国際協調派がいなくなった

社説
2018/12/24付
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マティス米国防長官が来年2月に辞任することになった。「最後の国際協調派」の退場は、トランプ政権の米国第一主義を一段と加速させかねない。いかにして暴走を押しとどめ、国際秩序を維持するか。安倍晋三首相が果たすべき役割は極めて大きい。

シリアからの米軍撤退を求めるトランプ大統領を翻意させられなかった。辞任のきっかけはこの対立劇にあるが、公開した辞表を読むと、世界の安定を顧みない政権の現状につくづく嫌気がさしていたことがうかがえる。

「同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守り、国益を追求することはできない」。まるで大統領に説教するかのような内容だった。

米軍の海外駐留は財政を圧迫するだけで、得るものがない。トランプ氏はそう信じているようだ。シリアだけでなく、アフガニスタンからも手を引く意向とされる。「イスラム国」(IS)のような過激派組織が息を吹き返さないかが心配になる。

米国がひとりで世界の警察官を務めるのがもはや困難なのは否定できない。とはいえ、将来の絵図面もなく、すべてを放り出せば世界は無秩序状態に陥る。

米国やオーストラリアなどとの連携を強化することで、中国の海洋進出を抑制する「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する日本にも影響は甚大だ。

「マティス氏が努力したように、同盟国と連携していく方針は受け継がれると期待している」。岩屋毅防衛相は後任についてこう述べたが、もっともだ。

他国の人事に口を出すのは外交儀礼に反するとはいえ、日米同盟は米国にも有益であると訴えることをはばかる必要はない。水面下の働きかけを含め、トランプ=安倍の蜜月関係をいまこそ生かさない手はない。

日本は来年の20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国でもある。国際秩序の再構築に向け、積極的に動く責任がある。

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