オーバーロード アナザールート 作:むっちゃん!!
<< 前の話
少し長くなったので分割しました。茶番回です。
急いで湯浴みと着替えをすませモモンガの部屋に向かう廊下をすこし速足に歩きながら、モモンガ様と自分の未来を考える、先日シャルティアと話したモモンガ様の妃が一人だけなどふさわしくないという話は嘘ではない、私とシャルティアが遠くない未来、妃の一人となることは揺るがないだろう。あとはこれ以上そんな恐れ多いことを考えるものが出ないように私が調整するのみ。
ただモモンガ様の一番は私でなければならない、それだけは譲れない。女としてあんな貧相ビッチに負ける気はしない。だがそれ以上にシャルティアには致命的に第一妃にふさわしくない理由がある。彼女は自身の創造主であるぺロロンチーノをモモンガ様より上の存在だと思っている。彼女はもしぺロロンチーノに命じられれば平然と股を開くような女だ。彼女は、彼女たちは本心でそんなことを思いながら平然とモモンガ様にのみに忠誠誓うふりをする。
ただそれを腹立たしく思えど責めようとは思わない、むしろ哀れみさえ感じる。自分たちを平然と捨てていった者たちにしか最大の忠誠を誓えないのだから。
ただ私だけは違う、私はモモンガ様のためだけに全てをささげる覚悟がある。いや――――一人だけ例外がいたか、私でさえ名前しか知らない秘密のベールに隠された領域守護者が。それに向ける感情は嫉妬だ。モモンガ様の御手で生み出されたという事に嫉妬する。しかしあれは場合によってはただ一人の協力者になり得る存在だ、友好的に接するべきだろう。
そんなことを考えてるうちにモモンガの部屋の扉が見えてくる、途端にどろどろとした心の中の物が消し飛びモモンガ様に会えるという喜びで満たされる。そのまま焦る気持ちを抑えてドアをノックした。
セバスが扉を開くと、そこには口元の緩んだアルベドがいた――気がしたが、そこにいたのはいつもの聖母のご
とき微笑みを浮かべるいつも通りのアルベドだった。
(見間違いか?やはり疲労の存在しないアンデットといえやはり休憩を挟まずに働き続けるのは、いずれ取り返しのつかないミスにつながりかねないな。適切なラインを見つけていかなければな)
そんなことを考えてる間に、ランウェイの上のモデルような足取りでモモンガの座る机に近づき、机越しに向かい合うと軽く一礼をし、口を開こうとする。
それをモモンガは手を前に出すことで止め、先に喋りだす。
「すまないがアルベド、私はすぐにニグレドの元へ行かなければならない。急ぎの用でなければ後にしてくれるか」
そう言ってモモンガが立ち上がろうと肘置きに手を突こうとしようとした瞬間、机の数歩前で立ち止まっていたはずアルベドがモモンガには認識できない速度で距離を詰め、机にバンッと手を突き体を乗り出してモモンガに迫る。
(ひあぅっ!?)
モモンガは突然のことに驚きフリーズするも沈静化によって再起動を果たし、支配者としての威厳を保つために支配者らしい声を出そうとする。
「ア、アルベドどうしたのだ?」
「な、なぜ姉さんの部屋に――私では、私ではだめなのですか!?」
「んん?何を言ってるんだお前は?お前では彼女の代わりにはなれないだろう?」
「そ、そんな、私にだってできます。おっしゃてくださればどのような望みでも必ずや、モモンガ様にご満足していただく自信がございます!」
「いや彼女でなければ不可能だろう、どうしたのだ突然おかしなことを言い出して」
純戦士職で通常の方法ではスクロールすら使えないアルベドが、二グレドのかわりなどできるはずもないのに一体どうしたというのか、アルベドにやらせるくらいなら自分でやったほうよっぽど効率的だ。
しかしこの鬼気迫る様子を見るに冗談を言っているわけではなさそうである。
(いったいアルベドどうしたいうのだ?訳が分からない)
モモンガには頭のいいはずのアルベドの言動の意図がいくら考えても、全くが理解できなかった。
「な、なぜおっしゃってすらいただけないのですか。アルベドはこんなにもあなた様を愛しいるのに。――あぁ、わかりました。顔ですね、顔なのですね、少々お待ちくださいすぐに剥がして参りますので、ここではお部屋を汚してしまいます。安心してください私と姉さんは姉妹ですので、きっと瓜二つの顔になることがでしょうから」
まったく安心できないことを言い放ち、アルベドがふらふらと退出しようとする。それに驚いたのはモモンガの方だ。突然、訳の分からない事を言い出したと思ったら、その結論が『顔の皮をはがせば情報系魔法がつかえるようになる』だ。
さら訳がわからないが、とにかく顔を剥ぐことだけは阻止せねば。掛けるべき言葉を頭の中で支配者風になるように言葉を整理し直し、ただ事ではない様子のアルベドへ近づくために立ち上がりながらアルベドの背に向かって声をかける。
「そのような行為に何の意味もないぞ」
突如、アルベドが膝から崩れ落ちる。モモンガは膝から崩れ落ちそうになるアルベド見て、とっさに指輪の効果を発動させアルベドの正面に転移し、抱きしめるように受け止める。
「どうした!アルベド!大丈夫か?なにが起こっている?返事をしろ!」
モモンガにしなだれかかったアルベドの様子は、まるで病に侵されたかのように弱々しく儚げだった。
「〈
アインズが原因を探るために魔法を発動させるが、状態異常はなく体力は全快である。これはまずい、恐れていた事態が起こってしまった。これはユグドラシルとは別の未知の法則によって引き起こされた現象か、ここ数日何もなかったから油断していた。はやく原因を見つけ対策を立てねばなければ
「セバス、ペストーニャを連れて来い!」
「しかし、その、、、アルベド様はただの――――」
「早くしろ!!」
「―はっ!」
アルベドを迎え入れアルベドの異常な様子を少し離れたところから見ていたセバスに声をかけペストーニャを呼びに行かせる。
「あぁ、やはりモモンガ様はお優しいのですね。しかし私はモモンガ様に不必要な存在。モモンガ様に愛されない人生など生き地獄と変わりません、もし、もし最期にわずかばかりの愛を恵んでくださるのなら、どうかその手この命を刈り取ってくださいませ」
「縁起でもないことを言うな!私はお前たちを愛しているぞ。もうすぐペストーニャがここに来る、それまで耐えてくれ」
ペストーニャが役に立たなかった場合どうする?残る方法は超位魔法〈
そちらに目を向けるとそこにいたのは、先ほどの儚さはどこへやら肉食獣のような瞳を爛々と輝かせたアルベドがいた。今まで彼女を優しく支えていたモモンガの腕を、今度は彼女が力強くつかみまるで地の底から這い上がる化け物のように起き上がりながらアインズに迫る。
「今私を愛してるとおっしゃってくださいましたね?」
モモンガはそんな顔を近づけてくるアルベドに気圧されながらも、
「あ、あぁ、確かに言ったぞ。お前"たち"を愛していると」
「それはつまり私を愛しているという事でよろしいのですよね?」
「うん?いや、まぁ、ま、間違いではないな」
「つまり私たちは両想いということでございますね?ならばもう我慢する必要はございませんよね。」
「いや、それは違――」
突如モモンガの視野が回転し、見える景色が天井とアルベドだけになる。痛みがなかったところを投げられたのではなく、高速で寝かされたようだ、驚くほど冷静に自分自身の状況を確認をしていると体の上でアルベドが喋り出す。
「モモンガ様はただ寝ていてくださるだけのいいのです、必ずや姉さんよりも満足させてみせますわ。あぁ、私はここで初めてを迎えるのですね。」
「アルベド?おい、アルベド?」
こちらの声など聞こえないとばりに、捕食者は自分の服の胸元に手を当て服を破ろうと力を加えるが、見た目に反し魔法的な力で守られた服は破れない。
「もう、魔法の服というのは不便ですね、普通に脱がなければいけないなんて。こんなときに殿方をお待たせしてしまうなど」
アルベドの言葉で自分が今何をされそうになっているか気がつく。まさか自分が人生の中でこんな目にあうなんて思わなかった。美女の逆レならご褒美なんて考えていた、過去の自分をぶん殴りたい。これはもっと生得的な恐怖、いくら刺さらないと分かっていても首元に鋭利な刃物を突きつけられれば恐怖をかんじるものだ。理性の問題ではない
「おい、やめろ!やめて!聞こえているのか、お願い聞いて、服を脱ぐな、服を脱がすな、擦りつけるな」
そんな死の支配者の悲鳴が二人きりの部屋の中に響く中、扉がバンッと開けられ犬の頭をしたメイドがはいってくる。
「メイド長ペストーニャ・ショートケーキ・ワンコ、お呼びにより馳せ参じました、何をすればよろ――これは、お邪魔を、直ぐに退室を」
入って来た時の勢いはどこへやら、そっと退室しようとする蜘蛛の糸をモモンガは必死に止める。
「待て、止まれ、行くな、ペストーニャ助けて」
モモンガの必死さに反して、ペストーニャの反応はどうにも状況を把握出来ないようで、そっと控えめに近づいてくるのみだ。しかしその後ろから声が響く。
「どうかなさいました!モモンガ様!!ご無事ですか!?」
そう言ってペストーニャの後ろから飛び出してきたのはセバスだった。
モモンガは確かに見た気がした、颯爽と現れた白銀の聖騎士を。過去の回想に入りそうな自分を、そんなことをしている場合じゃないと叱咤し、どうにか執事服の
「アルベドがおかしい、止めてくれ」
「はっ!」
短く返事をすると即座にアルベドの背後に周り、後ろから羽交い締めに引き剥がそうとするが、本気の状態では無い上に無茶をすればモモンガを傷付けかねないため、引き剥がしきれない。
「アルベド、いい加減にしなさい。これ以上の不敬さすがに見逃す訳には行きませんよ」
「待ってセバスもう少しだけ、まだ何もしていないの」
「いいえ待てません。早く御身を解放しなさい」
「待ってセバス、モモンガ様は「私を愛している」と仰って下さった、つまりこれは合意のものよ。さあ分かったら早く退出なさい」
「そんなことは言っいない!」
「えぇ!!?そんなぁ」
状況を理解しすべきことが分かったペストーニャとタダならぬ騒ぎにより駆けつけた昆虫型の近衛兵の参戦によりどうにか引き剥がされ、少し冷静になったアルベドは少ししおれていた。
「申し訳ありませんでした」
見事な土下座をキメるアルベドに対する周囲の視線は冷たい。唯一残ってくださった最後の至高の御身に暴行を加え、同意のないままことに及ぼうとした罪は思い。
そしてその罪はそれを未然防ぐことの出来なかった、ここにいる全ての下僕の責任でもある。いや事前にこのような事態を防げなかったという意味でナザリックの全下僕の責でもある。
周囲が総自決を考えている中、そこまででは無いものの突然襲われた張本人であるモモンガもまた僅かに怒りを感じていたが、それよりも一体何故?という気持ちの方が大きかった。まずは動機を知ることの方が重要だと考え、アルベドに質問をする。
「アルベドよ、何故このようなことをしたのか皆に分かるように、分かりやすくいちから説明せよ」
僅かに苛立ちを感じされる御身の声に周囲の温度は一層冷たいものとなる。そんな中、アルベドその口を開く。
「はい、モモンガ様が姉さんの寝室に行かれると仰られたことで、気が動転してしまい」
(えぇ、俺そんな事言ってないよ)
「つい感情的に私ではダメなのかと迫ってしまったところ、私ではダメだと、相手にすらしてもらえず」
(えぇ!?そんな意味だったのあの質問)
「どうにかモモンガ様に振り向いてもらうべく行動しようとしたところ、そんな行為に意味は無いと言われてしまい」
(そうゆう事だったのか、ニグレドに似せようとしての奇行だったのか)
「あまりのショックに立っていられず、倒れたところをモモンガ様に抱きとめていただき、愛されぬまま生きるよりモモンガ様を感じながら死にたいと思い、その旨を伝えたところ」
(えぇ、そんなことで死のうとしてたのか)
「モモンガ様が私を愛していると仰ってくださり、両思いだと知りつい襲ってしまいました」
「―――そうか」
一通り聞き終えたあたりで、セバスが周囲の下僕を代表し声を出す。
「アルベドの行為は許されるものではありません、死をもっても償いきれるものではありません、しかしそれは我々も同じことです。モモンガ様のお傍にお控えしその身を護るべきであるにも関わらず、お護りすることが出来ませんでした。その罪もまた死をもってもしても償いきれるものではありません。」
そうセバスが宣言すると、周囲にいた下僕たち見回せばセバスの言葉に同意するような意思を強い視線に感じる。
アルベドの言葉をゆっくりと消化していたら、アルベドを死刑にすべきであると言われついでにここにいるものだ全員も死刑にすべきだと言われて、もう頭がいっぱいだ。
あっ、沈静化した。
そして静まり返った部屋の中で冷静になった思考がある結論を導き出す。
(あれ?これ全部俺のせいじゃね?)
アルベドを勘違いさせたのも俺。
勘違いに気がつかずさらに追い詰めたのも俺。
不用意に愛してると言ったのも俺。
そもそもこの勘違いの元になる設定変更をしたのは俺。
周囲に人が多いのが嫌でセバスのみでメイドをつけていなかったのも俺。
近衛が邪魔で部屋の外に配置したのも俺。
勘違いで必要も無いのにペストーニャを呼んだのも俺。
何か言いたげだったセバスに無理やり命令を出し1人なったのも俺。
それに気がついた瞬間、モモンガの無いはずの心臓がバクバクと動き出すのを感じる。
やばいやばいやばい、これはやばい、このままでは俺のせいで守護者統括に執事長、メイド長と就任して数日の近衛兵が死んでしまう。そんなことになれば支配者として見限られかねない、それにNPC達がこんなことで死ぬなど耐えられない。
どうにかこの流れを止めなければ、どうする?どうすればいい?
繰り返される沈静化の波の中、凡人のモモンガが思いつく答えは一つだけ。多少強引でも上位命令として全てを有耶無耶にするしか無い。そうと決まればやるしかない。
スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを掴み、その先を地面に叩きつけ、黒いオーラを発現させる。
「全員表を上げよ、私はここにいる全ての者の罪を許す。これはナザリック地下大墳墓の支配者モモンガとしての絶対命令だ。異論は一切認めない。そして今日この場で見聞きしたことは全て他言無用、口に出すことも禁ずる。このことに関し一切の例外は認めない」
そう力強く宣言をする。この瞬間、全ての下僕たちが膝をつき代表しセバスが
「慈悲深き判断に感謝致します」
「うむ、私は一旦自室に戻る。共は不要だ」
そう言ってモモンガはいち早くこの場を後にするために指輪を発動させ自室に戻る。
部屋に転移したモモンガは周囲に誰もいないことを確認し、大きなため息を吐きながら、ベッドに倒れ込む。
「……疲れた」
支配者のつぶやきだけが寂しく部屋に響いた。
少しふざけ過ぎましたすいません。気がついたらこんな流れになっていました。