崖っぷちなのは、本人が誰よりも分かっている。東京都江戸川区の田子ノ浦部屋で会見した稀勢の里(32)は吹っ切れたような表情で、進退が懸かる初場所に出場する意向を明らかにした。
「初場所で良い成績を残すことが大事」。九州場所は、横綱として87年ぶりに初日から4連敗して途中休場に追い込まれた。場所後、横綱審議委員会から史上初めて奮起を促す「激励」の決議を受けた重みを、短い言葉で受け止めた。
九州で捻挫した右膝の治療を優先し、冬巡業は全休。最終日22日の地元茨城・土浦市への凱旋(がいせん)も見送った。「本当に楽しみにしていた方に申し訳なく、そういう気持ちで」というケジメの会見だった。
ファンや故郷への思いも押し殺し、背水の陣となる初場所での復活だけを見据えてきたが、見切り発車となるのは避けられない。右膝の順調な回復をアピールした一方、非公開を貫いた部屋の稽古で相撲を取れていないことを認めた。
年内には相撲を取る稽古を再開する意欲を示したが「相撲を取ってみないと分からないですけど…。体は上手く仕上がってきた」と現状を分析する言葉に、不安と期待が交錯した。
試練の場所は、10場所ぶりに番付の頂点となる東の正横綱で迎える。「良いスタートと思って2019年、良い年にしていきたい」。まだまだ終われない。 (志村拓)