自動運転への制度整備着実に

社説
2018/12/21付
保存
共有
印刷
その他

渋滞時の高速道路での走行など限られた条件の範囲内でシステムに運転操作を委ねる「レベル3」の自動運転について、政府は2020年をメドに実用化する目標を掲げている。

その実現に向け、具体的な制度づくりが始まった。警察庁が自動運転による公道の走行を法的に位置づける道路交通法の改正試案をまとめ、公表した。来年の通常国会に法案を提出し、20年前半の施行を目指すという。

自動運転を実現するには、メーカーなどによる技術開発や走行実験の蓄積はもちろん、自動運転にかかわる法令や仕組みなどの整備が欠かせない。政府はこうした制度づくりを着実に進めていく必要がある。

現行の道交法では、運転操作を行う運転者に安全運転の義務が課される。だがレベル3で自動運転モードにして走る際には、システムが運転操作を担う。このため運転者は常に周囲に注意を払うといった必要はなくなるため、いつでも手動運転に対応できる態勢であれば、携帯電話の使用などが認められることになる。

制度づくりをめぐっては課題が多い。そもそもレベル3の車の性能や安全性をどう審査し、判断するのか。システムに不具合があった場合の公表やリコール(回収・修理)の手続きはどうなるのか。こうした点は国土交通省が検討作業を進めている。

自動運転中に起きた事故については、民事上の賠償責任はこれまで通り、運転者や車の所有者らが負い、車両に欠陥があればメーカーの責任を問う――という方針が示されている。刑事上の責任のあり方は検討課題として残されており、議論が急がれる。

レベル3の次の段階として、ドライバーが介在しないレベル4や5の自動運転車両の登場も近い将来、想定される。その場合には、再び制度の見直しが迫られるだろう。政府には技術革新を促し、安全も十分確保できる仕組みを考えていく責務がある。

日経電子版が2月末まで無料!初割のお申し込みは早いほどお得!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報