プロローグ
男と女が人里離れた湖畔のコテージで談笑をしていた。男は王国最強と
二人は聖と邪、光と闇、正と悪、戦うことを運命づけられた存在であった。だが戦ううちに二人はお互いに好意を持つようになり愛し合ってしまった。
だが
その地で二人は子を儲けることになる、それは奇跡なのか、神のいたずらなのか二人には分からなかったが生まれた男の子はアディリアスと名付けられ大事に育てられた。
子が生まれた当初、二人は自分の身に起こった変化に気がつかなかった。
二人は失ってしまったのである。クリストファは聖騎士の力をプリシティアは
二人は驚きなんとかその力をアディリアスから取り除こうとしたが出来なかった。それはすでにアディリアスの一部であり命だったからだ。
それはアディリアスが5歳の時だった。クリストファがアディリアスを知り合いの魔術師の元に預けると言い出した。当然我が子を溺愛していたプリシティアは反対した。しかしクリストファは彼女に言う。「このままここで生きていてもアディリアスに未来はない」と、近くに村もなく他人とふれ合うことなく生きていく、それがどれだけ危険なことかクリストファは彼女に理解をさせようとした。
「それにアディリアスだって好きな娘を作って家庭を持たせたいだろ?」
「私が一生面倒見ますよ!」
クリストファはその言葉に苦笑する。どれだけ息子が好きなのかと。プリシティアは苦笑する彼に言う「何百年も不老不死で生きてきて初めて好きになった男との間の子供なのだから溺愛して当然だ」と。
この後二人はイチャつきだし話が
数日の説得の結果プリシティアはアディリアスを預けることに納得した。もちろんその預けた相手が美しい女性だと言うことを知ったプリシティアが嫉妬に怒り狂ったのは後の話のことだ。
~それから10年後~
「ふん、これが王国最強と歌われた
クリストファ達が隠れ住んでいた湖畔には100を越える聖騎士の軍団がたった一人を囲んでいた。クリストファはすでに瀕死の状態で聖騎士の大将である元部下の男と対峙していた。
「ふはは、強くなったじゃないかグリム・トルステン。あのはなたれ小僧が俺を越えるとはな」
クリストファは血まみれの身体を奮い立たせ相手を挑発する。プリシティアはすでに光の矢に撃ち抜かれその命を閉じた。奇襲だった、聖騎士の加護があれば感知できた、プリシティアが
かろうじて死ぬことのなかったクリストファはプリシティアの死に涙し咆哮をあげ攻撃をしてきた敵に切りかかる。しかし、ただの剣では聖騎士を倒すことができずただむなしく金属の弾ける乾いた音だけが響いた。
そして今かっての部下であったグリムにその命の握られているのである。
クリストファは鉄の剣で何度も打ち込むが鉄の剣では聖騎士の鎧を貫くことはできず乾いた音をたて弾かれる。剣技ではグリムを上回るものの武器の格が違いすぎて傷ほどのダメージも与えることができない。
「なぜ聖騎士装備をしないのですかな?」
「お前相手に聖騎士装備をしたとあっては我が名が廃れよう」
その言葉にグリムは眉をピクリと動かすが、すぐに平静を取り戻すと剣をローブを着た女性の死体方へ向けると侮蔑の言葉を投げ掛けた。
「そこの薄汚い
「俺の最愛の妻に剣を向けるな!」
”ガキン”剣が鎧を叩く音が辺りに響き渡る。それは先程までの威力ではなく普通のものならばその身をまっぷたつにされるほどの威力の一撃であるが聖騎士装備の前ではノックバックを起こす程度だった。
「ふん、本当に聖騎士装備を出せないようですな」
「衰えた自分が憎いよ」
クリストファは自分の力のなさを、最愛の妻の敵を殺せずにいることを悔やむように言葉を吐き捨てる。それは自分の息子を庇うための言葉だったのかもしれない。
息子がいたと知れれば捜査の手が息子に及ぶだろう。息子の中に
一瞬考え事をしたクリストファの隙を見逃さずグリムは一瞬で踏み込み、その一撃がクリストファの左腕を切り落とした。
「グッ」
「本当に衰えてしまったのですな、昔のあなたならそんな隙は見せなかった」
クリストファは倒れるようにひざまつき落とされた左腕をその手につかむ。
「さらばです。最強聖騎士で私の憧れだった英雄よ」
グリムが剣を振り下ろす瞬間、クリストファが呪文を唱えた。それは聖騎士のものではなく人々が忌み嫌う死霊術の呪文だった。
クリストファの持つ左腕が禍々しい黒色の剣になりグリムの腹部を貫く。それは聖騎士の鎧を聖騎士の加護をも貫きグリムを貫いた。
「ぐふっ」
「プリシティアの
クリストファがそう言うやいなや周りの聖騎士が一斉にクリストファに攻撃を開始してクリストファはただの肉片になった。