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補聴器用電池の採用例が続々

 今回、実装上の工夫を探るため、ドイツBragi社、デンマークGN Audio社、米Rowkin社のTWSイヤホンを分解した。その結果、Rowkin社が中国ZeniPower Battery社、他2社がドイツVARTA Microbattery社のボタン型Liイオン2次電池(LIB)を使っていた。マイク付きTWSイヤホンとしては現時点で最軽量級の台湾Erato Audio Technology社の「ERATO Apollo 7」や、中国Crazybaby社が開発中の「Air」もVARTA社の電池を利用するもようだ(図1)。

 ZeniPower社、VARTA社に共通するのは補聴器用電池で実績がある点。NiMnCo系のボタン型LIBでエネルギー密度が高いことも同じだ。これには、「耳の中で発熱や発火があってはならないため、補聴器や医療機器、車載用で信頼性が高いVARTA社の電池を採用したと聞く」(Erato社やCrazybaby社の製品の輸入・販売代理店であるバリュートレード 代表取締役の土山裕和氏)という背景がある。

イヤホン間の通信方式は3種類

 TWSイヤホン実装時の課題の1つである、(2)イヤホン間無線接続については、独立型、バイパス型、そしてNFMI型の大きく3つの手法がある(図3)。独立型では、左右のイヤホンがそれぞれBluetooth端末として独立に動作する。課題は、消費電力が大きく、電波環境によってはステレオとしての動作が保証されない点。仮にイヤホン間で通信する場合は、スマートフォンを介することになる。

NFMI(Near-Field Magnetic Induction)=電磁誘導、または磁界結合を利用して無線通信する技術。米FreeLinc社が開発した。通信エリアは半径1~2m。この方式では、磁界のエネルギーは距離の6乗に反比例して減衰するため、エリアの外では事実上通信できない。
図3 補聴器の技術「NFMI」でイヤホン間ケーブルを不要に
イヤホン間ケーブルをなくし、TWSイヤホンにするための技術の選択肢3つを示した。1つは、左右のイヤホンを独立なBluetoothの通信端末として使う方法。これは、Bluetoothの通信チャネル2チャネルに同じデータを流すので、非常に効率が悪い。2つめは、左右のイヤホンのどちらかがスマートフォンとのBluetooth通信を担当し、なおかつもう一方に音楽データの半分を転送する手法。当初のTWSイヤホンの多くはこの手法を用いていた。3つめは、補聴器で使われてきた、コイル間の磁界結合にデータを重畳する「NFMI」。電波に比べて人体や水などに吸収される率が非常に小さく、最大でも2.5mWと低消費電力で済む。Bragi社の「THE DASH」を皮切りに、NFMIを採用するメーカーが続々と増えている。
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