危険な行為だが、対話を通じて冷静に対応してほしい。海上自衛隊の哨戒機が危険なレーダーを照射された問題がこじれている。日韓両国の友好関係を損なうような事態に発展させてはならない。
二十日、能登半島沖にいた韓国海軍の駆逐艦の付近を、海上自衛隊のP1哨戒機が通過した。
そこで、駆逐艦が火器管制レーダーを照射したといい、日韓が再び対立している。
日本側は、照射は数分間続く意図的なものであり、十分な証拠もあると指摘。「不測の事態を招きかねない、極めて危険な行為」(岩屋毅防衛相)と批判した。
韓国軍関係者は当初、火器管制レーダーを作動させたが、「哨戒機を狙う意図はなかった」(韓国紙)と、稼働を認める発言をした、と報じられていた。
当時、この駆逐艦が付近の海域で北朝鮮船の救助に当たっており、各種レーダー施設を動かしていたことは確認されている。
ところが、韓国国防省の副報道官は二十四日の定例記者会見で、光学カメラを作動させた際、火器管制レーダーのアンテナが動いたものの電波放射はなかったとして、日本側の主張を否定した。
火器管制レーダーは警戒監視レーダーと違い、攻撃のため対象に電波を当てる。「攻撃の前段階」であり、極めて危険な行為だ。
日本政府は「照射されれば、自衛行為として攻撃することは当然認められている」との見解を示してきた。二〇一三年には、中国軍艦艇による事例もあった。
日本と協力関係にある韓国の艦船が、このような危険な行動を取ったとしたら、日本の防衛当局の驚きと反発は十分理解できよう。
さらに韓国側の説明は揺れており、あいまいな点も少なくない。納得できる証拠を示してほしい。
今、日韓関係は難しい局面にある。元徴用工をめぐる訴訟で、日本企業に賠償を求める韓国最高裁判決が相次いでいるためだ。日本企業の資産差し押さえに向けた動きも表面化してきた。
このぎくしゃくした雰囲気を反映し、日本側では、韓国側がレーダー照射を認め、謝罪するよう求める声が高まっている。
この問題などについての、日韓外交当局者による二十四日の会談は、平行線のままだった。軍事機密も絡んでいるだろうが、対話を重ねて真相を明らかにし、再発防止を徹底してほしい。
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