【社会】さいたま市、9条俳句掲載へ 作者「諦めず闘って良かった」憲法九条を詠んだ俳句の公民館だよりへの掲載を巡り、作者の女性(78)がさいたま市に句の掲載と損害賠償を求めた訴訟で、市の賠償を命じた判決が確定したことを受け、同市は二十五日、一転して俳句を掲載する意向を示した。判決では掲載義務はないとしたが、記者会見した細田真由美教育長は「司法判断を踏まえ、作者の気持ちに配慮した」と説明した。 (藤原哲也) 女性は「一審判決が出た直後に決断してくれればなお良かったが、小さなことでも訴えて諦めずに闘うことで結果が出たことは非常に良かった」とのコメントを出した。 細田教育長は会見で、作者の人格的利益を侵害したとする判決確定部分について「真摯(しんし)に受け止め、謝罪する」と語った。九条俳句の掲載時期は「できるだけ早く」としている。 判決によると、女性はさいたま市大宮区の公民館で活動する句会のメンバー。公民館だよりは月報で、会が優秀と認めた俳句一句を掲載していたが、二〇一四年六月に女性が詠んで選出された句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の内容を公民館側が「世論を二分する内容で、掲載は公民館の公平性、中立性を害する」として拒否した。 女性は一五年六月にさいたま地裁に提訴。今年五月の二審東京高裁判決は「思想、信条を理由に不公正な取り扱いをし、女性の利益を侵害した」として市に慰謝料五千円の賠償を命じた。最高裁は今月、女性と市双方の上告を退けた。 一連の問題は、本紙の読者投稿「平和の俳句」(二〇一五~一七年)が始まるきっかけになった。 ◆作者の意に市が配慮 <武蔵野美術大の志田陽子教授(憲法)の話> 公民館に求められる政治的中立性とは、市民がさまざまな問題意識を持ち寄れる純粋な受け皿であることだ。裁判所が人格的利益の侵害を認めた一方、掲載請求権には踏み込まなかったことは煮え切らない判断だった。さいたま市が「違法性を認められた以上、作者の意に沿うべきだ」としたことは意義深く、評価したい。 (東京新聞)
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