東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 埼玉 > 記事一覧 > 12月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【埼玉】

さいたま市、九条俳句掲載へ 教育長が直接謝罪へ 市長との面談には応じず

 最高裁決定を受け、憲法九条について詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を一転して決断し、発表したさいたま市。二十五日に会見した細田真由美教育長は作者の女性(78)に直接謝罪する意向を示す一方、訴訟を支援してきた「『九条俳句』市民応援団」などが求めてきた清水勇人市長との面談には今後も応じない意向を示した。(藤原哲也、井上峻輔)

 細田教育長は会見冒頭、上告棄却を「残念に思う」とし、市の主張が一部認められたことは意味があったとした一方、女性への謝罪と俳句の掲載方針を説明。謝罪方法については「作者の考えも伺いながら、どのように行うのか検討して決めたい」と慎重に述べた。

 その上で、この訴訟を契機に市民のための生涯学習振興や公民館活動を充実させる考えもあり、掲載を決めたと説明。今後は多様な市民の意見を取り入れるため、公民館だよりの編集に市民が参加する仕組みを設ける意向も示した。

 清水市長と作者の女性の面談については、公民館業務は市教育委員会の所管で、自身が清水市長から教育行政の全権を委任されていると強調した。

 女性は弁護士を通じ「最高裁の決定を受けてすぐにこのような発表があったのは、市も決定を真摯(しんし)に受け止めたと考えている。長い人生の終盤で解決までに時間もかかり大変だったが、今後の社会に少しでも役立てれば幸いです」とのコメントを出した。

 神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「最終的に掲載を決めたことは評価したいが、最高裁まで行かないと動かなかったのは残念だ」と話す。行政が市民活動に介入する事例が各地で相次ぐ中で「九条俳句訴訟は大きな問題提起になった」と指摘。「市の違法性を認めた今回の判決から、行政が政治的な忖度(そんたく)をすることが問題だという考えが広まってほしい」と述べた。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】