大弦小弦

[大弦小弦]「1933年に国際連盟を脱退し、日本は国際的な孤立を…

2018年12月27日 07:31

 「1933年に国際連盟を脱退し、日本は国際的な孤立を深めていきました」と現在の中学歴史教科書は書く。次ページの見出しは「戦争につき進む日本」。孤立と軍国主義が何を招いたかが理解できる

▼自国の主張が通らないからと国際機関を抜け、対話を閉ざした結果、破滅に至った。過ちを繰り返すまいと誓って歩んだ戦後の国際協調路線ではなかったのか

▼日本の国際捕鯨委員会脱退のニュースに85年前の史実が頭をよぎった。単純に同一視できないが、自国の「正論」を押し通そうと、国際的枠組みでの合意形成を拒む姿勢は共通する

▼排他的経済水域内の小規模な捕鯨であれば、脱退せずに妥協できる余地があったという。ではなぜ、と理解に苦しむ。商業捕鯨の再開で鯨肉の供給増加が見込まれるが、各国の反発を買い、国全体の国際的信用を損なう恐れがある。得るものに対し、失うものが大きすぎる

▼戦後日本の国際機関からの脱退はきわめて異例という。ネット上では海洋資源の管理の議論より、脱退そのものを感情的に喜ぶ声が目立つ。改憲や軍備増強の流れの中、漁業や食文化の問題だけにとどまらない国の「転換点」だと感じる

▼「2018年の脱退を契機に日本は孤立を深め、再び…」。未来の教科書にそう書かせないため、政治の動きに関心を寄せ続ける必要がある。(田嶋正雄)

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