車両通行規制も実施
2018年12月31日(月)の深夜から翌2019年1月1日(火・祝)にかけて、JR東日本が渋谷駅のハチ公口を閉鎖します。
年越しの際に交通規制が行われる渋谷駅前交差点(画像:photolibrary)。
JR東日本東京支社によると、閉鎖は31日(月)の23時から1日(火・祝)の0時20分ごろまでで、そのあいだはシャッターを下ろすといいます。
渋谷区や渋谷区商店会連合会、渋谷駅前エリアマネジメント協議会で構成する渋谷カウントダウン実行委員会は、渋谷駅前交差点(ハチ公口のスクランブル交差点)エリアでカウントダウンイベント『YOU MAKE SHIBUYA COUNTDOWN 2018-2019』を開催。これにあわせ、混雑が予想されることから、警察の要請により出入口を閉鎖するとのこと。チラシの配布や、山手線や埼京線、湘南新宿ラインの車内放送などで事前に告知をしているそうです。
なお、地上と地下をつなぐ出入口も一部で閉鎖されます。地下通路を管理する東急電鉄によると、31日(月)22時半ごろから1日(火・祝)1時ごろにかけて、スクランブル交差点周辺の駅出入口である1、2、3、3a、4、5、6、7、7a、8が閉鎖される予定です。
また、31日(月)21時から1日(火・祝)2時までは、渋谷駅前のスクランブル交差点をはじめ、道玄坂、文化村通り、井の頭通り、公園通りなどの道路で車両の通行が規制されます。そのあいだの31日(月)22時半から1日1時までは、道路が歩行者に開放される予定です。
【地図】年越し時の交通規制エリア
カウントダウンイベントに伴う交通規制エリア(画像:渋谷区)。
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都市郊外の駅からもアウトレットへの高速バス
近年、アウトレットモールに発着する高速バスが増えています。
佐野プレミアム・アウトレット内のバス停に停まるジェイアールバス関東の高速バス(2018年12月、中島洋平撮影)。
たとえば東名高速の御殿場ICに近い「御殿場プレミアム・アウトレット」。従来からの東京駅、新宿発に加え、ここ6年でさらに品川、池袋のほか、たまプラーザ(横浜市青葉区)、日吉(同・港北区)、センター北(同・都筑区)、立川(東京都立川市)、矢川(同・国立市)といった東京郊外の駅からも、直行の高速バスが新設されました(立川・矢川便は土休日およびバーゲン期間中のみ運行)。
関西の「神戸三田プレミアム・アウトレット」も、従来の三宮、新神戸発着便に加え、2011(平成23)には大阪(梅田)発着便、あべの橋発着便がそれぞれ土休日のみ設定され、大阪(梅田)発着便はのちに毎日運行となりました。さらに2017年からは京都、新大阪発着便が、2018年からは姫路発着便が、それぞれ土休日およびバーゲン期間中に運行されています。
「三井アウトレットパーク」でも高速バスの新規路線が増えており、2012(平成24)年開業の「三井アウトレットパーク木更津」で特に顕著です。新宿、東京駅、浜松町、品川、池袋、横浜、川崎、たまプラーザ、センター北、町田、相模大野(相模原市南区)など、「御殿場プレミアム・アウトレット」に匹敵するほど広範囲から高速バスが発着しています。
高速バスは「集客装置」
全国の「プレミアム・アウトレット」を運営する三菱地所・サイモンによると、こうした郊外型モールの多くは駅から離れた高速道路沿いに立地していることもあり、マイカーでの来場が大半。しかし、クルマを利用しない人、運転を気にせずゆっくり来場したい人、そして国内外の旅行者などに向け、交通アクセスの利便性を高めるべく高速バスの誘致に継続して取り組んでいるそうです。
「路線の増加や認知の向上とともに、高速バスで来場されるお客様の数は増え続けています。近年は外国人のお客様が、団体旅行のバスツアーはなく個人で高速バスに乗って来られることも多いです」(三菱地所・サイモン)
三井不動産も、「三井アウトレットパーク木更津」では「対岸エリア(川崎側)のお客様や若年層、インバウンドの方が増えていることからも、バス路線拡大は『集客装置』として必須と考えています」とのこと。ほかの「三井アウトレットパーク」でも、特にクルマを持たない若年層と訪日外国人を獲得するうえで、バス路線の拡大を検討していくとしています。
三井アウトレットパーク木更津内のバス停(画像:三井不動産)。
なかには、土休日やバーゲン期間中のみ運行という路線もあります。三菱地所・サイモンによると、「もともとバーゲン期間中に特定地域発着のツアーバス(旅行商品)という形で運行し、そこから本設の路線へ、さらに毎日運行へと成長したケースもあります」とのこと。「御殿場プレミアム・アウトレット」の立川・矢川発着路線や、たまプラーザなどに発着する路線が、ツアーバスから本設路線に発展した例だそうです。
「アウトレットへの足」だけじゃない! 今後さらに発展か
アウトレットモールに隣接して、地域のバスターミナルが建設された例もあります。栃木県佐野市にある「佐野新都市バスターミナル」です。「佐野プレミアム・アウトレット」から徒歩3分の位置にあり、東京駅や新宿のほか、埼玉県の新越谷、大宮、福島県の郡山、須賀川、そして前橋、宇都宮などへ向かう高速バスも発着しています。これら都市間を結ぶ路線が、アウトレットに来訪する人の輸送も担っているのです。
特に東京方面へは日中およそ30分おきに東京駅行き、新宿行きのいずれかが発車。バスターミナルはマイカーの駐車場や自転車置き場も備わっており、佐野市交通生活課によると「午前中は佐野から東京へ向かう人が、東京からはアウトレットへ向かう方が多いです」とのこと。この2路線においては、高速バスでは珍しい通勤定期券も設定されているほか、土休日に東京方面から来る一部の便は、「佐野プレミアム・アウトレット」内のバス停にも停車します。
バスターミナルやアウトレットが置かれた「佐野新都市」は、住宅、商業、産業用地からなる再開発エリアのこと。佐野市交通政策課によると、計画のなかでアウトレットモールと、その集客も見込んでバスターミナルが同時期に開設されたそうです。当初のバスターミナルは小規模なものでしたが、佐野市とジェイアールバス関東が共同で拡張に取り組み、アウトレットの開業から4年後の2007(平成19)年に佐野新都市バスターミナルとしてリニューアル。その後も利用者が増え、駐車場の拡張などが行われました。
御殿場プレミアム・アウトレット(画像:三菱地所・サイモン)。
このように、アウトレットモールをひとつの拠点として、地域全体の発展につなげる動きはほかにもあります。三菱地所・サイモンによると、「御殿場プレミアム・アウトレット」では2020年春をめどに、小田急電鉄によるホテルや日帰り温泉施設を加えた第4期開業計画を進めているとのこと。「高速バスなどによる交通アクセスの拡充を図ることで、『御殿場プレミアム・アウトレット』をハブ施設とする一大広域リゾートエリアを目指します」としています。
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「キティ」イラストも再現
タカラトミーとサンリオは2018年12月26日(水)、鉄道玩具「プラレール」の車両「SC-07 ハローキティ新幹線」を2019年2月下旬に発売すると発表しました。
プラレール「SC-07 ハローキティ新幹線」のイメージ(画像:タカラトミー)。
「ハローキティ新幹線」は、JR西日本の山陽新幹線500系に、サンリオのキャラクター「ハローキティ」がデザインされたコラボレーション車両です。2018年6月30日から、新大阪~博多間で運行されています。
今回発売のプラレール車両は3両編成で、価格は2800円(税抜)です。実車と同様、明るいピング色やリボンのデザイン、ハローキティのイラストなどが再現されています。
商品は全国の玩具店、インターネットショップ、一部のサンリオショップなどに加え、「ハローキティ新幹線」の車内や停車駅の売店でも販売される予定です。
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7月から毎日運航に
ANA(全日空)は2018年12月26日(水)、成田~ホノルル(米ハワイ)線に導入する超大型旅客機エアバスA380型機の運航ダイヤと運賃を発表しました。
エアバスの独ハンブルク工場で初披露されたANA「FLYING HONU」デザインのA380型機(2018年12月13日、恵 知仁撮影)。
2019年5月24日(金)から、以下の便がエアバスA380型機で運航されます。
・NH184便:成田20時20分発→ホノルル8時40分着(火・金・日曜発)
・NH183便:ホノルル11時30分発→成田翌15時00分着(火・金・日曜発)
2機目が投入される7月1日(月)からは、以下の便がエアバスA380型機で運航されます。
・NH184便:成田20時20分発→ホノルル8時40分着(毎日発)
・NH182便:成田21時35分発→ホノルル10時10分着(火・金・日曜発)
・NH183便:ホノルル11時30分発→成田翌15時00分着(毎日発)
・NH181便:ホノルル12時45分発→成田翌16時00分着(火・金・日曜発)
なお、A380型機でない曜日は、ボーイング787-9型機が使われます。
ANAが成田~ホノルル線に導入するA380型機は、ハワイ語で「ホヌ」と呼ばれ親しまれている「ウミガメ」にちなんだ「FLYING HONU(フライング ホヌ:空飛ぶウミガメ)」という愛称を持つ特別塗装機です。ハワイの「空」「海」「夕陽」をそれぞれイメージした3機が登場します。
「カウチ」料金はキャンペーンで最大半額に
座席は全520席です。ファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスのほか、レッグレストを上げてベッドのように利用できるカウチシート「ANAカウチ」を日本の航空会社で初めて採用します。
ドア付き個室型のファーストクラスのイメージ(画像:ANA)。
カウチシート(3人席)のイメージ(画像:ANA)。
カウチシート(4人席)のイメージ(画像:ANA)。
ANAのホノルル路線で初めて設定されるファーストクラスは、往復運賃が35万円から(現地空港税、燃油特別付加運賃など別途必要)。特典航空券の日本発必要マイル数は12万~12万9000マイルです。
「ANAカウチ」は、3席または4席を1組として、エコノミークラス運賃に、利用人数に応じた料金を追加することで利用できます。
たとえば3人席を大人2人と子ども1人で利用する場合の追加料金は9000円、大人2人で利用する場合は2人で1万9000円(ハイシーズンは4万9000円)です。
4人席を大人2人と子ども2人で利用する場合は4人で1万2000円、大人2人で利用する場合は2人で5万2000円(ハイシーズンは17万2000円)の追加料金がそれぞれ発生します。
なお、5月24日(金)から7月11日(木)まで(ホノルル発は7月12日まで)の搭乗分は、カウチシートの追加料金が最大半額となる就航記念キャンペーン価格が設定されます。また、カウチシート利用時は、専用の寝具(シーツマット、枕、毛布)も利用可能です。
航空券の予約・販売は、1月10日(木)15時に開始されます。なお、ボーイング787型機での運航としてすでに予約・販売されているビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスは、1月4日(金)以降、順次、エアバスA380型機に変更される予定です。
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境港~東海~ウラジオストクの3港を結ぶ
日本と外国を結ぶ国際航路は数少なく、現在は韓国、中国、ロシアとのあいだで数路線が就航しています。このうち、日本から同じ船で2か国に行けるものが、ひとつだけ存在。鳥取県の境港と韓国の都市・東海(トンヘ)、そしてロシアのウラジオストクを結ぶ航路です。
韓国の東海に寄港中の「イースタンドリーム号」。乗客は韓国人が多数を占めるため、ほとんどがここで下船する(高山和佳撮影)。
同航路は韓国の船会社であるDBSクルーズフェリーが2009(平成21)年に運航を開始。就航している「イースタンドリーム号」は、もともと日本のマリックスラインが鹿児島~奄美~那覇航路で「クイーンコーラル」として運航していたフェリーです。引退後にDBSクルーズフェリーが購入し、改修のうえ就航させました。
運航は基本的に週1往復。往路は境港を土曜の19時に出港し、日曜の9時30分に東海へ到着。同日14時に東海を出港し、月曜の14時、ウラジオストクへ到着します。ただしこれは2018年11月25日から2019年2月末までの冬季スケジュールです。
境港~ウラジオストクの片道運賃は、最も安いエコノミークラスで2万6000円(燃油サーチャージ別)。成田空港や関西空港から出ている飛行機の直行便より安く行ける場合もありますが、ウラジオストクまでは43時間、途中の東海で船外に出られるとはいえ40時間近くも船のなかです。それでもあえてこのフェリーに乗る人がいる理由は、船旅自体のおもしろさにあるかもしれません。
乗ったときから「異国感」 冬の甲板では絶景も!
このフェリーは韓国の会社ということもあり、乗客のほとんどは韓国人で、日本人やロシア人の観光客はそのうちの2割ほど。船内放送も韓国語もしくは英語となっており、乗船したときから「異国感」が漂います。
船内レストランも韓国料理がメインで、ビュッフェスタイルでチゲなどが食べられます。早朝から深夜まで営業しているバーも船内にあり、こちらではハンバーガーなど韓国料理以外の食事メニューも揃っています。もちろんアルコール類も、ビールやカクテルなど種類が豊富です。
さらに、2階船尾にはナイトクラブやカラオケも。ナイトクラブでは夜ごとショーが開かれます。そのほか、大浴場、無料のサウナ、免税店、コンビニなど、長い船旅を楽しく過ごすための基本的な施設はひととおり揃っているといえるでしょう。
船内だけでなく、船外の景色も見どころです。冬季に乗船したら、ウラジオストクに到着する前に甲板に出て、周りを見渡してみてください。見渡す限り海が凍りつき、一面の銀世界となっていることがあります。そのなかを船は分け入るようにして進み、船尾から後ろには、氷が割れて一筋の「道」が海上に作られるのです。
ウラジオストク港付近。厳冬期には海が凍る(高山和佳撮影)。
厳冬期のウラジオストク周辺の海域では海が凍りつき、人がその上を歩けるほどになります。同地の観光シーズンは温暖な8~10月とされていますが、氷の絶景を見るために、あえて冬季のフェリーに乗船するという選択もありでしょう。
ちなみに、ウラジオストクはロシア極東の軍港であるとともに、古くから商業港としても栄え、アジア太平洋各国との貿易拠点になっていました。2017年8月からは簡易ビザ制度が始まり、これまで煩雑だったビザ手続きも電子化により簡単になっています(ウラジオストク含む沿海州の滞在のみ有効)。
※記事制作協力:風来堂
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陸自向け新多用途ヘリ、空へ
スバルは2018年12月25日(火)、同社航空宇宙カンパニー宇都宮製作所(栃木県宇都宮市)において開発中である、陸上自衛隊向け新多用途ヘリコプター(UH-X)試作機の飛行試験を開始したと発表しました。同日14時50分、スバルのテストパイロットによる操縦で宇都宮飛行場(陸上自衛隊北宇都宮駐屯地)を離陸し、周辺空域おいて約55分の社内飛行試験を行ったのち、同飛行場へ着陸したとのことです。
飛行試験中の、陸上自衛隊向け新多用途ヘリコプター試作機(画像:スバル)。
「陸上自衛隊向け新多用途ヘリコプター」は、ベル・ヘリコプター・テキストロン社(アメリカ)と共同開発した、民間向け最新型ヘリコプター「SUBARU BELL 412EPX」をベースとし、防衛装備庁とのあいだで締結した試作請負契約により、陸上自衛隊向けに開発中の機体です。今後、2018年度末の防衛装備庁への納入に向け、引き続き各種の社内飛行試験を実施するとのことです。
スバルは、「宇都宮製作所内に陸上自衛隊新多用途ヘリコプターおよび『SUBARU BELL 412EPX』用の新たな製造ラインを構築して量産体制を整え、防衛事業の推進と、海外を含む民間ヘリコプター市場での販売拡大に邁進します」としています。
【画像】ベースとなった最新型ヘリ「SUBARU BELL 412EPX」
陸上自衛隊向け新多用途ヘリコプターのベースとなった「SUBARU BELL 412EPX」(画像:スバル)。
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東急田園都市線の渋谷駅「ホーム増設を軸」に検討
東急電鉄が「田園都市線渋谷駅のホーム増設を検討している」と報じられています。現在はホームがひとつと線路がふたつしかありませんが、「混雑が著しく、遅延が慢性的に発生している」ことから、東急は「ホーム増設を軸に検討する」(2018年10月10日付け日刊工業新聞)といいます。
東急田園都市線を走る新型車両の2020系。右奥は大井町線の新型6020系(2018年2月、草町義和撮影)。
2017年度の首都圏混雑率ランキングで、ワースト9位の田園都市線(185%)。最新の人口推計で、首都圏の人口はまだしばらく増加傾向にあると発表されたこともあり、東急は混雑と遅延の対策をもう一歩進める意向を示しています。
混雑率ランキングのワースト1位になった東京メトロ東西線(199%)では、すでに同様の取り組みを進めています。2020年度の完成を目標に、南砂町駅(東京都江東区)で遅延解消を目的としたホーム増設工事を行っているのです。
東急と東京メトロはなぜ、混雑や遅延の解消策としてホームの増設を検討したり、実際に工事を行ったりしているのでしょうか。
田園都市線と東西線は共に、朝ラッシュのピーク1時間に27本の列車を運行しています。列車の本数をもっと増やせば混雑は解消するだろうと思うかもしれませんが、それにはいくつものハードルがあります。
まずは現在の信号システムにおける技術上の限界です。鉄道の信号は線路を細かく区切り、ひとつの区間に列車を1本しか入れないようにします。また、先を走る列車との距離に応じて制限速度が決まっており、近づくと制限速度が遅くなって最後はゼロ、つまり停止信号になって衝突を防ぎます。こうした現在のシステムでは、1時間あたり27~29本が実用上の限界なのです。
列車の増発を阻む「混雑と遅れのループ」
1時間に27本の列車を運行すると、その間隔は2分15秒弱。途中で数分の遅れが発生すれば、列車が1本消えてしまうギリギリのダイヤです。少しでも遅れが発生すると実際に運転できる列車が減ってしまい、これでは増発する意味がありません。
ホームがひとつしかない東急田園都市線の渋谷駅(2018年2月、恵 知仁撮影)。
2分15秒は同じ速度で動き続けていれば十分な間隔ですが、列車は駅の到着時に減速して数十秒の停車をするため、実際には前後の列車とかなり接近します。ラッシュ時間帯や駅到着前に「信号待ち」と称して一時停車するのは、先行列車との距離が近くなりすぎたために起こる現象です。
しかし、利用者の多い駅では乗り降りが30秒程度では終わりません。できる限り長く停車させたいところですが、停車時間を長くとると後ろの列車がどんどん近づいてきて、渋滞が発生してしまいます。
停車時間を短く設定し、無理に早くドアを閉めようとしても、乗り切れずに発車が遅れます。次の駅では列車の到着が遅れた分だけ、ホーム上に乗客が増えていきます。列車は混み合い、停車時間はさらに長くなり、遅れが増してしまうのです。
このようなボトルネックとなる駅が存在すると、いくら運行本数を増やしたところで、ダイヤ通りに走れず、輸送力を増やすことができなくなるのです。つまり、混雑緩和は遅延対策と裏表の関係にあるわけです。
ホーム増設は、こうしたボトルネックの解決策として行われます。
増設ホームを活用する「交互発着」とは
駅のホームがひとつしかない場合、先の列車が発車しないと後続列車はホームに入ることができません。そこでホームをふたつにすれば、先行列車が停車中でも後続車両はホームに入れるようになります。
地下駅の改良工事では建物の基礎や別の路線のトンネルなどを避けながら工事を行わなければならない。写真は千代田線のトンネルと交差する東京メトロ副都心線の工事現場(2006年12月、草町義和撮影)。
後続列車が先行列車に追いついてしまうと、先を急ぐ人が乗り換えようとして余計に混乱してしまうので、実際は後続列車が到着する前に先行列車は駅を発車しますが、後続列車に影響を与えず停車時間を確保することが可能になるわけです。
このように、ホームの両側に列車が交互に到着、発車することを「交互発着」と言います。
交互発着を最大限活用している路線がJR東日本の中央線(快速)です。朝ラッシュ時間帯の中央線は田園都市線や東西線より3本も多い1時間30本、2分間隔の運行を実現していますが、これを支えているのが国立、国分寺、武蔵小金井、東小金井、三鷹、中野、新宿の7駅で行われる交互発着です。
JRは中央線以外でも、乗り降りが多くホームに余裕があるターミナル駅で交互発着を行い、ラッシュ時間帯の遅延を防いでいます。検討中とされる田園都市線は渋谷駅、工事中の東西線は南砂町駅と、それぞれ1駅だけではありますが、それでもかなりの遅延抑制効果が見込まれています。
田園都市線の渋谷駅と東西線の南砂町駅の場合、最大のネックはどちらも地下トンネル内にホームと線路があること。営業運転を行いながら、その脇でトンネルの幅を広げる工事を行って、ホームを増やすためのスペースを確保しなければなりません。
南砂町駅の改良工事は周辺に用地が確保できたため何とか着工できましたが、それでも長期にわたる工事となっています。周辺にビルの基礎や、ほかの路線の地下トンネルが密集している渋谷駅となれば、その困難さは南砂町駅の比ではありません。
地下トンネルの拡幅は物理的に可能なのか、費用や工期、地上への影響を考慮して現実的なのか、あるいはほかの方法で解決することはできないのかなど、東急もさまざまなケースを比較しながら、最終的な検討を行っているものと思われます。
【図】遅延解消! 増設ホームを使った「交互発着」の流れ
増設したホームを使う「交互発着」の流れ。先行する列車が駅から完全に離れる前に後続列車が駅に入れるようになるため、駅での停車時間を確保しつつ遅れを防ぐことができる(枝久保達也作成)。
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「いずも」空母化、必要なのは「改修」や「戦闘機」だけじゃない
2018年12月18日(火)、政府は2019年度以降における「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」を発表しました。計画には、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずも型(「いずも」「かが」)に対し、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機の運用能力を付加する改修を行うことが明記され、また同時にSTOVL戦闘機F-35Bを18機導入する方針が定められました。
海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。
また、これと前後して全国紙などが報じたところによると、F-35Bは将来的に最大42機を導入する可能性があり、また1隻のいずも型に対して8機のF-35Bを搭載見込みであるとされます。現在、海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦専属の航空部隊を持っておらず、陸上飛行場に配備されたSH-60J/K「シーホーク」哨戒ヘリコプターを、必要に応じて護衛艦へ派遣する形で運用しており、F-35Bも同様、航空自衛隊に2個飛行隊を配備し、それぞれ交代しながら艦載されることになるのかもしれません。
いずも型に対して、8機のF-35Bを艦載するための改修を施すこと自体は、それほど難しくはないでしょう。いずも型は、STOVL戦闘機を運用する諸外国の軽空母に比べても大型の部類に入るため、物理的には十分可能だと推測されます。しかしながらF-35Bを運用するには、ハードウェアよりもさらに難しいひとつの問題を解決しなくてはなりません。
その難しい問題とは「人」です。
戦闘機を運用するのに必要な「人」は?
戦闘機を運用するには、非常に多くの専門職を必要とします。
たとえば飛行場におけるそれには、機種によって若干の差異はありますが、日常的な点検や運用を行う「列線航空機整備員」、定期整備や急な故障の整備を担当する「検査隊航空機整備員」、武装の搭載を担当する「武器弾薬員」、無線装置などの整備を担当する「機上整備員」、油圧系統の整備を担当する「油圧整備員」、レーダーなどの整備を担当する「火器管制装置整備員」、パイロット用の装具などの整備を担当する「救命装備員」、エンジンの整備を担当する「エンジン整備員」、燃料の管理、給油を担当する「燃料員」、損傷の修復などを担当する「工作員」、戦闘機支援機材の整備を担当する「動力機材整備員」、飛行の計画などを立案する「飛行管理員」、そしてもちろん機の操縦を担当する「パイロット」と、多岐にわたる技能を持った人たちが関与しています。
つまり航空母艦で戦闘機を運用するには、機体だけではなく「飛行場の機能をほぼ丸ごと移す必要がある」のです。もちろん航空母艦という特殊な環境において、発着艦や甲板の管制などを行う人員も増やさなくてはなりません。
米海軍の原子力空母「ジョン・C・ステニス」の飛行甲板(画像:アメリカ海軍)。
現在いずも型の定員(運用に割り当てられた人員数)は約470名であり、うちヘリコプターを運用するための航空要員は200名を占めます。戦闘機を8機さらに追加するには、さらに200名程度の航空要員が必要となるでしょう。
「人」がいないと「絵に描いた餅」に
ところがいずも型は、実際はもっと少ない人数で、定員割れのまま運用しているのが現状です。このまま戦闘機を艦載した場合、万が一の有事の際においてまっとうな運用ができず、実質的な戦力は計画から大きく損なわれたものになってしまうことは避けられない、と筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えます。
アメリカ海軍の原子力空母では、これまで1機あたり1日2回出撃した実績がありますが、これは数日間しか実行できない数字です。なぜならば航空要員の負担が大きすぎるためであり、数週間から1か月といった長いスパンでは、1機あたり1日1回出撃が限界となっています。もともと小型であり、1日あたりの出撃数を増やすことが難しいいずも型において、人の数の問題から出撃数がさらに減じてしまっては、当初の計画は「絵に描いた餅」となりかねません。
米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」において整備中のF-35B。手前の整備員はアリス(ALIS)の端末を参照している(画像:アメリカ海兵隊)。
F-35は「アリス(ALIS)」と呼ばれる人工知能が組み込まれており、機の状態を自己診断し必要な整備を指示、また部品を自動で発注する能力を持ち、省人化に配慮がなされているものの、それでも実際に何かを行うのは人間である以上、「マンパワー」はどうしても必要です。
もちろん、陸上飛行場においても「人」が重要である本質は変わりませんが、これまでにない空母では既存の基盤を流用するには限度があり、負担が増すことは避けられません。「人」の確保はいずも型における大きな課題となるはずです。
【写真】強襲揚陸艦「エセックス」甲板上のF-35B戦闘機
米海軍のワスプ級強襲揚陸艦「エセックス」甲板にて、F-35B「ライトニングII」(画像:アメリカ海軍)。