ソヴィエト時代

ソ連期に入ると、歴史的事件や共産党・政治の政策変更が作家や文学活動に直接影響を与えるようになる。十月革命と内戦の時代(1917-21物資が欠乏し、紙もなく、出版できない戦時共産主義ともいわれる時代に、まず詩人たちが熱狂的な活動を開始した。ブロークの叙事詩「十二」(1918)をはじめとし、マヤコフスキーエセーニンらに加えてプロレトリクト、次いでそれから分かれた‘鍛冶場派’が登場する。

新経済政策(ネップ)の時代(1921-28)

政治の側からの芸術への規制はゆるやかになり、さまざまな文学集団がしのぎをけずりあいつつ共存した。左翼にはプロレトリクト系の組織、すなわち‘鍛冶場派’、‘十月’グループなどや未来派系の‘レフ(LEF=芸術左翼戦線)’、他方の極には学者、批評家のフォルマリスト・グループがあり、トロツキーによって‘同伴者’と命名された、文学の自立性を主張する‘セラピオン兄弟’グループなどの多彩な顔ぶれの作家群がいた。ソビエト文学の一貫した主題である国内戦、社会主義建設、社会主義的人間像の形成と新旧世代の相克というテーマはいち早くとりあげられた。国内戦をテーマにしたものはフールマノフの「チャパーエフ」(1923)、フェージン「都市と歳月」(1924)、バーベリの「騎兵隊」(1926)、ファジェーエフ「壊滅」(1927)などである。社会主義建設をテーマにしたものはセラフィモービチ「鉄の流れ」(1924)、グラトコフ「セメント」(1925)、新旧世代の相克をテーマにしたものはA.N.トルストイの1920年に書き始められ41年に完成した長篇3部作「苦悩の中を行く」、オレーシャ「羨望」(1927)などが代表作である。このほかピリニャーク(「裸の年」1922)、レオーノフ(「穴熊」1924、「泥棒」1927)、エレンブルグ(「トラストD.E.」1923)、風刺文学の傑作としてゾシチェンコ(「シネブリューホフ物語」1922)、ザミャーチン(「われら」英語版1924、ロシア語版1927)、カターエフ(「浪費家」1926)、イリフ=ペトロフ(「十二の椅子」1928など)の名をあげておく必要がある。

第1次五ヵ年計画期(1928-32)

社会主義建設が本格的に開始され、1929年には農業集団化が行われて社会生活のあらゆる領域で深刻な変化が起こった。同伴者作家たちも社会主義建設をテーマとし労働を賛美する作品を書き、プロルタリア系の作家に接近していった(カターエフ「時よ、進め」1932、レオーノフ「ソーチ」1930、「スクタレフスキー」1932など)。この時期の最も注目すべき作家はショーロホフ(「静かなドン」1928-40、「開かれた処女地」1932-60)である。

1932-41年

作家同盟が成立し、社会主義リアリズムの時代がはじまった。文学におけるスターリニズムの時代で、1937-38年の大粛清でソルジェニーツィンによれば600人に以上の作家が犠牲となった。にもかかわらず、この時代にショーロホフ、エレンブルグ、A.N.トルストイ、レオーノフらの作品が次々と発表された。

第2次世界大戦期(1941-45)

祖国愛で一致団結した時代であって、統制もゆるめられて多くの佳作を生んだ。トワルドフスキーの叙事詩「ワシーリー・チョールキン」(1941-45)、シーモノフの長編小説「昼となく夜となく」(1944)などがその例である。しかし、 終戦直後のジダーノフ批判は文学を再び政治統制の枠にはめ込んだ。

雪解けの時代

スターリンの死(1953)の後、‘雪どけ’の時代がはじまり、粛清された作家たちの名誉が回復され、黙殺されていたツベターエワブルガーコフプラトーノフなどの優れた詩人、作家たちの作品が日の目を見るようになり、文学復興がはじまった。エフトゥシェンコ、アクショーノフソルジェニーツィンという新しい才能が次々と生れた。

停滞の時代

フルシチョフ失脚、ブレジネフ登場(1964)にはじまる‘停滞の時代’にソルジェニーツィンをはじめとする多くの優れた作家の追放、亡命が相次ぎ、閲覧がまた厳しさを増した。その一方で斬新な手法を試みた‘都会派’のトリーフォノフ、A.ビートフ、‘農村派散文’の名で呼ばれ、ロシア的な土着的民族主義的文明批判の立場に立つアブラーモフ、アスターフィエフ、ベローフ、ラスプーチンらが活躍をはじめ、アイトマートフイスカンデールのような非ロシア人作家、歴史小説に転じた‘吟遊詩人’オクジャワのような異色作家が登場し、社会主義リアリズムを中核とするソビエト文学の準則は次第にその実体を失い、さまざまな流派やジャンルの共存、文学の多様化が実作的に可能になってきた。

ペレストロイカ

1985年にっ政権についたゴルバチョフのペレストロイカ政策のもとで文学の多様化が一気に加速された。ソ連時代の文化に対する検閲、監視、取り締まりがいっさい廃止され発言の自由がやっとう実現され、亡命中の作家たちが自由にロシアを訪問し、ソルジェニーツィンのように帰還するようになった。


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