社説

社説[渡嘉敷 空自無許可訓練]なし崩し使用許されぬ

2018年12月28日 07:44

 航空自衛隊那覇基地が渡嘉敷村に通知せず前島で訓練を実施していた問題で、同基地は26日、2000年に当時の村長から得た同島ヘリポート使用の承諾書を根拠に、ヘリポート以外の場所でも訓練を続けていたと文書で釈明した。承諾書には訓練実施の期限が書かれていなかったため、「永久承諾」があったと解釈したという。あまりに手前勝手な解釈であきれる。

 承諾書について当時の村長は「覚えがない」と否定している。村も当該承諾書を探すが見つかっていない。

 今回新たに00年以前にも訓練が実施されていたことが分かった。

 一方、村が確認したのは1999年11月から1年間の使用に限る承諾書だけ。これによる訓練は2000年4月から実施されており、それ以前の承諾書は確認できていないという。同基地も自ら訓練の根拠とした00年の承諾書自体を公表しておらず、承諾書は、その存在すらあいまいと言わざるを得ない。

 訓練を続けるにあたって同基地は毎年1度、村役場の担当者に連絡や調整を行ってきたと説明する。しかし、これについても村側は「覚えがない」と食い違う。

 問題を受け同基地は過去2年間の同島での訓練内容を開示した。それによると離着陸訓練や模擬遭難者のつり上げ訓練などの災害派遣訓練を17年度に112回、18年度は12月9日までに41回実施した。

 ヘリポート以外での訓練は、そもそも同基地が根拠と主張する承諾書にも触れられていない。そんな曖昧模糊(あいまいもこ)とした取り決めを基に、これまで延々と訓練を続けてきたとすれば異常事態だ。

    ■    ■

 村が同基地の前島での訓練を認識し始めたのは00年ごろ。村関係者は、ヘリポート以外に、同島東側の桟橋でもヘリの離着陸訓練を目撃している。

 しかし訓練に明確な根拠がないと分かったのは報道がきっかけで、村はそれまで訓練について同基地に問い合わせていなかった。

 前島にはかつて集落があったが00年ごろに無人となった。

 しかしその後、住民が移り住み現在は1人が住居を構える。そんな中で、根拠のない訓練を放置してきた責任は村側にもある。

 問題の発覚を受け座間味秀勝村長は「前島には住民が住んでおり訓練は望ましくない。航空自衛隊には訓練を考え直してもらうよう協議したい」と訓練自粛を要請したが、住民の安全を脅かしかねない事の重大さを考えれば、根拠なき訓練ははっきりと拒否すべきだ。

    ■    ■

 同基地は今回、「村との意思疎通を十分行わないまま誤解に基づいて訓練を実施してしまい、村や住民にご迷惑とご心配をかけた」と文書で陳謝。同時に、村に対し訓練再開を要請している。

 だが、承諾書の有無など村側との認識のずれは残ったまま。疑問が解消されたとは言い難く、なし崩し的に訓練を再開することは許されない。同基地には説明責任の徹底を求めたい。

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