米政治混乱への警戒映す世界の株安連鎖

社説
2018/12/26付
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東京株式市場で日経平均株価が2万円を割り込み、1年8カ月ぶりの安値となった。世界最大の米国市場で株価下落が止まらず、世界的に株安の連鎖が広がった。2019年に向けて世界経済の不透明さが増すなかで、米国の政治的な混乱が不安を助長し、市場の警戒感が高まっている。

日経平均は昨年末と比べて16%安い水準だ。年間でみると昨年まで6年連続で株価が上昇したが、今年は途切れるかもしれない。米欧や中国の株価も昨年末を下回っている。市場にともる変調サインを注視しておく必要がある。

ここ1カ月で株価の下落が目立つのは米国だ。政府予算が成立せず一部政府機関が閉鎖され、マティス国防長官が辞任する。トランプ米大統領の政権運営能力に、投資家は不安を強めている。

目にあまるのは、トランプ氏による米連邦準備理事会(FRB)批判だ。利上げに反対する発言を繰り返す。しかし、中央銀行の独立性が揺らぐことがあっては、金融政策への市場の信頼を損なう。慎むべき行動だ。

金融政策の正常化へ緩和マネーを縮小していく過程だけに、市場参加者も神経質になっている。ムニューシン米財務長官が米主要銀行や金融監督当局と会議して流動性に問題はないと確認したが、逆にそこまで深刻なのかと不安視されたのは、敏感な市場の雰囲気を浮き彫りにしている。

経済運営が予見しやすく、持続性のある景気拡大をもたらす期待があってこそ、企業は前向きに投資し、家計も消費できる。株価下落は米政治の混乱への警告でもあるだろう。株安が止まらなければ、逆資産効果のかたちで実体経済に跳ね返りかねない。

日本では19年10月に消費増税を控え、経済運営の難所を迎える。米国は19年後半にも景気刺激策の効果が一巡してくる。欧州では英国の欧州連合(EU)離脱問題がくすぶり、中国は米中貿易摩擦の影響が危惧されている。

各国・地域の政策当局はリスクを把握しておくべきだし、市場との適切な対話が大事だ。

日本企業はここまで収益力を高めてきた。先行きの不透明さを理由に必要以上に身を縮めたり、改革努力の手を引いたりすべきではない。自分の強みを磨き、新たな市場を切り開くために先手を打ち続ける企業であってこそ、株式市場の評価を得られるはずだ。

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