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【記者コラム】

基礎こそものの上手なれ アマ球界の名伯楽 中村順司さん

2018年12月24日 18時0分

2018年12月限りで名商大の総監督を退任する中村順司さん

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 中学時代、苦手だった数学の授業でよく言われたものだ。「基礎をしっかり身につければ、応用するのは簡単です」。数学の知識は身につかなかったが、物事の真理は共通だ。基礎こそ大事。愛知大学野球リーグ・名商大の中村順司総監督(72)と話をしているうち、30年以上も昔に言われたことを思い出した。

 中村さんはアマ球界で数多くの名選手を育てたことで知られる。名前を挙げれば、吉村禎章、桑田真澄、清原和博、立浪和義、宮本慎也、松井稼頭央、福留孝介―。野球の基礎であるキャッチボールの重要性を繰り返し説かれた彼らは後にプロ野球史に残る選手に成長した。

 そんな名伯楽が12月限りで総監督を退任する。今後は時間を見つけて少年少女たちに野球を教えたいという。伝えようとするのは決して、難しいことではないという。体のメカニズムに基づいた正しい基本動作。ここには1つの願いがある。

 「子どもたちがケガなどで野球というスポーツから離れてしまうことをなくしたい。だから、ケガをしない投げ方、打ち方を教えたいんだ」

 野球にはアクシデントがつきもの。しかし、事前に注意していれば、防げるものがある。だからこそ、急がば回れ。野球の底辺を拡大するため、多くの子どもたちに長くプレーしてもらいたい。大人になった時に自分の子どもに野球の楽しさを伝えてほしい。球界の将来を憂う思いがこもる。

 そして、中村さんの願いはもう1つある。「野球は生涯スポーツだと思うんだよね。そこで生まれた縁や和を広げていってほしい」。相手のことを思いやって投げることから始まるキャッチボールでできる輪を増やすこと。試合での勝ち負けだけではない本質を突いた言葉にうなずく自分がいた。  (川越亮太)

 

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