政府は21日、2019年度予算案を閣議決定した。12年末に発足した第2次安倍晋三政権は26日に7年目を迎える。長期政権を続けるからには、財政と社会保障の持続性の確保を含め平成の次の時代に向けた課題にしっかり取り組んでほしい。
問題多い消費増税対策
安倍政権下で7回目となる予算編成では来年10月に予定する消費税率上げへの「対策」が最大の焦点になった。消費増税前の駆け込み需要とその反動減をならすため総額2兆円を超す歳出と税制による対策が盛り込まれた。
この結果、19年度の一般会計総額は初めて100兆円を突破した。消費増税もあって税収を含む歳入は増えるものの、直接の消費増税対策以外の防衛費や公共事業費などの歳出も軒並み拡大した。
国の借金になる新規の国債発行額は約32兆円と9年連続で減らすが、今年度の第2次補正予算では建設国債を増発する。
世界経済の先行きに不透明感が出るなか、来年後半以降の需要減に備える一定の対策は理解できるが、当初予算でこれだけ大盤振る舞いが必要なのだろうか。
対策の中身も問題が多い。キャッシュレス決済を促すため、一定の条件で買い物した人に消費増税後9カ月間は5%分のポイントを還元する仕組みを導入する。外国人観光客からも要望の多いキャッシュレス決済の推進は望ましいが、税率引き上げ分を上回る実質減税はいきすぎではないか。
さらに低所得者、子育て世代向けのプレミアム付き商品券やマイナンバー取得者向けの自治体ポイントなど個人消費喚起のメニューが乱立し、利用者や小売業者からみても複雑でわかりにくい。
政府は先に、3年間で事業規模7兆円の国土強靱(きょうじん)化対策を決めた。その一環として今年度第2次補正と来年度予算合計で国費2.4兆円を投じる。災害に強いインフラ整備は必要だが、真に必要な事業を厳選すべきだ。予算編成にあわせて数字の積み上げが優先されてはいないか。
消費税対策の多くは時限措置で、20年度までに打ち切る予定だ。そうしなければ増税による増収分を社会保障費や財政健全化に回せなくなる。問題は、いったん導入した歳出措置や税制優遇を予定通りやめられるかどうかだ。一時期に対策をやめると消費などに悪影響を及ぼす恐れもあり、今後の運用が極めて難しくなる。
そもそも消費税率を何のために引き上げるのか。今回の政府予算案からはその基本的な考え方が伝わってこない。
安倍首相は昨年の衆院選前に消費税の増税分を幼児教育の無償化などにも充てる新方針を打ち出し、税収の使途を拡大した。
今回の対策で当面の消費税の増収分は新たな歳出に回ることになり、国民からみれば何のための増税かがわかりにくくなった。
それでも、消費税率をあげて安定的な税収を確保し時限的な増税対策をやめれば、財政健全化には役立つ。安倍政権は今後の国会審議などで消費増税のねらいをしっかりと国民に説明すべきだ。
次世代にも責任を持て
当初は20年度としていた国と地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を、安倍政権は25年度まで先延ばしした。消費税率を10%に上げても、歳出改革や成長率引き上げができなければ、この目標の達成は難しい。
安倍首相の自民党総裁の任期は21年9月までだ。これだけ長く政権を担当するならば、現世代だけではなく将来世代にも責任のある政策運営を進めてほしい。
消費税率の10%への引き上げは、第2次安倍政権発足前の12年の与野党3党合意で決まったものだ。安倍政権はその先の社会保障・財政の改革の道筋をつける責任がある。中長期の計画を作るには、野党も巻き込んで超党派で合意を得るのが望ましい。
社会保障費を抑制し財政健全化を進めるには、歳出改革と増税など歳入改革、そして経済成長の3つが不可欠だ。
安倍政権発足以降の大規模金融緩和で日銀が国債を大量に買い、長期金利はゼロ%程度の超低水準に抑えつけられている。だが、日銀はいつまでも国債を買い続けられるわけではない。政権を担当している足元の経済が良ければよい、ということでは困る。
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