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【社説】

101兆円予算案 納税者は裏切られた

 来年度の一般会計当初予算案は初めて百兆円を突破し、「消費税増税対策」に名を借りた膨張型となった。増税してバラまくという財政規律のなさである。これでは納税者の理解は到底得られまい。

 政府は景気の拡大期間が来年一月に戦後最長を超えると喧伝(けんでん)する。来年度の税収もバブル末期以来、二十九年ぶりに過去最大の約六二・五兆円と見込んでいる。

 景気は回復基調で、税収増を生かして財政再建に取り組む好機であった。だが、この政権は統一地方選や参院選を控え、公共事業の積み増しや防衛費増大など大盤振る舞いの予算を組んだ。

 この矛盾した横暴は、消費税増税を求められる国民の思いとは明らかに違うものだ。

 世論調査でも消費税増税対策の「ポイント還元」に対し、反対が賛成を上回る。安倍晋三首相の鶴の一声で決まったという5%ポイント還元は、中小小売店で軽減税率の対象をキャッシュレスで支払った場合、消費税は3%。今よりも大幅減税になる。

 2%還元となるコンビニもあり、この結果、3、5、6、8、10%と五種類もの消費税率が混在する可能性がある。

 さらに二〇二〇年の東京五輪までという期限が終われば、これまで例がない5%もの引き上げ幅となる。またぞろ期限の延長などの対策に迫られるのではないか。

 消費税増税による経済への影響は二兆円程度と見込むのに、その影響を乗り切るために二・三兆円もの巨額の対策を取る。

 野放図な歳出は並ぶ。公共事業費は前年度比15・6%伸び、リーマン・ショック前に近い七兆円規模の高水準だ。防衛関係費も五・三兆円超と五年連続で過去最大を更新する。米国から高額の防衛装備品を大量購入するためだ。

 予算規模こそ「大きな政府」だが、福祉に手厚いわけではない。消費税の軽減税率の財源確保のために社会保障費を削るという本末転倒のようなことが行われ、生活保護の引き下げも継続。格差や貧困が深刻化する中、帳尻合わせに福祉を後退させるのである。

 二五年には団塊世代がすべて七十五歳以上となり、医療や介護の費用が急増しかねない二〇二五年問題が控える。

 今回、消費税率を引き上げても国債残高は膨らむ。そんな財政運営では増税の先行きが見通せない。消費税収はすべて社会保障に充てるといった社会保障と税の一体改革の原点に立ち戻るべきだ。

 

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