【ワシントン=座波幸代本紙特派員】ブッシュ(子)政権で、パウエル米国務長官の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン元陸軍大佐は19日までに本紙のインタビューに応じた。同氏は1990年代初頭に米海兵隊大学校(バージニア州)の責任者を務めていた際に、冷戦終結に伴う米国内外の米軍基地再編・閉鎖に関する調査研究などを分析した。その結果、日本政府が多額の駐留経費を負担する在沖海兵隊はカリフォルニア州での経費より米側の負担は50~60%安く済むと指摘。「沖縄の海兵隊駐留に正当な戦略上の必要性はないことが示された。(駐留は)全てお金と海兵隊の兵力維持のためだった」と明らかにした。
米軍の元高官が、沖縄の海兵隊駐留に戦略的な必要性はないと発言するのは異例。
ウィルカーソン氏は、米国の識者や元高官らでつくる海外基地再編・閉鎖連合の主要メンバー。同連合はトランプ大統領、マティス国防長官ら宛てに、米国外の米軍基地の閉鎖を求める文書を公表している。
当時の分析では、沖縄の海兵隊駐留は日本政府が多額の米軍駐留経費を支払っているため「カリフォルニア州での費用より、米側の負担は50~60%安く済んでいた」と指摘した。米側の財政上、好都合であり、米本土に海兵隊を戻すことは非経済的と判断していたという。同州内の基地閉鎖もあったため、沖縄の海兵隊員を米本土に戻しても駐留させる場所がなく「兵力削減につながることを海兵隊幹部が恐れた」と明かした。
気候変動や自然災害の影響が米軍施設に及ぼす損失への懸念が高まっており、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について、多額な費用を投じて海上に滑走路を造ることは「ばかげている」と強調した。
日本政府が主張する在沖海兵隊の「抑止力」について「もろ刃の剣だ。抑止力の一方で、米軍の駐留は中国の軍事費を拡大させ、より強力な敵にさせる」と、軍事的緊張を高める要因になると指摘した。
仮に朝鮮半島で有事が起きた際でも在沖海兵隊の派遣は「戦闘が終わってからしか現地に到着しないだろう。60万人の韓国軍にとって微少な追加でしかなく、戦略的理由はない」と述べた。
日米同盟と日本の防衛については「米軍のプレゼンス(存在感)を示すという約束、広報的な意味合いだ。沖縄に駐留する戦略的な目的があると言いたいなら、横須賀や三沢など日本本土の他の場所の戦略目的と同じだ。米国の太平洋地域での国防戦略で本当に重要なのはハワイだけだ」と説明した。