「ん…………?」
何となく目が覚めてしまって、咲耶はベッドの中で半身を起こした。時計を見ると、まだ午前3時。窓の外は室内と同じく夜の闇が全てを覆っている。カーテンを揺らして入り込んできた夜風が心地よく頬を撫でていた。
「えっ……?」
だが、その風が示す事実に気づいて咲耶は夜風の涼しさに身を委ねていた姿から一転、緊張を顔に走らせた。窓から風が入ってくるはずはない。夏場は暑いので寝るときにもクーラーを使っている。昨夜も咲耶は窓をきちんと閉めてからクーラーのタイマーをセットして部屋の灯りを落とした。
だから、窓から外気が入ってくるはずはないのである。咲耶が寝ている間に誰か他の人間が部屋の窓を開けない限りは。
カサ……
「だ、誰……? 誰かいるの…………?」
小さな物音がしたような気がして、咲耶は慌てて振り向いた。ベッドの向こう、壁際の棚の前に誰かがいる。部屋の中も暗いためにはっきりとは見えないが、人影のようなものがそこに見えた。
咲耶の恐怖は一気に膨れ上がる。正体の知れない人影に、夏だというのに身体が小刻みに震え、下半身をまだ覆っているタオルケットの端を右手の指がきつく掴んでいた。
「……僕だよ…………」
そう言って、人影がベッドの方へ近づいてくる。
ギュッ
怯えに、タオルケットを掴んでいた指の力がさらに増した。
だが、咲耶のそんな様子に気づく素振りもなく、人影はどんどん近づいてくる。咲耶との距離が縮まったのと、窓からの微かな星明かりが届くようになったことで、ベッドの縁に人影の足が触れるかどうかというところで、ようやく咲耶はそれが誰かということを理解した。
「お……お兄様!?」
怯えは驚きに変わった。強盗や変質者の類が部屋に忍び込んでいたらという恐怖は兄の顔を認めたことで雲散霧消する。
「で、でも……どうして?」
だが、すぐに疑問が咲耶の中で湧き上がってきた。自分の寝ている間に部屋に侵入したのが変質者ではなく“お兄様”であったことには安心したが、兄がいるというのも考えればおかしなことだった。深夜に咲耶の家をこっそり訪ね、寝ている妹の部屋に忍び込む。普通ではなかった。
「決まってるじゃないか。こうするためさ……」
咲耶の問いに、兄は行動で答えを返す。ベッドの傍に立っていた兄は、咲耶の肩に手を伸ばして、そのまま自分の方へ引き寄せた。
「えっ……?」
予想していない兄の動きに咲耶は驚きの声を洩らすが、そのときすでに咲耶の上体は兄の腕の中に抱かれていた。そして、同時に兄の顔が急速に近づいて、咲耶の唇に同質の柔らかいものが重ねられる。
「んっ…………」
キス。
お兄様と。
咲耶は今起こっていることが信じられず、思わず目を見開いていた。
(お兄様……ホントに…………? 私、お兄様とキス、してるの……?)
信じられない思いだった。どれだけ積極的に自分の思いをアピールしてみても、妹ということで真剣に取りあってもらえず、振り向いてくれることのなかった兄が、自分にキスをしている。夢のようなことだった。だが、触れるほど近くにある自分にキスをしている男の顔は、間違いなく兄のものだった。
「んん…………」
やがて、咲耶はうっとりと目を閉じて、兄の唇を受け入れていた。すると、それを待っていたかのように唇を割って兄の舌が侵入してくる。さすがにそれは咲耶を再び驚かせたが、そういうキスの仕方も知っていた咲耶はそのまま抵抗せずに兄のするがままに任せる。
くちゅっ……
舌が絡め取られ、吸い上げられる。続いてその2つの舌を伝って、兄の口から大量の唾液が送り込まれる。もはや咲耶は動じることもなく素直にそれを受け入れて呑み下す。
ゴクッ
(……甘い)
嚥下の瞬間、咲耶はそう感じた。するとたちまちぼうっと身体が奥の方から熱くなってくる。
「んむんんっ……」
(もっと……)
咲耶は身体の奥から湧き上がって来る衝動につき動かされるままに自分の方から積極的に兄の舌に自分の舌を絡ませていった。
くちゅっ
今度は、反対に咲耶から兄の方に唾液を送り込んでいく。兄はそれを当然のように嚥下してくれる。それだけのことで、咲耶はまた少し自分の身体が熱くなるのを感じた。
くちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゃっ……
舌が激しく絡み合い、互いの唾液の交換が幾度となく繰り返される。そうしていると、不思議なことに咲耶の身体はどんどん熱く火照ってくる。十何度目かの舌の交歓でようやく唇が離れ、唾液のきらめく架け橋が途切れてシーツに落ちたときには咲耶の頬は興奮ですっかり赤く染まっていた。
「もっと気持ちよくしてあげるよ」
兄は耳元にそうささやきかけると、兄は咲耶の身体を抱きとめていた手を解いてベッドの上にそっと横たわらせる。そして自らもベッドに上がると、胸の2つの膨らみに手を伸ばして夜着の上から触れていった。
「んふっ……」
布地越しに兄の手を胸の膨らみに感じただけで、咲耶の口からは熱い吐息がこぼれる。自分でも驚くほどに全身が敏感になっているようだった。
(やっぱり、お兄様に触られているからかしら……)
兄とこうなることを夢見て、何度か夜にこのベッドの中で自分を慰めたことがあったが、こんなに感じてしまうことはなかった。やはり、想像と現実には大きな隔たりがあるということを咲耶は感じていた。その証拠に、すでに胸の頂では小さな突起が布地を押し上げて服の上からでも確認できるようになっていた。
「ここが触って欲しそうにしてるよ」
目ざとくその突起を見つけた兄は、そう言って胸の周辺部を優しく撫でるようにしていた手を滑らせていった。そして、2本の指を使って布地を押し上げるその突起を軽く摘まむようにして触れる。
「ひぅっ!」
その瞬間、乳首を基点にして咲耶の全身に快感の電流が走る。下半身を覆っているタオルケットが痙攣するような咲耶の全身の震えを伝えていた。
「軽くイッちゃった? まあ、こんなに敏感に張り詰めているんじゃ仕方ないかな」
微苦笑を浮かべながら兄は乳首を摘まんでいた指を離した。小さな絶頂を迎えたばかりの咲耶の顔を見ながら、兄の手は胸を離れてタオルケットを取り去った。これ以上は咲耶と自分の間にあるものは全て邪魔であるとばかりに、すぐに指は胸元へと戻り、今度はボタンを1つずつ外し始めた。
「や、お兄様…………」
さすがに咲耶の口から抵抗の声が上がるが、
「大丈夫。キレイだよ、咲耶の身体」
と、恥ずかしがる咲耶に褒め言葉をかけてそれ以上の言葉を封じてしまった。
ぷち、ぷち、……
1つ、また1つとボタンが外されていくその度に、咲耶の肌が兄の目に露わになっていく。掌にちょうど収まるほどの胸の膨らみと、その頂で固く自己主張しているピンク色の乳首。胸からお腹にかけての滑らかな肌に、かわいいおへそ。さらには少女の大切な部分を隠すピンク色のショーツと、すらりとした長い足までもが全て兄の目に晒されてしまった。
「み、見ないで……お兄様…………」
自然と兄の視線が下腹部を覆うショーツを向くのを感じて、咲耶は慌てて身を捩った。さっきまでの愛撫による興奮の上気に、羞恥の朱が混ざって、咲耶の顔は真紅の林檎のようになってしまった。
「そんなに恥ずかしがることないよ。……まあ、恥ずかしがる咲耶もかわいくて好きだけど」
兄の言葉にますます真っ赤になってしまった頬を優しく撫でる。そのまま手を髪の方に滑らせると、普段は纏めている長い髪を梳くようにして咲耶をなだめようとした。同時に逆の手はそっと下の方へと伸ばしていき、奥を隠すように重ねあわせた太ももの隙間からショーツに触れていった。
ちゅくっ……
「あっ…………!」
ショーツに触れた兄の指が濡れた音を奏でた瞬間、咲耶はこらえきれない羞恥に声を洩らした。そこはさっきまでの兄の愛撫によって沁み出した愛液ですでにぐっしょりと濡れてしまっていた。濡れたショーツは肌に吸い付いて、あそこの位置や茂みの翳りすら浮かび上がらせてしまっている。咲耶が兄の目を逃れようとしたのも、それを自分でもわかっていたからだった。
「濡らしてしまったことなんかで恥ずかしがらなくていいよ。それだけ咲耶が感じてくれた証拠なんだから」
「で、でも……」
少女の心理としては、相手がそう言ってくれたとしても恥ずかしいのに変わりはないのだが、兄はそう言うと自分の身体を下の方へとずらしていった。
「や、やだ…………」
そうすると、ちょうど兄の顔がショーツの前辺りに来てしまう。咲耶は羞恥のあまり再び身を捩ろうとしたが、兄は今度は両手で咲耶の太ももの辺りを押さえてそれを許さなかった。それどころか逆にこころもち脚を広げさせて、顔をその間に埋めた。
「あっ……やっ…………はぅっ……あぁっ……!」
断続的に咲耶の口から嬌声が洩れ始める。兄が股間に埋めた顔から舌を出して再び愛撫を始めたためだった。すでにぐしょぐしょだったショーツにさらに唾液が塗布されて、ショーツはその用途をほとんどなさないまでになってしまった。
「ひっ…………あああぁぁぁっ!」
そして、濡れそぼったショーツの上に浮かび上がってきた小さな核のような突起を兄の唇が吸うと、咲耶は再び絶頂に達してしまった。今度はさっきの乳首のときよりも本格的な絶頂で、咲耶の頭は白く染まったまま、しばらくはボ――ッとなってしまう。
ずっ……
ショーツがずり下ろされてあそこに外気が触れるような感覚があったが、咲耶はまだ快楽のまどろみの中にいた。意識がようやくはっきりしたのは、兄が一物の先端をべとべとになった咲耶のあそこに押し当ててからのことだった。いつの間にか兄も全裸になっていて、その股間には大きな一物が咲耶のあそこを貫くために雄々しく立ち上がっていた。その先端からはすでにぬるぬると粘液が溢れ始めている。
「いくよ、咲耶……」
その先端のぬるぬるを咲耶のあそこに擦りつけながら、兄はそう声をかけた。
「うん。来て、兄様…………」
兄の言葉に、咲耶は素直にそう返していた。初めての経験に対しての恐怖はほとんどなかった。それはやはり自分が愛しく思う“お兄様”が相手であることもあった。それに、まだ絶頂の余韻が残っていて、今なら痛みもあまり感じないような気が、何の根拠もなく存在していた。
ずぶずぶ……
直前に塗りつけた一物の先端からの粘液の他、兄の唾液に、今も奥から湧き出してくる咲耶自身の分泌する愛液と、潤滑は充分すぎるほどあったためか、呆気ないほど簡単に兄の一物は咲耶の膣内に埋没していった。そしてそのまま、
ぶつっ
何かが千切れるような感覚を通り過ぎて、兄の一物は根元まで咲耶の中に埋まった。
「あぁぁっ!」
処女を失った証に、つぅっと結合部から一筋の血が流れ出した。処女膜が突き破られたのだという感覚もあった。だが、何故か咲耶が予想していたような痛みは全く訪れなかった。代わりに身体の奥から全身に広がっていったのは、快感。口から溢れたのも、苦痛のうめきではなく、快楽を訴える喘ぎだった。
「ど、どうして…………?」
苦痛がないのは自分でも不思議だったが、そんな疑問も身体の奥からじんじんと響いてくる快感がすぐに押し流していってしまった。
「お、お兄様ぁっ……」
あまりの気持ちよさに、兄を呼びながら自らも快感を求めて自然と腰が動いてしまう。太ももに破瓜の血を付けたまま自分から腰を動かす咲耶の姿を確認して、兄はこっそりと笑みを浮かべた。しかしその笑みは咲耶に気づかれないうちにすぐに消してしまうと、咲耶を本当の絶頂に導くべく本格的な抽送を開始する。
「あ、ああっ……はんっ……ああぅっ…………! お、お兄様ぁ……!」
自慰の経験があるとはいえ、本格的なセックスの快感に免疫がない咲耶は、兄が本気になって腰を使い始めると、すぐに絶頂近くまで押し上げられていってしまった。それに合わせるかのように兄の一物もさらに膨張を増し、射精の予兆を見せ始めた。
「あっ、ああっ! ああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
びゅ、びゅびゅ、びゅるびゅるびゅるっ……
咲耶が絶頂の叫びを上げると同時に、兄は一際強く腰を打ちつけると恐ろしく大量の精液を一物の先端から咲耶の膣内に噴き出させた。それによって、絶頂からさらにもう一段高いところまで押し上げられてしまい、咲耶は絶頂と同時に頭を完全に真っ白にして意識を失った。
咲耶が目を覚ましたのはそれからしばらくしてのことだったが、すでにそこには兄の姿はなかった。
(まさか、夢だったの……?)
一瞬、咲耶はそんな疑念を抱いたが、すぐにさっきまでの行為が現実であったことを確信した。目を覚ました自分が何一つ身に付けていなかった。それに何より、太ももとシーツに、破瓜の証である血の痕が残っていたためであった。
(私、本当にお兄様と……)
その血の染みを確認しながら、咲耶はさっきの兄との行為を思い出していた。すると、それだけでまた身体の奥がどんどんと熱くなっていくのを感じてしまう。本人もあまり意識しないうちに、咲耶の右手は破瓜の痕が残るあそこに向かって伸びていった。