ、やっと光が見えてきたね。あれじゃない?」
ミカ「やっとついたか~もうくたくたですよ」
サナエ「そうね…痛っ!何かしら、霰でも降ってきたのかしらね。早くいきましょう」
ミカ「さ…サナエさん…その…頬をつたってるの…」
サナエ「えっ…?………血?」
東兵「見かけん顔だな、西の魔法使いか。こんなところにノコノコとやってくるとは馬鹿な奴だ」
- もう許せるぞオイ!
- ミカ「ひっ…ほ、本物の銃…」
サナエ「…ミカちゃん下がってなさい。レディに挨拶もなしに発砲だなんて、そんなんじゃモテないわよ?」
東兵「ふん、口ばかりは達者な魔法使いらしいな。武器もなしに勝つつもりか?」
サナエ「撃ってみなさいよ。丸腰の相手に銃を使うような腰抜けに負けるほどあたしは弱くないわ」
東兵「この野郎…やってみろ!」ピカッ
ミカ「ひっ!火花が!」
サナエ「ふんっ!」
東兵「ぐああっ!」
サナエ「銃に頼りすぎよ。目線と指の動きを見ればだいたい撃つタイミングがわかるわ」
- 「なんだなんだ?」「こっちから声が聞こえたぞ」
サナエ「仲間が集まってきたのかしらね。さっさと逃げるわよ!」
ミカ「は、はい!」
東兵「いたぞ!仲間が一人やられている!」
東兵「こっちだ!早くこい!」
ミカ「さ、サナエさん!見つかっちゃいましたよ!」
東兵「全員で奴らを囲め!」
サナエ「あちゃー…さすがにこれは無理臭いかな」
東兵「総員、構え!」
ミカ「いやああああああああああああああ!!」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ミカ「…………あれ?どこもいたくない。アタシまだ生きてるの?」
東兵「……日が沈んだ。今日の戦闘はもう終わりだ」
サナエ「どういうこと?油断させて後ろからズドン!ってつもり?」
東兵「そんなんじゃねえよ。お前らそんなことも知らないのか?」
ミカ「何?いったいなんなの?」
東兵「もしかして…あんたら外の国からやってきたのか?」
サナエ「そうよ。せっかく軍に志願しようとしたのにあんまりな挨拶じゃない?」
東兵「そうか…すまなかった。いや、謝ったところで済む問題ではないな。とりあえず向こうにベースキャンプがある。そこで話をしよう」
ミカ「は、ははは…助かった」
- “ベースキャンプ”
東兵「軍曹、軍への入隊希望者がやってきました」
???「おや?君の小隊は見回りに行っていたのではなかったのか?」
東兵「見回りの途中で彼女らを見つけ交戦し、日が沈んだので戦闘を止めました」
???「まさかいきなり発砲したんじゃないだろうな?こんな女の子を相手に」
東兵「そ…それは…」
サナエ「あー気にしないで。いきなり発砲してきたやつは渾身の右ストレートで沈めてやったから」
アキ「自分の部下が失礼をいたしました。自分はアキというものであります」
サナエ「どうも。あたしはサナエ、こっちはミカ。軍に志願して外の国からやってきたのよ」
アキ「ほう!わざわざ外の国からくるとは珍しい!ささ、こちらに来てください!」
- アキ「なるほど、お二人は傭兵でありますか」
サナエ「ええ、といってもミカはまだひよっこだけどね」
アキ「必要なのは覚悟と根性であります!我々の部隊に参加したいというなら大歓迎であります!!」
ミカ「あ、ありがとうございます。ところで一ついいですか?」
アキ「はい、なんでありますか?」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
“西側”
???「なるほど、なぜ夜になると戦いが終わるのか、ですか」
アイ「ああ、なんでそんな几帳面なことをするのかと思ってね、ミナミさん」
ミナミ「一言でいうならば条約ですね。我々魔法使いと向こうの軍は“日が沈んでから上るまでの間、戦闘及びそれを支援する活動を行わないこと”という条約を結んでいるのです」
マナミ「不思議だな。長年この国では紛争があると聞いていたがそんな条約が結ばれたという話は耳にしたことが無いぞ?」
ミナミ「それはこの条約が比較的最近結ばれたものだからです。具体的に言うと、世界から音が無くなった後からかしら」
- “東側”
サナエ「でもそんな条約ちゃんと律儀に守ってるわけ?」
アキ「我々が確認している限りでは一度もこのルールは破れたことがありません!たとえ戦闘のさなかであろうとお互い手を出さずに自陣に帰ったという記録すらあります!」
ミカ「と言うことは…番兵さんが夜は外に出るなって言ってたのは…」
アキ「極論を言ってしまえば我々は夜に外に出る必要はないんですよ。夜に外を出るような輩はルールを破るつもりじゃないのか…そんな風に思ってるところがありますね」
サナエ「なるほどね。あたし達はデリケートな時間に外を歩いていたってわけか。しかも見知らぬ輩だったわけだしね」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
“西側”
ミナミ「それはそうとあなたたちが我が魔道士団に加わってくれるのなら心強いです。我々はどうも戦略の組み立てというのが苦手でして…」
マナミ「安心してくれ。わたしは軍隊に所属して指揮をとっていたことがある。さっそく作戦の立案といこうか」
アイ「夜の間に作戦を立てるのはいいのかい?」
ミナミ「ええ。さすがにそこまで見張るのは現実的じゃありませんから。塹壕の補強やルート構築みたいに外に出るのはダメですけど」
- “西側”
マナミ「なんとか西側に加わることはできたね。サナエ君とミカ君も東側に加われているといいのだが」
アイ「しかしいきなり指揮をとるなんて可能なんですか?」
マナミ「私はあくまでご意見番としているだけだからね。実際に決定をするのはミナミ君さ」
マナミ「それにサナエ君の性格を考えるとおそらく戦場に出るだろう。我々と彼女らがかち合ってしまったら裏で繋がっていることがばれるかもしれないからな。我々は戦場に出ない方がいい」
アイ「なるほど…そこまで考えていたんですか」
マナミ「とりあえずは信頼を勝ち取ることだね。規模が大きい戦いでは勝利をおさめ、その分規模が小さいところでは負けるように戦力を分配すれば、サナエ君たちがそういう場所で武勲を挙げるさ」
アイ「彼女たちにも頑張ってもらわないといけませんね…それではオトハさんに報告をしますか」
- “東側”
ミカ「はああ~~死ぬかと思った~~」
サナエ「いくつかの修羅場を潜り抜けたあたしでもちょっとヤバかったかもね、さすがにあれでミカちゃんを守りきるのは無理だわ」
ミカ「それって…自分一人なら何とかなるってことですか…はあ~すごいですね」
サナエ「とりあえずオトハちゃんへの報告も済ましといたわよ。マナミちゃんたちも西側に無事到着して、向こうで指揮をとるんだって」
ミカ「指揮を取れるだなんて…全く敵わないなあ」
サナエ「しかもあたしたちが配備されるような戦場はあえて戦力を少なめに配分してくれるってさ。ほんとニクイ人だよね」
ミカ「…ホントすごいですね。あたしなんてさっき全然動けなかった…」
サナエ「まっ、誰しもはじめてはそんなもんよ。クヨクヨしてないで寝なさいな。明日は早朝から戦いがあるんだから」
ミカ「はい…おやすみなさい」
- “教会”
クラリス「どうですか?オトハ様」
音葉「みんな東と西にきちんと行けたみたい。危険な目にもあったけど何とか無事らしいです」
クラリス「よかった…」
音葉「クラリスさん、よかったら凛ちゃんと蘭子ちゃんのお話を聞かせてくれませんか?」
クラリス「はい、そんなことでしたら…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
音葉「…二人とも本当に仲が良かったんですね」
クラリス「はい…ですがある日ランコちゃんに魔法の素養があるとわかった時から変わってしまいました…西側の人たちがランコちゃんをスカウトしに来たのです」
音葉「ランコちゃんは自分からその誘いを受けたんですか?」
クラリス「…その時は教会が非常に財政難でランコちゃんが行く代わりに教会に多額の寄付金を渡すと持ちかけられたのです。当然私たちは止めましたが、ランコちゃんは自分がいかないと教会がどうなってしまうのかわかっていたのですね…」
クラリス「しばらくリンちゃんはわんわん泣いていました。そしてその翌年にリンちゃんも軍へ…」
音葉「…辛いお話をありがとうございます」
クラリス「いえ…ほかにもお聞きしたいことがあったら遠慮なく仰ってくださいね。それでは私は子供たちを寝かしつけないといけないので」
音葉「はい、おやすみなさい」
音葉(アイさんはこの国の内紛に関して関わるなと言っていたけど、やっぱりそんなことはできないわ)
音葉(こんな悲しいこと…誰かが止めないと)
- “早朝・辺境の戦場”
アキ「諸君!先日新たな同胞が加わり我々はさらに力を増した!本日はここを通るやつらに奇襲を仕掛ける!」
ミカ「あの…アキさん?」
アキ「“軍曹”をつけんかこのひよっこ!貴様はただの一兵卒だろうが!」
ミカ「は、はい!アキ軍曹!」
アキ「生意気な貴様に初任務を与えてやる!この狙撃銃でやつらに先制攻撃を仕掛けろ!」
ミカ「わ、私がですか!?」
東兵「軍曹!奴らの部隊が姿を見せました!」
アキ「よし!総員配置につけ!」
- アキ「よし、絶好の狙撃ポイントだ!昨日の練習の成果をお見舞いしてやれ!」
ミカ「は、はい」
ミカ(落ち着いて…片目をつぶって照準を覗いて…相手を中心に入れたら引き金を…)
ミカ(引き金を…引いたらどうなるの?弾丸が飛んでいって、それがあの人を打ち抜いて…)
ミカ(きっと痛いだろうな…血がいっぱい出て…)
アキ「何をしている!早く撃たんか!」
サナエ「軍曹!やはり私が撃ちます!(マズイわね…あたしなら足だけを狙えるけどミカちゃんじゃ無理だわ)」
アキ「ひよっこの手柄を奪うつもりか?きちんと見守ってやれ!」
ミカ(アタシは…アタシは…)
アキ「ええいしょうがない!私が直々に教えてやろう!銃はこうやって撃つのだ!」グッ
ミカ「だっ、ダメエエエ!!」
- 西兵「いたっ!」ピィン
西兵「何かとんできたのか!?」
西兵「あそこだ!あそこから撃たれたんだ!」
ミカ(え?いまナチュラルに銃弾を弾かなかった?)
アキ「よし!相手はひるんでいるぞ!鬨の声を上げろ!」
東兵「「「フーーーーーーーーーーーン!!」」」
アキ「みんな鋼の棒は持ったな!行くぞォ!」
西兵「てめえ!クソ軍人!」
西兵「朝っぱらからふざけやがって!」
西兵「ピイイイイイイイイイイイ!!ピイイイイイイイイイイイイ!!」
サナエ「え、なにこれ。なんで銃を捨てて棒で殴りに向かってるの」
- 西兵「くそっ!撤退だ!一度本陣に戻るぞ!」
アキ「やったぞ!我々の勝利だ!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
アキ「よかったなひよっこ!初陣で勝利をおさめるとはめでたいではないか!」
ミカ「あの…軍曹殿。すみませんが頭が痛くなってきまして…」
アキ「それは大変だな!陣地に戻ってゆっくりと休むがいい!」
サナエ「ごめんあたしも頭痛くなってきた。聞きたいことがいっぱいあるんだけどいい?」
アキ「うん?お前も頭が痛くなったのか?それなら早く帰るとしよう!」
- “ベースキャンプ”
アキ「それで聞きたいことというのは何でありますか?」
サナエ「色々あるけどまずこっちの狙撃銃の弾、普通に弾かれなかった?」
アキ「ああ、西軍は自分の体の周りに魔法で粒子還流防壁を展開しているのであります。この防壁は弾丸のように高速で飛来する比較的軽い物質は勢いを殺し、弾き飛ばすことができるのです」
ミカ「それで弾丸が命中しても“いたっ”で済んだわけね…」
アキ「防壁は攻撃を干渉させつづけると粒子還流が不安定になり、攻撃が通るようになるのです。そのため手で力を加え続けられて、鈍的な攻撃ができる棒で殴る作戦をとっているのです」
サナエ「…もしかしてあたしたちが初日ここに来た時にためらわず発砲されたのって…」
アキ「西軍ならたとえ眉間を狙ったところで死にはしないと思っていたんでしょうなあ」
ミカ「あー…納得」
サナエ「てか敵も杖で殴り掛かりに来てなかった?」
アキ「我々の軍服には敵の魔法を低減させる仕組みが施されているのです。なので敵の魔法もこちらの銃ぐらいの効果しかありません。もちろん食らい続ければ死にかねませんが」
- サナエ「…ふつうこういうのってさ、攻撃のための兵器がどんどん開発されていくものじゃない?いや、安全ならあたしたちは助かるんだけど」
アキ「敵に攻撃が通らずこちらは一撃が致命傷、という状況になると士気がガタ落ちするというのもありますが一番はお金であります。正直言ってこんな辺境の戦いで銃弾をバカスカ撃ってる余裕が無いんですよ。それに人の命も言ってしまえば一つの資産ですからね。倹約志向の結果であります」
ミカ「なんか…内紛と聞いてたけどえらい平和的というか原始的というか…」
アキ「何を言ってるんでありますか!確かに数こそ少なくなりましたが戦場では絶えず死傷者が出ています!それに軍属でない民にとって魔法は一撃で致命に至る恐ろしい攻撃です!我々は無辜の民を守らねばなりません!」
ミカ「ご、ごめんなさい……でもよかったあ~~~、あの人が死なないで…」
アキ「ミカ殿は優しいんでありますな、敵にまで気を使うだなんて」
サナエ「本当によかったわ。あそこであの西兵が死んでたら、きっとその重圧に耐えることができなくなっていたわね」
アキ「それはそうと初陣で勝利とはめでたいでありますな!今日は祝勝会としましょう!」
ミカ「えっ?いいんですか?」
アキ「いいんです!我々の部隊はここ最近負け続きだったのでここで士気を上げましょう!」
サナエ「いいねー、お酒ある?」
アキ「もちろんです!夜になったら飲むとしますか!」
ミカ「あはは…アタシ未成年だよ」
- “西側”
ミナミ「ありがとうございました。まさかあんなに簡単に勝つなんて…」
マナミ「戦略は向こうの方が上だったようだが地力ではこちらが勝っていた。ならば作戦を整えてやればこちらが勝つさ」
ミナミ「今まで長らくその勝利をつかむことができませんでした。本当にありがとうございます」
アイ「少しは私たちを信頼してくれるかい?」
ミナミ「ええ、ランコちゃ…ランコ様との謁見の件も考えておきます。それでは」
マナミ「…しかし前線はそれなりの数の死傷者が出たな」
アイ「お互い守りに力を入れているとはいえ前線ではより高性能な銃、より大火力の魔法が使われますからね」
マナミ「サナエ君たちは辺境の地だからあそこまで激しい攻撃はないと思うが…少し心配だな」
アイ「そうですね。死んでしまうかもしれないのはもちろんとして、殺してしまいはしないか」
マナミ「何はともあれこれで一歩前進だ。長と話ができるのなら、うまくすれば停戦に持って行けるかもしれない」
アイ「おや、我々の目的はあくまで音を取り戻すことではありませんでしたか?」
マナミ「もちろん音は取り戻すさ。だがついでに平和を取り戻しても構わないだろう?」
アイ「ははは、あなたが来てくれて本当によかったですよ」
マナミ「さて、それでは今日もオトハ君に報告するとするか」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
“数日後・西側”
マナミ「さて、今日はちょっとした正念場だね」
アイ「それなりに実績を積んでようやく西側の長との謁見が認められましたね」
マナミ「音のないこの国をどう思っているか、東側との停戦の意志はあるか、ここは聞き出せないとね」
ミナミ「お二人ともお待たせしました」
アイ「ああ、今日はよろしく頼むよ」
ミナミ「はい、それではついてきてください」
- “西側・作戦司令部”
ミナミ「ランコ様、傭兵を連れてまいりました」
マナミ「お初にお目にかかります、私はマナミという傭兵です。微力ながらこの戦いの作戦立案をご助力しておりました」
アイ「同じく傭兵のアイです」
ランコ「うむ。そなたたちの助力のおかげで我が魔道士団は勝利を掴むことができた。褒めて遣わす」
アーニャ「ランコ、何も傭兵に頭を下げなくとも…」
ランコ「そういうわけにもいくまい。外の国の出身でありながら団のために日々活躍しているのだからな」
マナミ(団のトップがたかが傭兵相手に頭を下げるとは…なかなかできた人間のようだ)
アイ(隣にいる女の子はたしか“アナスタシア”という魔法使いか。ミナミと同じく近衛兵のようだ)
ランコ「今日は何ゆえ我に謁見を求めたのだ?」
マナミ「はい、今後の作戦のことでお話がありまして…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- ランコ「…ふむ、そなたたちの立てる作戦は全く面白いな。我々が全く考えもしなかった奇策をよくもそんなに思いつくものだ」
マナミ「光栄です。ところでランコ様、少しよろしいですか?」
ランコ「何だ?」
アイ「いま世界中が大混乱に陥っている事件、世界から音が無くなっていることに関し何かお考えをお持ちでしょうか?」
アーニャ「何故そんなことを聞くのですか?作戦とは関係ないでしょう」
アイ「私の故郷でも同様に音が無くなったのです。偉大な魔法使いであるランコ様でしたら何かお知恵を分けてくださらないものかと…」
ランコ「…我の考えを教えてやろう。この国に音が戻る必要はない」
マナミ「何故ですか?敵の奇襲に気付けぬことはもちろん西側の民が不安がります」
ランコ「それがどうした?敵の銃弾が飛び交う音が聞こえないのと同様に我々が魔術を詠唱する音も聞こえないのだ。条件が同じならばより優秀な魔術の方が勝つ。この有利をわざわざ崩すつもりはない」
アイ「…音も聞こえぬ弾丸におびえる民のことはお考えにならないと?」
- マナミ「やれやれ…若いのにできた方かと思えば所詮はただの子供か」
ランコ「……ッ!」
アーニャ「…ランコを侮辱するのはこの私が許しません。今ここで氷像にしても構わないのですよ?」
ミナミ「アーニャちゃん少し落ち着いて!あなたたちもなんてことを言うんですか!」
マナミ「民のことを考えぬ君主はいずれ落とされる。あなたならそれぐらいわかると思いましたが」
ミナミ「知ったふうな口を…!」
ランコ「……だって…音が無くなったからやっとリンちゃんと…」
アイ「…?」
アーニャ「…私があなたたちを殺す前にこの部屋から出て行ってください。有用性があるうちは生かしておいてやります」
マナミ「わかったよ、アイ君行こうか」
- なんで彼岸島語録が出てくるんですかね(困惑)
- アイ「マナミさん!何であんなことを言ったんですか!あやうく死にかけるところだったじゃないですか!」
マナミ「すまないね。どうも彼女が隠し事をしているようなので少し突かせてもらったんだ」
アイ「隠し事?」
マナミ「彼女のあの喋り方、明らかに虚勢交じりのものだ。彼女は自分の心の内を隠している。彼女がぼそっとこぼした言葉こそが本心だろう」
アイ「確か…“音が無くなったからやっとリンちゃんと…”と言ってましたね」
マナミ「どういうことかわからないがランコ君は東側の大将に何らかの思いを抱いているようだ。停戦の意志はなかったようだがとりあえず音に関しては手掛かりがやっとつかめたな」
アイ「全く…その一言を引き出すために命を懸けたというんですか」
マナミ「サナエ君とリカ君も戦場で命をかけているさ、我々もこれぐらいしないとな。さて、オトハ君を通じてこのことを伝えてもらうとしよう」
- “東側”
サナエ「いやあーこのところ連戦連勝で気分がいいね!」
アキ「サナエ殿は強いでありますな!相手を組み伏せるのが非常にお上手ですが何かされていたのですか?」
サナエ「そりゃもう悪漢どもをバッタバッタとなぎ倒す仕事をしていたのよ。続きは今日の宴会で話してあげる」
アキ「ほう!それは楽しみでありますなあ!」
ミカ「サナエさんすっかりこっちに馴染んだね。いつも二人には助けてもらってばかりですみません」
アキ「何を言うんでありますか!我々はもう家族なのです!助け合うのは当然のことですよ!」
サナエ「アキちゃんいいこと言うじゃない!こりゃ今日も酒が進みそうだわー!」
???「へー、連戦連勝で宴会騒ぎだなんてうらやましい限りだね」
ミカ「えっ、誰?」
???「おいおい、これでもあたし達は司令官直属の上官だぞ」
アキ「こ、これはナオ上官とカレン上官!?部下が失礼をいたしました!」
カレン「気にしないでいいよ。この子は外の国の傭兵みたいだしね」
- アキ「それにしても…このような辺境まで如何なされたのですか?」
カレン「西側にも傭兵が加わったらしいんだけどこれがかなりのやり手でね。前線の方はここのところ連戦連敗なんだよ」
ナオ「どうも状況が芳しくないからこっちも同じように傭兵に頼ろうと思ってね。さっきあんたたちが言ってたけど傭兵が来てからこの小隊は最近連戦連勝なんだって?」
サナエ「なるほどね…とりあえず話だけでも聞かせてもらおうかしら」
ミカ「サナエさん!?」
サナエ(なに驚いてんのよ。こうやって上層部に近づいて話を聞くのが目的でしょ?最悪話だけ聞いてバックレたらいいのよ)ヒソヒソ
ナオ「助かるよ、それじゃあアキ軍曹も来てもらえるかい?」
アキ「もちろんであります!」
- “東側・作戦司令部”
カレン「リン、傭兵を連れてきたよ」
リン「ありがとうカレン。ふーん、アンタたちが傭兵?まあ悪くないかな」
サナエ「そりゃどーも。で?あたし達にいったい何を頼みたいのかしら?」
リン「単刀直入に言うよ。前線の戦いに参加してほしい」
サナエ「ん、わかったわ」
ナオ「早っ!」
サナエ「まどろっこしいことは嫌いなのよ。でもミカちゃんは参加させられないわ。ここに置いといてくれる?」
リン「それでいいよ。話を聞くに活躍はあなたの方がしているみたいだしね」
サナエ「ありがと。それじゃあ士気を高めるために今日は宴会でもしてくれないかしら?」
カレン「よくもまあそんなずけずけと…お姉さんかなり心臓強いね」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- ナオ「へえ、ミカは春風の国から来たのか」
ミカ「うん、年中あたたかくて住みやすいところだよ」
カレン「羨ましいな…私もそんなところに住みたいよ」
リン「戦いが終わったらカレンもゆっくり休めるようになるよ。それまでもう少し頑張って」
カレン「はいはい、リン様のために頑張りますよ」
ミカ「あなたたちとても仲がいいんだね。立場の違いなんてまるでないみたいに」
ナオ「そりゃアタシたちは三人とも教会の出身だからね。昔からの顔なじみだよ」
ミカ「教会?てことはあなたたちもランコを知ってるの?」
カレン「知ってるも何も…」
リン「ナオ、カレン、そんなことは話さなくてもいいでしょ」
ナオ「あっ…ごめん」
- サナエ「いやー司令部はやっぱいいもの食べてるね!こりゃお酒が進むわ!」
アキ「本当にうまいでありますな!」
ミカ「あの2人はここでも全くぶれないね…」
サナエ「ねえナオちゃん!こうドカッと士気が上がるような一発芸をしてくれない?」
ナオ「な、なんでアタシがそんなことする必要があるんだよ!」
サナエ「えーいいじゃん。最近は好きな音楽も聴けなくなってサナエたいくつうー」
カレン「いい大人が何言ってんの…」
ミカ「あはは…ところで音楽と言ったらさ…(サナエさんありがとうございます)」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- リン「ふーん、音が無くなったことに関してどう思うか、か」
ミカ「うん。あたしの故郷でも音が無くなってたんだけどもう大変でさ。みんなはどう思ってるの?」
ナオ「うーん、確かに困ってるけどさ。助かってることもあるんだよね」
ミカ「助かってること?」
ナオ「うん。リンのおかげでさ…」
リン「…ごめん二人とも。明日もあるし私はもう休むね」
ナオ「あっリン…」
カレン「相変わらずナオは空気が読めないねー。そんなんじゃ愛想尽かされちゃうよ?」
ナオ「う、うるさいな!悪かったって思ってるよ!」
ミカ「それで、助かってることって何?」
カレン「うーんと、ミカは両陣営で結ばれている条約のことは知ってるよね?」
ミカ「たしか“日が沈んでる間に戦ってはならない”だっけ?」
カレン「うん。これが結ばれたのは世界から音が無くなったからでもあるんだ」
ミカ「へ?音が無くなったことと戦わないことに何の関係があるの?」
アキ「それは自分からもお話するであります!」
サナエ「おっ?アキちゃんもなんか知ってるの?」
- アキ「皆さん知っての通りこの国ではずっと昔から内紛があって、音が無くなる前は昼も夜も関係なしに戦っていました」
サナエ「まあ当然っちゃ当然だね」
アキ「しかしこの国から音が無くなるととても日が昇っていないうちに戦うことはできなくなりました。どこに待ち伏せしているのか全く分からず、攻撃を受けても仲間に気付いてもらえないわけですから」
カレン「当然見張り役も今までにないぐらい気を張ることになったんだ。文字通り音もなく忍び寄られてくるわけだからね」
ナオ「とても敵陣に乗り込める状況じゃない、かといってこっちに相手が攻めてこないとも限らない。お互い目に見えない相手に対して警戒しすぎて消耗が激しくなったんだ」
カレン「そこで両陣営のトップ、つまりリンとランコだね。この二人が直接会合してその条約を決めたんだ」
アキ「おかげで夜はぐっすりと眠れるようになったであります。それまではたとえ周りが静かでも銃撃や魔法の幻聴がして眠れない兵が多かったのです」
- ミカ「そうなんだ…リンってすごいんだね」
カレン「それだけじゃないよ。私たちが来ている魔法耐性の軍服、これもリンが作ることを決定したんだ」
アキ「え!?そうなのですか!?」
ナオ「当時は西側が作った防壁への対策で二つ案があったんだ。一つはこちらも魔法に耐性を付けて殴り合いに持ち込むこと、もう一つは敵の防壁を突き破るほどの攻撃力を持つ兵器を開発すること」
カレン「予算の関係でどちらか一方しか採択できない状況で、リンは迷わずこの軍服を選択してくれたんだ。他の将校たちは兵器開発をしたがってたんだけどね」
アキ「それはおそらく武勲欲しさでしょうな。相手を討ち取らなければ武勲はもらえませんから」
ナオ「まっ、リンのおかげでウチもかなり死傷者が減ったんだ。ありがたいことだよ」
ミカ「そうなんだ。ありがとね話を聞かせてくれて」
- サナエ「ミカちゃんやるねー、あんなに話を聞き出せるだなんて」
ミカ「サナエさんのおかげでもありますよ。もしかして全部計算づくなんですか?」
サナエ「どうかっしらねー。それより音が戻らないことにはあんな理由があったのか」
ミカ「…どうしたらいいんでしょう。音が無くなったおかげでこの国はわずかにですが平和になりました。本当に音を取り戻すことがいい事なんでしょうか…」
サナエ「…なかなかヘビイな問題ね。この前マナミちゃんたちの方の話も聞いたけど向こうもきっと同じこと考えてるわ」
サナエ「こりゃ本格的にバックレた方がいいかもしれないわね。とりあえずオトハちゃんに連絡しましょ。西側が手を抜くように根回しもしてもらわないと」
- “教会”
音葉「はい、わかりました。お気をつけて」
クラリス「何かわかりましたか?」
音葉「あまり喜ばしい話ではありません。どうやら…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
クラリス「音が無くなったおかげで戦場が平和になった、ですか…」
音葉「どうやら二つの陣営の思いは一つだったようですね、音が戻ってほしくないと」
クラリス「…結局私は彼女たちのことをわかってあげられなかったのですね。自分の目が届く範囲のことしか考えていない…愚かでした」
音葉「クラリスさん、そんなに自分を責めないでください。愚かというなら私も一緒です」
クラリス「オトハ様、やはりあなた方はこの国に留まらない方がいいでしょう。ご自分の国に帰られてください」
音葉「……そうですね、これ以上みんなを危険にさらすわけにもいきません」
- アイ『なるほどね、ランコ君が漏らしていた言葉はそういう意味だったのか』
音葉「はい、どちらの陣営も音が戻ることを望んでいません。悔しいですが私たちにできることはもうないでしょう」
マナミ『わかった。だが我々もサナエ君たちもそれぞれの陣営に関わりすぎた。今すぐ抜けるということはできないだろう』
音葉「どれくらいで抜けれそうですか?」
マナミ『そうだね…半月といったところだろうか。それまでに適当に膠着状態をつくっておいてお役御免となるように仕向けるとしよう』
音葉「どうかお気を付けて」
アイ『心配するな。マナミさんならきっとうまくやってくれるさ』
- 今回はここまでです
いきなり彼岸島語録が出てきたのは戦いがガチの命がけだと美嘉の顔が曇る展開しか思いつかなかったからです、ギャグに逃げてごめんよ…ごめんだで…
あと粒子還流防壁というのはプライマルアーマーのモロパクリです
- 乙。実際、戦場もののシリアスさを取り除くには最適だったと思います。続き楽しみ
- 乙倉くん!
シリアス路線もすっげぇ良くて、最近の楽しみにしてます
- “数日後・東側”
サナエ「ただいま…いや今日もしんどかった…」
ミカ「お帰りなさいどうですか前線の方は?」
サナエ「もう大変よ。戦いもそうだけど最近は膠着状態が続いているから前線の兵もかなりじれているわ」
ミカ「いつもお疲れ様です。早く抜けられるといいですね…」
サナエ「…もう吹っ切れたの?」
ミカ「はい…きっとみんな音が戻ってきてほしいと思っている、だなんてあたしの思い上がりでした。この国にはこの国の考えがある、そういうことですよね…」
サナエ「…もうそんなにクヨクヨしないの!暗い顔をしていたらせっかくの美人さんが台無しよ!」
ミカ「ありがとうございます、サナエさん」
- 将校「おい!最近のふがいない戦いはいったいどういうことだ!」
カレン「将校どの、曲がりなりにも司令官に向かってそのような口のきき方は見過ごせるものではありませんよ」
サナエ「また始まったわ…自分は戦場に一歩も出てない癖にえらそうなおっさんね」
将校「負け戦が続いたかと思えば妙な傭兵を雇いこの有様か!いっそ玉砕する覚悟も貴様らにはないのか!」
リン「自分の兵にばかり無茶な戦いを強いて自分は高みの見物?功を焦るのはわかるけど、そんなんじゃいずれ部下に殺されるよ」
将校「この小娘が…!減らず口を叩くな!」
リン「あなたはその小娘と司令官の座をかけて競い、その結果負けたんじゃなかったっけ?」
将校「ぐぐぐ…ふん、余裕なのも今の内だ」
ナオ「おい、いったい何を考えているんだ?」
- 将校「貴様が軟弱な軍服を作っている間にも我々は独自に開発を続けていたのだ。この間アレを戦場に出してみたがなかなかの戦果を挙げたぞ」
リン「まさか…!新型銃を開発したの!?そんな予算はどこにもないはず!」
将校「そんなもの敵を皆殺しにして領地を拡大したら箔をつけて返してやる!」
カレン「アンタ…!この膠着状態でそんなもんだしたらどうなるかわかってるの!?間違いなく向こうもこっちを殺傷する兵器を出してくる!そうしたらどれだけの被害が出ると思ってるの!?」
将校「腰抜けどもが、戦いとは本来そういうものだろう。2日後には最前線の兵士全員に配れるほど生産ができる。私がこの戦いを終わらせてやる」
リン「待ちなさい!司令官である私を通さずにそんな作戦許さないわ!」
将校「準備は着々と進んでいる。もはや貴様なんぞには止められんよ」
- サナエ「あらら…何だか大変そうね」
リン「…こうなったら仕方ない、すべての兵を最前線に集めよう」
ミカ「ま、待ってよ!そんなことをしたら…」
リン「しょうがないよ、せめて私たちの仲間は守らないと。ナオ、カレン、お願いするね」
カレン「…わかった」
ナオ「クソッ…やるしかないのかよ!」
ミカ「リン、どうして西側と争うの?アンタはそんなこと望んでないはずなのに…」
リン「…なんのことかな?」
ミカ「とぼけないでよ!命を奪う兵器じゃなくて命を守る軍服をつくったり、西側と条約を結んだり、本当は争いたくないんでしょ!?ランコとは一緒の教会で育ったんじゃなかったの!?」
リン「…そこまでばれてるんじゃ隠せないか…」
- リン「私が軍に入った理由はどうにかしてもう一度ランコに会うため。悔しいけど、私には魔法の素養がなかったから…」
リン「最初はランコをどうにかして教会に連れて帰りたかった。そのために作戦を立てて、武勲をあげて、この地位に就いたの」
リン「ランコは争いが嫌いな子だった、だから粒子還流防壁なんかを作ったんだね。それに合わせて私は魔法耐性軍服を作った、魔法の知識だけはあったから」
ミカ「二人とも戦いなんて望んでないじゃない、なのにどうして争い合うの?」
リン「…ねえミカ、なんでこの国が二つに分かれて争い合ってるのか知ってる?」
ミカ「え?そ、そんなの知らないよ。誰も理由は知らないって」
リン「その通りだよ。私たちが争っている理由、それは“誰もわからない”。それが答えなんだ」
ミカ「な…なにそれ!意味わかんないよ!」
- “西側”
マナミ「どういうことだ?“誰もわからない”だなんて」
ミナミ「言葉どおりの意味です。なんで私たちは争っているのか?それは誰も知りません。しかし現実として戦いは続いているのです」
アイ「…引っ込みがつかなくなったのだというんじゃないだろうな?」
アーニャ「まさにその通りです。私たちも先代の司令官や近衛兵に聞きました。ですが彼らも“わからない”と答えました」
ミナミ「もう争いの原因を知っている人などこの世にいないでしょう。いえ、もしかしたら原因なんてなかったのかもしれません」
アーニャ「ただ戦いは続いている。続いている以上戦わなければ自分たちが滅んでしまうでしょう。何かのために戦うんじゃない、戦っているから戦う。これがこの国の内紛の真実です」
- マナミ「ならば和平を申し込めばいいだろう!そんなくだらない理由で戦い続けていたのか!」
ランコ「…怖いんです」
アイ「なに?」
ランコ「リンちゃんが私たち魔術団を、いや敵である私を憎んではいないか…それが怖いんです」
ランコ「和平を申し込みに行ってそれに失敗してしまったら、西側の人達がみんなひどい目に合うんじゃないかと思うと…怖くてどうしようもなくなるんです…」
ミナミ「外の国から来た人たちからすればくだらないかもしれませんが、そのくだらない理由を過去のだれもが断ち切ることができませんでした」
アーニャ「すべては自分たちの民を思えばこそ、愛ゆえに我々はずっと苦しんでいるのです。いえ、もはや呪いと言っていいでしょう」
- ミナミ「それに…手段を選べない状況になってきました。東側が新兵器を出してきたせいで私たちが抑えつけていた好戦派が強い発言力を持ってしまいました」
アーニャ「もはや総力戦からは逃れられないでしょう。戦いはどちらかが滅ぶまで続きます」
マナミ「…こんなのは間違っている!誰も争いを望んでいないじゃないか」
ランコ「…二人はもうこの国から逃げてください。こんなむなしい戦いに巻き込まれることはありません…」
アイ「ランコ君…」
ミナミ「マナミさん、アイさん、今までありがとうございました。これから先は私たちの問題です」
アーニャ「ランコ、戦いの準備をしましょう」
ランコ「…なんでこうなっちゃったのかな…音が無くなったおかげでリンちゃんと会うことができたのに…」
ランコ「あの時勇気を出して謝れば…グスッ…こんなことにはならなかったのかな…」
マナミ「…アイ君、行こう」
- “教会”
音葉「なんですって…!東と西が総力戦を!?」
ミカ『はい!それも今までの戦いとは違います!お互いに相手を殺すための兵器を持ち出しました!』
マナミ『…結局私たちは音を取り戻すことも、内紛を止めることもできなかった』
サナエ『これ以上はあたし達が何とかできる問題じゃないわ、総力戦は2日後に行われるらしいわよ』
アイ『オトハさん、撤退をしよう。総力戦が始まれば国全てが戦場となるかもしれない』
クラリス「ああ主よ…なぜこのような試練を我々に課すのですか…」
子供「クラリスさん何で泣いてるの?おなか痛いの?」
クラリス「ごめんなさい…ごめんなさい…」
子供「何であやまってるの?クラリスさんなにもわるいことしてないよ?」
- マナミ『すまない…私が下手に膠着状態なんかを作り出したせいでこんなことに…』
サナエ『マナミちゃんのせいじゃないわ。あの糞ジジイは手柄のために勝手に新兵器のテストをしていたんですもの』
ミカ『…こんなのおかしいよ。なんで争わないといけないの?手を取り合うことはできないの?』
アイ『我々にはわからないさ。きっと前線の兵たちも、その後ろにいる司令官たちにも』
子供「クラリスさんどうしたの?もう聖歌の時間だよ?」
音葉「聖歌…」
クラリス「もういいの…もう聖歌を捧げる人もいなくなるの…」
音葉「この状況…もしかしたら…!」
アイ『どうしたんだ?まさか戦いを止める方法があるとでもいうのかい?』
音葉「皆さん、私の考えを聞いてください」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- マナミ『…そんなことが可能なのか?』
音葉「成功するかはわかりません、失敗すれば死ぬ恐れもある非常に危険な賭けです。やるかどうかは…皆さんの選択に任せます」
ミカ『アタシはやるよ!こんなの絶対止めなくちゃならない!』
サナエ『あたしも乗ったわ。あの糞ジジイに一泡吹かせてやんないとね』
マナミ『…私でもまるで思いつかなかったというのにさすがだよオトハ様。是非やらせてくれ』
アイ『フッ…みんながやるというのに私だけしっぽを巻くわけにもいかないさ。やろうオトハさん』
音葉「…ありがとうございます。それからクラリスさん、あなた方にもお願いしていいですか?」
クラリス「えっ…?」
音葉「この作戦はみんなでやります。みんなの思いを一つにして伝えるんです」
クラリス「…お願いします。もう一度リンちゃんとランコちゃんを会わせてあげたいです」
音葉「決まりですね。決行は2日後、総力戦の直前です」
- もう始まってる!
- “2日後・戦場の最前線”
ナオ「ついにこの日が来ちまったな…カレン、覚悟はできてる?」
カレン「…正直言って震えが止まんないよ。これから始まるのは本当の殺し合いなんだから」
ナオ「しっかりしなよ…なんてアタシも言えないか。こんなんじゃ部下の兵たちも不安がるだろうね」
リン「二人とも…準備はもうできた?」
ナオ「ああ、だけど今日はより一層雪が降ってるね。見にくいったらありゃしないよ」
リン「適当に撃っても多分当たるよ。向こう側にもたくさんいるんだから」
カレン「ねえリン…これで本当によかったの?ランコと話せば和平をすることだって…」
リン「…もう終わったことだよ。それに長年の戦いをはいやめましょうで止めれるわけないよ」
リン(ランコ…私のことを恨んでるかな?…当然だよね、私が総力戦の引き金を引いたんだから)
- ミナミ「ランコ様、準備が整いました」
ランコ「ミナミさん…最後ぐらいいつもの呼び方でいいです」
ミナミ「ランコちゃん…」
アーニャ「…今思い返してみればあの2人が言っていたことは正しかったのかもしれません。本当に民のことを思うならば和平を申し込むべきでした」
ランコ「アーニャちゃん…ごめんなさい。私にもっと勇気があれば、二人に頼ってばかりじゃなかったら…」
ミナミ「気にしないでランコちゃん。一緒にいれて楽しかったわ」
アーニャ「ランコ、私たち三人はいつも一緒です。たとえ地獄だろうとついていきます」
ランコ「ありがとう二人とも…」
ランコ(リンちゃん…私のことを恨んでいるかな?…当然だよね、あの日私が魔術団に入ったのが全ての始まりだったんだから)
- リン(一発の銃弾でも撃たれたら…)
ランコ(一発の魔法でも放たれたら…)
リン(せきを切って戦いが始まるだろうね)
ランコ(もう誰も戦いを止められない)
リン(…ランコにそんなことさせられないね。ならせめて…)
ランコ(…リンちゃんが引き金になってしまうのはダメ。ならいっそ…)
リン・ランコ(私の手で戦いを始めよう)
- ミカ「…オトハさん今です!!」
アイ「思いっきり歌ってくれ!!』
音葉『みんな、いきましょう!』
子供たち『はーい!』
『きよしこの夜 星は光り』 https://www.youtube.com/watch?v=MhSTuj5aWeM
リン「えっ?」
『救いの御子は まぶねの中に』
ランコ「い、いったいどこから歌が…?」
『眠りたもう いとやすく』
「なんだこれは?」「どこから聞こえてくるんだ?」「頭になんかイメージが浮かんでくるぞ…」
- 『きよしこの夜 御告げ受けし』
ミナミ「これは…違う国の兵士同士?」 http://i.imgur.com/n3zGz2w.jpg
『牧人たちは 御子のみ前に』
アーニャ「戦場の中でツリーの飾りつけを…」 http://i.imgur.com/QvK2lhf.jpg
『ぬかずきぬ かしこみて』
ランコ「楽しそうなパーティー…教会にいた時みたい…」 http://i.imgur.com/NZjpwia.jpg
- 『きよしこの夜 御子の笑みに』
ナオ「とても楽しそう…敵同士なのに一緒に遊ぶだなんて…」 http://i.imgur.com/jeOGuML.jpg
『恵みの御世の 明日の光』
カレン「戦場にもこんな笑顔があるんだね…」 http://i.imgur.com/cDrYCpA.jpg
『輝けり ほがらかに』
リン「…またみんなとこんな風に…」 http://i.imgur.com/RMTR2aJ.jpg
- カランカラン、ドサッ、ボスッ、ゴトッ
将校「お、おいお前ら!何武器を捨てているんだ!」
東兵「将校どの…なんだか自分はもう争うのがばからしくなってきました」
好戦派魔法使い「こりゃ!杖を捨てるな!戦わんか!」
西兵「魔法使いどの…東側の人間も考えていたのは同じことだったのです。彼らも争いたくなかったのです」
ミカ「やった!兵たちがみんな武器を捨てたよ!」
アイ「ミカ君の方も成功したみたいだな。こっちも成功だ!」
- “回想・総力戦の2日前”
音葉「私の世界で100年以上前、第一次世界大戦という大きな戦争がありました。戦場の一つ、西部戦線という場所ではドイツ軍とイギリス・フランス軍が対峙して戦っていたんです」
音葉「その戦争中に一つの奇跡が起きました。それは1914年の12月、“ヴァルダー・キルヒホフ”というドイツのテノール歌手が戦場を慰問に訪れたのが始まりでした」
音葉「彼は最前線で両軍に向かって“きよしこの夜”を歌い始めました。すると前線で睨み合っていた両軍が武器をおろし、自発的に停戦命令を出したんです」
音葉「“クリスマス休戦”…この奇跡はそう呼ばれました。ついさっきまで敵同士だった人たちとパーティをし、プレゼントを交換し、お互いにフットサルをして遊んだとまで言われています」
音葉「きっと彼らは心の奥底ではお互いを憎んでいたりなんかしていなかったのでしょうね。きっかけがあれば仲良くなれる、戦っている相手とそんなことができるんです」
音葉「この国の人達も同じ、みんな戦いたがってなんかいないでしょう。お互い命を奪うことよりも命を守ることを考え、あまりにも夜が危険になれば戦わないことを約束できる…必要なのはきっかけなんです」
音葉「きっかけは私たちで作ります。音楽の真髄は自らのイメージを表現し、伝えること。今の私ならきっとそれができるはず。皆さんは通信機を持って前線に行き、私たちの歌を届けてください」
- “戦場の最前線”
ミカ「リン、これを」スッ
リン「ミカ、逃げてなかったの?…これは、旧式の通信機?」
ミカ「この通信機は教会に通じているんだ」
リン「教会…まさか…!もしもし…聞こえますか…?」
クラリス『…ええ、聞こえるわリンちゃん』
リン「クラリスさん…!」
クラリス『ちょっと待ってね、今ここには西側に通じる水晶もあるの。あなたにつなげたい人がいるわ』
ランコ『…リンちゃん?』
リン「ランコ…!あなたなの!?」
ランコ『よかった…!リンちゃんと戦うことにならなくて本当によかった…!』
- リン「…ねえランコ、いまさらで申し訳ないんだけど聞いてほしいんだ。私ランコを連れ戻したかったの。そのために軍に入ったんだ」
ランコ『ほんと…?教会を出て行った私のこと恨んでないの…?』
リン「そんなわけない!私ランコがいなくなって本当に悲しかったんだよ!」
ランコ『りんぢゃあん……』
リン「…ランコ。もう一つ言いたいことがあるんだ」
リン「和平しよう。誰も争いを望んでいない、私たちはきっと仲良くなれるはずなんだ」
ランコ『うん…うん…!』
マナミ「本当に戦いが終わった…」
サナエ「歌でこんなことができるのね…これがオトハ様の力…」
- 音葉「よかった、成功して…」
クラリス「これでもう、内紛は終わるんでしょうか?」
音葉「…2日前の話には続きがあるの。休戦が終わった後両軍はより戦闘を激しくし、翌年以降クリスマス休戦をとることを許さなかった。上層部は戦いを止めたくなかったのでしょうね」
クラリス「そんな…それではまだ戦いは終わっていないということなのですか?」
音葉「いえ…この世界では両軍のトップが和平することを願ったわ。もちろんそれを疎ましく思うものもいるでしょう。ですがあの二人が勇気をもって平和のために協力し合えば…東も西も中間地帯もなくみんなが協力すれば、きっと平和は戻ってきます」
クラリス「…そうですよね。私たちも彼女たちに協力しないといけませんね」
子供「ねーオトハさま。ぼくたちうまくお歌うたえた?」
音葉「ええ、とっても」
子供「わーい!オトハさまに褒められたー!」
- ミカ「オトハさんただいま!うまくいったよ!」
マナミ「感服したよ。もう戦いが始まろうとしていたのにみな一斉に武器を捨て始めたのだからね」
サナエ「やるじゃんオトハちゃん!あの将校のポカーンとした顔最高だったわ!」
アイ「皆の思いが一つになったから音も戻ってきたようだしね。まさか音と平和、どちらも取り戻すとは」
音葉「皆さんが危険を冒して両陣営の思いを教えてくれたからですよ」
クラリス「ありがとうございました。あなたたちに頼んで本当によかったです」
音葉「ところで…帰ってきて早々に申し訳ないのですが、もう一つお願いしたいことがありまして」
マナミ「なんだ?なんでも言うといいよ」
音葉「それはですね…」
- “一週間後・東側”
カレン「リン、そろそろ休んだら?」
リン「そんなわけにもいかないよ。作りすぎた銃の処分、和平反対派の将校たちの押さえつけ、西側との交流計画…やることはたくさんあるんだから」
ナオ「…なあリン、息抜きに久々に教会に行かないか?」
リン「教会?」
ナオ「うん。リンが顔を見せたら、きっとクラリスさん喜んでくれるよ」
リン「そうだね…もうちょっとでこの書類が終わるから待ってて」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- “教会”
リン「ここに来るのも久しぶりだけど、何も変わってないね」
ランコ「えっ!リンちゃん!?」
リン「ランコ!?なんであんたがここに!?」
ランコ「息抜きに教会に行かないかってミナミさんとアーニャさんに誘われて…もしかしてリンちゃんも?」
リン「…してやられたということ?」
ナオ「細かいことは気にするなよ!せっかく和平できたのにいっつも書類のやり取りしかしてないじゃん」
ミナミ「その気になればすぐ会えるはずなのに、妙なところで素直じゃないのは二人ともおんなじね」
ランコ「ぴい…」
リン「ふーん…」
- カレン「さあそれより入った入った。主役がいないんじゃしまらないでしょ?」
リン「ちょっと押さないでよ、主役って何のこと?」
パン!パン!パン!
ランコ「わっ!?」
子供「リンおねえちゃん!ランコおねえちゃん!おかえりなさーい!」
クラリス「二人ともお帰りなさい、少し見ない間に大きくなりましたね」
リン「クラリスさん…これは?」
アーニャ「二人のためにパーティの準備をしていたのです。和平のお祝いです」
アキ「僭越ながら自分もお手伝いをさせていただきました!」
子供「みんなでケーキつくったんだ!いっぱい食べてね!」
ランコ「みんな…」
- 音葉「私たちからは歌をプレゼントします。一週間しっかりと練習したんですよ」
アイ「ちょっとでも手を抜こうとするとクラリスさんが目を見開いてこっちを見てくるからね…正直あれはアーニャ君よりも怖かった」
アーニャ「あの時はすいません…氷像にするとか殺さないうちに出て行けとか言ってしまって…」
サナエ「まあそのおかげで練習はばっちりよ!最高の歌をプレゼントしてあげるわ!」
ミカ「子供たちがハンドベルで演奏をしてくれるんだ。この子たちの演奏もしっかりと聞いてあげてね」
マナミ「フッ…合唱を披露するなんて久しぶりだ。緊張で音を外してしまわなければいいが」
音葉「それでは…ジョン・レノンで“Happy Xmas(War is Over)”」https://www.youtube.com/watch?v=oXaLu7bvke8
~~~~~♪
- ランコ「私たちのためにたくさんの人たちが手を尽くしてくれる。こういうのを神様のおぼしめしっていうのかな?」
クラリス「いいえ。神のお力ではなく一人一人の思いがこの国を変えたのです」
リン「クラリスさんがそんなこと言うだなんて、変わったね」
クラリス「神は我々を見てくださっています。ですが運命を切り開くのはいつだって私たち自身の手なのです」
ランコ「そっか…そうだよね」
リン「ねえランコ」
ランコ「リンちゃんどうしたの?」
リン「この国に完全な平和が訪れるのはまだまだ先のことだと思う。だから…一緒にがんばろうね」
ランコ「…うん!」
- “城”
???「すみません、よろしいでしょうか?」
???「はいりたまえ、いったいどうしたのかね」
???「世界に音が戻ってまいりました。ほらこの通り」コンコン
???「これは…!いったいどういうことだ?」
???「使用人たちの噂話によると、“オトハ様”が世界に音を取り戻してくださった、とのことです」
???「“オトハ様”だと?あれはおとぎ話の一つだろう」
???「詳細は私にもわかりません。ともかく“オトハ様”を名乗る一座が世界中の音を取り戻す旅をしているとのことなのです」
???「にわかには信じがたいが…ともかくこれで舞踏会が再開できるな」
???「はい、各国に使者を向かわせます。それでは失礼します」ギイイ
???「よかったじゃないか、これでまた妃探しが始められるぞ」
???「…はい、そうですね…」
???(またあの退屈な舞踏会が行われるのか…これなら音が戻ってこない方が幾分かマシというものです…)
- “教会”
ミカ「ねーこれはどこに片づければいいのかな?」
子供「それはあっちの戸棚だよー」
ミカ「よいしょっと、それにしてもサナエさんめ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サナエ『夜も深まってきたし大人たちは酒盛りといこうか!』
アキ『いいでありますな!教会の葡萄酒はいったいどんな味か楽しみであります!』
音葉『わ、私はまだ未成年なので…』
マナミ『気にすることはない、こんな時ぐらい神様も見逃してくれるさ』
クラリス『ふふっ、そうですね』
リン『私たちも参加していいかな?この国は他の国よりもお酒を飲める年が若いしね』
ランコ『リンちゃん、それでも私たちはまだ飲めないよ…』
アイ『これも一種の経験というものだよ。親交を深めるのにはお酒が一番だからね』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- ミカ「アーニャもミナミもナオもカレンも“仕事があるから”って帰っちゃったし、片づけるまでがパーティーじゃないのー!」
子供「おねえちゃんありがとー!もうお片付け終わったよ!」
子供「もうねむる時間なんだけど小さい子はまだ一人でねむれないんだ。クラリスさん呼んできてー」
ミカ「ハイハイ、わかりましたよ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ミカ「いったいどこで飲んでるんだろう…うん?」
わいわい、ガヤガヤ
ミカ「きっとここだね。まったく、またサナエさんとアキさんが騒いでるのかな…」ギイイ…
- こわい
- 音葉「クラリスさんってぇ…いいおしりしてますよねぇ。形もいいし、音もいい」(尻を叩く音葉)
クラリス「オトハさん、何してるんですか!まずいですよ!」
音葉「暴れないでください…暴れないでくださいよ…」
アイ「オトハさんお酒を飲んだらこうなるのか!オトハさん!部屋に戻ろう!」
音葉「ちょっと眠ってくださいあいさん」(あいの口に酒を注ぐ音葉)
アイ「う…うもう…」
音葉「落ちてください!…落ちましたね(確認)」
サナエ「警察だ!」
アキ「お酒、控えてください!」
マナミ「三人に勝てるわけないだろう!」
音葉「ふざけないでくださいあなた、私は勝ちますよあなた(国士無双)」
サナエ「つ、強い!私たちで取り押さえきれないなんて!」
- えぇ……(困惑)
- ランコ「リンちゃん…頭が痛いよう…」
リン「ランコは初めてなのに飲みすぎだよ。ほら、さすってあげるから」サスサス
ランコ「えへへ…///こうやってると昔のことを思い出すね」
リン「ランコは泣き虫だったからね。泣き止まないときはこうやって抱きしめてあげたんだっけ?」ギュッ
ランコ「リンちゃん///」
リン「今日は昔みたいに二人でねよっか…」
音葉「ちょっとアツいんじゃないんですかこんなところで~?私も仲間に入れてくださいよ~」
リン「駄目だよ。私のランコはだれにも渡さないんだから」キリッ
音葉「しょうがないですね~あっそうだ、美嘉ちゃんさっきからチラチラ見て」バタン
- ミカ「“秋興の国”でみんな裸だったのはお酒を飲んだオトハさんの仕業だったのか…」
子供「あれ?どうしたの?クラリスさんはー?」
ミカ「…ふぅー」
ミカ「今日は私がみんなを寝かしつけるよ。うんきっとそれがいい」
- 4話目はこれで終わりです
次で多分終了すると思います。結局3話目よりも文字が多いってどういうことなの…(レ)
おまけ:http://i.imgur.com/QMdspL1.png
ガシャを回しても真奈美さんは手に入れられませんでした(半ギレ)スタージュエルが割れてんだよなあ!(10000個)
- オツシャス!センセンシャル!
- 読んでるよ
- アリシャス!こういう反応がスッゲエ励みになるゾ~
- オツシャス!
酔った音葉さん凄すぎる……
- 乙。続き楽しみに待ってるゾ~
- いいゾ~コレ
- WW1のクリスマス休戦は泣いてしまうからNG
一緒にサッカーしてタバコ交換して酒呑み交わしてわかり会えた奴と数週間後には全力で殺し合いとかあたまおかしい……
- クラリス「みなさん、おはようございます」
マナミ「頭が痛いな…私としたことが酔いつぶれてしまったようだ」
リン「イタタタタ…ランコ大丈夫?」
ランコ「だ、大丈夫…」
音葉「あら?美嘉ちゃん眼の下にクマがあるけど眠れなかったのかしら?」
ミカ「ははは…そんなところです(昨日子供たちを寝かしつけて、戻ってみたらみんな裸でつぶれていたから服を着させるのが大変だったんだよ…)」
アイ「うーん、昨日何か衝撃的なことがあった気がするんだが…駄目だ、何も思い出せない」
- “教会前”
ミカ「それじゃあサナエさんとマナミさんはこの国に残るの?」
サナエ「ええ、私たちはもともと傭兵みたいなもんだしね」
マナミ「和平した後は今まで以上に大変になるからな、少しでもその手伝いがしたいのさ」
音葉「そうですか。ありがとうございました、お二人がいてくれてとても心強かったです」
アイ「また何かあった時はよろしく頼むよ」
ミカ「今度アタシ達の国にも遊びにおいでよ!」
クラリス「お気をつけて、皆さんに神のご加護があらんことを」
- “秋興の国”
リカ「…オトハ様、お姉ちゃん、大丈夫かな」
アリス「内紛がある国とはいえなかなか帰ってきませんね。も、もしかして…」
アカネ「そんなんじゃだめですよ!オトハ様が“必ず帰ってくる”って言っていたじゃないですか!」
アリス「でももう一月は経ちますよ…早く帰ってきてください…」
タッタッタッ
ナナ「皆さんここにいたんですか!オトハ様たちが帰ってきましたよ!」
リカ「え!?」
音葉「ただいま、みんな」
ミカ「リカ、いい子で待ってた?」
アイ「遅くなってすまないね」
アリス「オトハ様!」
アカネ「お帰りなさい!お土産話ありますか!?」
- ・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ナナ「へー!ついに内紛が終わったんですね!いやあ長かったなあ…」
アイ「ああ、向こうにはサナエさんとマナミさんがいる。彼女たちも手伝ってくれるそうだ」
リカ「オトハ様すごーい!本当に世界中の音を取り戻したんだね!」
音葉「ええ、長いようで短い旅だったけどこれで終わりね」
アリス「お話いっぱい聞かせてくださいね。最高の本にしてみせますから」
ミカ「それで、これからどうする?」
アカネ「一度自分達の国に帰ります?私たちはともかくミカさんとリカちゃんは長いこと帰っていないでしょう」
リカ「そうだね。“春風の国”の子供たちもアタシ達の帰りをきっと待っているだろうからね!」
- “翌日”
音葉「長いこと子供たちがお世話になりました」
ナナ「いえいえ、オトハ様のおかげでこの国に音が戻ったんですから。またいつでも来てくださいね」
アイ「今度は演奏で勝負しよう。次は負けないよ」
音葉「はい、楽しみにしています」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
“常夏の国”
アカネ「ウミさーん!帰ってきましたよー!」
ウミ「アカネ!アンタ食べすぎでオナカ壊してない?」
アカネ「大丈夫ですよ!あれぐらいならへっちゃらです!」
フミカ「アリスちゃん、きちんとオトハ様のお手伝いはできましたか?」
音葉「ええ、とっても助かったわ」
アリス「オトハ様…ありがとうございます」
リカ「ふたりともまたねー!いつか遊びに行くね!」
- “春風の国”
リカ「ただいまー!久々に家に帰ってきたね!」
ミカ「なんだかんだ言って自分の家が一番落ち着くね、オトハさんも自分の家と思ってくつろいでください」
音葉「ありがとう、助かるわ」
リカ「どうせならずーっといてもいいよ!ねっお姉ちゃん!」
ミカ「あはは、そうだね」
音葉「……」
音葉(最初は元の世界に戻る手がかりを見つけるための旅だった、けど結局手がかりはなかったわね)
音葉(でも…元の世界に帰る必要なんてあるのかしら?この世界なら私は歌える、みんなが私の歌を聞いてくれる)
音葉(ずっといてもいい、か。確かにそうしてもいいかもね…)
- “翌朝”
チュンチュン、ピヨピヨ
リカ「気持ちのいい朝だー」
ミカ「もう音が無いことに不安がる人はいないんだよね。よかった…」
コンコン
ミカ「うん?こんな朝早くに誰だろう…」ガチャ
兵士「おお、こんな家に若い娘がいたのか。念のためやってきてよかった」
リカ「おじさん誰?」
兵士「ミシロ城からの使いだ。世界中に音が戻ってきたことにより舞踏会が再開されるようになった。これが招待状だ」スッ
ミカ「えー!アタシ達舞踏会に出れるの!?今まで招待状なんて来たことなかったのに!」
兵士「久しぶりの舞踏会だからな、領主様が今まで以上に人を集めることにしたのだ。舞踏会は三日後だ。ではこれで失礼する」ガシャンガシャン
- リカ「すごーい!舞踏会にいけるんだ!どんな服を着ていこうかな?」
音葉「二人とも、舞踏会って何かしら?」
ミカ「ああオトハさんすみません。この世界には4つの国があると言いましたが正確にはもう一つあるんです」
リカ「ミシロっていう領主様がおさめている広大な街があるんだ!ちょっとした国ぐらいの規模はあるんだよ!」
ミカ「毎年今ぐらいの時期になると若い娘たちを集めてお城で舞踏会を開いているんです。舞踏会に出るのは女の子の憧れなんですよ!」
リカ「もしかしたら領主様の一人息子と結婚できるかも!そうしたらお城で生活できるね!」
ミカ「オトハさんも行きますか?きっと楽しいですよ!」
音葉「お城ね…そこで歌を歌うのもいいかもしれないわね」
リカ「決まりだね!早く準備しようよ!」
- “3日後・ミシロ城”
ザワザワ、ザワザワ
リカ「人がいっぱいいるなー。お姉ちゃんアタシ浮いてない?」
ミカ「大丈夫だよ。アタシが服を選んだんだからばっちりに決まってるでしょ」
音葉「本当にたくさん人がいるわね。この人たちみんなに招待状を配るなんて大変だったでしょう…」
ウミ「あれ?ミカじゃん」
アカネ「ウミさんどうしました?あ!」
ミカ「ウミ!アカネ!」
アリス「どうしたんですかアカネさん…あっ!オトハ様!」
フミカ「アリスちゃん、大きな声で呼んではいけませんよ」
- リカ「みんなも招待されてたんだね!」
ウミ「まさかウチ達が招待されるなんて思わなかったよ。今までは素通りされてたからね」
フミカ「人がいっぱいいて酔いそうです…」
アリス「しっかりしてくださいフミカさん。久しぶりに外に出ようってことになったんですから」
アカネ「実は私たちだけじゃないんですよ!」
ミカ「まさか?」
アイ「おや、よく見知った顔じゃないか」
カエデ「こんばんは、お久しぶりね」
ナツキ「まさかこんなところで会えるだなんてな。うれしいよ」
ユカリ「くすっ、皆さんが集まると本当に楽しそうですね」
- 音葉「皆さん!今日は演奏にこられたんですか?」
アイ「いや、今日は演奏が主じゃなくて舞踏会に招待されたんだ」
ナツキ「とはいっても演奏道具はきちんと持って来たけどね。あれあってのアタシ達だから」
ユカリ「よかったらもう一度勝負しません?お客さんはいっぱいいますから」
カエデ「私は今日お酒をたくさん飲みたいのでパスで…」
アカネ「ところでナナさんは来ていないんですか?」
アイ「…一応招待状は渡されたんだが招待客としては来ていない」
ナツキ「あの人は他国の行商に買い付けに行ってる。舞踏会の時は商人もたくさん集まるから珍しいものとかをこの時に買ってるんだよ」
ミカ「…若い娘?」
カエデ「ミカちゃん、それ以上いけないわ」
- ランコ「うう…迷子になっちゃった…あ!」
ミカ「ランコ!」
リン「さっきこっちからランコの声が…あ!」
音葉「リンちゃん!」
サナエ「おーいマナミちゃん、二人ともこっちにいたわよ」
マナミ「まったく、ボディーガードである私たちのことも考えてほしいものだ」
アイ「サナエさん、マナミさん、あなたたちも来ていたんだね」
サナエ「そうねー。でも今日あたしたちはこの二人のボディーガードよ」
マナミ「こういうほかの国と交流する機会も必要だと思ってね。ごたごたもある程度落ち着いてきたから連れてきたんだ」
リカ「なんだか旅であった人たちが勢ぞろいしてるね!」
ミカ「みんなオトハさんを中心にして出会ったんだよね。4つの国全部に知り合いができるなんてすごいなあ…」
- 兵士「えー静粛に、これより領主様より始まりのあいさつを賜ります」
ザワザワ、ザワザワ
ミシロ「今日はよく来てくれた。世界中から音が無くなって久しく、つい先日音が戻ってきた。そのおかげで舞踏会を再開することができた」
音葉(美城常務…じゃなくて確か専務だったかしら。領主をしているだなんてさすがね…)
ミシロ「久しぶりの舞踏会だ、音楽団による演奏も予定してある。今日は大いに楽しんでくれ」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
兵士「ありがとうございました。今日の舞踏会は領主の息子様も見ておられます。お眼鏡にかなった方はお呼びすることがありますので」
- アカネ「ついに始まりましたね!ご飯はどこでしょうか!」
アリス「アカネさん、舞踏会なんですからご飯をいっぱい食べられるわけないじゃないですか。踊れなくなりますよ」
ランコ「女の人だけじゃなくて男の人もいっぱいいる…」
リン「ランコ、今度は離れないでよ」
マナミ「フッ、これなら私たちがいなくても大丈夫そうだな」
ユカリ「私は食べ物をとってナナさんに持っていきますか。それでは」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- リカ「みんな行っちゃったね」
ミカ「せっかく来たんだしアタシ達も誰かと踊ろうか。行こうよリカ」
リカ「あっ待ってよー。じゃあオトハ様またあとでね!」
音葉「みんな楽しそうね。私も歌うだけじゃなくてどなたかと踊ろうかしら」
???「失礼します。少々よろしいですか?」
音葉「はい?なんでしょう」
???「あなたをミシロ様がお呼びになっています。申し訳ありませんが私についてきてくれませんか?」
音葉「…わかりました。なんとなく用件もわかりますし」
???「ありがとうございます。失礼、名乗り忘れていました」
チヒロ「チヒロと申します。ではこちらへ…」
- “ミシロの部屋”
チヒロ「ミシロ様、お連れしました」ガチャ
ミシロ「ご苦労だったチヒロ君。下がっていい」
チヒロ「はい、失礼します」バタン
音葉「初めまして、旅人の音葉といいます」
ミシロ「君がうわさの“オトハ様”か。世界から音が無くなった時、世界中を旅して音を取り戻したというおとぎ話の」
音葉「どうやらそういうことになっていますね」
ミシロ「悪いが正直なところにわかに信じがたい。君が“オトハ様”であるという証拠はあるか?」
音葉「そうですね、鳥の鳴き声や楽器の音色では道具を使っていると思うかもしれませんし…これなんてどうでしょう」スゥー
(首に手を当てる音葉)
ミシロ「!?」バッ
- 音葉「安心してください、私は音を出す以外何もしていませんよ」
ミシロ(なんだ今のは?音を聞いただけで何者かが私の首に触れたと錯覚した…魔法ではない、魔法なら詠唱があるはずだ)
音葉「どうでしょう?私がオトハであると信じてもらえましたか?」
ミシロ「…信じよう。数々の無礼、失礼した」
音葉「ありがとうございます。用はそれだけでしょうか?」
ミシロ「いや、君がオトハであるとわかった今頼みたいことがある。私の息子に会ってほしいのだ」
音葉「息子?申し訳ありませんが私はまだ身を固めるつもりは…」
ミシロ「できるなら息子と婚姻をとも考えているのだが…頼みはそれではないのだ。息子と会って話をしてほしい」
音葉「どういうことですか?」
- ミシロ「舞踏会を開いている理由は他国との交流もあるが、息子の結婚相手を探すという目的もあるのだ。いずれあいつには跡継ぎになってもらわねばならん」
ミシロ「だが舞踏会をみるあいつの目はとてもつまらなさそうでな…婚姻の話を出しても全く興味が無さそうなんだ」
音葉「つまり何をすればいいのでしょうか?」
ミシロ「音を取り戻したというあなたの冒険譚を息子にしてほしい。そうすれば外の世界にも興味がわき、各国から来た娘たちを見る目も変わると思うのだ」
音葉「なるほど、事情は分かりました。そのようなことでしたら喜んでお引き受けします」
ミシロ「助かる。気が合うようなら婚姻のことも前向きに考えてくれ。チヒロ君」パンパン
チヒロ「お呼びでしょうか?」
ミシロ「あいつの部屋にオトハさんを連れて行ってくれ。くれぐれも丁重に頼むぞ」
チヒロ「わかりました。それではオトハ様こちらへ…」
- 音葉「ミシロさんの息子はいったいどんな方なんですか?」
チヒロ「物静かでとても優しいお方です。少々お顔が怖いですが…」
音葉(物静か…顔が怖いというと…)
チヒロ「失礼します」コンコン
???「はい、チヒロさんどうしましたか?」
チヒロ「お母様がタケウチ様にぜひ会わせたいという方がいらっしゃるのです」
タケウチ「…婚姻の話なら帰ってください。そんな気分でないのです」
チヒロ「いえ、この方は若くして世界を旅したというのでそのお話をしていただきに来たのです」
音葉(やっぱりプロデューサーさん…いい加減こういうのも慣れてきたわ)
チヒロ「それでは私は失礼します」ガチャ
- タケウチ「…母の心遣いはうれしいのですが、どうも最近は息がつまりそうです」
音葉「心中お察しいたします」
タケウチ「そんなに畏まらなくてもいいですよ、自然に話してください。ところでお名前は?」
音葉「音葉です」
タケウチ「オトハ…?まさかおとぎ話のオトハ様ですか!?使用人たちがみな話題に挙げています」
音葉「疑わないんですね」
タケウチ「疑いませんよ。本物でなければ母は私に会わせようとはしないでしょうから」
音葉(せっかくだしプロデューサーにもやってみましょう…)スゥー
(首に手を当てる音葉)
タケウチ「…?」スッ
音葉(あまり驚いていないのか、それとも顔に出していないだけなのか…とりあえずいつものプロデューサーみたいね)
- タケウチ「使用人たちから噂話程度には効いていますが本人からお話が聞けるとは…感激です」
音葉「そういわれるとちょっと緊張しますね。それではまず“春風の国”から…」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
音葉「…で、両陣営が和平を誓ったんです」
タケウチ「凄いですね…“厳冬の国”の内紛すら終わらせるとは…」
音葉「最後の国にも音を取り戻し、私はまた“春風の国”に戻ってきました。これからは…何か仕事を見つけて、歌でも歌いながら暮らしでしょう」
タケウチ「…うらやましいです。自分がやるべきこと、やりたいことがあるだなんて」
音葉「というと、武内さんにはやりたいことが無いんですか?」
- タケウチ「私はこの土地に生まれ、小さいころから何不自由なく暮らしていました。母は優しくも厳しく、私に学問や領主としての心構え、果てには馬術や格闘術なども教えてくれました」
音葉(あっちでもできそうなのがプロデューサーのすごいところだわ…)
タケウチ「ですが…最近になって私はいったい将来どうなるかわからなくなってきたのです」
音葉「それだけの能力があればなんにでもなれるのではないでしょうか?」
タケウチ「はい。こう言ってはなんですが私はたいていのことはできるようになったと思います。ですが、いえだからこそ自分が何をしたいのか?それがわからなくなってしまいました」
タケウチ「いずれ私は母を継いでこの地の領主となるでしょう。ですがそれが果たして良い事なのか…私にはわからないのです」
音葉(何でもできるからこそ自分がわからなくなる、か…私もこんな技術が無ければ普通のアイドルになれたのかしら?)
タケウチ「もちろん母には感謝しています。婚姻を勧めるのも私の迷いを消すためなのだと思います。ですが私は知りたいのです、いったい自分に何ができるのかを」
- 音葉「なるほど…ところで武内さん。舞踏会に出られたことはありますか?」
タケウチ「え?い、いえ。一応舞踏も嗜んではいるのですが女性と踊ったことは…」
音葉「それでは舞踏会に出ている娘たちの姿をみた事は?」
タケウチ「少しぐらいは見ますがあまり長居はしません。時間がたつにつれ私の方が好奇の目で見られますので…」
音葉「…わかりました、二時間ほどしたら舞踏会を見に来てください」
タケウチ「ですがあの目にさらされるのは…」
音葉「そんなのは気にならなくなると思いますよ」
タケウチ「え?」
音葉「ぜひ、私たちと私たちを見る招待客の顔を見てください」
- “城外”
商人「おっ!なんだか今回は面白いものがあるね」
ナナ「そうでしょう!これはオトハ様が我々の国に音を取り戻してくれた際に纏った衣装と同じなのです!“秋興の国”の仕立て屋が一つ一つ自分の手で仕上げた逸品ですよ!」
商人「見た事のない衣装だな…なあナナさん、もしかして実際にオトハ様が来ていた服もあるのかい?」
ナナ「へ?そりゃああるにはありますが…」
商人「よかったらそっちを売ってくれないか?ご利益がありそうだ!」
ナナ「だ、駄目ですよ!せっかくオトハ様が着てくださったのに!」
商人「…お金ならこれぐらい出すよ」
ナナ「え、ええええ!?こんなにですか!?」
商人「どうだい?足りないってんならこないだ見つけた“若返りの薬”ってのも足そうかい?」
ナナ「うう…お金…若返りの薬…さ、採寸はわかっているからまた新しく作り直せば…」
音葉「ナナさん、ちょっといいですか?」
ナナ「ハッ!売ってません!売ってませんよ!」
音葉「?」
- 大河作品みたいなスケールになってますね 凄い
- “二時間後”
チヒロ「おや?舞踏会を見に行かれるのですか?」
タケウチ「ええ、少し」
チヒロ「珍しいですね。気になるお方でもいましたか?」
タケウチ「…どうでしょうかね」
タケウチ(いったい何を見せるというのでしょうか?“私たちを見る招待客を見てほしい”と言っていましたが…)
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
ザワザワ、ザワザワ
タケウチ「あれは…舞台の上にオトハさんが?」
司会「それでは音楽団の演奏の前に“アイドル”による“ライブ”を始めたいと思います!」
「アイドル?なんのことかしら」「あの子たちが“アイドル”なの?」「“ライブ”って何をするんだろう…」
司会「なんと5人はそれぞれ別の国の出身なのですがとある縁から友人になったというのです!国の垣根を越えた舞踏をぜひご覧ください!」
- リン「おっとと、このハイヒールって動きづらいね。前は軍靴ばっかりはいてたから」
ミカ「慣れれば簡単だよ!それに背がすらーっとしてかっこいいでしょ!」
アイ「まさか私がこの衣装を着ることになるとはな…」
アリス「オトハ様も二時間で踊りと歌を合わせるだなんて…きつい仕事を押し付けますね」
音葉「ごめんなさい。でもありすちゃんならできるでしょう?」
アリス「と、当然です!2度目ですし大丈夫です!」
音葉「それではいきましょう、“お願い!シンデレラ”」https://www.youtube.com/watch?v=gMYXKtE9Kwg
- 「お願い! シンデレラ 夢は夢で終われない」
「動き始めてる 輝く日のために」
観客「おお!またあれが見られるのか!しかもアイさんがでるだなんて!」
観客「なんだ?お前は知ってるのかよ」
「エヴリデイ どんなときも キュートハート 持ってたい」
「ピンチもサバイバルも クールに越えたい」
観客「あれは確か内紛がある国の司令官じゃないか?あんな顔もするんだな…」
観客「笑ったら結構かわいいじゃないか…」
「アップデイト 無敵なパッション くじけ心 更新」
「私に出来ることだけを 重ねて」
チヒロ「これはすごいですね!こんなの見たことがありませんよ!」
タケウチ「いえ…見るべきはそこではありません」
チヒロ「え?」
- 「魔法が解けない様に リアルなスキル 巡るミラクル 信じてる」
「お願い! シンデレラ 夢は夢で終われない 叶えるよ 星に願いをかけたなら」
観客「すごいかわいいー!アタシもあれ着たーい!」
観客「あのひとすごい綺麗…あんな風に私もなりたいな…」
観客「凄い楽しそう!私も踊りたいっ!」
タケウチ「観客の皆さんが、みな笑顔になっています。舞台の上のオトハさん達につられるかのように」
「 みつけよう! My Only Star まだまだ小さいけど」
「光り始めてる 輝く日のために」
タケウチ「今私を見ている人なんて誰もいないでしょう。すべての視線が舞台に注がれています」
「お願い! シンデレラ 夢は夢で終われない 叶えるよ 星に願いをかけたなら」
「みつけよう! My Only Star 探し続けていきたい 涙のあとには」
「また笑って スマートにね でも可愛く 進もう!」
タケウチ「皆さんとても…いい笑顔です」
ミシロ「アイドルか…“偶像”とはよく言ったものだ…」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
- タケウチ「母上、チヒロさん。私は決めました」
チヒロ「お!ついにお眼鏡にかなう方が現れましたか!オトハ様ですか?まっすぐな目をしている長い黒髪の娘ですか?気立てがよさそうなピンク髪の娘ですか?大人な雰囲気の黒髪の娘ですか?それともまさか…あの小さな娘ですか?」
タケウチ「どなたでもありません」
チヒロ「へ?」
タケウチ「私はやっとやりたいことが見つかったのです。女の子をスカウトして、あの“アイドル”にしてみたいのです」
タケウチ「あんなにいい笑顔は初めて見ました…アイドルにあこがれる観客も、アイドルとして踊る皆さんも…」
タケウチ「私は世界を回り、あのような笑顔を探していきたいです」
ミシロ「タケウチ…」
タケウチ「すみません母上。いつかは伴侶をもらい、この土地の領主を継ぐつもりです。ですがまだ母上が現役でいらっしゃる間、私の好きにさせてもらえませんか?」
ミシロ「…この土地の領主であれと、私はお前を縛り付けていたのかもしれないな。好きにするといい。アイドルを導く仕事をしていれば、そのうち身を固めるかもしれんしな」
タケウチ「…ありがとうございます!」
- ミシロ「チヒロ君、悪いがこいつを支えてやってくれないか?」
チヒロ「はっはい!もちろんです」
ミシロ「それから…もしよかったら君がタケウチの伴侶になってくれてもいいぞ?」
チヒロ「ええ!?そっそんな恐れ多いこと!」
ミシロ「あいつはこれから領主の一人息子ではなく、ただのタケウチとして世界を回るのだ。そんなことは気にしなくていい」
タケウチ「チヒロさんどうされましたか?」
チヒロ「あの…その…///」
- ミカ「あーステージ楽しかった!」
リカ「お姉ちゃんずるーい!アタシもやりたかったのに!」
リン「ふう…ふう…アイドルってのも楽じゃないね。これでも鍛えていたつもりなんだけど…」
ランコ「リンちゃんお疲れ!凄いかわいかったよ!」
ナツキ「アイさんお疲れさま。この後演奏があるけどいけるかい?」
アイ「当然さ、まだまだやり足りないからね」
アカネ「アリスちゃんお疲れ様です!飲み物ですよ!」
アリス「あ、ありがとうございます。人がいっぱいいて緊張しました…」
音葉(どうかしら?もしもプロデューサーさんだったらきっと何か思うところがあったと思うけど…)
- ミシロ「ありがとうオトハさん、君のおかげで息子が自分の道を見つけたようだ」
ミカ「えっ!?あなたはさっきの領主様!?ということは隣にいるのが…」
タケウチ「みなさんとてもいい笑顔でした」
音葉「ありがとうございます。そう言ってもらえるととてもうれしいです」
ミシロ「息子の進む道を照らしてくれたお礼に褒美をとらせたい。何か欲しいものはあるかね?」
リカ「ほんと!?えっとねーうんとねー」
ミカ「こらリカ、まずはオトハさんでしょ」
音葉「そうですね…欲しいものですか…」
ミシロ「この領地の居住権でもいいぞ?金も住むところも心配しなくていい」
音葉「…いきなり言われても、私は何が欲しいんでしょうか…」
チヒロ「あはは、今度はオトハさんがわからなくなっちゃいましたね」
- タケウチ「そうだ、チヒロさんが集めている魔法のアイテムはどうでしょうか?」
ミシロ「そうだな、チヒロ君はタケウチ共々世界に旅立つのだからな。在庫処分しておこう」
チヒロ「ちょっと!?あれは私が舞踏会に来る行商人さんから値切りに値切ってやっと集めたものですよ!?」
音葉「あはは…でもちょっと興味ありますね」
ミシロ「そうか、ならチヒロ君案内してやってくれ」
チヒロ「うう~~~~~~~~~~~~~一つだけですよ…」
音葉「じゃあ、私はチヒロさんと一緒に見に行ってくるからみんなはまだ舞踏会を楽しんでてね」
リカ「あとで何があったか教えてね!」
- 今回はここまでです
宗教無課金をやめて課金もしたのに音葉さんは出ませんでした(ガチギレ)
でもMVで踊る音葉さんがやっぱりかわいいのでこれからもがんばろうと思った(小並感)
おまけ:http://i.imgur.com/oLy6vyz.png
5人とれるショットはやっぱ画質荒いっすね…
- 結構いいSS書いてるけど何かスポーツやってたの?
- いいゾ~(ボキャ貧)
続きを心から楽しみにしてます。終わっちゃうの寂しい
- 乙!
SR音葉さんが>>1くんのところにきますように
- いいSSやこれは…(恍惚)
- チヒロ「どうぞ、こちらです」
音葉「これはまた…たくさん置いてますね…」
チヒロ「本物の魔法アイテムを買うためにほかのものも抱き合わせして買うんですよ。そうだと気づいていなかったら快く売ってくれます」
音葉「ではほとんどガラクタなんですか?」
チヒロ「恥ずかしながら…でも結構すごいのもありますよ。ワインがわき続ける杯とか、刃こぼれしても鞘に戻せばきれいになる剣とか」
音葉「おとぎ話みたいですね…あら、この鏡は?」
チヒロ「ああ、それは好きな場所が見える鏡ですね。鏡に向かってみたい場所をいえばその景色が映るんですよ」
音葉「面白そうね…」
- チヒロ「すみません。ちょっと見るぐらいならいいんですがそれは譲れません。悪用されたら困るのでこの城で保管しているというのもあるんです。」
音葉「では、タケウチさんがいる場所を…」
キュインキュイン
ミシロ『ところで、チヒロ君のことはどう思ってるんだ?』
タケウチ『チヒロさんですか…』
ミシロ『立場なら気兼ねしなくていい。彼女にもいったが世界中を旅するのに立場なんて関係ないからな』
タケウチ『…正直わかりません、小さなころから一緒だったのでそのような感情があるのか…』
ミシロ『ふふっ、旅の中で自分の気持ちにも向かい合うといい』
チヒロ「きゃー!きゃー!何見てるんですか!」
音葉「ご、ごめんなさい…」
- チヒロ「もう!悪用されたら困るって言ったばかりじゃないですか!」
音葉「自分も見られてるかと思うとぞっとするわね…」
チヒロ「全く…私は用事があるので部屋を出ますけど、あんまりいじくって壊したりとかしないでくださいね」バタン
音葉「遠くの場所が見れるなんてすごいわね…“春風の国”は映るかしら?」
キュインキュイン
カオル『ミカお姉ちゃんたち今日どこいったんだろう?』
チエ『舞踏会に行ったんだって、いいなあ…』
ニナ『舞踏会でごぜーますか!着ぐるみは着れるですかね!』
音葉「ふふっ、お土産を用意しなくちゃね。じゃあ“常夏の国”を…」
キュインキュイン
男『夜とはいえあっついなあ~~~』
男『ほれ、こんなのはどうだ?風が吹くと音が鳴る道具だ』チリーン
男『おお、なんだか少し涼しくなった気がするぜ』
音葉「風鈴ね。北海道ではあまり使わなかったわね…」
- 音葉「次は“秋興の国”を…」
キュインキュイン
リーナ『うう~~~~~~~~~』
楽団員『おいおい、さっきから何唸ってんだ』
リーナ『だって私も舞踏会行きたかったんだもん!ナツキに見え張って“舞踏会なんて行く暇あったら練習するよ”って言わなきゃよかった~~』
楽団員『自業自得だな。ホレ、どうせならその悔しさを音楽にぶつけてみな』
音葉「李衣菜ちゃんだけいなかったのはそういうことなのね…最後は“厳冬の国”ね」
キュインキュイン
東兵『うおっ!あいたたた…こけちまった』
西兵『大丈夫か?ほらつかまりな』ガシッ
東兵「おう、ありがとよ。まったく塹壕の処理も楽じゃねえよな」
クラリス『皆さん夜遅くまでお疲れ様です。少し休憩にしませんか?』
音葉「みんな仲良くなってるわね。よかった…」
音葉「なかなか面白いわね。確かにこれを使いすぎるのはちょっと危ないかも…」
- 音葉「…なんでも映る、か。346プロは今どうしているのかしら…」
キュインキュイン
音葉「!?」
ちひろ『プロデューサーさん、お体の方は大丈夫ですか…?』
武内P『…はい…問題ありません…』
ちひろ『そんなこと言っても…音葉さんが失踪してから毎日仕事終わりに探しに行っているじゃないですか。日に日にやせ細ってしまって…』
武内P『…もしかしたらあの事故現場に行けば何かわかるのかもと…』
ちひろ『トラックが突っ込んだあの事故現場ですか…でもあの事故で死傷者は誰も出ていないじゃないですか』
武内P『梅木さんが巻き込まれたのかどうかすらわかりません…ですが藁でもいいので何かつかめないかと…』
ちひろ『プロデューサーさん…』
武内P『…私が悪いんです!梅木さんに無理なスケジュールを組ませたせいで何かに巻き込まれてしまった!いや、あまつさえ彼女をアイドルとしてステージに上げさせることもできなかった!』
ちひろ『…あまり自分を責めないでください…』
- 音葉「そ、そんな…みんな…みんなは…!」
キュインキュイン
トレーナー『藍子ちゃん、そろそろ休んだ方が…』
藍子『駄目です…まだうまくいってません…』
トレーナー『ごめんなさい、私が音葉さんぐらい歌について詳しかったら…』
藍子『……もう一度です、もう一度お願いします!』
未央『あーちゃん詰め込みすぎだよ…森に散歩にでも行ってリフレッシュしようよ』
藍子『いいんです…辛いこと、頭に浮かんでしまうから』
茜『…音葉さんならきっとひょっこり帰ってきますよ。ほら、いかにも森に住んでそうですし…』
藍子『無責任なこと言わないで!』
茜『ひっ、そ、その…』
藍子『あっ…』
茜『ご、ごめんなさい。ごめんなさい…』
- キュインキュイン
~~~~~♪~~・・♪~~~
あい『だめだゆかり君。また音が外れているよ』
ゆかり『はい…すみません…』
星花『三人だとやはりうまくいきませんね…』
ゆかり『…音葉さん私たちの楽器にも精通していましたからね…』
あい『せっかく私たちで音葉君に音響以外の仕事を持ってこれると思ったのに…いったいどこに行ってしまったんだ』
ゆかり『…すみません、私これからフルートの稽古がありますので失礼します…』ガチャン
あい『…私も近くのバーでサックスを吹いてくるよ』ガチャン
星花『…きれいなハーモニーだったのに、バラバラになっちゃいましたね…』
音葉「そんな…みんな…」
音葉「ダメ…何も考えられない…外の空気でも吸いましょう…」
- “城外”
サアアアアーーーーーーーー
音葉「…あの日からずっとプロデューサーさんは私を探しているのかしら…」
音葉「…あの日からずっと藍子ちゃんは自分を追いつめているのかしら…」
音葉「…あの日からずっとゆかりちゃんたちは音を合わせ続けているのかしら…」
音葉「私は…私は…」
サアアアアーーー……………
音葉「あれ?風が頬をなでる感触があるのに、風の音がしない…」
ピカアーーーーーーーーーーーー
音葉「きゃっ!いきなり空が光って…!」
カッ!
- 音葉「…光は収まったようね。何?いったい何が起こったの?」
???「初めまして。と言っても私はあなたのことをずっと見ていましたが…」
音葉「あ…あなたは…」
???「私は、あなたがこの世界にやってきて世界中に音を取り戻すのをずっと見守っていました」
音葉「私と…同じ顔…!」
オトハ「私はオトハ、この世界の音をつかさどる女神です」
- リカ「おっかしいな~さっきこっちからピカーって光が差してたのに…えっ!?」
ミカ「リカ、どこまで行くの。もし危ない事だったらどうする…え?」
音葉「二人とも…」
オトハ「あなたたちは春風の国に住む姉妹ですね。旅のお供ご苦労様でした」
ミカ「え?オトハさんがふたり?しかも一人は空を飛んでるし、アタシ夢でも見てるの?」
リカ「すごーい!すごいすごいすごいすごいすごい!オトハ様が二人もいるなんて!」
オトハ「二人、というのは違いますね。私が女神オトハです。この人は同じ名前の方というだけでしょう」
ミカ「そ、それでオトハ様はいったい何用でこちらに来られたんですか!?」
オトハ「世界に音を取り戻した“オトハ”という人物に会いに来たのです」
音葉(この人が本物の“オトハ様”…!)
- オトハ「音葉さん、よく頑張りましたね。まさか私の手を借りることなく音を取り戻すとは思ってもいませんでした」
音葉「い、いえ。私はただのきっかけにすぎません。それぞれの国の人達の心がけで音は戻ってきたのです」
オトハ「謙遜しなくてもいいですよ。あなたの“音の葉”は実にすばらしいものです。今まで見たことがありません」
リカ「すごーい!オトハ様、オトハ様に褒められてるよ!」
ミカ「な、なんだかわけがわからなくなってきた…」
オトハ「世界中から音が無くなったことである者は無音に怯え、ある者は彩が無くなったことを嘆き、ある者は相手を疑って憎んでいました。よくその者たちの負の感情を取り除いてくれました」
音葉「そういわれると照れてしまいます…」
オトハ「本当によく頑張りましたね。おかげで…」
- オトハ「今までにないほど信仰を集めることができました」
ミカ「…え?」
- オトハ「それにしても驚きました。まさか私が奪った音を私以外のものが取り返すことができるなんて」
リカ「わ、“私が奪った”?」
オトハ「あまり早く音を取り戻されると困るので妨害も考えていたのですが、あなたはしっかりと“オトハ様”への信仰を集めてくれましたのでそのまま任せることにしました」
音葉「い、いったい何を言ってるんですか…?」
オトハ「これで私は一層大きな力を持つことになるでしょう。これならば次は400年後でもいいかもしれませんね」
ミカ「ちょ、ちょっと!オトハ様!いったいどういうことですか!?」
オトハ「どういうことも何も…さっき言った通りです。すべては信仰を集めるため、人々がオトハ様を崇め奉るようにするためのものです」
オトハ「そうですね…つぎはあなたたちに“オトハ様信仰”を広めてもらいましょうか。前に頼んだ方は結局“秋興の国”に広めることしかできませんでしたからね」
リカ「何それ!世界中から音が無くなったのはオトハ様のせいなの!?音が無くなったせいでたくさんの人が不安がったんだよ!」
オトハ「それがどうしたというのです?もとはと言えばこの世界の音は私が司るもの。私のものをどうしようと私の自由でしょう」
- チェーンソー持ってこなきゃ……
- 音葉「そんなわけないでしょう!音はみんなのものです!それを弄んで自分の信仰を集めるだなんて…そのために私をこの世界に呼んだのですか!?」
オトハ「私にそんな力はありません、あなたは完全な異分子です。本来なら10年ほどかけて信仰を集めるつもりだったのですが、まさか“音の葉”を使えるとは…」
オトハ「それこそが私がここに来た理由でもあります」ピッ
音葉「あっ…ぐっ…!?」
ミカ「オトハさん!?」
音葉「体が…動かない…!」
オトハ「恐れることはありません、すぐに終わります」
音葉「ああッ…!嫌ああーーーーーー!!」ゴオオオオオオオ!
ミカ「お、オトハさんの体から光が!」
音葉「」バタッ
リカ「オトハ様大丈夫!?」
- 音葉「…」パチッ
リカ「よかった!目を覚ました…!」
ミカ「オトハさん!体に異常はありませんか!?」
音葉「…?……!?……っ!……っ!」パクパク
リカ「ど、どうしたの!?」
オトハ「とんだ拾いものです。あなたの“音の葉”は私の知らない音すらあります。その力、私が貰い受けましょう」
音葉(声が…出ない!)
ミカ「まさか、オトハさんの声を!?」
オトハ「心配しないでください。彼女の“音の葉”は私の一部になりました。私が存在する限り、彼女の“音の葉”も存在します」
音葉(そんな…!やっと私は自分の進むべき道を見つけたというのに…!)ポロポロ…
- オトハ「…深く絶望していますね。この世の希望を失ったかのようです」
音葉(返してっ…!私の音を返して…!!)
オトハ「すみません。まさかわたしの一部になれたのにそんなに絶望するとは思っていなかったのです」
(首に手をかけるオトハ)
音葉「…っ!…っ!」
オトハ「せめてその絶望が全身を包む前に、楽にしてあげます」
(首にかけた手に力を入れるオトハ)
音葉(嫌っ…!私は…!)
オトハ「さようなら。異世界からの来訪者よ」
- ピューー、コツン!
オトハ「いたっ、これは…小石?」
リカ「そこまでだよっ!」
ドサッ!
音葉「……っ!」ヒューヒュー
リカ「お、オトハ様にひどいことするのは、アタシが許さないんだから!」
オトハ「何を言っているんです?私がオトハですよ?」
リカ「違うもんっ!おとぎ話のオトハ様は世界中から音を奪ったりなんかしない!自分のためにほかの人を悲しませたりなんかしない!アンタなんかオトハ様じゃない、魔王よ!」
ミカ「この世界の人たちのことを考えないだなんて…それでも神様ですか!?」
オトハ「なぜ神がヒトのことを考える必要があります?少し例を見せてあげましょうか」キュインキュイン
カオル『あれー!?風の音がしなくなっちゃったよ!』
チエ『虫さんの鳴き声も…まさかまた世界から音が無くなって…』
ニナ『大丈夫でごぜーます!きっとオトハ様が何とかしてくれますです!』
ミカ「みんなっ!」
- オトハ「どうです?彼女たちは音が無くなってもなお私のことを信奉するのです。己の意思を捨て、神を盲信する。これこそが良いヒトの生き方なのです」
リカ「なんてひどいことを…!」
ミカ「…リカ、オトハさんと一緒に遠くに逃げて」
リカ「いやだよ!アタシお姉ちゃんを置いていくなんて絶対いや!」
ミカ「いいから!お姉ちゃんのいうことが聞けないの!?」
オトハ「もういいです。信仰しないヒトなど必要ありません。姉妹共々あの世に送ってあげましょう」
(宙に剣を出すオトハ)
ミカ「リカっ!早くっ!」
オトハ「愚かなヒトよ、あの世で後悔しなさい」
(剣がリカとミカをめがけてとんでくるオトハ)
リカ「っ!」
音葉(二人ともっ…!)
- バン!バン! パリン!パリン!
オトハ「何?剣が壊れた…」
リン「こいつはおまけだよ!」バン!
オトハ「ぐぅっ!」
ミカ「リン!」
リン「間に合ってよかった。城の外が変に光ってたからチヒロさんの鏡を使って何があったか見ていたんだよ」
チヒロ「話も全て聞きました。世界中から音が無くなったのはそういうわけだったんですね…」
オトハ「小癪な…ヒト風情が神に楯突くか!」
(空を埋め尽くさんばかりの銃を出すオトハ)
音葉(なんて数!こんなのが一斉に撃たれたら…)
オトハ「よくも私に鉛玉を食らわせたな!その身で同じ苦しみを味わうがいい!」
(銃から一斉に弾丸が放たれるオトハ)
- ピィンピィンピィンピィンピィン!!
オトハ「なっ…!弾かれた!?」
リン「ランコ遅いよ!」
ランコ「フッ、魔王といえど我が魔法には遠く及ばないようだ。この我が直々に展開する粒子還流防壁に銃弾で挑むとは無謀だったな」
ミカ「みんな…!来てくれたのはありがたいけどあいつに楯突くとどうなるかわかっているの!?」
リン「そんなのどうでもいいよ。あんな奴を放っておくわけにはいかないでしょ?」
ランコ「恐れるな、敵は魔王だが我々には女神がいる。おとぎ話では魔王は女神に倒されて終いであろう?」
音葉(凛ちゃん…蘭子ちゃん…)
- オトハ「神である私を魔王と愚弄するか!不心得者め!」
(泥人形が一斉にでてくるオトハ)
ランコ「ぴいっ!?」
オトハ「おまえの防壁が直接的な打撃に弱いことは知っている!この泥人形の軍勢は止められまい!」
ドドドドドドドドドドドドドド!!!
ランコ「ど、どうしよう…わたし攻撃魔法はあまり使えないし…」
……ドドドドドドドドドドド!!
チヒロ「この地鳴りは…まさか!」
タケウチ「みなさん!加勢に来ました!」
ミシロ「目標はオトハ様を騙る魔王だ!やつに人間の強さを教えてやれ!」
ウオオオオオオオオオオオオオ!!!
リン「凄い…!これだけの数がいればあの人形も抑えられる!」
- 丸太は持ったな!行くぞォ!
- チヒロ「ミシロ様!タケウチ様!あなたたちには鏡を見せてないはずなのになぜ…!」
タケウチ「外があんなに光っていたら嫌でも原因を調べますよ。チヒロさんが私たちの身を案じてくれていたのはわかっています」
ミシロ「心配するなチヒロ君。いざという時、己の答えに殉ずる覚悟はできている」
音葉(プロデューサーさん…美城専務…)
タケウチ「リンさんは確か司令官を務めてなさっていたんですよね?兵の半分は私が指揮しますのでもう半分をお願いします」
リン「さっき会ったばかりの人に指揮権を渡すだなんて…なかなか大物だね」
ミシロ「ランコ君は引き続き粒子還流防壁を展開してくれ。それがあれば少なくとも銃の攻撃は弾けるのだからな」
ランコ「こ、心得た!」
- アツゥイ!
- オトハ「ヒトどもがわらわらと羽虫の如く現れおって…!こうなったらこの一帯をすべてまっさらにしてくれる!」
(大爆発するオト…)
ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!パンパンパンパン!!ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!
オトハ「なんだ!?私の“音の葉”がかき消された!この爆発音はなんだ!?」
ウミ「みんなー!どんどんあげちゃって!」
アカネ「燃えてきましたよー!ボンバー!!」
アリス「はいっ!これが次の花火です!」
フミカ「ちょっと重いけど…今ぐらい頑張らないと…!」
ナナ「花火はまだたくさんありますよ!いっぱい買い付けましたからね!」
音葉(海ちゃん…茜ちゃん…ありすちゃん…文香ちゃん…ナナさん…)
- プオオオオオオオオオオオ!!ジャンジャンジャン!ピュオオオオオオオオオ!!
アイ「もっともっと演奏をするんだ!あの魔王の“音の葉”をかき消すほどに!世界の果てまで音を届けるほどに!」
ユカリ「私たちの音は決して奪わせたりしません!自分たちの音は自分たちで守ります!」
ナツキ「行くよみんな!アタシ達の最高の演奏を届けるんだ!」
音楽団「はいっ!!」
カエデ「私も微力ながら歌わせてもらいます…!」
音葉(あいさん…ゆかりさん…夏樹ちゃん…楓さん…)
オトハ「クソッ…雑音が多すぎて“音の葉”が使えぬ…!」
- ナナ「皆さん大丈夫ですか?」
ミシロ「ああ助かったよ。こちらの花火や演奏で魔王の攻撃を止めている間に作戦を練ろうか」
ミカ「確かおとぎ話ではオトハ様が“音の葉”によって魔王を撃退したんですよね」
リカ「でも、どんな音を出したかなんて知らないよ?」
チヒロ「なんだかんだ言っておとぎ話ですからね…どうすればいいんでしょう」
ミシロ「とりあえずオトハさんの声を何とかして出せるようにしなければな。だがそれをどうやって魔王から取り戻すか…」
ナナ「…取り戻すわけではないのですが、一つ方法があります」
リカ「ホント!?」
- ナナ「オトハさん、これを」スッ
音葉(これは…チョーカー?)
ナナ「私が買い付けたものの中に一つ魔法のアイテムがあったようなんです。チヒロさんが見つけてくれました」
チヒロ「このチョーカーは2つで1つのアイテムです。つけた二人のお互いの声を一度だけ交換することができます」
リカ「ってことはつけた人は…」
チヒロ「…はい、オトハさんの代わりに声が出なくなります」
ミシロ「なんだと…治すためのアイテムはないのか?」
チヒロ「すみません、私は持っていないです…」
音葉(そんな、誰かの声を犠牲にしないといけないなんて…それを私が選ばないといけないの?)
- ミカ「…ほらオトハさんこれつけて」カチャ
音葉「!」
リカ「お姉ちゃん!?」
ミカ「あはは、アタシあの魔王に対して何もできなかったしこれぐらいはやんないとね」
音葉(待って、美嘉ちゃん!)
ミカ「ごめんねオトハさん、アタシが勝手にやることなんだ。だから気にしなくていいよ」カチャ
パアアアアアアアアアアア…
チヒロ「チョーカーが光っている…」
リカ「お姉ちゃん!オトハ様!大丈夫!?」
音葉「…み、美嘉ちゃん!」
ミシロ「声が出ている!交換は成功したのか!」
- 音葉「美嘉ちゃん!なんで早まったことを…!」
ミカ「………」パクパク
音葉「…?」
ミカ(が、ん、ば、っ、て)ニコッ
音葉「…!」
音葉「ごめんなさい。…そしてありがとう、美嘉ちゃん。行ってくるわ」スクッ
- アカネ「もっと花火はないんですか!?」
アリス「もうさっきので最後です!」
アイ「はあー、はあー、みんなもうへばってきたのかい?」
ナツキ「こんな大音量をかき鳴らすのはあまりやったことが無いからね…」
リン「こいつらどんどん湧いてくる!キリがないよ!」
タケウチ「まずいですね…我々が押されてきました」
オトハ「ふん、雑音もやっとおさまってきたか。今度こそ終わりだ」
音葉「待ちなさい」
オトハ「ん?なぜ声が出せるのだ?」
音葉「私の仲間が声をくれました。あなたを倒すために」
- オトハ「声は出るようだが“音の葉”は使えまい。そのような体たらくでよくも私を倒すといったものだ」
音葉「…音楽団の皆さん、すみませんが即興で合わせをお願いします」
アイ「なんだ?オトハさんはいったい何をするつもりなんだ?」
オトハ「何をするつもりかはわからんがこれ以上遊びに付き合うつもりもない。爆発する音を出してまとめて吹き飛ばしてやろう」スゥー
(大爆発するオトハ)
ランコ「ひっ!も、もうダメ!」
音葉「行きます。作詞、梅木音葉で“春風の国”」
~~~~~~~~~~~♪
リカ「これは…私たちの国の名前の歌?」
音楽団「よし!あの歌に合わせるぞ!どうせ俺たちには演奏しかできないんだ!」
- (大爆発するオトハ)
(大爆発するオト…)
オトハ「なんだ!確かに出したはずの“音の葉”が消えるだと!?」
ミシロ「魔王の体から光がオトハさんに流れていく…」
リカ「この歌…初めてオトハ様がこの世界にやって来た時のことを歌ってるんだ…」
音葉「次です。作詞、梅木音葉で“常夏の国”」
~~~~~~~~~~~♪
(大爆発するオト…)
(大爆発するオ……)
ランコ「どんどん“音の葉”が消えていく…」
アリス「この歌は私たちの国の、昼と夜の音の大切さを歌った歌…」
- 音葉「次です。作詞、梅木音葉で“秋興の国”」
~~~~~~~~~~~♪
(大爆発するオ……)
(大爆発する………)
ナナ「この歌は私たちの国の、音楽にかける情熱を歌った歌…」
オトハ「なぜだ!なぜあのようなただの歌で私の“音の葉”が消える!」
音葉「次です。作詞、梅木音葉で“厳冬の国”」
~~~~~~~~~~~♪
(大爆発する………)
(大爆発……………)
リン「この歌は私たちの国の、人は互いに分かり合えることを歌った歌…」
タケウチ「歌うたびに魔王から光がでてオトハさんに入ってゆく…」
- 音葉「最後に…作詞、梅木音葉で“お城の舞踏会”」
~~~~~~~~~~~♪
(大爆発……………)
(……………………)
アイ「“音の葉”が…完全に消えた…」
リン「泥人形たちも土に還ったよ!」
オトハ「なぜだ!なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだっ!!なぜ私の“音の葉”が消える!なぜおまえに“音の葉”が戻る!」
音葉「戻ったわけではありません。私にもともとあったもの以外は一時的に私の中にあるだけです」
音葉「あなたは勘違いしている…音はあなたが、ましてや私が独り占めできるものではありません」
音葉「この世界に住む、みんなのものです。私がこの世界の歌を歌うことできっかけを作り、音をあるべき場所に戻す。ただそれだけのことです」
音葉「今、あなたの支配下にあった音を全て世界に返します」スゥー
オトハ「や、やめろ!そんなことをしたら私の存在が!!」
-
――――――――――――世界中全ての音を奏でる音葉――――――――――――
- フミカ「凄い…こんなの、世界中のどの本にだって書かれていません…」
アイ「…私たちは世界一の幸せ者だ。こんな素晴らしいものを間近で聞けるだなんて…」
ランコ「この音も“厳冬の国”のみんなに届いているのかな…」
ミカ「……オトハさん、やったね」
リカ「お姉ちゃん!声が戻ったの!!」
チヒロ「世界中の音が自由になったんです。ミカさんの声もあるべきところに戻ったんでしょう」
オトハ「ああ…消える…消えてしまう…」シュウウ…
音葉「さようなら、オトハ様。もうあなたがいなくても世界中の音は大丈夫でしょう」
オトハ「…不公平だ…私のものなのに、私の手を離れて旋律を奏でるなんて…」シュウウ…
- ミシロ「これで…すべて終わったんだろうか」
チヒロ「ええ!もう世界から音が無くなることはないんです!私たちの勝利です!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
リカ「オトハ様やったね!魔王を倒しちゃうなんてほんとにおとぎ話みたい!」
アイ「まったく、あんなものを聞かせてもらったら挑戦する気なんて失せてしまうじゃないか」
アリス「オトハ様ありがとうございます!もう音が無くなることに怯える必要はないんですね!」
リン「ありがとうオトハさん。私たちの国のことを歌ってくれて」
音葉「みなさんありがとうございます。また助けられてしまいました」
タケウチ「気にしないでください。これはもうわれわれ全員の問題だったのですから」
- 排泄オォン!とかも流れたんですかねぇ
- ミシロ「全く、君に褒美をとらせようとしたら国一つでも足りないかもしれないな」
音葉「…ちひろさんすみません。そういえばつい少し前に私が欲しいものが決まったんです」
チヒロ「はい!一つと言わずいくつでも持って行っていいですよ!アイテムはまた集めればいいんですから!」
音葉「いえ、一つだけで十分なんです。みんなも今から私が言うことを聞いてくれないかしら?」
ミカ「どうしたのオトハさん?改まっちゃって」
音葉「ちひろさん…」
音葉「私をもとの世界に戻すアイテムはありますか?」
- >>333
排泄音すらも音楽する我々が言えた事じゃないってそれ
- リカ「な…なんで!?どうして元の世界に戻る必要があるの!?」
音葉「ちひろさん、どうですか?」
チヒロ「え、ええ。あるにはありますが…」
リカ「チヒロさん何でそんなこと言っちゃうの!オトハ様がいなくなっちゃうんだよ!?」
ミシロ「…理由を聞かせてもらってもいいか?私としても君にはこの世界にいてほしい」
音葉「元の世界で私の帰りを待っている人たちがいるんです。私がいないことで悲しんでいる人がいるんです」
ミシロ「…そうか、わかったよ」
リカ「なんで納得するの!?オトハ様がいなくなったらアタシ達だって悲しいよ!」
ミカ「リカ…」
リカ「お姉ちゃんは悲しくないの!?寂しくないの!?なんか言ってよ!!」
- リカ「オトハ様言ってたじゃん!元の世界では音響の仕事しかできなかったって!この世界で歌えて本当によかったって!」
チヒロ「…今すぐというわけにはいきません。次の流れ星が降る夜に力をため、その夜明けに魔法が発動します。おそらく3日後かと」
音葉「わかりました。では3日後に」
ミカ「リカ、ちょっと落ち着いて…」
リカ「…もういい!お姉ちゃんなんてキライ!オトハ様もキライ!みんなキライ!」ダッ
ミカ「リカ!」
タケウチ「…そっとしておいてあげてください。まだ彼女は別れを受け入れるのには幼すぎます」
音葉「ごめんなさい美嘉ちゃん。急に決めてしまって」
ミカ「…アタシもオトハさんにここにいてほしいです。でも、帰らないといけないんですよね?」
音葉「ええ」
ミカ「元の世界で歌える保証はない…それでも帰るんですよね?」
音葉「……ええ」
ミカ「それなら…アタシはオトハさんが決めたようにするのがいいと思います」
ミシロ「みんな別れの日までこの城に泊まっていくといい。部屋はいくつも空いているからな」
- “3日後・リカのいる部屋”
ミカ「ねえリカ、部屋から出てきてよ。オトハさんが今日帰っちゃうよ」
リカ「いいもん!もうオトハ様なんて知らないもん!」
ミカ「…ねえ、そのままでいいから聞いて」
リカ「…?」
ミカ「オトハさんに聞いたんだけど、オトハさん向こうにも友達がいるんだって。その人たちが音葉さんがいなくなったせいで悲しんでいるんだって」
リカ「…」
ミカ「もしリカが別の世界に行ってそれで帰ってこなかったら…アタシはすっごい悲しいよ。たぶんその人たちもそう思ってるんじゃないかな?」
リカ「…」
ミカ「…外ではもう流星が降っているよ、アタシはそろそろ行くね。リカはきっと一人でも来れるって知っているから」スタスタ…
リカ「…アタシだってそんなのわかってるもん」
- “城外”
音葉「綺麗な流星群…神秘的ですね…」
チヒロ「この流星群が降り終わり、朝日が地平線から顔を出しきったころに魔法が発動します」
サナエ「オトハ様ちゃんがいなくなるのはさびしいね…」
アイ「結局、あなたには負けてばっかりだったな。勝ち逃げなんてずるいよ」
マナミ「まだ平和になった“厳冬の国”に招待してないのにね…残念だよ」
ナナ「ミカさんとリカさんが見当たりませんね。大丈夫でしょうか…」
ミカ「お待たせしました!」
音葉「美嘉ちゃん、莉嘉ちゃんは?」
ミカ「すみませんまだ…でも、きっと来るかと思います」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
- チヒロ「そろそろ朝日が昇ってくる頃ですね」
アカネ「リカちゃん、本当に来ますかね…」
ミカ「きっと来るよ、なんたってアタシの妹だから」
音葉「朝日が見え始めた…あれが昇り切ったころに私は…」
タッタッタッ…
リカ「オトハ様ーーー!!!!」
アリス「リカさん!」
リカ「はあ、はあ、はあ、やっぱりオトハ様に最後言えずに終わるのは嫌だって思って…」
音葉「莉嘉ちゃん…」
リカ「ごめんなさい!オトハ様やお姉ちゃんにあんなひどいこと言っちゃって!」
音葉「…気にしていないわ。私もみんなと離れたくない気持ちがあるのは一緒だもの」
ミカ「アタシも気にしてないわよ。それより来てくれて本当にうれしいよ」
- 音葉「みなさん、先日も言いましたが音を取り戻せたのは皆さんのお力によるものなんです。もう私も“オトハ様”もいなくなりますが、皆さんが音を思う気持ちを忘れなければきっと大丈夫です」
ナナ「はい!これからも一層音楽祭は盛大にしますよ!」
アリス「私、きっと本を書きます。オトハ様の冒険を世界中に広めます」
ランコ「約束します。どれだけ時間がかかっても必ず“厳冬の国”を平和にすると」
音葉「ミカちゃん、リカちゃん、ウミちゃん、アカネちゃん、アリスちゃん、フミカちゃん、ナナさん、ナツキちゃん、ユカリちゃん、アイさん、カエデさん、マナミさん、サナエさん、リンちゃん、ランコちゃん、ミシロさん、タケウチさん、チヒロさん…ありがとう。この世界に来てあなたたちと出会った思い出は一生の宝ものです」
音葉「梅木音葉っていいます。“オトハ様”じゃない私の名前。どうか知っていてください」
リカ「音葉さん…」ポロポロ…
音葉「ああ…もう日が昇ってしまうわ…その時が来たのね」
ミカ「音葉さん、お達者で」
音葉「ええ、みんなも…」シュウウ…
チヒロ「…行ってしまいました」
タケウチ「…ミカさん、もう我慢しなくていいですよ」
ミカ「…うわああああああああああああああん!!」ポロポロ…
- “事故現場”
武内P「…やはり今日もいませんね」
武内P「…帰りましょう。もうここにきても梅木さんは…」
シュウウ・・・・・・
武内P「え?」
音葉「ここは…帰ってきたのかしら?」
武内P「…梅木さん?」
音葉「その声は、プロデューサーさん?」
武内P「梅木さん!」ガバッ
音葉「わっ。ぷ、プロデューサーさん…」
武内P「よかった…帰ってきてくれて本当によかった…!」
音葉「…ただいま。遅くなりました」
- 『オトハ様の旅』
あるところに音をなくしてしまった世界がありました。悪い魔王が世界から音を奪ったせいで、鳥の鳴き声や風の吹く音が全く聞こえなくなったのです。
ここはいつもポカポカいいお天気でお花が咲き、ちょうちょがひらひらと飛んでいる国です。この国も音を失くしてしまい、そこに住んでいる人は生きる元気をなくしていました。
「早く音が戻ってきてほしい」みんなは毎日思っていました。すると空からオトハ様がやってきたのです。
「いったい何があったのですか?」オトハ様は聞きました。「音が全くしないので元気が湧いてこないのです」とある家に住む姉妹が答えました。
話を聞いたオトハ様はなんとその口から風の吹く音や鳥の鳴き声、木々の葉がこすれ合う音を出しました。すると音が戻ってきたのです。
「やった!これで昔のようにみんなと遊べる!」と喜ぶ妹。「ほかの国の音も取り戻してくれませんか?」と尋ねる姉。オトハ様は世界中を回ることを決意し、二人の姉妹をお供に加え旅に出ました。
- 二つ目の国は年中太陽がさんさんと降り注ぐ国です。オトハ様は早速その口からセミの鳴き声や風が吹く音を出しましたが、不思議なことに音が戻ってきません。
街中を歩いてみると、二人の娘がケンカをしていました。「昼の音の方が素晴らしい」「何を言っているんだ、夜の音の方が素晴らしい」と二人とも譲らない様子。
オトハ様は二人の話を聞き、「どちらにも良さがあります。この世界には昼も夜もあるんですからどちらか一方だけというのはいけないでしょう」といい、二人をなだめました。
二人をなだめたところで花火の音、川のせせらぎの音などをだすと、国に音が戻ってきました。国からケンカが無くなり、みんなの思いが一つになったから音が戻ってきたのです。
「ぜひ私も連れて行ってください」と二人のお供が加わり、オトハ様は次の国へ旅立ちました。
- 三つ目の国は食べ物がおいしく、人々が音楽を楽しむ国です。オトハ様が話を聞いてみると、なんとその国は少しですが自分たちで音を取り戻していたのです。
「この国の音を完全に取り戻すには自分がオトハ様であることをみなに知ってもらわないといけない」そう思ったオトハ様はこの国で行われる音楽祭に参加することにしました。
オトハ様は演奏でも歌でも優勝し、最後は誰もみた事のない踊りをして国中の人達を魅了しました。そして様々な楽器の音をその口から出すと、国に音が戻ってきました。
「本物のオトハ様がきてくれるなんてめでたい」「今日の祭りは盛大にいこう」と最後の日はこの国一番のお祭りが開かれました。
- 四つ目の国は雪が降って国が二つに分かれ、軍人と魔法使いが争っている国です。いつからその争いが始まったのかは誰も知りませんでした。
「本当は争いたくないんだ」「でも戦わないと自分たちが死んじゃう」軍人も魔法使いも本当はそう思っていました。ですが勇気がなく、戦いを止めることができませんでした。
軍人と魔法使いが戦いの最前線に集まり、今にも戦争が始まろうとした瞬間、オトハ様は歌を歌いました。それを聞いた人たちの頭の中にはお互いが仲良く遊んでいる様子が浮かびました。
「ああ、相手も同じことを考えていたんだ」軍人も魔法使いもやっと相手の気持ちをわかることができました。そしてお互いに武器を捨て、仲良くなることを約束しました。
- 最後にオトハ様が訪れたのはお城の舞踏会。そこでは国中から娘たちが集まってきてダンスを楽しんでいました。オトハ様はそれぞれの国で仲良くなった人たちと一緒に踊りを披露しました。
すると突然魔王が現れてオトハ様の音をすべて奪ってしまいました。ですがこれまでの旅で出会った人たちがみんな集まってきて、オトハ様を助けてくれました。
最後にオトハ様はこの世界全ての音を奏でて、悪い魔王をやっつけました。もう世界から音が無くなることはないのです。
「私はもう帰ります。みなさんが音を思う気持ちを忘れなければ、魔王が現れることはないでしょう」オトハ様はそう言って空に帰られていきました。それから世界中の人々は心を一つにして、音をずっと大事にしていったのです。
- クラリス「…めでたしめでたし“オトハ様の旅”著者、アリス」
子供「わーい!めでたしめでたし!」
子供「オトハ様のお話いつ聞いても面白いね!」
クラリス「あらあら、あなたたちは本当にオトハ様のお話が好きですね」
子供「ねークラリスさん。この絵本を書いたアリスって人はどんな人なの?」
クラリス「オトハ様と一緒に旅をされたお供の方のお1人だそうですよ」
子供「すごーい!じゃあオトハ様の旅をすごく近くで見てたの?」
クラリス「ええ。オトハ様が魔王を倒すその時も見ていたんですよ」
子供「いいなー、私もオトハ様と一緒に旅したいなー」
クラリス「オトハ様はもう自分のところに帰られましたが、この世界に音がある限りオトハ様は私たちとずっと一緒です」
クラリス「さて、そろそろ眠る時間ですよ。寝巻に着替えましょうね」
子供「はーい!」
- “ライブ会場”
ワアアアアアアアアアアアアア!!
音葉「凄い歓声…ここから見えるお客さん全員が私の歌を聞きに来てくれたのですね」
武内P「ええそうです。…すみません、今の今まで歌わせることができなくて…」
音葉「気にしないでください。私が自分の意思を持ってアイドルに臨まなかったのが悪かったんです」
武内P「それにしても驚きました。帰ってこられたと思ったらすぐに歌を作るとは。梅木さん演奏や歌だけでなく作詞もできるんですね」
音葉「さすがに作詞は初めてですけどね」
武内P「歌というよりはミュージカルや歌劇に近いですが…こんなお話どうやって思いついたんです?まるで実際に体験したかのようでしたが」
音葉「色々あったんですよ。それでは行ってきます」
武内P「はい、頑張ってください」
- 音葉「みなさん、今日は私のライブに来てくださってありがとうございます」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
音葉「この歌は私がアイドル活動に押しつぶされそうになって旅に出た時、かけがえのない人達と出会ってできたものです。今日はその人達にもこの歌声が届くよう、精一杯歌いたいと思います」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
音葉「それでは始めたいと思います。私のファーストライブ…」
音葉「“音を失くした世界で”」
【終わり】
- 乙
とても面白かったです(小並)
- すっげえ超大作でがっつりハマったゾ~
お疲れナス!
- 乙でした!面白かった。表現もSSならではって感じで良かったです。
これから「○○する音葉」を見る目が変わってしまいそう
- これでおしまいです
稚拙な文章ではありましたが読んでくださった方はありがとうございます
音葉さんの魅力に気づいてくれる方が一人でも増えて下さったらとてもうれしいです
あ、そうだ(唐突)
現在アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージで開催中のガシャ『夏へジャンプ!ビギニングサマーガシャ』において音葉さんの新SR『[涼風のミンストレル]梅木音葉』が限定アイドルとして登場しています。ガシャは7/10の14:59までなので皆さん振るってガシャを回して音葉さんをゲットしましょう。僕はできませんでした…(小声)
- まだ1週間あるのに出来なかったというのはおかしいですね
- スタージュエルが20000→0になりました…
見ろよこれなあ!この無残な姿をよおなあ!(血涙)
- 感動の後に無残なガシャ報告で顔じゅう草まみれや
- 現実は非情なんやなって…
- 魔王(ちひろ)が悪いよ魔王(ちひろ)がー
- 今読んだけどすっげぇおもしろかったゾ~
次回作期待してナス!
- オツシャス!
- オツシャス!
- オツシャス!
- このスレ去年のだったのか…たまげたなあ
童話のような分かりやすいメッセージ性にラノベのような導入から繰り出されるファンタジー感溢れる世界観が素敵だった
- とても面白かったです。(小並)
- 1年越しの再登場でようやくミンストレル音葉さんを引くことができました。
俺の心の傷がどんどん癒されていきますよ!
- とりあえずアドレスを貼るのみで、当スレからは立ち去りますが、
もし興味ある方は読まれて下さい。
いずれ誰もが直面する「死の絶望」の唯一の緩和・解決方法として。
(万人にとってプラスになる知識)
《神・転生の存在の科学的証明》
http://message21.web.fc2.com/index.htm
- なんだこの傑作は…たまげたなぁ
1が音葉さんお迎えできたようでなにより
- http://daturyokuss.seesaa.net/article/458076835.html
- ッアァ!?
- お疲れナス
音葉さん好きの同士がいて嬉しい
- 今日は音葉さんの誕生日なのでage
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