1票の格差が最大1.98倍だった2017年10月の衆院選が、法の下の平等を定めた憲法に反するかどうかが争われた裁判で、最高裁が「合憲」との判決を出した。
この選挙で国会は小選挙区の定数の「0増6減」などを行い、格差は許容の目安とされる2倍を下回った。20年の国勢調査後に、人口比をより正確に反映するアダムズ方式の導入も決めている。
「合憲」の判断はこうした国会の取り組みを、最高裁が評価した結果である。一審となる全国の16高裁・支部の判決でも合憲が15、違憲状態が1だった。
いずれも格差が2倍を超えていた14年までの過去3回の衆院選について、最高裁は「違憲状態」とする判決を連続して出し、警告を発してきた。この3回に比べると、確かに今回の選挙では改善がみられたといっていいだろう。
だがそもそも1票の格差の是正は2倍を超えれば違憲、わずかでも下回れば合憲、という問題ではない。大原則は「1人1票」のはずなのに、「2倍未満」が数値目標のようにみなされ、それをクリアするかどうかで右往左往すること自体、おかしな話だ。
国会では近年、安全保障や外国人材の受け入れなど、国民の意見が大きく分かれるような法律の制定が相次いでいる。憲法改正の動きもある。有権者が自らの意思を託す1票の価値の平等を実現する必要性は、より高まっている。
国会は今回の合憲判決に安堵したり、慢心したりしてはならない。引き続き格差是正の努力を尽くしていくべきだ。
参院選をめぐっても、自民党では県をまたぐ選挙区の「合区」を早期に解消するよう求める声が強い。憲法改正によって「参院議員は都道府県ごとに選出する」と明示する案が浮上している。
しかし参院の強い権限を維持したまま参院を地方代表と位置づければ、法の下の平等の基本理念をゆがめかねない。衆参の役割分担を含めた抜本改革の議論を同時に進める必要がある。
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