【首都スポ】セーリング49er級 期待のペア 高橋・小泉、追い風受けて東京五輪2018年12月19日 紙面から
乗りこなすのが難しく、「海の怪物」の異名を取るセーリングの49er級で、2020年東京五輪日本代表を目指す期待の若手ペアがいる。東京五輪の会場となる、テスト大会を兼ねた今年9月のW杯江の島大会で、総合10位になった高橋レオ(19)=ニュージーランド(NZ)・オークランド大、小泉維吹(22)=早大=組だ。16年からペアを組み、今年から本格的にレースに参戦し始めた190センチ・高橋、168センチ・小泉の凸凹コンビ。現在の拠点はNZで、日本帰国時の拠点は江の島という2人を直撃した。 (フリージャーナリスト・辛仁夏) ◆高橋レオ マッチレースで腕磨いた逸材「日本セーリング界きっての有望選手」と注目されているのが、高橋だ。熱海生まれの沼津育ちという母親の故郷、静岡で幼少期の7年間を過ごす。その後、家族で移住したNZで9歳からセーリングを始めた。父親はアメリカズカップで活躍、日本のセーリング関係者の間でも有名で、この頃から漠然と「オリンピックに出たい」と思っていたという。 14年から1対1で戦うマッチレースに出場してセーリングの腕を磨き、「昨年のマッチレース世界ランキングは12位だった」と胸を張る。「いろんなボートに乗れることがいいセーラー」だと考える高橋にとって、次のステップが、五輪種目で、16年から取り組み始めた49er級だ。 「東京五輪を目指したい気持ちが出てきた時に選びました。非常に速くて、接近戦で綿密な戦術が求められるスピードレースなので、非常に魅力を感じたからです」 ジュニア時代から知り合いだった小泉とはペア探しの時に意気投合。互いに他のボートから転向し、「東京五輪出場、次のパリ五輪で金メダル」と、同じ目標を掲げる。初めて乗る49er級のボートを乗りこなすために、16年の1年間を練習に費やした。昨年は約8カ月間、ユースアメリカズカップ代表としての活動があったので、49er級にはほとんど乗れなかった。だから、東京五輪に向けた本格的な競技参戦は今年からだ。 「2人とも五輪メダル獲得という共通の目標があるので、懸命に努力できている。まずは東京五輪代表に選ばれることを目指します」 9月のW杯江の島大会で過去最高の10位。レース内容でも手応えがあった。「イブ(小泉)と2人で頑張れば(今後の大会で)メダルを獲得できると思うので、経験と学びを積み重ね、東京五輪に出て、パリ五輪では金メダルを獲得したい」と目を輝かせる。 来年2月から始まる新設グランプリ(GP)シリーズの「Sail GP」に参戦する日本チームのリザーブ・グラインダーにも選ばれた高橋にとって、東京五輪代表切符争いが始まる来年は多忙を極めそうだ。 <高橋レオ(たかはし・れお)> 1998(平成10)年12月18日生まれの19歳。静岡県熱海市出身。190センチ、84キロ。ヨットマンの父はニュージーランド(NZ)出身、母は日本人。セーリング歴は10年でスキッパーを担当。オークランド大学在学中。オークランドでは両親、小泉と一緒に暮らしている。49er級では今年、W杯蒲郡大会15位、W杯江の島大会10位。 ◆小泉維吹 役割キッチリこなす兄貴分船上での小泉は、かじを握るリーダー役で2歳下の高橋の決定に黙って従う。「ヨットのことになると、レオはすごくまじめで、引っ張ってくれます。お互いの役割はやることによって変わりますが、ほぼ兄弟みたいな感じですね。近づきすぎないけど、遠すぎない」。2人の好青年が醸し出す雰囲気は、真っ青な海のように実に爽やかだった。 海に囲まれた山口県で生まれ育った小泉がセーリングを始めたきっかけは「兄がヨット教室に行き始めて、その1年後くらいに僕も始めました」。最初は「あまり好きじゃなく、ヨットに乗らず、海で泳いでいたし、冬は乗りたくなかった」。楽しくになったのは、レースに出始めた小4くらいで、以降は「一気にヨット主体の生活」になり、さまざまなボートに乗りながらセーリングにのめり込んでいった。 高校時代からスキッパーとして活躍。3歳上の兄・颯作さんと出場した11年の山口国体でのSS級優勝をはじめ、14年の全国高校総体でソロ制覇と同年の仁川アジア大会では420級で銀メダルに輝いた。 49er級に乗り始めたのは高校卒業後だ。その魅力について「船のバランスが悪くて、そのまま浮かべたら倒れてしまうくらいのボートで、乗りこなすのが楽しいし、速くて全てが難しい」と話す。16年から高橋とペアを組み、今年は全7大会に出場。「欧州遠征で経験を積んだ成果がW杯江の島大会(10位)に出せた」。 東京五輪代表になるためには、来年の五輪選考レースで結果を残していかなければならない。そのためには、強化活動費や道具購入などの金銭的なサポート態勢やコーチを雇うなどの充実した練習環境の確保が必要だ。 「プロセーラーとして自分たちのスタイルで活動できるように、協力してくれるスポンサーを探しています」 みんなから愛されて、見本になるような選手を目指したいといい、「東京では難しいので、パリやその次くらいの五輪までにはメダルに絡める選手になりたい」と、五輪での目標を掲げている。 <小泉維吹(こいずみ・いぶき)> 1996年(平成8)年9月1日生まれの22歳。山口県周防大島町出身。168センチ、70キロ。早大人間科学部eスクールに在籍(4年目)。小1の7歳から同県光市でヨットを始める。2011年山口国体SS(セーリングスピリッツ)級優勝(兄とのペア)、14年ユース世界選手権420級銅。同年には全国高校総体FJ級ソロ優勝、アジア大会でも420級銀。3兄弟の真ん中で全員ヨットマン。
<セーリング49er級> 「海のF1」と例えられる五輪種目最速のヨットレース。2000年シドニー五輪で採用。全長4・9メートル、全幅2・9メートル、艇重量125キロの2人乗りで大きなセールと、独特な船型が生み出すスピードは平均11ノット(時速20キロ超)で、最大時速は40キロにもなる。 <Sail GP> 今年、「セーリングレースに革命を起こす」として設立されたGPシリーズ。日本、オーストラリア、フランス、英国、米国、中国の6チームが参加し、来年2月のオーストラリア・シドニー大会から世界5会場を回る。各チームとも最先端技術が搭載された同型のF50カタマラン(双胴艇、クルー5人)を使用し、時速100キロ近いスピードレースを競う。 ▽SailGP日本チーム・早福和彦最高執行責任者(前回のアメリカズカップでソフトバンク・チーム・ジャパンのクルーを務めた)「高橋選手はユース世代の中でも才能があり、優秀で実績のある選手。今回の参加でトップセーラーから技術や精神面、心構えを学んでほしいし、素晴らしいチャンスを生かしてもらいたい」 ◇ 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」。トーチュウ紙面で連日展開中。
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