朝鮮日報

【コラム】韓国ファンを恐れるプロゴルフ選手たち

「オレでももっと遠くまで飛ばせる」マナー欠くギャラリーの暴言

 その人が本当にもっと遠くまで飛ばせるかどうかも疑問だが、韓国人選手としては初めて全米プロゴルフ協会(PGA)ツアーに進出して8勝を挙げた「レジェンド」に対する礼儀としては、なっていない言葉だ。

 すべての韓国人ファンがそのようにマナーに欠けると言っているのではない。しかし、すぐ目の前の成果でだけ評価する韓国社会全体の雰囲気が、スポーツ観戦マナーにもにじみ出ているのは明らかだ。

 満38歳の金亨成(キム・ヒョンソン)は「年を取れば取るほど日本でプレーする方が気持ちが楽になってきた」と言った。コンスタントに一定の成績を残しても、1-2年優勝がないと韓国では「何があったんだ」という反応が出てくる。優勝というのは当然できなければならないもので、それができないと罪人扱いされ、うつに苦しむという。逆に、日本では「長くプレーできる秘訣(ひけつ)を教えてほしい」と丁重に接してもらえるそうだ。そうして何度もほめられているうちに、さらにうまくプレーできる力がわいてくるという。

 世界の女子プロゴルフ界を席巻する韓国人ゴルフ選手たちは「燃え尽き症候群」になりやすいことでも有名だ。十分な成績を収めている時でも、「もっと頑張らなければ」という重圧にさいなまれる。そうして、20代半ばにして自滅していく。ゴルフでありとあらゆる実績を残している朴仁妃(パク・インビ)でさえ、同様の恐怖を抱いていたと吐露している。ゴルフだけではない。サッカー場や球場でも「それでメシ食っているのに、せいぜいそんなものか」という言葉がよく聞こえてくる

 ドイツ在住の哲学者・韓炳鉄(ハン・ビョンチョル)氏は著書『疲労社会』で「極端な成果社会が人々をうつ病や燃え尽き症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)に追い込む」と書いた。来年、競技場に行ったら、ミスが出ても温かい励ましの拍手を贈ろう。「ずっと応援し続けるよ」という気持ちが伝われば、より良いプレーが見られる。応援とより良いプレーが好循環を生むスポーツの世界は、冷酷な世の中を変えるのに少しでも役立つだろう。

閔鶴洙(ミン・ハクス)論説委員・スポーツ部次長

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】韓国ファンを恐れるプロゴルフ選手たち

right

関連ニュース
今、あなたにオススメ
Recommended by