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（世良）胃がんや。　余命３か月やて。
（福子）えっ？
♪「丸まってる背中に　もらい泣き」
♪「恥じだって一緒に」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「飛行機雲ぼんやり眺む」
♪「心ここに在らず」
♪「年間トータル　もししたら」
♪「付き合うあたしすごい？」
♪「とぼけてる眉毛に　もらい笑い」
♪「照れだってなんだって」
♪「あなたとならトゥラッタッタ♪」
♪「もらい泣き　もらい笑い　もらい怒り」
♪「もらいっ恥じ　どんと来い！」
♪「晴天も曇天も霹靂も」
♪「さあ　あなたとトゥラッタッタ♪」
（鈴）三田村さんが？あんなにお世話になったのに何のお返しもできないなんて…。
そやけど　全然つらそうやなかったわ。
むしろ　とっても優しいお顔になってて。
そう…。
私も　そんなふうに死にたいわ。
やめてよ。
咲が逝ってしまった時も死にたいと思た。
やめてって。
最近　咲が　夢枕に立ってくれないの。ええ？
私のこと　忘れてしもたんかしら。
ん？　それは違うんやない。
夢を見るのは　お母さんなんやから忘れてるのは　お母さんの方よ。
そんなわけないやない。
そうそう今日も　フッと思い出したの。
あなたが　まだ女学校に行ってた頃よ。
克子の家で　咲が　いきなりチョコレート　チョコレートって言いだしてきたことがあったでしょう。
チョコレート？
（克子）バレンタインデー？（咲）うん。
チョコレートをプレゼントって…。何？　何の話？
神戸の洋菓子屋さんが出してるバレンタインチョコレートの広告よ。
バレン…　何？これ。２月１４日は　バレンタインの日やって。
女の人が　好きな男の人にチョコレートあげるんやって。
まあ　はしたない。要するに　チョコレートの広告よ　これは。
どうして　そんなもの読んで聞かせるの？
あっ！　咲姉ちゃん好きな人いるんやないの？
いないわよ。うそ！　いるんでしょ。
いるの？面白いなって思ただけ。
好きな人は　いません。
今思えば　いたのよね。
あの時は　もう　真一さんと出会うてたのよ　咲姉ちゃん。
あの時の咲…　咲だけやないみんな幸せそうやった。
でも　咲は　病気で亡くなって…。
あなたは　萬平さんと結婚して仕事がうまくいったかと思えば今は　こんなことになってしまって…。
幸せと不幸せは代わりばんこに来るのね。
私は　今が不幸せやと思ってません。
ええ？
思わないことにしたの。
そら　いろいろ大変やけどたくさんの人が助けてくれてるしそれに　もうすぐ　かわいい孫がもう一人産まれるのよ　お母さん。
何だか　あなた　たくましくなったわね。
私は　武士の娘の娘ですから。
ウフフフフフフ…。
（東）ありがとうございました。あっ　東先生。
お湯加減は大丈夫でした？
あっ　とても気持ちよかったです。
長旅で　お疲れでしょう。あっ　いえ。
寝床は　居間に用意しておきましたからゆっくりお休みになって下さい。
ありがとうございます。
明日から　売り込み行きますよ。売り込み？
ダネイホンの商標と製造方法。
ああ　よろしくお願いいたします。
頑張ります。私も。
・（加瀬沢）もう１週間ですよ。たちばな栄養食品から連絡はありませんね。やっぱり　追徴課税を納める気はないんですよ。
どうしますか　部長。
差し押さえの準備に入れ。
売れましたよ　萬平さん。
ダネイホンの商標と製造方法。
北浜食品さんが１２万円で買ってくれました。
（萬平）１２万…。
このお金を元手にまた新しいことを始めて下さい。
でも　ここにいては　僕は何もできない。
僕は　まだ諦めていません。
まだ　戦いは終わっていないと思ってますから。
先生。
だから　どうか　希望を捨てないで下さい。
ありがとうございます。
ありがとうございます　東先生。
今度のことは社員たちに伝えてあるのか。
もちろんです。
みんな　最初は　びっくりして落ち込んでましたけど今は　もう　覚悟決めてます。
みんなの再就職先は？
大丈夫です。東先生が一緒に探して下さいました。
ああ…　ありがとうございます。
いえ。
本当に　何から何までありがとうございました。
言ったでしょう。まだ　戦いは終わってないって。
萬平さん。
大丈夫。　大丈夫です。
♪～
うん。
♪～
神部さん。
岡さん　森本さん佐久間さん　赤津さん長久保さん　大和田さん高木さん　峰岸さん。
皆さんは　北浜食品さんで今までどおりダネイホンを作って下さい。
向こうの社員さんにダネイホンの作り方を教える大事な役目もあるんやからよろしくお願いしますね。
（岡）はい。
（森本）分かりました。
（神部）はい。
残念ながら　北浜食品さんが受け入れて下さるのは９人だけやの。
野村さん　堺さん　倉永さん　堀さん。
４人は三田村さんがお世話して下さった大國商会さんで働かせてもらえるそうです。
小松原さん　増田さん。
２人は　世良さんが紹介して下さった梅下電器さんで働かせてもらえます。
慣れない仕事で大変やと思うけどみんな　まだ若いから　きっと大丈夫。
（真一）そうや。
体に気ぃ付けて　頑張ってね。
（小松原）はい。
（堺）ありがとうございます。
（泣き声）
タカ。
（タカ）みんなバラバラになってしまうんでしょ。
そんなん嫌や。　嫌や…。
タカちゃんには　神部さんがおるやないか。
（堀）そうばい。（増田）さみしいことないよ。
それは違うやろ。
せっかく　ここまで頑張ってきたのに。
（すすり泣き）
今まで頑張ってきたからこそそれを無駄にしてはいけません。
これからの人生に　生かして下さい。
お願い。
はい。（野村）はい。（赤津）はい。
そしたら　今日をもってたちばな栄養食品は　解散します。
（泣き声）
♪「赤いリンゴに」
♪「口びるよせて」
♪「だまってみている　青い空」
♪「リンゴはなんにも　いわないけれど」
♪「リンゴの気持は　よくわかる」
財務局が差し押さえにやって来たのはその２日後でした。
えっ…。
何だ　これは。
ああ　お待ちしていました。
これは　どういうことですか。
たちばな栄養食品は　解散しました。
解散？
ええ　実は会社は負債を抱えていましてね。
しかたなかったんです。
（加瀬沢）やりやがったな…！
会社を売ったということか。その金は　どこにある。
それは…　黙秘します。
戦いは終わっていない…。
でも　その戦いが想像を超えたものになるとは萬平さんも　鈴さんもそして　福ちゃんも知る由もありませんでした。