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【私説・論説室から】

空母化が政治主導とは!

 やっと得心がいった。次期の防衛計画大綱で「空母」保有が決まった経緯である。

 海上自衛隊は予算不足により、退役する護衛艦の寿命を延ばして隻数をやりくりしている。新造する護衛艦は、小型で護衛艦とは呼べないような安っぽい艦艇だ。

 来年度防衛費の概算要求では、一機の航空機も計上できなかった。そこへ護衛艦「いずも」型の空母化だ。なぜ、このタイミングで巨費を投入しようとするのか不思議だった。

 自民党の国防族議員に会った。彼は「空母化は政治主導だ」と断言。自民党国防部会は今年五月、「多用途運用母艦」という名前の空母の保有を盛り込み、大綱提言をまとめた。ただし、自民党提言は、これまでの大綱なら防衛省が原案を策定する段階で無視され、まず反映されることはなかった。

 ところが、今回の大綱は防衛省ではなく、安倍晋三内閣で新設された国家安全保障会議が策定した。前出の議員は「自民党提言がほとんど反映された」と素直に驚いていた。

 政府は「憲法上、攻撃型空母の保有は許されない」と説明してきた。海上自衛隊が「攻撃型空母」に改造できる艦艇をつくり、備えてきたのは事実だが、空母化は自民党提言、与党合意、閣議決定というシビリアン・コントロールによって実現へと近づいている。

 「背広を着た関東軍」ほどおそろしいものはない。 (半田滋)

 

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