FRBは利上げの着地点を慎重に探れ

社説
2018/12/21付
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米連邦準備理事会(FRB)が今年4回目の利上げに動き、政策金利を年2.25~2.50%に引き上げた。2019年も利上げを続ける構えだが、年2回に抑えるシナリオを中心に据える。

米経済や世界経済の先行きに不透明感が広がっているだけに、FRBが金融引き締めのペースを落とすのは理解できる。15年末に始めた利上げの着地点も、慎重に探らなければならない。

FRBが現時点で適切とみている政策金利は年2.75%だという。残り1~2回の利上げで到達する計算で、米国の金融引き締めはいよいよ終盤を迎える。

米経済はまだ力強い回復を維持している。失業率は約49年ぶりの低水準を記録し、実質成長率は2四半期連続で年率3%を超えた。FRBがもうしばらく利上げを続けるのは妥当だろう。

しかし中国との貿易戦争や大型減税の効果一巡などが響き、19年後半にも米経済の減速が鮮明になるとの懸念が浮上している。景気後退の予兆といわれる長短金利の逆転現象もみられ、警戒を怠れない状況になってきた。

FRBのパウエル議長は「景気の鈍化を示唆する動きが幾分ある」と述べ、米経済の動向を注視する姿勢を示した。19年に想定する利上げの回数(中央値)は、9月時点の年3回より1回少なく、打ち止めも視野に入れながら慎重に判断する見通しだ。

世界を見渡しても、中国や欧州、日本の景気減速懸念がくすぶる。アルゼンチンやトルコのような新興国からの資金流出や、イタリアの財政悪化も気がかりだ。

米国が金融引き締めのさじ加減を誤れば、世界経済にも深刻な影響を与える。FRBの意図を市場に十分に織り込ませながら、利上げを過不足なく進めてほしい。

トランプ米大統領にも注文がある。FRBの利上げを公然と批判するのは問題だ。中央銀行が政治の介入で市場の信認を失えば、金融政策のかじ取りが難しくなる。余計な口をはさむより、貿易戦争の終結を急ぐべきだ。

金融政策の正常化で先行するFRBに続き、欧州中央銀行(ECB)は年内に量的緩和を終える。一方、日銀は現行の大規模緩和を維持することを決めた。置かれた立場は違っても、より慎重な政策運営が求められるのは同じだ。黒田東彦総裁も内外経済の下振れリスクに十分目配りしてほしい。

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