国会改革は掛け声ばかりで成果が乏しい課題の代表格だろう。衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」は、2007年以降に深刻な国政の停滞と混迷の一因となった。本来ならば旧民主党幹部も政権運営を経験した今こそ、衆参両院の役割分担や議会運営のあり方を考える好機だったはずである。
現在の安倍政権では、確かに日本の二院制が内在する問題点は目立たない。与党が13年の参院選で勝利して衆参の過半数を回復し、政権運営は安定している。
しかし衆参のねじれ状態が頻発した07~12年に、約1年の短命政権が6代も続いた出来事を忘れてはならない。予算や重要法案の審議が難航し、成立が大きく遅れた。政府が求める国会同意人事も拒否され、日銀総裁すら戦後初めて空席になった。
参院の壁に重要課題をことごとく阻まれた当時の福田康夫首相が党首討論で「かわいそうなくらい苦労しているんですよ」と悲痛な声で訴えたのは、つい10年前の出来事だ。
予算の成立と条約の承認は憲法に衆院優越の規定がある。だが法案を参院が可決しない場合は、衆院が3分の2以上の多数で再可決するしか道はない。首相の解散権も参院には及ばない。二院制を採用する諸外国の上院と比較しても、参院の権限は大きい。
政権選択は衆院選で行い、参院は「再考の府」「良識の府」としての異なる視点での審議が期待される。衆院は予算案や法案の中身、参院は決算や行政監視に重点を置くような制度設計と運営方法を検討すべきではないか。
国会では首相や閣僚を長時間拘束し、衆参で似た質問を繰り返す場面が目立っている。与野党は衆参の役割分担と並行し、審議を活性化させる新たなルール作りで接点を見いだすべきだ。
自民党は先にまとめた憲法改正の優先4項目で、参院選での県をまたぐ合区の解消を掲げた。「参院議員は都道府県ごとに選出する」と明示する案だが、強い権限を残したまま地方代表と位置づけるのはおかしい。
与野党が国会改革など難しい課題から逃げ続けていては、近い将来に再び国政の停滞を招く事態を生じさせかねない。長期政権が続くうちに真正面から取り組むべき重要課題のはずだ。
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